ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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5話

 決戦当日深夜、『レーティングゲーム』に臨むオカルト研究部の面々は旧校舎の部室へと集まっていた。

 修道女の衣装を身に纏ったアーシア、貫頭衣を身に付けたフェイを除き、みな学生服の姿である。

 小猫は椅子に座り、本を読んでいる。その手にはオープンフィンガーグローブ――『掴む』事も重視した格闘用の籠手を嵌めていた。木場は手甲と脛当を装備し、剣を壁に立てかけたその隣に寄り掛かっている。兵藤とアーシアは椅子に座り、時が来るのを静かに待ち受けていた。

 フェイは直接床に座り、瞑想を行っている。

 そして、リアスと姫島はソファに腰掛け優雅に茶を嗜んでいた。

 

 開始時間が迫った頃、魔方陣が輝きを放ちグレイフィアが表れる。

 

「皆さん、準備はお済みになられましたか? 開始十分前です」

 

 グレイフィアがそう確認すると、各々が立ち上がり、最終的な装備の確認を行う。

 

「開始時間になりましたら、ここの魔方陣から戦闘フィールドへと転送されます。場所は異空間に作られた戦闘用の世界。そこではどんな派手な事をしても問題ありません。使い捨ての空間なので思う存分にどうぞ」

「競技用にわざわざ疑似次元界を作り出すとは贅沢なものだな」

 

 グレイフィアの説明にフェイが思わず呟く。

 

「フェイ様は人間でありながら色々な事をご存じなようですね」

「同じような事を出来る人間も知っていますので。貴女の知っているモノが人間の全てではありませんよ」

 

 揶揄したグレイフィアに対するフェイの答えに、表情を硬くしながらもグレイフィアは頷いた。

 

「そういえば部長。フェイとアーシアはどの枠に入るんですか?」

「そうね……グレイフィア、余っている駒の枠ならどこに入れてもいいのよね?」

 

 兵藤の問いかけにリアスは更にグレイフィアに確認を取る。

 

「はい、ルール自体は公平にするために、既に消費した駒の枠に入れる事は出来ません」

「それならアーシアは『僧侶』で確定。残る駒は『騎士』か『戦車』だけれど――」

「……『戦車』がいいと思います」

 

 グレイフィアの答えに二人の役割を検討するリアスだったがそこに小猫が主張をした。

 そしてフェイもまたその小猫の主張を支持した。

 

「実際に眷属になってない以上、俺にとって駒の役割は形式に過ぎません。その上で『戦車』としての攻撃力を見せつつ、実際には強化されていない防御力もあると思わせた方が得策でしょう。まあ見抜かれても大して影響のないブラフですが」

「なるほど、判ったわ。じゃあフェイが『戦車』でアーシアが『僧侶』ね」

 

 フェイの説明に納得したリアスは小猫の提案を通す事にした。

 

「あれ? そういえば部長。アーシアが『僧侶』はいいとしても、もう一つ『僧侶』の駒はあるんじゃないですか?」

 

 兵藤がリアスに疑問を投げかけた途端、フェイ、兵藤、アーシア以外は口を閉ざし、思い空気が支配することになった。

 

「もう一人、すでに『僧侶』の子がいるんだけどね。残念ながら今回は参加出来ないの。いずれこの話をするときも来るでしょう」

 

 それだけ言ってリアスも口を閉ざす。

 思い空気が場をしめるなか、グレイフィアが切り出すように口を開く。

 

「今回の『レーティング・ゲーム』は両家の皆様も中継のフィールドでの戦闘をご覧になります」

 

 婚約を決める勝負なのだ、内容も重視はされるのだろう。

 

「さらに魔王ルシファー様も今回の一見を拝見されておられます。それをお忘れ無きように」

「お兄様が? ……そう、お兄様が直接みられるのね」

 

 ルシファー――サーゼクス・ルシファー。グレモリー家を出たリアスの兄か。

 調べた限りでは魔王ルシファーの地位を継いだ『紅髪の魔王(クリムゾン・サタン)』と呼ばれる最強の魔王。

 果たしてどの様な人物なのか、余計なモノはなるべく見せない方が良いのかもしれない、とフェイは警戒する。

 

