ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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4話

 球技大会で野球を練習した空き地にて、フェイは紫藤、ゼノヴィアと対峙している。

 二人は体を覆っていた白いローブを脱ぎ、戦闘用の衣装を露わにしていた。

 

「コチラは二人居るが、どちらとやるんだい? それとももう一人追加するか?」

 

 余裕の表情でゼノヴィアが訊く。そこに木場がフェイの隣に進み出た。

 

「それなら、僕が相手になろうか」

「……キミは?」

 

 剣を携え殺気が滲み出る木場にゼノヴィアが問いかける。

 

「キミ達の先輩だよ。――失敗だったそうだけどね」

「『先輩』ね……。リアス・グレモリーの眷属の力も試してみたかったんだ、私の相手はキミでいいかな?」

 

 木場の言葉にゼノヴィアが思案し、提案する。木場もそれに頷いた。

 

「じゃあ、私の相手は異教徒のあなた――確かフェイくんでしたね。ああ、主よ! 邪教を信じる者との対峙にて主は何を教えてくださろうというのかしら! 久しぶりに帰ってきた故郷の地で! 懐かしのお友達は悪魔と成り果てていた過酷な運命! その仲間には『魔女』や異教徒までたむろしてる! ああ、時の流れはなんて残酷なのかしら! でも、それを乗り越えることで私は一歩、また一歩と真の信仰に進めるはずなのよ! さあ、フェイくん! 私がこのエクスカリバーで主の愛を刻みつけてあげます! アーメン!」

 

 紫藤が涙ながらに捲し立てて日本刀と化した聖剣の切っ先をフェイに向ける。

 言われた当のフェイは困惑して兵藤を見るも、兵藤もわけがわからないとばかりに頭を振った。

 リアスと姫島、そして同席していたシトリーが苦笑しながら、戦場となる広場に対して外界に影響を与えないよう結界を張る。

 

「それでは、始め!」

 

 リアスの合図と共に、木場が魔剣を創り出し、フェイもまた『白金竜の籠手』を顕現させる。

 

「……! 聖遺物の気配!? いや、それとは少し違うか。しかし見覚えのない神器だが」

 

 フェイの籠手を見たゼノヴィアが呟く。

 

「元は我が神の聖遺物であり、ここにおいて神器と成ってしまったモノだ。ある意味では新しい神器かもな」

「神器と成ったとは異な事を言う。異教の神の聖遺物が神器になるなどあるはずもない!」

「別に神器に拘る気もないから、神器じゃないならそれでもいいけどな」

 

 ゼノヴィアに対するフェイの言葉に、ゼノヴィアは言葉を荒げて切り捨てるが、フェイはどこ吹く風という態度で返す。

 

「フェイ君だけに気を取られていると、怪我では済まなくなるよ!」

 

 その横合いから木場が斬りかかり、魔剣と聖剣が鎬を削る。

 

「『魔剣創造』――か。『魔女』の持つ『聖母の微笑』を含めて我々からは異端視されている神器だ。悪魔になったのも必然かもな」

「僕の力は無念の中で殺されていった同志の恨みが生み出したものでもある! 聖剣の為に数々の犠牲を生み出しながらも平然と聖人面で聖剣を振るっているキミ達に言われる筋合いはない!」

 

 ゼノヴィアの言葉に、木場は激しい言葉で返す。その眼は憎しみを宿しつつも、冷静さを残していた。

 今ならば暴走する事もないだろう。そうフェイが考えていると紫藤が斬りかかってきた。

 

「フェイくん、こちらもいくよ!」

 

 振り下ろされる聖剣の腹を殴って軌道を逸らす。フェイは以前の『レーティングゲーム』の時のように、武器破壊を狙ってその聖剣を殴りつけていた。

 数度の攻防でその目論見は成功して、紫藤の持つ聖剣が音を立てて半ばから折れる。しかし――

 

「甘い! 私の『擬態の聖剣』は変幻自在よ!」

 

 すぐさま折れた刀身同士が融合し元の形を取り戻してしまう。

 この機会に一本でも折っておければ良かったが、聖剣の破壊には手間がかかりそうだ。あとは切り札とも言える『分解』が通用するか否か。フェイはそんな感想を持ちながら紫藤の持つ聖剣の変化を見届けていた。

 

 フェイと紫藤の戦いの横で、木場は二振りの魔剣を創り出していた。二刀の構え。やはり木場はレンジャーと同様の修練を積んでいるとフェイは確信する。

 

「燃え尽きろ! そして凍り付け! 『炎燃剣』(フレア・ブランド)! 『氷空剣』(フリーズ・ミスト)!」

 

 業火の魔剣、そして霧氷の魔剣。二振りの魔剣を振るい、神速の動きで連撃を放つ木場。

 

「『騎士』の軽やかな動き、そして炎と氷の魔剣か。だがまだ――」

 

