ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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いつもよりやや長め。切り所難しい。


3話

「失礼します。あっ、イッセー君昨日ぶり(・・・・)だね!」

 

 教会関係者のその言葉に真っ先にリアスが反応する。

 

「イッセー、どういうこと?」

「あ、いや。それがこの前見せた写真の幼馴染みが彼女で、昨日俺んちに来てたんですよ」

 

 リアスが問いただすと、兵藤がへどもどしながら答える。

 

「そういう事はもっと早く――いえ、この話は後にしましょう」

 

 リアスは眉間に皺を寄せながら兵藤を詰問しようとするが、状況を思い出して思い留まり教会関係者へと向き直る。

 

「私がこの街を担当しているリアス・グレモリーよ。貴女たちの素性と用件を改めて聞かせて頂戴」

「カトリック教会のゼノヴィアだ」

「私は紫藤イリナ、プロテスタント教会の使いです」

 

 リアスが自己紹介を行うと、教会関係者の二人もそれぞれ名乗りをあげる。

 兵藤の幼馴染みである栗毛のツインテールの明るい雰囲気の女性――紫藤イリナと、青髪に緑のメッシュが入った目つきの鋭い女性――ゼノヴィア。

 フェイはこれまでに学んだ情報として、同じ神を信奉しているが宗派の異なる勢力がいくつも存在するということを知った。――それ自体はフェイの世界での宗教にもままある話だが。

 その中でも最大手といえる、カトリックとプロテスタントそれぞれが人員を出し合っているようだ。

 紫藤イリナがゼノヴィアに視線を向け、頷いた後に話を切り出す。

 

「先日、カトリック教会本部ヴァチカン及び、プロテスタント側、正教会側で保管、管理されていた聖剣エクスカリバーが奪われました」

 

 事務的な紫藤の説明に驚く一同。また、フェイはエクスカリバーという単語に不安を覚える。まさに木場と因縁の深い聖剣ではないか。

 案の定木場は紫藤達を睨み付けている。

 しかし、先ほどのリアスとの話が功を奏したのかフェイが危惧した程には感情に支配されてはいないようだ。

 兵藤はフェイとはまた別の疑問を呈しているようだ。あの顔は――

 

「聖剣エクスカリバーそのものは現存していないわ」

 

 兵藤が口に出す前にリアスが答える。

 

「ゴメンなさいね、私の下僕に悪魔になりたての子がいるから、エクスカリバーの説明込みで話を進めてもいいかしら?」

 

 続けてリアスが紫藤に申し出る。兵藤のみならず、言外にこの世界の裏の事情に明るくないフェイやアーシアも含めているのだろう。フェイはリアスに感謝の念を抱く。

 紫藤もその申し出に頷いて兵藤に説明を行う。

 

「イッセーくん、エクスカリバーは大昔の戦争で折れたの」

 

 ――唯一無二の聖剣であったエクスカリバーは大昔の戦争で四散した。

 しかし、教会の勢力はその破片を集め、それらの破片を核として錬金術であらたな聖剣を創り上げた。

 七本創られた聖剣は教会勢力の各宗派で管理されるようになった。

 そのうちの一降りがカトリック教会が管理し、現在ゼノヴィアが所持している『破壊の聖剣』(エクスカリバー・デストラクション)

 その長剣は普段は魔術装飾の施された布によって封印されており、扱いが危険な事を伺わせる。

 そして――。

 紫藤が、懐から長い紐状の束を取り出す。

 その紐は自ずから動き出し形を変えていき、ついにはカタナに似た片手半剣(日本刀)へと化した。

 

「私の方は『擬態の聖剣』(エクスカリバー・ミミック)。こんな風にカタチを自在に出来るから持ち運びにすっごく便利なの。このようにエクスカリバーはそれぞれ特殊な力を有しているわ。こちらはプロテスタント側が管理しているわ」

 

 紫藤が自慢げに言う。『破壊の聖剣』も『擬態の聖剣』も恐らくこの世界の悪魔にとっては脅威なのだろう。

 フェイの持つ聖遺物である『白金竜の籠手』がデヴィル程にはこの世界の悪魔に対する力を持っていない事を考えると、逆もまた然りなのだろうが。

 

「イリナ……悪魔にわざわざエクスカリバーの能力を喋る必要もないだろう」

「あら、ゼノヴィア。いくら悪魔だからといっても信頼関係を築かなければ、この場では仕方ないでしょう? それに私の剣の能力を知られた所で、この悪魔の皆さんに後れを取る事なんてないわ」

 

 自信満々に紫藤が言うが、信頼関係を築きに来たのならば後半部分は身内のみで言った方が良かったのではないのだろうか。フェイが内心で突っ込むと、小猫がフェイを見上げて同意とばかりに親指を立てた。

 

「……それで、奪われたエクスカリバーがどうしてこんな極東の国の地方都市に関係があるのかしら?」

 

 紫藤の言動を一顧だにせず、リアスが訊ねる。その問いに答えたのはゼノヴィアだった。

 

