ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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大分間隔が空いてしまいました、申し訳ない。


5話

 会談当日、開始時間が間近に迫った深夜、 オカルト研究部部室にオカルト研究部の面々――グレモリー眷属と、バハムートの眷属達が集っていた。

 会談の会場は新校舎にある職員会議室。既に学園全体が強力な結界で覆われ、学園内外への出入りが出来なくなっている。

 その上、その結界を囲むように天使、堕天使、悪魔の軍勢が集結していた。

 それぞれの軍勢は一触即発の空気をしていた、とは様子を伺ってきた木場の弁だ。

 

「――さて、行くわよ」

 

 リアスの言葉に部員は一同に頷く。

 ただ、その中に一人だけ欠けている者が居た。――ギャスパー・ヴラディ。

 リアスは部室の片隅に置かれているダンボール箱に声を掛ける。

 

「ごめんなさいね、ギャスパー。今日の会談は大事なものだから、時間停止の神器を使いこなせていないあなたを参加させることは出来ないの」

 

 ギャスパーはダンボール箱の中に隠れていた。ダンボール箱は部室におけるギャスパーの棺桶のような役割を果たしているのである。

 

「ギャスパー、ここでおとなしくしていろよ。携帯ゲーム機を置いていくからそれで遊んでいいし、お菓子も用意してるからそれも食っていい。それに紙袋(・・)もあるから寂しくなったら存分に使え」

「はぃぃぃ」

 

 兵藤がギャスパーの世話を色々と焼きながら指示をすると、ギャスパーも涙目になりながらもコクコクと頷く。

 兵藤は後輩の面倒見が良いと感心すると同時に、紙袋を何に使うのだろうかと疑問に思うフェイ。

 

「紙袋なんて何につかうのよ?」

 

 フェイが尋ねる前にナティが口を開いた。

 

「ああ、頭からかぶるんだよ。なんか気に入ってるみたいで」

「はぁ? なにそれ?」

 

 兵藤の答えにナティが聞き返している内に、ダンボール箱から顔を出したギャスパーが実際に紙袋を頭からかぶってみせた。

 紙袋は覆面のように頭全体を覆い、目の部分に開けられた穴からギャスパーの赤い眼が輝きをみせる。

 

「どうですかぁ?」

「うわぁ……」

 

 嬉々として訊ねるギャスパーに対して、言葉も出ないナティ。

 兵藤はそりゃそうだと苦笑しながらも、ギャスパーのフォローをする。

 

「まあ、吸血鬼としてハクを付けたいみたいでさ。俺はある意味凄いと思うし、あまり突っ込まないでやってくれよ」

「……確かにある意味凄いとは思うけどね」

 

 ナティは呆れたように溜息を吐く。横で見ていたフェイもこれ以上触れないのが人情と判断し、微妙な気分のまま部室を後にするのだった。

 

 ◇◇◇

 

 一行が会場へと足を踏み入れたとき、会談の主だった参加者は既に揃っていた。

 悪魔側の席にはサーゼクスとレヴィアタン。また、グレイフィアが給仕の役割を担っている。

 天使側の席には金色の十二枚の翼を持った男性の天使と、白色の羽の女性の天使。

 そして堕天使の席には黒い十二枚の翼を持った男性の堕天使と「白い龍」ヴァーリが座っていた。

 

「私の妹と、その眷属だ」

 

 サーゼクスがまずリアスを指し示して紹介した。

 リアスとグレモリー眷属達が一様に会釈をする。

 

「先日のコカビエル襲撃では彼女達が活躍してくれた」

「報告は受けています。改めて御礼を申し上げます」

 

 サーゼクスの言葉に男性の天使が頷き、リアスに礼の言葉を告げる。

 リアスは再度会釈をするばかりだ。

 

「俺のところのコカビエルが迷惑をかけて悪かったな」

 

 堕天使が悪びれた様子も見せずに軽く謝った。

 リアスは会釈もせずに口元を引きつらせる。

 