 ゼノヴィアは無数の斬撃を最小限の動きで躱し、受け流す。

 

「甘い!」

 

 反撃でゼノヴィアが聖剣を一撃振るうと、それを受けた木場の二振りの魔剣が粉々に砕け散る。

 

「――っ!」

 

 一撃で魔剣を破壊され木場は絶句する。

 

「我が剣は破壊の権化。我が一撃は無敵なり。我が剣に適う者なし!」

 

 ゼノヴィアが聖剣を天に翳したかと思うと、そのまま地面に振り下ろす。

 轟音を立て、地響きと土煙が巻き起こる。

 風が土煙を流し去った時、そこにあったのは大きなクレーターだった。

 

「これが私のエクスカリバーだ。有象無象の全てを破壊する『破壊の聖剣』の名は伊達じゃない」

 

 木場はその光景を見て苦笑する。

 

「……真のエクスカリバーでなくてもこの破壊力。七本全部消滅させるのは至難の道――たしかに一人じゃ無理だったかもね」

 

 木場はそう呟いた後に続ける。

 

「だけど有り難いことに協力してくれる主や仲間がいる。彼らに無様な姿は見せられないんだ」

 

 木場は再び二刀の魔剣を創りだす。その刀身はやや短く――

 

「ちっ、投擲を混ぜてくるか、厄介なっ」

 

 『騎士』の特性である速度を最大限利用し、相手を動かす(・・・)為の投擲を織り交ぜた攪乱。

 木場らしい戦術的な動きが発揮されている。あちらは問題ないか。

 紫藤はといえば服についた土を払いながら悪態をついていた。

 

「もう! ゼノヴィアったら、突然地面を壊すんだもの! 土だらけよ!」

 

 フェイは素早く紫藤に接近し足払いを仕掛けるが、バックステップで躱される。

 応戦とばかりに振り下ろされた聖剣をやはり殴りつけようとするフェイ。

 だが、その刀身は突然ぐにゃりと形を変える。紫藤が『擬態の聖剣』の能力で変形させたのだ。

 

「毎度同じような攻撃が通用すると――ッ!?」

 

 紫藤はこれで武器破壊攻撃を空振りさせてその隙をつく心算だったが、フェイの攻撃もまたフェイントだった。

 拳は本来の聖剣を殴る寸前で止められ、本命の一撃を紫藤に繰り出す。

 速かったのはフェイだった。

 

「ぐっ」

 

 拳が直撃をして後ずさる紫藤。そのまま反撃に移ろうとするが、めまいを感じてそのまま立ちすくむ。

 その隙にフェイの追撃を貰い、今度は明らかに体が重くなっていくのを感じる。

 

「――これはっ!! 一体何をッ!?」

「こちらは相手にわざわざ種明かしする程人が良くも、相手を舐めてもいないのでね」

 

 問いかける紫藤だったが、あっさりとはねのけるフェイ。

 実際にはめまい光線(レイ・オヴ・ディジネス)や、うすのろ光線(レイ・オヴ・クラムジネス)の呪文を『光線拳』で直接拳に込めて叩き込んだ為である。

 当たってしまえば十全に効果を発揮するが、躱されたら終わりの光線呪文を直接拳に込め、当たるまで繰り返せるフェイの『光線拳』は、元の世界でもこの場でも猛威を振るっていた。

 そして、本来の動きを封じられた紫藤はついには聖剣を蹴り飛ばされて手から離される。

 

「勝負あり、でいいか?」

「……不本意だけれど仕方ないわ。これは呪いかなにかの類いかしら。アーシア・アルジェントよりもキミの方がよっぽど危険な『魔女』(ウィッチ)ね」

 

 当たらずとも遠からずではある。キリスト教における『魔女』は男性も含まれるらしいが、本来はフェイ達ソーサラーのように魔術の素質を持った者を指すのだろう。特にソーサラーは竜か悪魔(デヴィル)の血を引いていなければ目覚めないと言われているのだから。

 時を同じくして木場とゼノヴィアも勝負が着いたようだ。

 

「いくら破壊力があろうと、当たらなければどうということはない」

「……私の負けだ」

 

 ゼノヴィアの一撃をかいくぐり、ゼノヴィアの喉元に魔剣を突きつけた木場の姿があった。

 

 ◇◇◇

 

「先ほども言った通り、あなた達の活動を妨害はしませんが、私たちも手出しを行うわ。ああ、協力したければ申し出ても構わないわよ?」

 

 フェイ達二人が勝利したことに機嫌良く語るリアス。

 それとは対象的に悔しげに俯く紫藤とゼノヴィア。

 

「ああ……、最低限エクスカリバーが破壊されるのであれば仕方ない」

 

 ゼノヴィアがそう言った後、木場の方を向く。

 

