ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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6話

「解体しまーす♪」

 

 物騒な内容を口にしながら、それぞれ鎖鋸(チェーンソー)を手にした双子の『兵士』がフェイに襲いかかる。

 

「にゃ」

「にゃにゃ」

 

 同時に二人の獣人の『兵士』も時間差でフェイに攻撃を仕掛ける。

 まずは人間であるフェイに集中攻撃を仕掛けて頭数を減らす作戦か。

 小猫は同じ『戦車』の格闘家、兵藤は以前から因縁のある棍使いの『兵士』と対峙している。

 フェイは敵の人数が少なければこの場は二人に任せて遊撃に移るつもりだったが、この人数ではそうもいかない。

 

 戦場は体育館。旧校舎と新校舎に繋がる重要な拠点だった。

 

 

 フェイは振り下ろされた鎖鋸の腹を叩き、軌道を反らす。鎖鋸はフェイの懐に飛び込んできた獣人に当たるかと思われたがギリギリで躱される。

 

「うぉっと、危ないにゃ」

「あ、ニィごめーん」

 

 ニィと呼ばれた獣人が抗議を上げると、双子の片割れが手を止めずに謝る。

 その間にもフェイはもう一人の双子と獣人の攻撃を躱し、防いでいた。

 ライザーの眷属は実戦経験が豊富なだけあり、双子のコンビネーションだけでなく、獣人を含めた4人の連携もこの上なく厄介だった。

 まずは牙を折るか。フェイはそう判断し、横薙ぎにしてきた鎖鋸の付け根を全力で殴り飛ばし、背後から袈裟斬りにしてきたもう一人の鎖鋸の腹に回し蹴りを入れる。

 鎖鋸は煙を噴いて動きを止め、もしくは刀身が折れ曲がり鎖の回転が止まった。

 

「あー、チェーンソーがぁぁ」

「ムカつくぅぅぅ」

 

 己の武器を破壊された双子は悪態を吐きながら予備武器(サブウェポン)らしき鉈を取り出すが、鎖鋸よりはずっと相手をしやすい。

 鉈と拳の乱舞をかいくぐりながら、フェイが仲間の二人を確認する。

 膝をつく『戦車』と油断なく構える小猫。小猫は戦況を優勢に進めていた。

 兵藤もまた特訓の成果か相手の棍を巧くいなし、捌いており、着実に倍加(ブースト)を稼いでいた。

 

「いくぜ、俺の神器くん!」

Explosion(エクスプロージョン)!!』

 

 掛け声と共に兵藤が攻勢へと転じる。

 突き出された棍を叩き折り、武器を失った棍使いを突き飛ばす。

 

「キャッ!」

 

 棍使いが悲鳴を上げて転がっていく。

 フェイはその悲鳴を聞いて僅かに隙の出来た獣人の胸に掌底を叩き込む(朦朧化打撃)

 

「カハッ!」

 

 息が詰まり僅かの間行動出来なくなった獣人をフェイが蹴り飛ばし、更に双子の片割れを昏倒させた所で兵藤の援護が入った。

 

「よくもお姉ちゃんを! きゃあっ!」

「にゃっ!?」

 

 フェイと相対しながらでは倍加の溜まった兵藤の素速さに対応できず、後ろから攻撃を喰らって吹き飛ぶ双子の妹とニィと呼ばれていた獣人。

 

「よくもやってくれたにゃ」

「もう! こんな男に負けたらライザー様に怒られちゃうわ!」

 

 兵藤に殴られた二人が頭を振りながら立ち上がり、棍使いも武器を失いながらも素手で構えを見せる。

 

「くらえ! 俺の新必殺技! 『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』ッ」

 

 パチン! 兵藤が叫ぶと同時に指を鳴らす。すると、兵藤に殴られた三人――棍使い、獣人、双子の妹の衣服が下着ごと弾け飛んだ。

 少女の白い裸体が露わになる。

 そして兵藤の鼻から音を立てて鼻血が吹き出した。

 