「そこの席に座りなさい」

 

 サーゼクスが指示を出し、悪魔側の壁際にある席にリアス達が移動する。

 そこには既にシトリーが席についていた。リアス達はシトリーに並ぶように席についていく。

 だが、フェイ達バハムートの眷属はいまだ元の場所に残ったままだった。

 

「さて、次にフェイ君とその仲間達。――『人間』の代表だ」

 

 サーゼクスの紹介にフェイ達が会釈をする。

 

「天使の長を務めております、ミカエルです。コカビエルを直接倒したのはあなただそうですね。――たしかにあなたは(・・・・)人間のようだ」

 

 男性の天使――ミカエルが懐かしいものを見るかのように頷く。

 イリナが気まずそうに佇んでいるが、ミカエルは優しい目でイリナを見て微笑んだ後、視線をフェイに戻した。

 イリナの事は今この時に話す内容ではないということだろう。

 

「堕天使総督アザゼルだ。先日はお前と聖魔剣使い目当てに会いに行ったんだが、会えなくて残念だったぜ。――昔はお前みたいな奴も少なからず居たんだがな」

 

 そんな事を言い出したのが堕天使――アザゼルだった。

 確かにフェイとナティがサーゼクス達と会談の打ち合わせを行った時に、ギャスパーの訓練を行っていた兵藤達の所へアザゼルが姿を現したと聞いている。

 

「キミ達は人間勢力の席へ」

 

 そんなアザゼルを制すようにサーゼクスはフェイ達に指示を出す。

 堕天使の対面に当たる人間勢力の代表の席にフェイとナティが並び、その後ろの席にイリナとレイヴェルが着く。

 

「さて、これで全員が揃ったわけだが、会談の前提条件をひとつ確認しておく。ここにいる者達は、最重要禁則事項である『神の不在』を認知している」

 

 サーゼクスは一旦言葉を区切り、会議室を見渡すが当然ながら異議を上げるものはいない。

 

「ではその前提で話を進める。最初の議題だが――」

「――当然、『人間』陣営の話だよな?」

 

 サーゼクスの司会に割り込むようにアザゼルが口を挟み、フェイをみてニヤリと笑った。

 

「私としてもその話をまず聞きたいところです。『人間』陣営の代表として参加するという話だけは事前に聞いていましたが、内情までは伺っていないのです。――そもそも、人間たちを導くのが我らの使命だと考えておりましたので、寝耳に水の話ではあります」

 

 更にミカエルが言葉を継ぐ。

 口を挟まれた側のサーゼクスは僅かに逡巡するが、ひとまず頷く。

 

「そうだな、私も構わない。フェイ君もそれでいいね?」

 

 サーゼクスの問いかけにフェイは頷き、立ち上がる。

 

「改めまして、フェイです。まず我々の立場について最初に言っておくことがあります。我々はバハムートという異界の神の信徒となります」

「……異界、の神ですか」

 

 最初に告げたフェイの言葉に対して、ミカエルが動揺を抑えて確認する。

 

「ええ。この世界のどこにも『バハムート』という神はいません。神の勢力も存在しません。強いて言えば、ここにいる者達が勢力の全てです」

「……つまり、他神話勢力の干渉ではないと?」

「干渉といえば干渉になるでしょう。ですがそれが必要だと感じたからこそ、人間としてこの場に立つ判断をしました」

 

 ミカエルの問いかけに、毅然とした態度でフェイは答える。

 その答えを聞いたミカエルは険しい顔をして長い溜息を吐く。

 

「なぜ、それが必要だと感じたのか聞いてもよろしいですか?」

 

 恐らくは答えがわかっているであろうミカエルの問いかけ。

 フェイは迷うことなくそれに答える。

 

「どの陣営も、決して人間の味方とは言えないからです」

 

 まずその一言を発してから、フェイはミカエルへと言葉を投げかける。

 

