ゼノヴィア達が襲われた。――セノヴィア達の監視を担当していた木場から連絡が入り、急行したフェイを待っていたのは傷つき倒れた紫藤の姿だった。
辛うじて生きてはいる。だが全身傷だらけで瀕死の状態であり、フェイと同じ頃に駆けつけてきたアーシアが必死に神器による手当てを始める。
「ゼノヴィア――何が起こった?」
フェイは厳しい顔をして立っているゼノヴィアに尋ねる。ゼノヴィアも紫藤ほどではないが傷を負っていた。
「最初はフリード・セルゼン、そしてエクスカリバーの試用も兼ねていたのだろう、バルパー・ガリレイもいた。そちらの木場くん達の加勢もあり――」
一旦言葉を区切り、ゼノヴィアはお前が何かしたのだろうと言いたげにフェイを睨むが、すぐに溜息をついて後を続ける。
「いや、やめておこう。助けられたのは事実だしな。――それで加勢により優勢に事を進められたが、その場で逃走を図られて、後を追おうとしたときに不意打ちを貰ったのだ」
ゼノヴィアが悔しそうに洩らす。
「紫藤がやられたのは不意打ちでか」
フェイが確認をするとゼノヴィアは頷く。
「まさかコカビエル本人が出てくるとはな。――それでまずイリナがやられてしまった。フリードもその時に逆襲に転じて来ていて、なんとかイリナを回収して逃げ延びた……というのが実際の所だ。残念ながらイリナの聖剣は奪われてしまったよ」
「命を拾っただけでも良しとすべきだな、生きてさえいれば反撃は可能だ」
敗戦の状況を淡々と述べるゼノヴィアに、フェイはそう声をかけながら紫藤の様子を見に行く。
紫藤はアーシアの治療により表面の傷は塞がりつつある。だがまだまだ安静が必要なようだ。
「そうだ……な」
かみ締めるように頷くゼノヴィア。そんなゼノヴィアと同様に浅手の傷を負っている木場がリアスに報告する。
「部長、コカビエルが伝言を残していきました。――『俺達はまた三勢力入り混じった戦争を始める。手始めにお前の主の縄張りたる駒王学園を中心として暴れさせてもらう。止められるものなら来るがいい』だそうです」
「――っ! 舐められたものねっ!」
あからさまな挑発。――だが無視することは出来ない。
木場が伝えるコカビエルの言葉に、リアスが静かに怒りを見せる。
「匙くん、ソーナにはこのことは?」
「報告済みっす。会長達は学園の結界を強化するそうです」
リアスが匙に尋ねると、匙が真剣な表情で答える。
学園の結界の強化、つまりは学園外へ被害を出さないようにする為の結界。
シトリー達も学園が戦場になることは覚悟の上の事。
「部長、魔王様に増援を要請しますわよ」
「朱乃、その必要はないわ!」
姫島の言葉を突っぱねるリアス。しかし、姫島が珍しく怒りをみせて詰め寄る。
「リアス、あなたがサーゼクス様にご迷惑をおかけしたくないのはわかるわ。あの御家騒動の後で、あなたの根城で起こっていることですものね。けれど、堕天使の幹部が来たなら話は別よ。あなた個人で解決出来るというの?」
「――やってみせるわよ」
姫島の説得になおもリアスは抗弁をする。
「部長、あなたのプライドとこの街とどちらが大事なんですか? 俺はコカビエル本人と直接対峙していないから強さはわかりません。ですが、負けたらこの街――いや、世界を巻き込む戦争の火種となりかねないのでしょう? 確実に勝てる根拠があるならともかく、勝負がわからない状態で
「……」
「要請、いたしますわ。ありがとう、フェイくん」
幾多の戦いを経験したフェイの言葉に黙り込むリアス。
コカビエルはこの街を中心として暴れるといっていた、放置したら被害は多少では済まないだろう。
増援の望めない背水の戦いもあるが、今はその時ではない。
姫島はフェイに礼を言い、魔王側――おそらくグレイフィアへと連絡を取り始めた。
「……それでは学園に急ぐわよ」
結局兄である魔王に頼る事になってしまった為か、悔しげなリアスがそう皆に告げると、横から声がかかる。
「まって、私も連れて行って……」
アーシアに治療されていた紫藤が呻く様に言った。アーシアの神器により大方の傷は塞がっている、しかし到底戦場に立てる様子ではない。
「イリナ、気持ちはわかるがその様子では無理だ。聖剣も奪われてしまっただろう?」
ゼノヴィアが諭すように言う。フェイはしばし思案した後、レイヴェルを見た。
「アレはわが家の収入源と言える程高価なのですわよ?」
「それ位なら俺が出すから頼む」
半目でフェイを睨むレイヴェルに対し、頼み込むフェイ。レイヴェルは溜息をついて答えた。
「フェイさまなら普通に出せそうですから嫌になりますわね」
出せなければ色々と条件を付けられたものを、とブツブツと呟きながらレイヴェルは小瓶を取り出し、イリナに振り掛ける。
「――! 傷が治って体力まで戻ってきた!」
紫藤が勢い良く立ち上がる。
「――フェニックスの涙。いかなる傷も体力も癒すフェニックス家の霊薬ですわ。感謝するなら教会の人間にも慈悲を示したフェイさまにすることね」
なお不満げに言うレイヴェルだったがフェイが感謝とばかりに頭をなでると顔を紅潮させてあさっての方を向く。
その顔がにやけているのを小猫は見逃さなかった。
「……覚えてなさい、焼き鳥姫」
何度目とも数え切れない小競り合いがまた勃発した。
そんなささやかな争いを横目に見ながらゼノヴィアがフェイに感謝を述べ、紫藤に向き直る。
「イリナを助けてくれて有難い――だが、聖剣もないのでは足手まといになるだけだろう? 大人しく待っていたらどうだ?」
「ゼノヴィアには
「バカっ!
