ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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1話

「いやー、リアスの『女王』が淹れてくれたお茶は美味しい物だな」

「痛み入りますわ」

 

 ライザーが給仕をした姫島のお茶を褒める。姫島も表面上笑ってはいるが、いつもの口癖もないため、本意ではないのだろう。

 ソファに座るリアスの隣につき、軽々しく肩を抱くライザー。何度となく手を振り払われても、肩や手や髪を触っている。よくリアスは我慢しているものだ。

 そんなリアスの様子を見ながら兵藤は怒りと哀しみが混ざった百面相をしていたが、最終的に涎を垂らした非常にだらしない顔に納まる。あ、これは……。

 

「あ、あの、イッセーさん。何か楽しい事ありました?」

「……卑猥な妄想禁止」

 

 フェイが危惧した通りに塔城が突っ込みを入れるが、アーシアは……。フェイはもう気にしない事にした。

 木場が兵藤にハンカチを差しだそうとするが、その前にアーシアが自身のハンカチで兵藤の顔を拭うのだった。

 

「そろそろお茶の時間ですから、お菓子の事を考えて涎が出ちゃったんですね」

 

 フェイはもう気にしないと決めている。そんな中でリアスの声が響く。

 

「いい加減にしてちょうだい!」

 

 結局爆発したか。リアスが感情のままに言い放つ。

 

「ライザー! 以前にも言ったはずよ! 私はあなたと結婚なんてしないわ!」

「ああ、以前にも聞いたよ。 だが、リアス、そういうわけにはいかないだろう? キミのところの御家事情は意外と切羽詰まっていると思うんだが?」

「余計なお世話だわ! 私が次期当主である以上、婿の相手は自分で決めるつもりよ! 父も兄も一族の者も急ぎすぎだわ! 当初の話では、私が人間界の大学を出るまでは自由にさせてくれるはずだった!」

「その通りだ。キミは基本的に自由だよ。大学に行ってもいいし、下僕も好きにしたらいい。だが、キミのお父様もサーゼクス様も心配なんだよ。御家断絶が怖いのさ。ただでさえ、先の戦争で大勢の純血悪魔が亡くなった。戦争を脱したとはいえ、堕天使、神陣営とは拮抗状態。連中とのくだらない小競り合いで純血悪魔の跡取を亡くして御家断絶なんて例もないわけじゃない。純血であり、上級悪魔の御家同士がくっつくのはこれからの情勢を考えれば当然だ。純血の上級悪魔。その新生児が貴重な事くらいキミだって知っているだろう?」

 

 結局の所は政略結婚である。兵藤のような人間から転生したものではなく、生まれつきの純血悪魔。その名門の血を絶やさぬようにすること。リアスの家は二人兄妹で兄は魔王となった為に家督を継がず、リアスが次期当主となり婿を迎えるしかないこと。ライザーは家督に関わらないフェニックス家の三男であるため婿養子に都合が良いこと。よくある構図である。

 純血主義自体も、フェイの世界においても迫害される事もある混血種族(ハーフブラッド)の話と思えば判らなくもないのだが……。

 

「私は家を潰さないわ。婿養子だって迎え入れるつもりよ」

 

 リアスのその言葉を聞き、ライザーは満面の笑みを浮かべる。

 

「おおっ、さすがはリアス。じゃあ、さっそく俺と――」

「でも、あなたとは結婚しないわ、ライザー。私は私が良しと決めた者と結婚する。古い家柄の悪魔だって、それくらいの選択の自由はあるわ」

 

 ライザーの言葉を遮って宣言するリアスに、舌打ちをして機嫌を悪くするライザー。

 

「……俺もな、リアス。フェニックス家の看板を背負った悪魔なんだよ。この名前に泥を塗られるわけにもいかないんだ。だから――」

 

 ライザーの周囲を炎が駆け巡る。

 

「俺はキミの下僕を全て燃やし尽くしてでもキミを冥界に連れ帰るぞ」

 

 殺気と敵意が部屋を支配する。

 リアスは紅い魔力を全身から発し始め、ライザーも炎を身に纏う。

 フェイもまた音声省略した呪文をいつでも放てる準備をする。

 そこに割って入ったのはグレイフィアだった。

 

「お嬢様、ライザー様、落ち着いて下さい。これ以上やるなら私も黙って見ているわけにもいかなくなります。私はサーゼクス様の名誉のためにも遠慮などしないつもりです」

 

 静かに迫力のある言葉をグレイフィアが口にすると、リアスは魔力を抑え、ライザーも炎を落ち着かせた。

 

「……最強の『女王』と称されるあなたにそんなことを言われたら、俺もさすがに怖いよ。バケモノ揃いと評判のサーゼクス様の眷属とは絶対に相対したくないからな」

 

 リアスとライザーの戦意がなくなった事を確認するとグレイフィアが言う。

 