「カトリック教会の本部に残っているエクスカリバーは私のを含めて二本だった。プロテスタント、正教会も同様に二本ずつ。残る一本は神、堕天使、悪魔の三つ巴の戦争の折に行方不明。そのうち各陣営にあるエクスカリバーが一本ずつ奪われた。奪った連中は日本に逃れ、この地に持ち込んだって話さ」

 

 リアスはそれを聞いて額に手を当てながら溜息をつく。

 

「私の縄張りは出来事は豊富ね。それでエクスカリバーを奪ったのは何者か判明しているの?」

「奪ったのは『神の子を見張る者(グリゴリ)』だよ。奪った主な連中も把握している、グリゴリの幹部コカビエルだ」

 

 問いに対するゼノヴィアの言葉に、リアスは目を見開く。

 

「堕天使の組織に聖剣を奪われたの? 失態どころではないわね。……それにしてもコカビエルね。古の戦いより生き残る堕天使の幹部。聖書にも記された者の名前が出るとはね」

 

 そう言ってリアスは苦笑する。

 

「私たちも先日よりこの街に神父――エクソシストを秘密裏に潜り込ませていたがことごとく始末されている。私たちの依頼――いや、注文とは私たちと堕天使のエクスカリバー争奪の戦いにこの街に巣食う悪魔が一切介入してこないこと――つまり、そちらに今回の事件に関わるなと言いに来た」

 

 リアスはゼノヴィアの物言いに明らかに気分を害したように眉をつり上げる。

 フェイが口を開いたのはその時だった。

 

「なぁ、ひとつ聞いてもいいかな?」

「なんだお前は――悪魔ではないものがなぜこの場にいる?」

 

 フェイの問いに胡散臭げにフェイを見るゼノヴィア。

 

「俺はフェイ。あんたらの言うところの異なる神を信じる『異教徒』って奴でリアス・グレモリーとは協力関係にある、それで質問いいかな?」

「ちっ、異教徒だと? 質問とはなんだ?」

 

 フェイの自己紹介に舌打ちを持って応じるゼノヴィア。そこにフェイが質問を続けた。

 

「アンタ達は随分と偉そうに押しつけてきたがな。――少なくともお願いしに来た態度ではないよな? それに対して断る。こちらでエクスカリバーは破壊するので戦力をこの街に送り込むのは敵対行為と見做す、と返答した場合はどうするのか聞きたい」

 

 それを聞いたゼノヴィアから殺気が溢れ出る。しかしそれを紫藤が押しとどめる。

 

「言い方が悪かったのは謝るわ。私たちとしては悪魔が堕天使と協調して貰いたくないだけ。こちらの戦力は私たち二人だけだからそこは大目に見て貰えると助かるのだけど」

「二人だけで堕天使の幹部からエクスカリバーを奪還するの? 無謀ね、死ぬつもり?」

 

 紫藤の言葉にリアスが呆れたように問いかける。

 その問いに紫藤もゼノヴィアも決意の眼差しで答える。

 

「そうよ」

「私もイリナと同意見だが、できる限り死にたくはないな」

「――っ! 死ぬ覚悟で日本に来たというの? 相変わらずあなた達の信仰は常軌を逸しているのね」

 

 フェイはリアスの言葉を複雑な気持ちで聞いていた。殉教という精神はフェイ自身にもある。

 バハムートの信仰は守護者の信仰でもあり、信仰の為というよりもその結果として人々を護る為ならば命を賭した戦いに臨むこともあるのだ。

 

「我々の信仰をバカにしないで頂戴、リアス・グレモリー。ねえ、ゼノヴィア」

「まあね。それに教会は堕天使に利用される位なら、エクスカリバーが全て消滅しても構わないと決定した。私たちの役目は最低でもエクスカリバーを堕天使の手から無くすことだ。その為ならば死んでも構わない。無論、ただで死ぬ気もないけどね」

 

 そう言ってゼノヴィアは不敵に笑う。

 

「たいした自信ね、秘密兵器でもあるのかしら?」

「ご想像にお任せするよ」

 

 そう言った後リアスとゼノヴィアが見合ったところで再びフェイが声をかける。

 

「もう一つ聞かせてくれ。彼女――アーシア・アルジェントを知っているか?」

 

 その問いを発したフェイ以外の誰もが息を呑んだ。名前を挙げられたアーシアも含めて。

 

「――兵藤一誠の家で出会った時もしやと思ったが……やはり『魔女』アーシア・アルジェントだったか」

 

 ゼノヴィアの言葉にアーシアがビクリと肩を震わせる。

 

「あなたが一時期内部で噂になっていた『魔女』になった元『聖女』さん? 悪魔や堕天使をも癒やす能力を持っていたらしいわね? 追放され、どこかに流れたとは聞いていたけど、悪魔と一緒に居るとは思わなかったわ」

「あ……あの、私は……」

 

 いきなり俎上に載せられ戸惑うアーシア。

 

