ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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3話

 二人組を交代して、フェイと木場との組み合わせになった。

 木場はある程度戦闘スタイルが完成しているため、フェイとの模擬戦を中心に行うことにした。

 お互いに素早い相手との対戦を視野にいれた、躱し、捌き、当てる為の訓練。

 フェイは木場の動きに内心舌を巻いていた。

 

「まったく、一撃一撃が岩山を吹き飛ばす威力なんだから怖い物だね」

「そう言って一撃も入れさせていないじゃないですか」

 

 剣と拳のリーチ差を上手く利用してなかなか懐に入れさせず、懐に入っても直ぐに捌いて位置を離す。

 フェイも模擬戦としての手加減はあるにせよ、その身のこなしや立ち回り、位置取りはただ素早いだけでなく、戦術を持って組み立てられており、一線級の活劇剣士(スワッシュバックラー)を相手取っている感覚に襲われる。

 お互いに少しの隙でも鋭い一撃が突き込まれる為、それを捌かざるを得ない事で機会を逃す。その繰り返しであった。

 

「フェイ君だって絶対に避けられない一撃を組み立ててもアッサリと躱すじゃないか」

「あんな避け方そうそう何度も出来るものですか」

 

 激しく位置を入れ替えながらも軽口を叩きあう木場とフェイ。

 まだキチンと見てはないが全く素人の兵藤の事を考えると、グレモリー眷属の中では近接戦闘は木場が一番上手か、とフェイは判断する。

 呪文の補助なしでは木場ほどは動けないだろうが、小猫もそれに近いところまで行ってくれれば……などと考えていると、隙を突いた木場にフェイは一撃を貰ってしまった。

 

「隙ありってね。模擬戦中に考え事かい?」

「あー、すみません。失礼しました」

 

 丁度良い区切りだったので二人は休憩を行うことにした。

 

「それでフェイ君は何の考え事をしていたんだい?」

 

 タオルで汗を拭いながら爽やかに木場が問いかける。

 

「先輩との訓練中に余計な事を考えていて失礼しました。小猫を木場先輩の動きについていけるようにするにはどうしようかと考えていました」

 

 フェイは対決中に目の前の相手以外の事を考えるという失礼なことをしてしまったので、再度謝罪をする。

 

「それは構わないんだけど……そうか、まだ実際はそれ位の力の開きがあるんだね」

 

 木場が言っているのは小猫と木場ではなく、木場とフェイの事である。

 互角に競り合っているように見えて、フェイは余計な事を考えながらでも多少の隙にしかならない。

 その隙を突けた木場は見事ではあるが、まだそれだけフェイが余裕を残しているということである。

 

「それにしても……小猫ちゃんとは大分親しくなったみたいだね?」

「同じ徒手格闘を基本とする者同士ですからね、一応弟子みたいな扱いになりました」

「へぇ……」

 

 木場はフェイから意外な事実を聞くがそれ以上掘り下げない事にした。下手に掘り返すと普段は無表情な小猫(後輩)が顔を真っ赤にして怒りそうだ。

 

◇◇◇

 

 フェイと兵藤の二人組になったとき、フェイは兵藤の動きをみて、まずは体捌きを含めた捌きの技術を中心に鍛える事にした。なぜなら――

 

「兵藤先輩の神器の話を聞く限りだと、倍加中に攻撃を貰うとリセットされてしまうようなので、倍加中に攻撃を喰らわないような位置取りや捌き方を中心に磨いた方が良いと思います。もちろん基本の拳撃の威力底上げとなる型稽古も用意していますが」

「そうだよな、いくら倍加を溜めてても途中でリセットされたらやり直しだもんな」

 

 フェイの説明にふむふむと頷く兵藤だったが。

 

「ただ……捌きは基本の動きを覚えるのはもちろん、実戦の上でどう使うかの応用が重要となります。模擬戦も激しくいきますのでよろしくお願いします」

「お、お手柔らかに頼むぜ」

 

 続くフェイの言葉に顔を引きつらせて答える。

 結局の所、合宿期間中フェイと兵藤の模擬戦の時間において、兵藤の悲鳴が途絶える事はほぼなかった。 

 理由として、兵藤の実戦での成長が著しく、そのセンスにフェイも驚く程だったこと。そして、その成長にフェイも楽しくなり模擬戦に気合いが入り更に激しく(スパルタに)なっていったが故の事であった。