「こうなることは旦那様もサーゼクス様もフェニックス家の方々も承知でした。正直申し上げますと今回が最後の話し合いの場だったのです。話し合いで決着が付かない場合のことを皆様方は予測し、最終手段を用意してあります」

「最終手段? どういうこと、グレイフィア?」

 

 リアスの質問にグレイフィアが答える。

 

「お嬢様、ご自分の意志を押し通すのでしたら、ライザー様と『レーティングゲーム』にて決着を付けるのは如何でしょうか?」

「――っ!!」

 

 ――『レーティングゲーム』上級の悪魔達がチェスに準えて揃えた下僕と共に戦うゲームだったか。

 しかし、リアスはまだ成熟していない為参加出来ないはずだったが……。

 フェイの疑問はすぐに解消された。

 

「お嬢様もご存じの通り、常識な『レーティングゲーム』は成熟した悪魔しか参加出来ません。しかし、非公式の純血悪魔同士のゲームならば、半人前の悪魔でも参加出来ます。こういった場合の多くが――」

「身内同士、御家同士のいがみ合いよね」

 

 グレイフィアの言葉に嘆息してリアスが続ける。

 

「私が拒否した場合も考えてゲームで婚約を決めようってわけね。……どこまで私の人生を弄れば気が済むのかしら」

 

 リアスがいらついたように吐き捨てると、グレイフィアが問いかけた。

 

「では、お嬢様はゲームも拒否すると?」

「いえ、こんな良い機会はないわ。いいわよ。ゲームで決着を付けましょう。ライザー」

 

 リアスの挑戦にライザーは口元をにやけさせて答える。

 

「俺は構わない。ただ、俺は成熟しているし、公式のゲームも何度かやっている。今の所勝ち星の方が多い。それでもやろうってのか?」

「やるわ! ライザー、あなたを消し飛ばしてあげる!」

 

 ライザーの挑発にリアスも勝ち気な笑みを浮かべて返す。

 

「承知いたしました。お二人のご意思は私グレイフィアが確認させて頂きました。立会人として、私がこのゲームの指揮を執らせていただきますが、よろしいですね?」

「ええ」

「ああ」

 

 グレイフィアの確認に頷く二人。

 

「わかりました。ご両家の皆様にも私からお伝えします」

 

 そう言ってグレイフィアは頭を下げた。

 

「なあ、リアス。まさが、ここに居る面子がキミの下僕なのか?」

「二人程違うけどね、だとしたらどうなの?」

 

 リアスが答える。

 

「これじゃ、話にならないんじゃないか? キミの『女王』である『雷の巫女』ぐらいしか俺のかわいい下僕に対抗できそうにないな」

 

 そういいながらライザーが指を鳴らすと、魔方陣が光り出し続々と人影が出現する。

 

「これが俺のかわいい下僕達だ」

 

 そう言い放つライザーの周囲を、十五名もの眷属悪魔が固めていた。

 十五名、チェスの駒数からいって眷属に出来る最大人数か。

 そして、眷属悪魔はそれぞれ特徴的な格好をしているが――

 

「お、おい、リアス。なんでこの下僕くん、俺を見て大号泣してるんだ?」

 

 涙を流す兵藤にかなり引きながらライザーはリアスに問いかける。問われたリアスも困り顔で額に手を当てながら答える。

 

「その子の夢がハーレムなの。きっと、ライザーの下僕悪魔達を見て感動したんだと思うわ」

 

 そう、ライザーの眷属は全員顔立ちの良い――語る者が語れば各属性取り揃えていると語る――女性悪魔だった。

 フェイとしては正直ライザーにも兵藤にもドン引きである。

 

「きもーい」

「ライザーさまー、このヒト、気持ち悪ーい」

 

 ライザーの眷属も汚物を見るような目で兵藤を見ていた。

 ライザーはそんな眷属の身体を撫でながら慰める。

 

「そう言うな、かわいいおまえたち。上流階級の者を羨望の眼差しで見てくるのが下賤な輩の常さ。あいつらに俺とおまえたちが熱々な所を見せつけてやろう」

 

 そう言いながら眷属の一人と濃厚なキスを交わすライザー。

 その様子を呆れて見ているリアスを見ながら、人前でそんな事を平気でやらかすからリアスが嫌がるんじゃないのか、などとフェイは思う。

 もし師匠がこの場に居たらこの時点でライザーの顔面に拳が叩き込まれているな、とも。

 

「お前じゃ一生こんなことは出来まい。下級悪魔くん」

「俺が思っている事そのまんま言うな! ちくしょう! ブーステッド・ギア!」

 

 思っていたのか、そもそもそんな事で『神滅具』を発動するな、などフェイが突っ込み切れない程のセリフを吐いて激高する兵藤。

 その左手には赤い籠手が出現する。本当に発動しやがった。

 

「おまえみたいな女ったらしと部長は不釣り合いだ!」

「は? お前そんな俺みたいになりたいんだろう?」

 

