ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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4話

 『停止世界の邪眼』(フォービトゥン・バロール・ビュー)、それがギャスパーの持つ神器の名前である。

 視界内の相手の時間を停止させるその強力な効果を無意識に発動してしまう事、そしてギャスパー自身が無意識にでも神器の力を増していくほどの才に溢れ、やがてはそのまま『禁手』に至ると目された事が、ギャスパーが封印措置を取られた理由だった。

 しかし、兵藤と木場という二人の『禁手』に至る眷属を持ち、コカビエルを倒したリアスが悪魔の上層部に評価され、今回の封印解除へと繋がる。

 

「しかし、そんな強力な神器を持っていて、本人も吸血鬼として力を持っているのによく『僧侶』の駒ひとつで済みましたね」

 

 リアスの説明を聞いていた兵藤が感心したように漏らす。リアスはその言葉を聞いて中空より一冊の本を取り出し、パラパラと捲って目当ての頁を見つけると兵藤達にその内容を掲げて見せた。

 

『変異の駒』(ミューテーション・ピース)よ」

「ミューテーション……なんです、それ?」

 

 リアスの言葉に兵藤が質問を投げかける。それに答えたのは木場だった。

 

「通常の『悪魔の駒』と違い、明らかに駒を複数使うであろう転生体でも、駒ひとつで転生させるような特異な現象を起こす駒のことだよ。『悪魔の駒』のシステムを作り出した時に生まれた突然変異(イレギュラー)……バグの類らしいんだけど、それも一興ということで残してあるんだ。上位悪魔のうち、だいたい十人に一人くらいは持っているんじゃないかな?」

 

 木場の言葉に兵藤がなるほどと頷き、フェイはまさかとナティの方を見る。

 ナティはニヤリと笑ってフェイに返した。

 

「フェイ、アンタの想像の通りよ。私が登録出来る『変異の駒』を作るのには骨が折れたわ」

「わざわざそこまでする必要もなかったでしょうに」

 

 フェイが溜息を漏らし、ナティもそんなフェイを見て溜息を漏らす。

 その様子を籠手の内から感じながら、師匠の心弟子知らず。だが、ある意味そのように育てたナティントラパの自業自得だなとバハムートは思うのであった。

 

「そういえば、こいつ血は吸わないんですか? 吸血鬼なんですよね?」

 

 思い出したかのように兵藤が尋ねる。

 

「ハーフだからそこまで血に餓えているわけではないわ。十日に一度でも輸血用の血液を補充すれば大丈夫。もともと血を飲むのは苦手みたいだけど」

「血生臭いの嫌ですぅぅぅ。レバーも嫌いですぅぅぅ」

 

 リアスの説明にギャスパーも泣き言を言う。

 フェイの知る吸血鬼(ヴァンパイア)は常に悪の不死者(アンデッド)で、傷を癒す為の吸血や愉しみの捕食はするが、生命維持に必ずしも吸血が必要なわけではない。元の世界の常識はある程度捨てたほうが良いだろう、と改めて実感するフェイであった。

 

「とりあえず、私と朱乃は三竦みのトップ会談の会場の打ち合わせをしてくるから。イッセー、アーシア、小猫、ゼノヴィア、貴方達は私が戻るまでの間だけでもギャスパーの教育をお願いね。祐斗はお兄様があなたの禁手について詳しく知りたいらしいからついてきて。フェイは私達と一緒に来てもらうつもりだけどあとの子は――」

「そうね、私は同席しましょう。イリナとレイヴェルはグレモリー眷属と一緒に、そっちのヴァンパイアの子の面倒を見ていて」

「わかりました」

「了解しましたわ」

 

 リアスが言いかけた所でナティが後の言葉を継いで仕切り、イリナとレイヴェルもそれに頷いた。

 フェイとしてもナティの意見は聞きたかったので都合が良い。

 イリナとレイヴェルにこの場の事を託して、フェイとナティはリアス達と共に、サーゼクスの元へと向かった。

 

 ◇◇◇

 

龍殺し(ドラゴン・スレイヤー)の聖剣、ねぇ」

「ああ、天界側からの贈物として打診があったよ。兵藤一誠くん――赤龍帝が今後白龍皇や龍王などと戦う可能性もあるだろうし、その足しにとね。勿論悪魔である一誠くんにも使えるような調整が必要なわけだけど。……不快に思ったならすまないね」

 

