プロローグ
「冗談じゃないわ!」
深夜のオカルト研究部部室で、怒りを隠そうともせずにリアスは吐き捨てる。その怒りの原因はリアスの膝に頭を乗せている兵藤――正確には兵藤に絡んできた者にあった。
エクスカリバー事件――コカビエルの起こした
堕天使の最高責任者である総督アザゼルが、素性を隠して駒王町に侵入し、のうのうと兵藤の悪魔家業の顧客として契約をしていたという。
兵藤に並々ならぬ執着を見せるリアスがそれを聞いて怒髪天を衝くのも無理からぬ事であった。
「アザゼルは神器に強い興味を持つと聞くわ、イッセーが『赤龍帝の籠手』を持っているから接触してきたのね。 全く、私のかわいいイッセーにまで手を出そうだなんて、万死に値するわ!」
リアスは兵藤の頭を撫でながら憤慨する。兵藤も困った表情をしているので、怒るか撫でるかどちらかにしたほうが良いのではないだろうか。アーシアも膨れていることだし、などとフェイが内心思っていると、リアスは悩ましげに言葉を続ける。
「しかし、どうしたものかしらね。相手が堕天使総督となると、下手に接することも出来ないし……相手の動きがわからないから動きづらいことこの上ないわね」
リアスは考え込む。フェイもまた対策を考える。コカビエルにインヴィジビリティ・スフィアーが見破られた事を考えれば、アザゼルにも通じないと考えておいた方が良いだろう。気配を殺すとしても、
準備できる呪文の選択肢が豊富な
仲間を頼ろうにも他の悪魔達も類似の能力を持たないのは確認済みである。
「アザゼルは昔からああいう男なんだよ。リアス」
横から声をかけられたのはその時だった。
声の主は紅髪の男性。リアスの眷属でも古株である姫島、木場、小猫、リアスの眷属ではないがレイヴェルが即座に跪く。
その動作だけでも男性の正体は見て取れた。もっとも、グレイフィアを伴いやってきている時点でフェイには推測がついたが。
首を傾げて対応が遅れているのは眷属悪魔でも新人であるゼノヴィアとアーシア。そしてリアスに膝枕されていた兵藤。フェイと紫藤イリナはそもそも悪魔ではないので跪く必要はない。
紅髪の男性――現魔王『サーゼクス・ルシファー』の突然の来訪はリアスも知るところではなかったらしい。
「お、お兄様!?」
「いてっ」
リアスも驚いて立ち上がった為、兵藤は床に頭をしたたかにぶつける。
アーシアが慌てて神器で兵藤の治療を行うのを横目に見ながら、フェイは魔王の様子を伺った。
「アザゼルは先日のコカビエルのような真似はしないよ。悪戯くらいはするだろうけどね。しかし、総督殿も予定よりも随分と早い来日だ」
魔王は朗らかにそんな言葉を紡ぐ。頭の衝撃が癒えた兵藤が慌てて他の先輩達に倣って跪き、それを見たアーシアも兵藤の真似をする。
「今日はプライベートで来ているんだ。皆もくつろいでくれたまえ」
そう言って魔王は気にするな、と片手をあげる。悪魔達はその言葉に従い、立ち上がって各々の席に着いた。
当初から動きがなかったのは、フェイと紫藤、そしてゼノヴィアだけである。
フェイの気にする事ではないが、ゼノヴィアはそれでいいのだろうか。
「それにしてもこの部屋は殺風景だね、我が妹よ。年頃の娘達が集まるにしても、魔方陣だらけというのはね」
魔王は部屋を見渡しながら苦笑する。
「お兄様、ど、どうしてここへ?」
突然現れた魔王の意図が掴めず、リアスは怪訝そうに訊ねる。
当の魔王は懐から一枚のプリントを取り出して、リアスに見せた。
「授業参観が近いだろう? 私も参加しようと思っていてね。妹の勉学に励む姿を間近に見れる観れるこの機会を楽しみにしていたんだ」
言われたリアスはサッと顔を青褪めさせる。
「ぐ、グレイフィア……」
「学園からの報告はグレモリー眷族のスケジュールを任されている私に届きますので。無論、主に報告しない理由もありません」
リアスに声を掛けられたグレイフィアは、淡々と魔王に情報を渡した事実を告げる。
それを聞き、リアスは深く嘆息する。
そんなリアスを慰めるように魔王は朗らかに言った。
「安心しなさい、ちゃんと父上もお越しになられる」
それが逆効果であることは、その言葉を聞いたリアスの表情が物語っていた。
だが、魔王が持ち込んだ爆弾はそれだけではなかった。
「まあ、実のところはそれだけじゃないんだ。三竦みの会談をこの学園で行おうと思っていてね、その下見も兼ねているんだよ」
「――っ! 本当にここでやるのですか!?」
魔王の言葉にリアスは驚き問い返す。