「あなた方は人間を導くのが使命と言いました。だが、それは信徒に対してだけではないですか? 敬虔な信徒もまた、異教徒や異端と一方的に断じた相手に容易く剣を向ける。だがあなた方の神の信徒だけが人間ではないでしょう。この街に限っても宗教を持たぬ人間は大勢居る」

「正直にいえば神の不在というのはことのほか影響が大きいのです。神ならぬ我々には力も限られ、救済出来るものは限られてしまいます。しかし、あなたもバハムートなる神の信徒というならば同じではないですか?」

 

 ミカエルは苦々しく頷いて答えながらも、フェイに質問を投げ返す。

 

「確かに我々の力も万能とはいえず、手の届くところに限りがあることは認めます。ですが、バハムートの教義はまず救う対象は信徒ではありません(・・・・・・・・・)。バハムートはドラゴンの神で、主な信徒はドラゴンが大半です。司祭ともなれば尚更にドラゴンが中心となっており、私自身も人間ですが竜の血を引く魔術師としての力を持っています。バハムートの教義はドラゴン等の力を持ったものに脅かされる弱者を助け、対抗できる知恵や力を付けさせることが主軸となります。我々は手の届く範囲は信教の区別なく救う、それゆえに『人間』の代表としてこの席につきました」

 

 フェイは臆すことなく朗々と教義を諳んじ、ミカエルはその内容に感嘆を漏らす。

 

「そのような教えの神もいるのですね。……フェイさん、あなたのお隣の女性はドラゴンなのでしょう? そのような存在すらも従えているあなたの力、疑いの余地はありませんね。――あなた達ならイリナを安心して任せられるかもしれません」

 

 師匠(ナティ)を従えているというミカエルの言葉に、この場で訂正するわけにもいかず内心冷や汗を流すフェイ――実際のところは何も心配する必要はないのだが。

 しかし、後半のミカエルの言葉に疑問を覚え、そのまま疑問を口に出す。

 

「イリナのことを心配しているご様子ですが、それならばなぜ異端として追放されたのですか?」

「そうですね、今この場でなら話しても良いでしょう。これはイリナとゼノヴィアだけでなく、アーシア・アルジェントにも関わる話です」

 

 フェイの言葉にミカエルは真剣な表情を作り、訥々と語りだした。

 

 ――曰く、神が消滅した後、加護と慈悲と奇跡を司る『システム』だけが残った。神はこの『システム』を作り上げ、それを用いて地上に奇跡をもたらしていたのだった。悪魔祓いや十字架などの聖具へもたらす効果も『システム』の恩恵だという。それならばフェイの持つ聖遺物がこの世界の悪魔にあまり効果がないという点も頷ける。

 似たような関係でありながらも、そもそもの天使と悪魔の概念が違うのだ。

 そして『システム』はそれを作り上げた神以外が扱うことは困難を極めた。ミカエルを始めとした熾天使達が『システム』を運用しているが、神ほどには加護も慈悲も行き届かなくなっていた。

 また、アーシアのような神の敵となるような堕天使や悪魔までをも癒すような神器の持ち主や、イリナやゼノヴィアのような上級天使以外で神の不在を知るような者は、『システム』の根幹たる信仰を揺らがせ、『システム』に大きな影響を及ぼしてしまう問題があった。

 そのためにアーシア達は異端とされ、教会から追放されたのだ。

 

 教会としても苦渋の決断だったと、ミカエルはアーシアとゼノヴィア、イリナに対して頭を下げる。

 だが三人とも今の生活が幸せだと、笑ってそれを赦すのだった。




SEをやっている自分としては『システム』の話は身につまされるものがあります。
きっと仕様書とかも一切残ってなかったんでしょうね。

『聖母の微笑』=ウィルスに感染した記憶装置扱い 
ゼノヴィア(イリナ)=管理者権限がないけどバックドア知っちゃった人

的な理解。

感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。

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