ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

2 / 45
ルビ周りを少々修正(4/12)


1話

「あら? なんで人間が結界の中に――」

 

 フェイは女を無視して、倒れ伏す少年を介抱する。しかし――既に致命傷を負って命が喪われようとしている。少年は武装をしていなかった。モンクのように鍛えられてもいなかった。――自衛の手段を持たぬ者。

現在自分の持つ手段では少年を救えないと悟ったフェイは、黒翼の女を睨み付ける。

 

「お前がやったのか?」

「だったらどうしたというの?……へぇ、あなたも神器(セイクリッド・ギア)を持っているのね。だったらついでに死んで貰いましょうか」

 

 そう告げると女は右手に光の槍を作り出した。

 神器(セイクリッド・ギア)神器(アーティファクト)のことか?この少年がそれを持っていたのか?いや、それよりも。

女の言っている事が何を指しているのか判らないが、ハッキリと判っている事がある。目の前の女は、悪で、敵だ。ならば……闘う!

 

「やる気なの?人間如きが堕天使に勝てると思っているのかしら」

 

 構えを取ったフェイを見て女は嗤うが……。

 

堕天使(エリニュス)……やはり悪魔(デヴィル)か」

「はぁ!? 悪魔!? この堕天使レイナーレ様を悪魔なんかと一緒にしないで頂戴!」

 

 フェイが淡々と漏らした反応に、何故か激高する堕天使レイナーレ。堕ちたエンジェル(エリニュス)悪魔(デヴィル)だろうに。と考えるが、ここは異世界だったと思い直す。この世界では悪魔と堕天使の扱いが違うのだろうか。

 

「人間如きが馬鹿にしてっ、死ねっ!」

 

 レイナーレが投擲した光の槍を体の位置をずらすだけで躱し、一歩を踏み込む。その直後にはレイナーレの腹にフェイの肘が突き刺さっていた。モンクとして鍛え上げられた機動力は、瞬時に彼我の距離を詰める。俯いたレイナーレの顔をそのまま籠手でかち上げ、逆の籠手の鉤爪を抉り込もうとしたが、躱され距離を取られる。

 

「くっ、人間のくせにやるわね。教会の送り込んできた勢力かしら。……ここは一旦引かせて貰うわ」

「待てっ」

「私に構っていていいのかしら?怖い怖い悪魔がやってくるわよ?」

 

 レイナーレが指さす方向には魔方陣が形成され、何者かが顕われようとしていた。死を迎える少年を放って堕天使を追い続ける訳にもいかず、フェイはレイナーレが飛び去っていくのを見送るしかなかった。

 

◇◇◇

 

「この子は貴方が?」

 

 魔方陣から顕現した赤髪の少女――堕天使の話が本当なら悪魔だろう――は開口一番にそう言った。

 

「いや、堕天使レイナーレとか名乗っていた黒翼の女だろう。俺自身のその場面は見ていないから確かとは言えないが。……それで悪魔が何をしにここへ来た?」

 

 隠す意味も無いので素直に答える。だが、この悪魔が何をするのかを確認しなければならない。

 

「この子を救いによ」

「魂と引き替えにか?」

 

 悪魔の答えに皮肉で返す。すると悪魔は柳眉を逆立てキッパリと言い放った。

 

「私達、すくなくともグレモリーはそんな事はしないわ。それに私が来たのはこの子が願ったから。私はその願いに応えるだけよ。それとも貴方がこの子を救えるの?」

 

 痛いところを突いてくる。確かにフェイでは現状少年を救えない。だからといって悪魔に委ねていいのか……と考えた所で先ほどの堕天使とのやりとりを思い出した。まだこの世界の悪魔、そして堕天使がどのような存在なのか判っていないのだ。それを知る事も必要だろう。それに……目の前の悪魔は自分の世界の悪魔とは少し違う。そう思ったのもある。

 

「……判った。少年を救ってやってくれ。ただし、俺も立ち会わせてくれ。もし少年を堕落させようというのなら……」

「いいでしょう。私は後ろ暗い事をするつもりはないわ。まあ、例え貴方が気に入らなくても手を出す事は出来ないでしょうけど。自己紹介が遅れたわね。私はリアス・グレモリー、この街の管轄者よ。それで貴方は何者なの?」

「フェイ。バハムートのモンク」

「バハムート!?」

 

 フェイが答えるとリアスは何故か驚いた顔をしている。同名の知り合いでもいるのだろうか。

 

「アンタの知っているバハムートとは別の存在だと思うが」

「……ふぅん、ねえ。この子を救った後でまた詳しく聞かせて欲しいのだけれど構わない?」

 

 白金竜(バハムート)の威光を語る分には否はない。それにこの世界の事を詳しく知る必要があった為、フェイはこの話に乗る事にした。

 

「構わない、俺からも色々と聞きたい話もあるしな」

 

 そうして少年を救った――悪魔に転生させるという手段しか取れなかった事実がフェイとしては忸怩たるものがあるが――後、リアスの元で話し合いを行った。

 

◇◇◇

 

 フェイが語ったのは白金竜(バハムート)という神について。善の竜を統べる神、弱き者の庇護者であり悪を打ち倒す白金の竜。自分がその信徒でありモンクとして修行を積んでいる事。バハムートの宿敵である悪の竜の神、万色竜(ティアマト)の龍司祭との戦闘の結果、次元の裂け目に飲み込まれてここに来たこと等である。大分驚いていたようだがこの世界では珍しいのだろうか。

 

 リアス側からは、この世界には悪魔、天使、堕天使の勢力があり、この三勢力による三つ巴の戦争があったこと、それらの存在は一般の人間は知らないこと、リアスの兄の眷属であるバハムートの事などが語られた。魚かよ、と籠手の中のバハムートが愚痴った事は信仰上聞かなかった事にした。その上でそのバハムートの籠手の事も伝えられた。この世界では神器(セイクリッド・ギア)と呼ばれる物に相当するそうだ。意志によって着脱が出来るようなのでやってみたら出来た。便利な物である。なお、知性ある(インテリジェンス)神器があるか判らないので、バハムートの意識の事は黙っている。

 

「アンタ達が俺の世界の悪魔(デヴィル)堕天使(エリニュス)と異なるのは判った。アンタ達が弱者を堕落させたり、虐げようとしない限りは種族だけで判断はしないと約束する」

「納得して貰えたなら嬉しいわ。それで貴方も私の眷属にならない?」

「それはない」

 

 単純に敵視しないと言っても、実際悪魔になるのは別だ。リアスの誘いには断りを入れる。

 

「そうしたら貴方はこれからどうするの?」

「……」

 

 正直に言えば当てはない。しばらくの間なら所持品と呪文でどうにかなるが、元の世界に帰還する手段もない為、いつまでもそうしている訳にもいかない。この世界での常識も持ち合わせていない為、人々に紛れて行くのも難しいかもしれない。そんな事を悩んでいると、リアスが思いがけない提案をしてきた。

 

「取引をしましょう。私が提供出来るのはこの街での身分と常識、そして生活基盤」

「――望みはなんだ?」

 

 要求を聞き、フェイはリアスの取引を呑む事にした。

 




兵藤一誠はn度死ぬっ!

感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。