 

◇◇◇

 

「うぉぉぉ! 美味ぇぇぇ! マジ美味い!」

 

 兵藤が目の前の料理を掻き込んでは雄叫びを上げる。

 フェイ達は一日目の修行を終え、夕食の時間を迎えていた。食卓にはリアスが捕ってきた猪を使った肉料理、リアスが釣ってきた魚を使った料理、その他山菜や野菜を使った様々な料理が並べられていた。

 ――道理で修行中リアスの姿をあまり見かけなかったわけだ、とフェイは納得する。

 

「あらあら、おかわりもありますから沢山食べて下さいね」

 

 料理をしたのは姫島のようだ。それにしても人数の割には量が多すぎる気もするが……などと考えていたフェイであったが、隣に座る音も立てずにもの凄い勢いで料理を消滅させている存在(小猫)を見た時点で考えるのをやめた。

 しかし確かに料理は美味い。フェイも旅生活が長いため、保存食以外にも現地調達として獣を狩って調理することも多かった。しかしこれほど美味しく調理された獣肉を食べたことなどなかったのだ。

 

「朱乃さん最高っス! 嫁に欲しいくらいです!」

「うふふ、困ってしまいますね」

 

 兵藤が感激して姫島に求婚紛いの言葉を紡ぎ、姫島も満更でもないような態度を取る。

 微笑ましい光景である。――兵藤の隣で沈むアーシアの存在がなければ。

 

「……私もスープを作ったんですよ」

 

 悲しそうに呟いたアーシアに気付いた兵藤は慌てて目の前のスープを飲み干し、感想を言った。

 

「美味いぞ、アーシア! 最高だ! もう一杯くれ!」

「本当ですか! 嬉しいです! ……これで私もイッセーさんの……」

 

 泣いた(アーシア)がもう笑った、全くもって微笑ましい光景である。などとフェイが眺めていると、袖を引かれたので視線を落とす。

 小猫が料理の乗った皿をフェイに差し出していた。猪肉を挽いて焼いた(ハンバーグ)料理のようだ。

 

「ああ、ありがとう。香草が効いていてなかなか美味いな」

 

 感想を述べると小猫は頷いて自分の目の前の料理の消滅作業に移った。

 

「あらあら、そのハンバーグは小猫ちゃんが捏ねるのを手伝ってくれたのですわよ」

 

 そうなのかとフェイが頷いて小猫を見ると、小猫は少々顔を上気させながら黙々と食事を続けていた。

 フェイは小猫の食事の邪魔をしないように、小猫の頭を軽く撫でて感謝の意を示し、食事を再開した。

 

「さて、イッセー。今日一日修行してみてどうだったかしら?」

 

 食事の一段落したリアスが、お茶を飲みながら兵藤に尋ねる。

 

「……アーシアを別とすれば、俺が一番弱かったです」

「そうね、それは確実ね」

 

 箸を置き、悔しそうに兵藤が漏らす。そしてリアスはそれを肯定した。

 

「朱乃、祐斗、小猫はゲームの経験こそないけど、実戦経験が豊富だから感じを掴めば戦えるでしょう。フェイも今更言うまでもないわね。イッセーとアーシアは実戦経験が皆無に等しいわ、ましてやアーシアは人間だしね。それでもアーシアの回復能力、イッセーのブーステッド・ギアは無視できない。相手もそれは理解している筈。最低でも相手から逃げられるだけの能力が欲しいわ。特に前線に立つイッセーはね」

 

 諭すように言うリアスに兵藤は質問する。

 

「逃げるって、そんなに難しいんですか?」

「背を向けて逃げようものなら、飛び道具があれば撃って下さいというようなもの。逃げるより追うのが速ければ背中から斬られる。要は相手から有効な攻撃を貰わずに攻撃範囲、延いては索敵範囲から逃れるのが『逃げる』という技術です」

「フェイの言う通りよ。逃げる事自体は戦術のひとつ。状況が悪ければ一端退いて体勢を立て直すのも立派な戦い方。けれど無策に逃げればただ相手に隙を与えるだけ。イッセーとアーシアには逃げ時も教えないといけないわ。もちろん面と向かって戦う術も教えるから覚悟なさい」