「『先輩』と言ったな……『聖剣計画』の被験者で処分を免れたものが居るかもしれないと聞いてはいたが、まさかキミか?」

 

 ゼノヴィアのその言葉に紫藤が驚き、木場は静かに頷いた。

 

「……ならば、エクスカリバーや教会に恨みを持っているのもおかしくはない、か」

 

 木場を見たゼノヴィアは嘆息する。

 

「でもあの計画のおかげで聖剣使いの研究は飛躍的に伸びたわ。だからこそ、私やゼノヴィアみたいな聖剣と呼応出来る使い手が誕生したの」

「だからといって、計画失敗と断じて被験者のほぼ全員を始末するのが許されると思っているのか?」

 

 言い訳がましく語る紫藤を睨み付ける木場。紫藤も反論の言葉に窮している。

 

「その事件は私たちの中でも最大級に嫌悪されたものだ。処分を決定した当時の計画責任者は、信仰に問題があるとして異端認定され、教会を追放された。今では堕天使側にいるらしいがね」

「堕天使側に? その者の名は?」

 

 ゼノヴィアの語る内容に木場が興味を示して訊ねる。

 

「――バルパー・ガリレイ。『皆殺しの大司教』と呼ばれた男だ」

 

 木場がその名を聞くと、しばし瞑目してから口を開いた。

 

「今回はそいつが裏に居るかもしれないね。――昨日、エクスカリバーを持った者に襲撃されたよ。その際にそちら側の者と思われる神父を一人殺害していた」

 

 木場の言葉にその場にいた全員が驚く。

 

「すみません、部長。来客がなければあの後報告するつもりだったんですが」

 

 報告が後れた事をリアスに木場が謝罪した。

 

「いいのよ、祐斗。それでそいつは何者かはわかるの?」

 

 リアスが驚きながらも頷いて先を促すと、木場は紫藤とゼノヴィアに向き直って訊ねる。

 

「相手はフリード・セルゼン、この名に覚えは?」

 

 木場の言葉に紫藤とゼノヴィアが共に眼を細める。フェイもまた聞き覚えのある名だった。

 堕天使レイナーレの下で動いていた悪魔祓いがたしかその名だった。

 

「……なるほど、奴が聖剣を」

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属のエクソシスト。僅か十三歳でエクソシストになった天才で悪魔や魔獣を次々と滅していく功績は大きかったわ」

「だが、奴はやりすぎたんだ。同胞すらも手にかけたんだからね。フリードには信仰心などというモノが最初からなく、あったのはバケモノに対する敵対意識と殺意。そして異常なまでの戦闘執着。異端の烙印を押されるのも時間の問題だった」

 

 表情を険しくして語る紫藤とゼノヴィア。

 

「我々の聖剣を奪って同胞を手にかけていたのがあのフリードとはね。処理班が処理しきれなかったツケが私たちにまわってきたか」

 

 ゼノヴィアが忌々しそうに吐き捨てる。

 

「まあいい、情報は有り難く頂いた。上に悪魔と協調していると思われるのも困るので私たちはそろそろお暇させて貰おう」

「じゃあそういうことで。イッセーくん、悪魔として裁いて欲しくなったらいつでも言ってね、アーメン♪」

 

 そう言って紫藤とゼノヴィアは場を離れていった。

 二人の聖職者が立ち去った後に第三者として立ち会っていたシトリーがリアスに告げる。

 

「聖剣の破壊――事情が事情とはいえ大それたことを考えるものね、リアス。ただ、夜の管理を任せているからとグレモリーばかりに負担させるのもシトリーとして見過ごすわけにはいかないわ。サジを協力者兼連絡係として送るけどいいかしら? 本当は椿姫を送りたいところですけれど残念ながら手が離せないのよ」

「――兼監視役かしら。有り難く使わせて貰うわ」

 

 シトリーの言葉にリアスは微笑みながら答えた。

 




感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。


D&D知らない人向けムダ知識

めまい光線(レイ・オヴ・ディジネス)
 命中すると相手をめまい状態にする光線を放つ呪文。
 めまい状態になると、標準アクションか、移動アクションのどちらかしか行えず、全ラウンドアクションを行えなくなる。
 標準アクション:1回の攻撃や、通常の呪文の発動など。
 移動アクション:主に移動や、それと同等の時間を使う行動(物を拾う、扉をあける)
 全ラウンドアクション:全力攻撃(複数回攻撃)や突撃、全ラウンドかかる呪文の発動、二倍移動や疾走など。

うすのろ光線(レイ・オヴ・クラムジネス)
 命中すると相手の敏捷力を大きく減衰させる光線を放つ呪文。
 
光線呪文は当たらなければどうということはないし、光線そらし(レイ・デフレクション)という対抗呪文もあるが、それらを一切無視して無理矢理当てに行く『光線拳』はわりとえぐい。

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