「そろそろ時間になります、皆様魔方陣のほうへ」

 

 グレイフィアに促され、一同は魔方陣へと移動する。

 

「なお、一度あちらに移動しますと、終了するまで魔方陣での転移は不可能になります」

 

 グレイフィアのその言葉と共に、魔方陣の紋様がグレモリーでもフェニックスでもない形に変化して輝きを放ち、オカルト研究部一同を転移させた。

 

 ◇◇◇

 

 転移先はオカルト研究部の部室だった。

 グレイフィアの姿が見えず、兵藤とアーシアが戸惑っている。

 

「学園丸々の複製(コピー)ですか、本当に贅沢な使い方ですね」

「用意される戦場は色々あるけど、大体こんなものよ。気にしない事ね」

 

 フェイが現在居る場所に気付き、『ゲーム』にしては贅沢な魔法の使い方に嘆息してリアスに訊ねると、リアスもまた苦笑しながら答えるのだった。

 

『皆様、このたびグレモリー家、フェニックス家の「レーティングゲーム」の審判役を担う事になりました、グレモリー家の使用人グレイフィアでございます』

 

 唐突に校内のスピーカーからグレイフィアの声が聞こえてくる。

 

『我が主、サーゼクス・ルシファーの名のもと、両家の戦いを見守らせて頂きます。どうぞよろしくお願い致します。早速ですが、今回の舞台はリアス様とライザー様のご意見を参考にして、リアス様が通う人間界の学舎「駒王学園」のレプリカを異空間にご用意いたしました』

 

 こういった事象に慣れていない兵藤とアーシアはグレイフィアの言葉に驚いているようだった。

 

『両陣営、転移された先が「本陣」でございます。リアス様の陣営が旧校舎のオカルト研究部の部室、ライザー様の陣営が新校舎の生徒会室がそれぞれ「本陣」となっております。「兵士」の方は「プロモーション」する際、相手の「本陣」の周囲まで赴いて下さい』

 

 プロモーション――チェスにおける『兵士』のみが行える特殊能力で、相手の本陣に攻め入った『兵士』が『王』以外の駒に変化出来るというもの。当然『レーティングゲーム』でも同様の使用となっており、『兵士』が『女王』並の強化を得る事も可能である。その為には敵の本陣まで攻め入らなければならないが……。

 重要なのはリアス側の『兵士』が兵藤一人で、ライザー側には八人の『兵士』が居るということである。

 討ち漏らしがあれば、敵の『女王』を増やす結果となってしまう。

 

「全員、この通信機器を耳に付けて下さい」

 

 姫島がイヤホンマイク型の通信機器を配る。戦闘中はこれで味方同士の連絡をするというものだろう。

 フェイは感慨にふける。科学技術というのも便利なものだな。テレパシー結合(テレパシック・ボンド)の呪文を使わずとも、こんな小さな道具を使うだけで意思疎通を行えるのだから。

 

『開始のお時間となりました。なお、このゲームの制限時間は人間界の夜明けまで。それではゲームスタートです。

 

 キンコンカンコーン。

 グレイフィアの宣言と共に、学園のチャイムが鳴り響き、『レーティングゲーム』が始まった。

 

 ◇◇◇

 

 フェイは複雑な気分でソレを眺めていた。

 序盤を有利に進めるための罠を、木場、小猫と共に仕掛けて戻ってきた時の事だ。

 リアスが兵藤を膝枕しており、それをアーシアが頬を膨らませて涙目で見ている。

 戦闘開始前になにをやっているんだコイツらは。そう思い口を開こうとした所で――

 

「……何をしているんですか?」

 

 フェイが訊く前に小猫が訊ねた。

 

「『プロモーション』の封印を解いているのよ。イッセーの悪魔としての力が未成熟すぎたから、『兵士』としての機能を制限して、『女王』になれないようにしていたの。修行で力をつけたから、少しだけ解放しているのよ」

「なるほど」

 

 理屈には納得したが、涙目のアーシアはどうしたものか。まあ、兵藤に任せればいいか。

 フェイはフォローをするのを諦めた。

 




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