「ああ、この学園とは色々と縁があるようでね。私の妹であるおまえと、伝説の赤龍帝、聖魔剣使い、聖剣デュランダル使い、竜神の信徒の魔法使いと聖剣使い、フェニックス家の娘に、魔王セラフォルー・レヴィアタンの妹までもが所属し、コカビエルと『白い龍』白龍皇が襲来してきた。偶然と片付けるには多すぎる。様々な力が入り混じり、うねりとなっている。そのうねりを加速度的に増しているのは、兵藤一誠くん――伝説の赤龍帝、そしてフェイくん、異界の魔術師であるキミだ。今回はキミと話すのも目的の一つだったんだよ」
魔王がリアスに説明し、最後にフェイへと声をかける。
「……俺と、ですか」
「ああ、コカビエルを消滅させた立役者として、今度の会議で説明を聞く事になるのは理解しているだろう? そこで今のうちに聞いておくことがある。 ――キミは、どういった立場で会議に参加するんだい?」
会議に参加する立場、要は悪魔陣営の
リアス達は当たり前のようにフェイがその立場で参加するだろうと思っている。わざわざそれを問うてくるのは、流石は魔王かとフェイは感心するばかりだ。
「そうですね……。俺は部長――リアス様には世話になっているし、グレモリー眷属とも親しくさせて頂いています。しかし、それは個人的な交友に過ぎず、悪魔陣営になった覚えはありません」
フェイの言葉に部屋に居た大部分の者は驚きの顔を見せる。
だが、魔王はその答えを予測していたとばかりに笑みを深めて、さらにフェイに問う。
「ならば、どういった立ち位置で話をするつもりかな?」
「決まっています――俺はあくまで弱き者、ここで言うならば人間の味方です。弱者を虐げる者達であれば、悪魔であろうと、天使や堕天使であろうとも拳を向けましょう」
「相手が弱者を慮れるもの達であったらどうかな?」
「そういった相手ならば、悪魔であろうと、天使や堕天使であろうと、俺個人は手を取り合う努力をしますよ」
キッパリとしたフェイの回答を聞いて、魔王は朗らかに笑う。
「いや、
「――まずは内容を聞きましょう」
魔王の提案に、フェイは訝しみながらも先を促す。
「ひとつは三竦みの会議に第四勢力『人間』の代表として参加すること。そしてもう一つが――フェイくん、キミは『レーティングゲーム』に参加する気はあるかい?」
「――どういうことです?」
魔王の思わぬ言葉にフェイは聞き返した。
前者はまだわかるし、フェイとしても人間を守る立場からの意見を出せるのならば望ましい。だが、後者は――。
「お兄さま、『レーティングゲーム』に参加するには悪魔でなければならないのではないですか?」
リアスがフェイの考えを代弁する。
「そこなんだ、リアス。実は今度の会議では平和的な協定を結ぶことが内々で決まっている。その際に、各陣営は他陣営に何かしらの便宜を図ることになっている。悪魔陣営の場合は『悪魔の駒』の技術の供与だ」
リアスに対して魔王が説明をする。そこまで聞けばフェイにも事情は飲み込めてきた。
「――つまり、『人間』陣営である俺達にもその技術が供与されると?」
フェイの問いに魔王は頷きで返した。
「当初は技術だけ供与して、あとは各陣営の開発に任せるつもりだったんだけどね。
なるほど、とフェイは魔王の言葉に頷く。『人間』陣営の実力を見せること自体は悪いことではない。
他の陣営は人間を軽んじている様子が少なからず見られる、それを見直させる機会があるのならば、やってみるべきだろう。
「わかりました、その話を受けましょう」
「駒自体は
フェイは魔王の提案を受けることにした。しかし、なぜか魔王の言葉を聞いてから嫌な予感が止まらずにいた。
スポンサーの横槍の結果、『御使い』のシステムもトランプベースからチェスへと変更されたりします。
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D&D知らない人向けムダ知識
基本職のひとつ。
呪文書に書いてある呪文を丸暗記して呪文を扱う勉強家。
呪文書に呪文を書き足すだけで使用できる呪文のレパートリーが増えるので、ソーサラーと比べて呪文の戦略の幅が広い。
反面、ウィザードはあらかじめ時間をかけて準備した呪文しか使用出来ないため、呪文選択を誤ると一気に戦力外に陥ることも有り得る。
基本職のひとつ。
神に仕える信徒。神より賜る奇跡を呪文として扱う。
賢者と同様に事前に神から託される呪文を選択して準備しておく必要があるが、選択できる呪文は、自分の実力が足りていれば全ての呪文を選択出来る。
基本職のひとつ。
鍵空け、罠解除を得意とするダンジョン探索の専門家。
悪のローグの場合は、名前の通りの行いをするものもいる。
戦闘面では、相手の背後に忍び寄り強力な一撃を加える
上級職のひとつ。
悪専門の職で、ローグの上位互換と言える。
毒の扱いや、アサシン専用呪文を覚え、相手の一撃で殺してしまう致死攻撃を扱えるようになる。