ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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焼き鳥編開始


戦闘校舎のフェニックス
プロローグ


 アーシアを迎えてからしばらく後の部活動で、兵藤が思い出したかのようにフェイに問いかけた。

 

「そういえばフェイってさ、元々いた世界が違うんだよな?」

「そうですが、それが何か?」

 

 質問の意図がわからず質問を返すフェイ。

 

「いや、俺ら悪魔は『音声言語』翻訳能力があるから気がつかなかったけどさ、アーシアが日本語で苦労しているから」

「成る程。俺は同じく会話を翻訳出来る言語会話(タンズ)の呪文を永続化(パーマネンシィ)しているので。ああ、先に言っておきますがタンズの呪文は2時間ちょっとしか保たないし、そう何度もかけられるものでもなく、パーマネンシィは他人にかけたタンズには効果がないので、アーシア先輩には使えませんよ」

 

 アーシアは兵藤と同い年の為兵藤と同じクラスに編入されたが、言葉の壁で苦労しているようだ。

 兵藤の言いたい事はわかったが、無理な物は無理と先に言っておく。フェイの呪文は一日に使用出来る回数が限られているので、あまり日常生活で使い切るわけにもいかない。人間である事を選んだアーシアが不自由しているのも心苦しくはあるが、自助努力というのも必要だ。

 

「そうか、そりゃ残念だな。しかし呪文ってすげぇな」

「悪魔が呪文なしでそのまま同じ能力持ってるじゃないですか」

 

 兵藤とフェイは軽口を叩き合う。本来ならここでリアスが「悪魔になれば言葉も不自由しないわよ」とでもアーシアを勧誘する所だが、フェイはリアスがやけに大人しいことに気付く。

 最近時折このように心ここにあらずといった様相になるが、原因については判らないままだった。

 

 しかし、それから数日後に原因が判明することになる。

 

 ◇◇◇

 

 いつものように旧校舎の部室へと向かう塔城とフェイ。

 旧校舎に入った時点で、フェイが立ち止まったので、塔城は首を傾げて尋ねる。

 

「……どうかしたんですか?」

「いや、なんでもない」

 

 気にするな、といった風に手を振り部室への歩みを再開する。

 フェイは部室に強力な何者かが居る事に気付きはしたが、戦闘の気配はないので気にしないことにした。

 ノックをしてから部室に入ると、機嫌の悪さを隠そうともしないリアス、笑顔ではあるが底冷えした雰囲気を漂わせる姫島、そして見知らぬ銀髪のメイド――フェイが先ほど気付いた強力な気配の持ち主――が待ち受けていた。

 

「……人間風情が……いえ、失礼しました。私はグレモリー家にお仕えするグレイフィアと申します」

「フェイです」

 

 メイドが嫌みを放とうとするが、すぐさま態度を変えて挨拶をしてくる。

 フェイも応じて挨拶を返す。なるほど、強力な気配は伊達ではない。フェイが既に一撃加えられる間合いだという事に気付く実力はあるようだ。

 面倒事の気配を感じたフェイが部屋の隅の席に腰掛けると、塔城も続いてその隣の椅子に座る。

 

「グレイフィア、彼が"あの"フェイよ」

 

 不機嫌な表情のままリアスが補足する。

 

「……納得しました」

 

 リアスは一体なにをグレイフィアに吹き込んだのだろうか。

 会話のないまま暫く待っていると、残りの2年生組がやってくる。

 

「まいったね」

 

 部屋に入るなり重苦しい空気に木場が呟く。グレイフィアもアーシアを一瞥するが、今度は何も言わない。

 一瞥されたアーシアは不安な表情を作るが、兵藤が頭を撫で落ち着かせながらそれぞれ席に着く。

 

「全員揃ったわね。では、部活をする前に少し話があるの」

「お嬢様、私がお話しましょうか?」

 

 グレイフィアの申し出にリアスが手を振っていなす。

 

「実はね――」

 

 リアスがそう口を開いた時、部室の部屋の魔方陣が光を放つ。

 魔方陣に描かれていた紋様が変化し、別の紋様となる。これはグレモリー家以外の悪魔が来るということか。

 

「フェニックス――」

 

 木場がそう漏らす。フェニックス――フェイの世界ではポイニクスとも呼ばれる神の使者たる炎の不死鳥だが、バハムートと同じく同名の別存在だろうか。

 魔方陣が輝きを増し、中から人影が顕われる。同時に炎が巻き起こり、室内を熱気に包む。

 魔方陣から顕われた人影が腕を横に薙ぐと、炎が吹き散らされて姿が露わになる。

 

「ふぅ、人間界は久しぶりだ」

 

 そう呟いたのがフェニックス――赤いスーツをラフに着こなした二十代であろう青年だった。

 青年は室内を見回し、視界にリアスを捉えると口元をにやけさせた。

 

「愛しのリアス。会いに来たぜ」

 

 声をかけられたリアスは半眼で見つめるままで歓迎しているようにはとても見えない。

 その様子でフェイは最近のリアスの態度の原因に察しがついた。

 ――要は政略結婚ということか。王族や貴族が望む相手と婚姻する事は少ない。国同士の関係、あるいは国内の勢力関係により『都合の良い相手』と結婚せざるを得ない場合も多々あるからだ。

 愛する相手と婚姻するのではなく、婚姻した相手を愛するのだ。とはどこの貴族が言った言葉だったろうか。

 立場のある身分になればなる程、自由は少ない。公爵家の跡継ぎならば尚更。

 

「さて、リアス。さっそくだが式の会場を見に行こう。日取りも決まっているんだ、早め早めがいい」

 

 そう言って腕を掴むフェニックス。もうそこまで話が進んでいたのか。フェイは内心で驚く。

 

「……離してちょうだい、ライザー」

 

 手を振り払うリアス。その声音といい表情といい、完全に怒っている。しかしフェニックスはただ苦笑するのみだった。

 

「おい、あんた。部長に対して失礼だぞ。つーか、女の子にその態度はどうよ?」

 

 怒りに燃える兵藤がフェニックスに対して注意をする。方向性は違えど人の事は言えない気もするが。

 言われたフェニックスは不機嫌な顔になって答える。

 

「あ? 誰、お前?」

「俺はリアス・グレモリー様の眷属悪魔! 『兵士』の兵藤一誠だ!」

「ふーん、あっそ」

 

 問われた兵藤が名乗りを上げるが、特に興味なさそうに流すフェニックス。だったら何故聞いたのか。

 

「つーか、あんた誰だよ」

 

 兵藤の問いかけにフェニックスが驚いた顔を見せる。

 

「……あら? リアス、俺のこと、下僕に話してないのか? つーか、俺を知らない奴がいるのか? 転生者? それにしたってよ」

「話す必要がないから話していないだけよ」

「あらら、相変わらず手厳しいねぇ」

 

 目元を引きつらせながら苦笑するフェニックス。そこでグレイフィアが口を出した。

 

「この方はライザー・フェニックスさま。純血の上級悪魔であり、古い家柄を持つフェニックス家のご三男であらせられます」

 

 その紹介にフェイは遠い目をする。神聖なるポイニクスも世界変われば名門悪魔か、と。

 続くグレイフィアの言葉は、フェイの予想通りの内容であった。

 

「そして、グレモリー家次期当主の婿殿でもあらせられます。リアスお嬢様とご婚約されておられるのです」

「えええええええええええええっっ!!」

 

 兵藤が絶叫する。予想出来ていなかったのか、予想したくなかったのか。いや、よそう。

 




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