ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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1話

 ドッジボール。

 それが球技大会当日に決定した、部活対抗戦の種目だった。

 

「ふふ、勝ったわ」

 

 リアスは不敵な笑みを浮かべている。

 それもそうだろう。チームワークを強く要求される他の競技と異なり、ドッジボールはボールを捕れて、相手を討てる一人が居ればほぼ勝利出来ると言っても良い。

 そしてオカルト研究部にはそういった人材には事欠かなかった。

 堅牢な守備力と、豪腕による必殺を望める『戦車』の小猫、器用に躱し、討つ事の出来る『騎士』の木場、何事もそつなくこなすことの出来る『女王』の姫島。

 フェイにしても正面からくる物なら矢でも手斧でも投げ槍でも、掴んで即座に投げ返す程の技量の持ち主だ、ボール程度は造作もない事である。

 

「狙え! 兵藤を狙うんだ!」

「うおおおぉぉっ! てめぇらふざけんなぁぁっ!」

 

 実際に試合が始まってみると、相手は何故か兵藤を集中して攻撃している。

 恐らく女子には攻撃をし辛いのだろう。また木場は女子に人気があるため、攻撃すると非難を受けかねない。

 フェイもまた一年の中では人気がある方な為同様の理由。

 従って、『変態三人組』と悪名の高い兵藤が狙われるのは必然であった。

 

「イッセー死ねぇぇっ」

「アーシアちゃんのブルマ最高っ! イッセーは死ねっ!」

「お願い! 兵藤を倒して! リアスお姉様と朱乃お姉様の為に!」

「僕の前に出てくるからこうなるんだっ!」

「アーシアさんの正常なる世界の為にっ!」

 

 殺気剥き出しの攻撃を回避していく兵藤。どれだけ恨みを買っているのか。

 また、フェイは別の部分でドッジボールに興味が湧いた。

 ドッジ(回避)ボールとは良くいったものだ。敵の攻撃を避けるだけでなく、その後の外野の攻撃にまで気を配らなければならない。ボールを捌く事は当然許されず、完全に避けるか、ボールを受け止めるかの二つしか生存の手段がない。

 捕球を完全に禁止して四方からの攻撃に対し、捌きが減点、直撃が大減点という形で回避の修行が行えるか、ボールを増やしても面白いかもしれない、などとフェイは考える。良くも悪くもフェイもまたある意味修行バカ(脳筋)であった。

 

「イッセーにボールが集中しているわ、これは戦術的には『犠牲』って所かしらね! これはチャンスよ!」

 

 兵藤が回避に専念しているうちに、逸れた球を小猫やフェイが受けて仕留めていく、盤石の体勢が出来上がっていた。

 

「死ねぇぇぇっ、ロリコンは俺だけでいいんだぁぁっ! ぬわーっっ!」

 

 意味不明な事を言ってきてフェイを狙って来た者に対しては、投球直後の体勢が不十分な時に反撃をするだけで充分仕留められた。

 そして何故か小猫が静かに怒っていた。

 

「……二重の意味で許せません」

 

 何をそんなに怒っているのか、突然の怒りに疑問に思うフェイ。

 単純にフェイが狙われた事とロリコン呼ばわりで間接的に自分が馬鹿にされたと受け止めたからだとはフェイには知る由もなかった。

 

「くそっ、恨まれてもいいっ。俺はイケメンを倒すっ!」

 

 突如木場に撃ち出されるボール。普段の木場ならば軽く躱すところだったが、現在の木場は反応も見せずに棒立ちしているだけだった。

 

「何をボーッとしてやがるんだ!」

 

 木場を庇う位置に入る兵藤。そのまま胸の辺りに構えた手にボールが納まるかと思いきや、ボールは急激に落下する。

 その軌道はフェイには見覚えがあった。野球の練習中に見たフォークボールという球種の軌道だ。そういえば今回の対戦相手は野球部だった。

 そしてボールは立ちすくみ状態の兵藤の急所(股間)攻撃に成功した。

 

「ほうぁぁぁっ」

 

 声にならない声を出して膝から崩れ落ち悶絶する兵藤。慌てて駆け寄ったリアスが兵藤を抱き抱える。

 

「ぶ、部長……。た、玉が……、俺の……」

「ボールならあるわ! よく確保してくれたわね、イッセー。大丈夫よ、仇は取ってあげるわ!」

 

 息も絶え絶えの兵藤に、力強く返すリアス。だがそうじゃない。

 