「イ、イヤァァァァァァッ」

 

 体育館中に女性の悲鳴が響き渡る。身を隠す物を失った三人は隠すべき箇所を手で隠し蹲ってしまう。

 

「アハハハハ! どうだ、見たか! これが俺の技だ! その名も『洋服崩壊(ドレス・ブレイク)』! 俺は脳内で女の子の服を消し飛ばすイメージだけを延々と、延々と妄想し続けたんだよ! 魔力の才能を全て女の子を裸にする為だけに使った!」

 

 鼻血を垂らしながら勝ち誇る兵藤。

 呆れていた。フェイはただ呆れていた。

 合宿中の魔力修行を直接見る事はなかったが、陰でなにやらやっているのは気付いていた。

 しかし、こんな事を修行していたとは……。

 

「最低! 女の敵!」

「けだもの! 性欲の権化!」

「変態!」

 

 被害に遭った者も、遭わなかった者も異口同音に兵藤を責め立てる。

 フェイにはそれを庇う気は起きてこなかった。

 

「……見損ないました」

 

 小猫がポツリと呟いた所で、リアスから連絡が入った。

 

『イッセー、小猫、フェイ。聞こえる? 朱乃の準備が整ったわ! 作戦通りにお願いね!』

 

「了解」

 

 フェイは小猫、兵藤と互いに視線を合わせ、頷く。

 三人は一斉に体育館の中央口へと走り出す。

 

「逃げる気! ここは重要拠点なのに!」

 

 唯一まともに動けるライザー眷属の『戦車』が叫ぶ。

 その答えはフェイ達が体育館を飛び出た時に示される。一瞬の閃光、その後に巨大な雷撃が体育館に降り注いだ。

 轟音の後に雷撃が収まると、体育館の構造物が消失していた。

 

撃破(テイク)

 

 その上空では姫島がにこやかに笑っていた。

 

『ライザー・フェニックス様の「兵士」五名、「戦車」一名、戦闘不能』

 

 放送設備からグレイフィアの声が響く。

 『雷の巫女』姫島朱乃。末恐ろしい雷撃の使い手だ。フェイは姫島の力を甘く見ていた事を反省する。

 

「やったね、小猫ちゃん……なんだよフェイ」

 

 兵藤が小猫の肩を叩こうとするその腕をフェイは掴んでいた。

 

「いや、なんというか……」

「ありがとうございます、師匠。……イッセー先輩は触れないで下さい」

 

 フェイが腕を掴んだ理由を察した兵藤が慌てて弁解する。

 

「ア、アハハハ、大丈夫だよ。俺、味方には使わないから」

「……それでも最低な技です」

 

 小猫は兵藤をジト目で睨み付けている。

 フェイは作戦の手筈通りにこの場を離れようとしていた。

 移動速度の速いフェイが先に木場と合流するのだ。

 その時、フェイは殺気を感じ振り返った。

 

「まずい! 小猫!」

 

 その視線の先では遠く先にいる小猫の直ぐ近くで爆発が発生しようとしていた。

 

 ◇◇◇

 

 危機的状況にある時、時間が遅く感じる。小猫はそんな事を本で読んだ事があった。

 そして、今まさにその状況にあると実感している。

 

「まずい! 小猫!」

 

 フェイの声に、小猫は自らの側で爆発が起ころうとしているのに気付く。

 小猫の意識は爆発源の熱量がどんどん増しているのを感知しているのに、身体は鉛の様に重くしか反応しない。

 これでは逃げる事も防ぐ事も出来ない。まるで確定している処刑の瞬間を先送りにされているような拷問だ。

 固定化されている視界には、兵藤が振り返り小猫の元に向かおうとしているのがスローモーションで映る。

 おそらく間に合わないだろうが、それでも助けに来ようとしている姿に、先ほどは少し言い過ぎたかと反省する。

 そして声をかけた小猫の師匠自身は、声をかけたその場で立ち止まっていた。

 あの距離では間に合わない、無駄に動く事もない合理的な判断だろう。それでも小猫は少し悲しくなった。

 師匠は物語の英雄(ヒーロー)とはいかないか、と。

 目に映る光景が悲しくなってきたので小猫は目を閉じる。

 そして爆音が聞こえてきた。小猫の遙か遠くで(・・・・・・・・)