 物申す兵藤に対して呆れたように答えるライザー。正論である。

 

「う、うるせぇ。部長の事は別だ! そんなんじゃ部長と結婚しても他の女の子とイチャつくんだろ!」

「英雄色を好む。人間界のことわざだったよな? 良い言葉じゃないか。それに部下とのスキンシップは必要だぜ? お前もリアスに可愛がってもらってるだろ?」

 

 痛いところを突かれて喚く兵藤に対し、余裕のライザー。舌戦はやや兵藤不利か。

 

「何が英雄だ! 火の鳥フェニックス? 笑わせるな焼き鳥野郎!」

「焼き鳥!? この下級悪魔がぁぁぁっ! 調子こくんじゃねぇぞ!」

 

 兵藤の焼き鳥発言に逆鱗に触れた様子で激高するライザー。

 しかしそろそろ危ないか、とフェイは事態の進展を危惧する。

 

「ゲームなんて関係ねぇ! 俺がこの場で全員倒してやらぁっ!」

Boost(ブースト)!!』

「ミラ。やれ」

「はい、ライザーさま」

 

 ライザーに殴りかかろうとする兵藤に対し、ライザーの指示で小柄な眷属悪魔が立ちはだかる。

 長い棍をクルクルと器用に回した後に構えを取り――兵藤の一撃で棍を取り落とし驚いた表情をしている。

 ライザーは一瞬驚いた後――

 

「てめぇっっ、何をしやがった!」

 

 フェイに怒鳴りつけた。ただのボンボンではなかったか、隠れて気おくれ(ヘジテイト)の呪文を発動していたのに気付いた事に感心するフェイ。

 もしフェイが邪魔をしなければ兵藤にカウンターが決まっていた事だろう。

 

「わざわざ手の内を明かす程親切ではないのでね」

 

 肩を竦めるフェイにライザーが更に噛み付く。

 

「てめぇ、人間だな! 人間風情がなんでこんな所にいやがる!?」

「その人間風情のやった事も見抜けぬ悪魔風情が何を仰いますか」

 

 ライザーの問いにフェイは挑発で返す。思わぬ所で都合の良い展開になった。

 フェイは『レーティングゲーム』の話が出た時から、ゲームに絡む切っ掛けを狙っていたのだった。

 このままでは人間であるフェイはリアスを手助け出来ずに終わってしまうのだから。

 

「ちっ、言うじゃねぇか人間! だったらお前もゲームにリアス陣営で参加しろよ、そこでぶち殺してやる。ついでにもう一人も参加させろよ。どうせ非公式の身内戦なんだしよ。どうだ、リアス?」

「…………彼らが望むのなら私は構わないわ。グレイフィアの意見は?」

 

 フェイの思惑通りゲームへの参加を持ちかけるライザー。リアスはフェイが狙ってやった(・・・・・・)事に気付き、フェイを半眼で睨んだ後に了承する。

 

「一応ご両家に確認は取りますが……恐らく許可されるかと」

「なら決まりだな。……そうだな、リアス。ゲームは十日後でどうだ? 今すぐでもいいが、それじゃあ面白くなさそうだ」

 

 ライザーが頷くと、何かを思いついたように顎に手を置き、リアスに提案する。

 

「……私にハンデをくれるっていうの?」

「ま、そうだな。現状あまりにも戦力が違う。十日もあればここに居る連中も少しはマシになるだろうし、戦力も増やせるかもな。お情けを貰って屈辱か? だが自分の感情だけで勝てるほど『レーティングゲーム』は甘くないぞ。下僕の力を引き出せなければ即敗北だ。いかに才能があろうと、いかに強かろうと、本来の実力を発揮できぬまま初戦で負ける奴らも何度も見てきたぞ。ましてやキミは初めてのゲームに臨むんだ、経験者の助言は聞いておくべきだな」

 

 ライザーの言葉をリアスは黙って聞いている。ライザーも挑発的であり強者の驕りも垣間見えるが、根はそんなに悪い奴でもないのかもしれない。

 ライザーが手を下に向けると魔方陣が輝き出す。

 

「リアス、次はゲームで会おう」

 

 そう言い残して、ライザーと眷属悪魔は魔方陣の光の中へ消えていった。

 





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D&Dあまり知らない人向け

不死鳥(ポイニクス)

 "火の鳥"とも呼ばれる霊鳥。
 実は(火)属性クリーチャーじゃないので、[火]に対する完全耐性も、[冷気]に対する脆弱性もない。(通常の(火)属性クリーチャーは持っている特徴)
 傷を殆ど癒やす大治癒(ヒール)や死んだ者を転生させる転生(リインカーネイト)などの回復系の疑似呪文能力を使いこなし、
 自らが死にそうになったら、盛大に自爆して周囲を炎上させた上で復活する能力を持つ。
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