「安心して。ここで見たことは上には伝えないから。『聖女』アーシアの周囲にいた方々が現状を知ってもショックを受けるだけでしょうしね」

「…………」

 

 紫藤の言葉に色々な感情が入り交じった表情でアーシアは押し黙った。

 

「それにしても、『聖女』と呼ばれていた者が堕ちたものだな。悪魔にはなっていないようだが、まだ我らの神を信じているか?」

「ゼノヴィア、悪魔と一緒に行動するような者が主を信仰しているはずがないでしょう?」

 

 呆れたように紫藤はゼノヴィアを窘める。ゼノヴィアはそれに対し目を細めて答えた。

 

「いや、その子から信仰の匂い――香りがする。抽象的かもしれんが私はそういうのに敏感でね。背信行為をする者でも罪の意識を感じながら、信仰心を忘れない者がいる。その子からはそれと同じモノを感じる」

 

 ゼノヴィアの言葉に紫藤が興味を示してアーシアをまじまじと見る。

 

「そうなの? アーシアさんは教会を出たその身でも主を信じているのかしら?」

「――っ。私は信仰を捨ててはいません! 今のこの境遇は主の下さった試練だと思っています」

 

 紫藤の言葉に、アーシアは真剣に訴え出る。しかしゼノヴィアがそれを聞き、布に包まれた聖剣をアーシアに突き出す。

 

「そうか、それならば今すぐ私たちに斬られると良い。悪魔と行動を共にする罪深き行いも我らの神ならば慈悲の手を差し伸べてくれるはずだ。神の名の下に――」

「くだらん」

 

 ゼノヴィアの宣言に横から口を出したのはフェイだった。

 

「なんだと? 貴様今なんといった?」

「くだらんからくだらんと言ったのだ。背信行為を行った? 傷ついた者を癒やすことが背信なのか。悪魔にすら分け隔てなく慈悲と愛情を注ぐのが背信なのか。彼女がいつ『聖女』となることを望んだ。勝手に『聖女』と祭り上げ、都合が悪くなれば『魔女』と切り捨てる。お前達などよりもよほどアーシア先輩の方が慈愛に満ちた振る舞いをしているがね」

 

 問い返すゼノヴィアにフェイは言葉を叩き付ける。

 

「異教徒め、我らが神を愚弄するか!?」

「神を愚弄しているのは、させているのはお前達だ。――信仰において神は神であるから尊ばれるのではない。神の啓示を受けた司祭や信徒の振る舞いが正しいからこそ、その啓示をもたらした神が尊ばれるのだ。神職者もまた然り。神が善き神と尊ばれるのか、悪しき神と怖れられるのかは、信徒であるお前の振る舞い次第と心得よ。これは俺が師から賜った言葉だが、お前達でも同様だろう。お前達の神の評判はお前達次第なんだよ」

 

 ゼノヴィアは激高してフェイに詰め寄るが、そのままフェイは言葉を紡ぐ。

 もっともこの世界の神とは違って、フェイの世界の神は直接介入して来かねないがそこは黙っておく。

 

「俺も異教徒とはいえ信仰者だ。信仰そのものを否定する事は決してない。だが、信仰に慮って心なき行いを見過ごす事も決してない。仲間に手を出すというのなら、口も手も出させてもらう」

 

 フェイはそれだけ言うとリアスに向き直って宣言する。

 

「今の会話でハッキリとしました。俺はリアス部長の判断に関わらず、この街に入ったエクスカリバーの破壊へと動きます。それと部長の判断次第では木場先輩を借りることになりますがいいですよね?」

 

 その言葉と共にフェイが木場を見ると、木場も苦笑しながら頷いた。

 

「キミから言われるとは思わなかったけど、それは僕からもお願いしたいね」

「待ちなさい、二人とも」

 

 リアスが慌てて二人を止める。

 

「まだ私がどうするとも言っていないでしょう? 祐斗はさっき私が言った言葉を忘れていないわよね? それと貴方が行動を起こせと言ったんじゃないの、フェイ」

 

 リアスが呆れたように木場とフェイに声をかけると、改めて紫藤とゼノヴィアに宣言する。

 

「お聞きの通りよ。グレモリー眷属、及び協力者はこの街のエクスカリバーの破壊を行います。教会の上は消滅させても良いという判断ですもの、止めはしないわよね? あなた達の活動は認めるし、協力するかどうかも任せます。ただ私たちも動く、それだけはこの場で告げておきます」

 

 リアスの言葉にあっけにとられたようなゼノヴィア。

 

「聖剣エクスカリバー相手にあなた達悪魔がどうにか出来ると思っているの?」

 

 心底驚いたように訊ねる紫藤にフェイが不敵に笑って答える。

 

「なら、試してみるか?」




聖遺物(D&D)はD&Dの設定的に考えると悪魔にも効いてもおかしくはないんですが、そこは多少ヤラカシも入ってます。
まあこの世界の悪魔が悪属性とは限らないよね!
あと場面が長くなり過ぎて一誠の出番にしわ寄せが。

感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。
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