 龍殺しの聖剣『アスカロン』を兵藤に贈るという話を聞いて漏らしたナティの言葉に、サーゼクスは補足をしながらも軽く謝る。

 ドラゴンが目の前に居るのに龍殺しの聖剣の話などして、という配慮だ。

 だが、ナティはそうではないと首を振る。

 

「ああ、誤解させたかもしれないわね。そういった意味じゃないわ。ただ――そういうのはウチにも欲しいってだけね」

「キミ達にも必要なのかな?」

 

 ナティの言葉に、サーゼクスは意外そうに訊ねる。

 

「『人間』陣営や竜として、というよりもバハムートの信徒としてね。ドラゴンの最大の敵は、ドラゴンなのよ。善竜の神(バハムート)の宿敵もやはり悪竜の神――ティアマトってわけ」

 

 フェイの元の世界で言っても、バハムートの信徒が最大の悪竜殺し(イーヴィル・ドラゴン・スレイヤー)である。バハムートの加護を得た者達は得てして悪竜を滅する力を手にする。例えばバハムートの聖なる守り手(セイクリッドウォーダー・オヴ・バハムート)であるナティも、悪竜に対する強力な一撃の加護を賜っている。

 場合によってはイリナも将来そのような加護を賜ることもあるだろう。それ程までに悪竜との激しい闘争が存在しているのだ。

 竜に対する強力な手段があれば、欲しいと思うのは無理からぬことである。

 

「その辺りはミカエルに打診しておこう、元より『人間』陣営には何を贈るかを考えていたようだしね。――それにしてもティアマトか。こちらの天魔の業龍(ティアマット)とは喧嘩しないで貰えると助かるがね、アジュカの『盟友』なんだ」

「同名存在ってわけね。別に名前が同じだけで敵視なんかしないわよ。そもそも同名だけで言えば、我が神はあなたの眷属と同じ名前なんだけど?」

「それもそうだったね」

 

 サーゼクスの頼みにナティは呆れたように答え、サーゼクスはその答えに苦笑する。

 

「それでこちらからは――『人間』勢力として出すには微妙だけど、私達の世界の魔法の道具(マジック・アイテム)かしらね。勢力に合わせて適当なものを選んでおくわ」

「そうですね、俺の持っている分も師匠は把握しているでしょうし、お願いします」

 

 施されるばかりでは『人間』という勢力を代表する意味がない。対等な関係を主張する為にも対価を用意しようとフェイは考えていたが、ドラゴンであるナティも同じ考えなのがフェイには少々意外だった。

 もっとも、ナティがそう考えるのも全てフェイの為という個人的理由ではあるが、フェイ自身がそれに気付いていないのであった。

 

「ああ、もしかしたらセラフォルーから要望があるかもしれないが、そのときは検討してあげてくれ。キミ達の出すものはきっと彼女好みだからね」

「はいはい、考えておくわ」

 

 サーゼクスとナティの会話を聞きながらフェイはあの魔法使いの衣装を纏った明るい魔王を思い出す。なるほど、彼女が好みそうな品はフェイの所持品だけでも心当たりはある。

 そんな事を考えていると、ナティに横目で睨まれていた。

 

「フェイ、アンタは余計なことしなくていいからね。これ以上人数増えても困るし」

「……? はぁ、わかりました」

 

 ナティの言葉に首を傾げながらもフェイは頷く。

 サーゼクスはその様子をにこやかに笑いながら見ていた。

 途中でリアスがギャスパーの様子を見に行くと退席したが、サーゼクスは姫島と『アスカロン』の調整の段取りや、木場の聖魔剣について悪魔側から他陣営に提供するよう相談を行い、フェイ達も会談で明かす情報の相談や、今後の『レーティングゲーム』参加の調整などに明け暮れた。

 

 そして、三勢力――いや、『人間』を含めた四勢力の会談の日が訪れる。




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D&D知らない人向けムダ知識

バハムートの聖なる守り手(セイクリッドウォーダー・オヴ・バハムート)
 ドラゴン用上級職
 ドラゴンが生来持つ秘術呪文(魔術)の能力が無くなる代わりに、同等の信仰呪文(神の秘蹟)の能力を得る。
 また、敵を威圧すると同時に味方を鼓舞するオーラや、自分や味方を守るバリアを張る能力など、まさに守り手といった能力に目覚めていく。
 バハムートの眷属らしく、悪竜を討つ一撃の能力も備える。
 
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