「ここにいる上級悪魔の皆さん! それと部長のお兄さんの魔王様! 俺は駒王学園オカルト研究部の兵藤一誠です! 部長のリアス・グレモリーさまを取り戻しに来ました!」
パーティー会場に乱入してきたリアスの『兵士』。
彼は堂々と、リアス・グレモリーを取り戻しに来たと宣言した。
レイヴェルは
望まぬ結婚式で真に愛する人が花嫁を奪いに来る、創作では人気のあるシチュエーションだ。
身内がやられるのはたまったものではないが。
衛兵達を他のリアスの眷属達が抑えている間に、『兵士』はライザーの前に進み出て宣言する。
「部長――リアス・グレモリーさまの処女は俺のもんだっ!」
言うに事を欠いてそれを主張するのか。レイヴェルは『兵士』に半ば呆れる。
身内や関係者が困惑するなか、一人の男性が歩み出る。
「私が用意した余興ですよ」
紅髪の魔王――サーゼクス・ルシファー。彼がこの騒動の首謀者だった。
サーゼクス曰く――『レーティングゲーム』未経験のリアスと経験豊富なライザーとの勝負では分が悪すぎた。
その点も鑑みて、催し物を一つ追加しようという提案。
それは赤龍帝の神器を持った『兵士』とレイヴェルの兄との対決。
即ち、ドラゴンとフェニックスの対決を再び行おうというのだ。
そして、その提案は受け入れられた。リアスの『兵士』が勝利した場合には、リアスを連れ帰るという代価を含めて。
◇◇◇
その勝負は十秒で決着が着いた。
『兵士』は『女王』へと『プロモーション』して、神器が輝きを放つ。
『
『兵士』の全身を覆う深紅のオーラが、龍の姿を模した鎧へと変わっていく。
『兵士』――赤龍帝とライザーは互角に殴り合う。いや、赤龍帝はダメージを受けずに優勢に進めていた。
たまらずライザーは業火を出現させ、赤龍帝を包むが――全く効いていない。
赤龍帝に触れる直前に炎の勢いが急激に萎む様は、レイヴェルには見覚えがあった。
余興の手伝いをする――レイヴェルはその言葉を思い出していた。
「……ここには来なくとも、やる事はやっていますのね」
レイヴェルは寂しそうに呟く。もうレイヴェルには勝負の結果が予感できていた。
禁手の代償としてドラゴン化した左手に十字架を持ち、ライザーに叩き付ける。
『倍加』した力を聖水に譲渡して、その中身をライザーにぶちまける。
赤龍帝は少なくない代償を払い、あらゆる手段を駆使してライザーを圧倒した。
しかし、このまま
レイヴェルは精一杯の意趣返しとして、どうしようもない馬鹿者だが、憎めない兄を庇うため、戦場へと駆け出した。
◇◇◇
無事、兵藤がリアスを連れ戻してからしばらく経ったある日、朝のSHRの時間に教師と共に入ってきた人物に、フェイは目を疑った。
「本日より編入致しましたレイヴェル・フェニックスですわ。み、皆様よろしくお願いします」
硬い表情で挨拶をするレイヴェル。
貴族のようにカールした金髪とそれに違わず令嬢らしき佇まいを持った転入生に、男女問わずクラスが湧く。
そんな歓迎の雰囲気を、レイヴェルは戸惑いながら居心地が悪そうにしている。
案の定休み時間にはクラスメイトに取り囲まれていた。
「フェニックスさんて珍しい名字だね、かっこいいわ」
「……えーと」
「フェニックスさん、教科書はもうあるの?」
「あ、あの……」
対応に苦慮したレイヴェルが縋るようにフェイに視線を向ける。
仕方がないな、とフェイは立ち上がってレイヴェルの席に近付くとクラスメイトに告げる。
「レイヴェルと俺は親同士が向こうの国での知り合いなんだよ、だから日本に来たときにこの学園に編入してきたんだ」
嘘も方便である。話を合わせるように目配せをするとレイヴェルもそれに応じた。
「そ、そうなんですわ。そうだ、フェイさん。校内の案内をお願いできますか?」
「ああ、勿論だとも」
レイヴェルはこの囲いを抜け出す口実を思いついたとフェイに頼み、フェイもそれを承諾した。
案内という口実で周囲の人から離れた所で、フェイはレイヴェルに訊ねた。
「それで、これは一体?」
フェイはレイヴェルがこの学園に来る事など全く聞いていなかった。
「その……私もまだまだ未熟だという事に気付きまして、見聞を広めようかと思いまして」
「なるほどな、それで今までと違う環境に身を置いたわけか」
レイヴェルの説明にフェイも頷く。
「それと……今度は貴方にも勝ってみせますから!」
「ああ、楽しみにしている」
フェイに指を突きつけて宣言するレイヴェルに、フェイも笑いながら答える。
そして、レイヴェルは少し気恥ずかしそうにフェイに頼み事をした。
「つきましては……その。私転校が初めてでして……ど、どう皆さんと接してよいのかわからなくて……。わ、私、悪魔ですし、人間の方々との話題が見つからなくて……。その――」
レイヴェルの言いたい事を察したフェイは快く頷く。
「ああ、俺で良ければ力になるし、そういった話題なら小猫も――」
「……ヘタレ焼き鳥姫」
二人に付いてきており、不満げに話を聞いていた小猫がレイヴェルに毒を吐く。
「……」
レイヴェルの動作が止まり、こめかみに青筋が浮かび上がる。
「い、いまなんと?」
「……ヘタレ」
問い直したレイヴェルに再び毒突く小猫。
レイヴェルも柳眉を逆立てて言い返す。
「あ、あなたね! フェニックスの息女たる私にそのような物言いを……」
「……そんな物言いだからいざという時にヘタレるんじゃないの? その程度の軽い気持ちで師匠の手を煩わせるなんて……この世間知らずの焼き鳥姫」
「むむむむむ、こ、この猫又は……!」
「……焼き鳥」
辛辣な突っ込みを入れることも多々あるが、これほど感情を出す小猫も珍しい。
禍々しいオーラを放って対峙する二人の背後に、フェイは白い大虎と、朱い霊鳥の姿を幻視した。
焼き鳥編終了。
微妙に異なるフラグによりレイヴェルさんが原作より大分早めに駒王学園入りしました。
感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。
追記
活動報告にヒロインのについて少しだけ書いています。