 

 兵藤の質問にフェイが口を挟み、リアスが補足する。

 兵藤とアーシアはそれぞれ神妙な顔をして頷いた。

 

「さて、食事を終えたらお風呂に入りましょうか。ここのは温泉だから素敵なのよ」

 

 そうリアスが口にした途端、神妙だった兵藤の顔が一瞬で崩れた。

 

「僕は覗かないよ、イッセーくん」

「俺もです」

 

 機先を制するように釘を刺す木場にフェイは乗っておいた。

 

「バッカ! おまえらな!」

「あら、イッセー。私たちの入浴を覗きたいの?」

 

 ムキになる兵藤にかけたリアスの言葉で、全員の注目が兵藤に向かう。

 リアスは小さく笑い――これは何か碌でもない事を企んでいる表情だ――兵藤に声をかけた。

 

「なら、一緒に入る? 私は構わないわ」

 

 戸惑っていた兵藤が凍りついた(フリーズした)

 

「朱乃はどう?」

「イッセーくんなら構いませんわ。殿方のお背中も流してみたいですわね」

 

 尋ねるリアスに姫島はなんでもないように答える。本当にそれでいいのか。やはり悪魔か。

 リアスは更にアーシアにも尋ねる。

 

「アーシアは? 愛しのイッセーが相手なら大丈夫よね?」

 

 結果は見えていたようなものだったが、アーシアもまた顔を赤面させながらも小さく頷く。

 

「最後に小猫はどう?」

「……嫌です」

 

 小猫は指で×を作りながら否定する。それが一般的な対応だろうな、などとフェイが思っていると、リアスは何か企んでいる表情のままで更に問いかける。

 

「そう、じゃあ小猫だけ別にフェイと――」

「むむ、無理です!」

 

 リアスが全て言う前に顔を赤く染めながら腕を大きく交差させて即答する小猫。

 そこまで嫌なのかと苦笑しながらもフェイはリアスを窘める。

 

「俺だったらいいって訳でもないでしょうが。あまり弄らないでやって下さいよ」

 

 リアスがそんな事を言うからこうやって小猫から恨みがましい視線で見られるのだ。

 なぜか他の女性陣は呆れたような顔をしていたが、フェイには理由がわからなかった。

 

「まあ、それじゃなしね。残念、イッセー」

 

 リアスの言葉でこの世の全てが終わったかのように打ちひしがれて膝をつく兵藤。

 そこに木場が爽やかに声をかける。

 

「イッセーくん、僕と裸のつきあいをしよう。背中、流すよ」

「うっせぇぇぇぇ、マジ殺すぞ木場ぁぁぁぁぁ」

 

 兵藤の慟哭が夜の山中に響き渡った。

 

 




合宿編は次回で終わらせる予定

感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。


D&D知らない人向けの今更感溢れるおまけ

武僧(モンク)
 フェイの職のひとつ
 基本職の一つ。前衛職のわりに攻撃の命中率が攻撃支援職並という部分が最大の欠点。
 成長するに応じて素手打撃の能力が向上していき、最終的にはライフル銃なみの威力の拳撃を誇る。
 他にも成長していけば高速移動や回避能力は言うに及ばず、身体操作を極めることにより毒を無効化したり、病気を無効化したり、精神修養を高める事で呪文を無効化したりするようになる変態職でもある。
 その他、次元を跳躍したり霊体化したり年を取らなくなったりと人間離れをしていくが、最終的には天使や悪魔と同格の来訪者となり人という分類からも外れる。
 
魔術師(ソーサラー)

 フェイの職の一つ。
 基本職の一つで、後衛魔法職。竜や悪魔の血を引いており、その血に流れる才能により呪文が使えるようになった者。
 ある意味ではDXD世界の悪魔や魔術師に近い。
 他の魔法職と比べ、呪文の使用回数は多いが習得できる呪文の数が限られるのが特徴。

野伏(レンジャー)

 基本職の一つ。二刀流もしくは弓術を得意とする前衛系の軽戦士。
 また、野外活動も得意。

活劇剣士(スワッシュバックラー)

 基本職の一つ。素速さと機転を重んじる前衛系の軽戦士。
 優雅に相手の攻撃を躱し、その隙に一刺しするのが特徴的な戦闘スタイル。
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