「あらあら、部長。そちらではなくて、違うボールが大変な事になっているようですわよ?」

 

 フェイが言い出す前に姫島がリアスに訂正した。その言葉を受けてリアスは青ざめて絶句する。

 

「なんてこと! アーシア、ちょっとお願い。こんなことで不能になられても困るわ!」

「は、はい。イッセーさんどこか怪我をされたんですか?」

 

 リアスは既に駆け寄って来ていたアーシアに声をかける。アーシアも即座に怪我の有無を聞き返す。

 

「ええ、どうやら大事なところをね。悪いのだけど物陰で回復してくれないかしら」

「大事なところ? よくわかりませんがわかりました!」

 

 リアスの曖昧だが的確な言葉に、十分な理解は出来ずとも頷くアーシア。

 素直なのは良い事だが、年齢の割には純真すぎやしないだろうか。端で見ているフェイはそんな事を心配する。

 リアスはフェイと小猫を見比べた後、小猫に声をかけた。

 

「小猫、人の見えない所までイッセーを連れて行ってあげてね」

「……了解」

 

 おそらく残す戦力でフェイを残した方が良いと判断をしたのだろう。また、それを察したであろう小猫も不承不承頷き、物陰へ兵藤を引き摺って行き、アーシアもそれについて行く。

 

「さて、と。私の可愛いイッセーをやった輩を退治しましょうか!」

 

 リアスは黒いオーラを出しながら薄く笑う。リアスの逆鱗に触れた野球部は、然程時間も経たずに壊滅した。

 勿論競技上での話である。

 

『オカルト研究部の勝利です』

 

 勝利を告げる放送が会場一帯へと流れた。これで途中退場した兵藤達にも伝わるだろうとフェイも安堵した。

 

 ◇◇◇

 

 ザァザァと雨が降っている。球技大会が終わった後に降り出した雨だ。

 競技中に降り出さなかった事には感謝すべきだろう。

 窓を叩く雨音の中、乾いた音が響く。

 パン!

 木場が、リアスに頬を張られていた。

 

「どう? 少しは目が覚めたかしら?」

 

 リアスは冷たい視線で木場を睨め付けている。

 部活動対抗戦はオカルト研究部が優勝した。

 チーム一丸になっての勝利……と言いたい所だったが、足を引っ張る者が一名居た。

 それはアーシア――ではなく木場。

 野球部との試合後にリアスに何度注意されようと、その後もずっと同じように気の抜けた調子だった。

 実際に今もリアスに頬を張られていてもその無表情を崩さない。

 誰がどう見てもおかしい、それが現在の木場だった。

 突然木場はにこやかな笑顔になり、言い出す。

 

「もういいですか? 球技大会も終わって球技の練習もしなくていいでしょうし、夜の活動まで休ませて貰っていいですよね? 少し疲れましたので普段の部活は休ませて下さい。昼間は申し訳ございませんでした。どうにも調子が悪かったようです」

 

 あからさまに張付けたような笑顔ととってつけたような言い訳。

 それを聞いた兵藤が木場に問いかける。

 

「木場、マジで最近お前変だぞ?」

「キミには関係ないよ」

 

 兵藤の質問もバッサリと切って捨てる木場。

 

「俺だって心配しちまうよ」

「心配? 誰が誰をだい? 基本、利己的なのが悪魔の生き方だろう? まあ、今回は主に従わなかった僕が悪かったと思っているよ」

 

 なおも食い下がる兵藤に木場は冷笑を浮かべて返す。

 そういう問題ではないだろう、とフェイが口を挟む前に木場が口を開く。

 

「思い出したんだよ、イッセーくん。僕は何のために戦っているかという基本的な事をね……」

 

 そう呟く木場の眼の奥底に潜むモノに、フェイは見覚えがあった。

 それは元の世界で幾度となく目にした存在が宿す眼だった。理不尽に何もかも奪われた者、取り戻す事は出来ない物を奪われ、それでも相手に牙を突き立てようとする者――復讐者(アヴェンジャー)

 

「僕は復讐の為に生きている。聖剣エクスカリバー――それを破壊するのが僕の生きる意味だ」

 

 続く木場の言葉は、フェイの予想を裏付けるものだった。

 復讐者――それが木場が仮面で覆い隠していた素顔なのか。

 木場はそのまま外へと歩み出て、傘も差さずに雨の中へと消えていった。

 




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