ゼノヴィアと紫藤は言い争いを始める。恐らくはゼノヴィアが誤魔化した秘密兵器に関わる話だろう。
フェイはその二人の争いを仲裁するように声をかける。
「武器ならないこともない」
フェイは背負い袋から一振りの長剣を抜き出した。ゼノヴィア達は明らかに背負い袋に入らない長さの剣が抜き出された事に驚きの表情を見せる。
フェイが抜き出した十字を象った鍔を持った長剣は多少の魔力を秘めてはいるがそれだけだった。
「――その剣は?」
ゼノヴィアの問いには答えず、フェイは長剣を紫藤に差し出す。
「この剣を持ってみてくれ」
ただそれだけを言うフェイに対し、武器を失っていた紫藤は黙ってその剣の柄を掴み取る。
すると紫藤の掴んだ長剣から凄まじい聖性と魔力が溢れ出し、輝きを放ち始めた。
「
フェイは感慨深げに言う。『降魔の聖剣』はフェイが前の世界で偶然入手したものだ。フェイ自身に扱うことは出来ず、さりとて簡単に換金が出来ないほど貴重な一振り。加えてフェイはそれほど金銭を求めていなかった為、必要とするものが現れるまで所持しておくことにした品だった。
特定の神に関わる聖遺物ではないため、この世界のパラディンでも扱えるようなのが救いだった。
――そもそも紫藤の言動からパラディンではないかと疑ったフェイの直感も正しかったと言える。
「こんな凄いものを戴けるなんて――」
「堕天使を倒すまで貸すだけだ」
どさくさに紛れて頂戴しようとする紫藤にフェイが釘を刺す。
「この『降魔の聖剣』は所有者を敵の魔術からある程度守り、また
精々有効に使ってくれ。紫藤にはそう言いおいてフェイはリアスに移動を促す。
当のリアスはフェイをジト目で見ていた。
「あなたからは次々にとんでもないものが出てくるわね。まだ何か隠していることはないかしら?」
「さて、ね」
リアスの言葉に、フェイはとぼけるように肩を竦めた。
レイヴェルの参加が早まった影響で、イリナが即復活しました。
勿論この復活にも今後の展開的な意味はあります。
感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。
D&D知らない人向けムダ知識
基本職のひとつ。
善を成すための慈悲の心、秩序を守る強い意志、悪を討ち負かす力を備えた信仰の戦士。
ただし特定の神に帰依する必要はなく、正しき道に専心していればそれで良いとされる。――勿論各寺院でもパラディンの帰依は歓迎されるが。
また、パラディンたれという神の声を聞かなければパラディンになることもないある意味電波――ゲフンゲフン。
その辺を含めてイリナにはあっているかなと思いました。
妖精が嫌うとされる冷たい鉄で作られた長剣。
普通の戦士が持つと+2冷たい鉄製ロングソードだが、パラディンが握ると+5ホーリィ冷たい鉄製ロングソードへと変化する。
また使用者と隣接する者に呪文抵抗能力を与え、1ラウンドに1回標準アクションとして範囲型
その際の呪文抵抗や魔法解呪の強度はパラディンレベルに依存する。
なお魔法の武器の強化段階は通常+5が最高。
外見や威力はバスタード・ソードだが、重量や扱いやすさはショート・ソードと同様の輝く黄金の剣。
バスタード・ソードとしても、ショート・ソードとしても扱える。
通常は+2バスタード・ソードだが、悪のクリーチャーに対しては+4バスタード・ソードとして働き、さらにアンデッドには2倍のダメージを与える。
また頭上に掲げて打ち振るうことで、上空に小さな太陽光を放つ球体を作り出すことが出来る。当然、太陽光に弱いクリーチャーはそれでダメージを負う。