 

 小猫が恐る恐る目を開けると、小猫に背を向け遠く離れた兵藤と、その先にいる煤煙を上げているフェイの姿があった。

 小猫は慌ててフェイに駆け寄る。息も切れるほど全力で駆け寄る。

 

「な、なんで……」

 

 声をかけた小猫にフェイはニヤリと笑って答えた。

 

「キャスリング……ってね」

 

 ◇◇◇

 

「『戦車』同士で何を言ってるんですか、バカじゃないですか」

 

 涙を流しながら小猫はフェイを罵倒する。

 フェイはその罵倒を受けながらも安堵していた。

 小猫を庇うには遠すぎる距離だったので、無理矢理素速さ(セレリティ)無害な位置交換(ビナイン・トランスポジション)の呪文を併用して瞬時にして小猫とフェイの位置を入れ替えた。

 しかし、セレリティの反動で無防備な状態(幻惑状態)で爆発の直撃を受けてしまい、かなりのダメージを負ってしまったのだ。

 それでもフェイは不敵に笑う。

 

「間に合って良かった」

 

 落ち着かせる様に小柄な小猫の頭に手を置く。

 

「で、でも、その怪我じゃあ」

「待ってろ、今アーシアを……」

 

 フェイの負った怪我を気遣う小猫と、治療役のアーシアを呼びに行こうとする兵藤。

 しかし――

 

撃破(テイク)

「――してねぇよ!」

 

 横からかけられた謎の声に、応答するフェイ。その傷は徐々に塞がっていく。

 

「何!?」

 

 フェイの再生に驚く声の主。それは上空に居る魔導師のローブを被った女性――ライザーの『女王』だった。

 

「あいにく拳法を極めると気を操作して自己治癒能力を高める事が出来てね。この程度の傷なら癒やせるんだよ!」

 

 強がるフェイであったが半分嘘だった。確かに傷を治癒する事が出来るが現状では表面の傷を癒やす事が精々。内部の傷は残り身体を動かすと痛みは走る。それでも小猫や敵を誤魔化すには充分だった。

 

「くっ、貴方本当に人間なの!? まあいいわ、死ぬまで爆破させれば良いだけの話!」

 

 再度フェイに腕を向ける『女王』に姫島が割って入る。

 

「あらあら。貴方のお相手は私がしますわ。ライザー・フェニックス様の『女王』ユーベルーナさん。『爆弾王妃(ボム・クイーン)』とお呼びすれば良いのかしら?」

「その二つ名はセンスがなくて好きではないわ、『雷の巫女』さん。あなたと戦ってみたかった」

 

 ユーベルーナのその言葉に、姫島は加虐的な笑いを作ると、フェイ達を振り返って告げる。

 

「三人とも祐斗くんの所へ向かいなさい。ここは私が引き受けますから」

 

 フェイは頷いていち早く木場の居る運動場へと駆け出した。

 続けて兵藤と小猫もフェイを追って駆け出す。

 その背後では激しい爆音と雷鳴が鳴り響いていた。

 

 ――戦いは中盤戦へとさしかかる。

 

 

 




フェイの居る影響でお二人ほど少しお早くご退場。

感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。



D&D知らない人向けムダ知識

素速さ(セレリティ)
 通常D&Dは自分の手番が来るまで行動を行えないのだが、他人の行動に割り込んで無理矢理自分の行動を作り出せる禁手(バランスブレイカー)呪文
 その代わり使うと本来の次の手番が終わるまで一切行動出来ない幻惑状態に陥る。
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