ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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お久しぶりです。
大分間が空いてしまって申し訳ないです。

合宿編開始……といいつつもあまり合宿にならない模様。


冥界合宿のヘルキャット
プロローグ


「お前ら、冥界に合宿に行くぞ」

「冥界に合宿?」

 

 唐突なアザゼルの発言に、フェイは思わず問い返した。

 駒王学園が夏季休暇に入ってまもなく、フェイをはじめとしたバハムートの眷属はオカルト研究部の部室に召集を受け集合した矢先の出来事である。

 部室にはオカルト研究部の顧問(アザゼル)副顧問(セラフォルー)が待ち受けていたが、部長(リアス)達グレモリー眷属の姿はない。――フェイ達はその理由を知っていたが。

 グレモリー眷属は、兵藤やゼノヴィア、アーシアといった新しい眷族の為、使い魔を確保するべく出かけている。フェイ達も誘われたのだが、生憎とバハムートの眷属の中では元々悪魔として使い魔を持っている者(レイヴェルと小猫)悪魔でも魔術師でもない者(ナティとイリナ)しかおらず、唯一魔術師であるフェイ自身は――といえば、使い魔の契約術式を別の目的に扱っている為、魔術師として使い魔を得ることは出来ない。つまり、新たな使い魔が必要な者がいない為に同行はしなかったのであった。

 フェイがそんな事を思い返していると、セラフォルーが明るく口を開く。

 

「リアスちゃん達も夏休みには里帰りで毎年冥界に行ってるんだけどね☆ そのついでに修行をしようってことだよ☆」

「付け加えると今年はお前らにも冥界で参加して欲しい行事(イベント)があるんだよ。具体的に言えばレーティングゲーム参加者の顔合わせみたいなもんだ。参加するんだろ? お前らも」

 

 セラフォルーの言葉にアザゼルが補足をする。

 アザゼル達の言葉に、フェイは暫し考え込むが、その様子を見たアザゼルがニヤケながら声を掛けた。

 

「なんだなんだ、芳しくねぇ反応だな。夏休みにやることでもあったか? 眷属引き連れてお出かけ(デート)か?」

「なっ、なにを――」

「それもいいのだけれど、違うわ」

 

 アザゼルの言葉に気色ばむレイヴェルを手振りのみで制し、ナティが呆れたよう首を横に振りながらに口を開いた。

 

「先の襲撃の情報収集が済んだから、休みの間にこちらから仕掛けようと思っていたのよ」

「……そいつは初耳だな。っていうか襲撃してきた魔術師の中でも情報を持っていたような連中はヴァーリの奴がキッチリ消して行ったみたいだったが、討ち漏らしでもあったのか?」

 

 ナティの言葉にアザゼルは驚きを見せるが、直ぐに立ち直ると人の悪い笑みを浮かべて問いかける。

 

「そりゃ貴方達は顧問といいながら今まで碌に居なかったじゃない。……戦後処理をしてたのもわかるけどね。それで、質問の方の答えとしては残念ながら討ち漏らしはなし。――ただ、不幸にも(・・・・)姿を残した死体があったくらいね」

 

 フェイ達が元いた世界では、死は必ずしも終焉を意味するわけではない。当たり前のように蘇生(リザレクション)の呪文などによる復活の手段が存在するのだ。――その上で、死体が残るということは様々な可能性を意味する。

 死体が残っていれば、より低級な死者の復活(レイズ・デッド)の呪文による蘇生が行える。死霊術士の手に死体が渡ればアンデッド創造(クリエイト・アンデッド)の材料にされるだろう。

 そして、死体の持つ記憶から情報を引き出す死者との会話(スピーク・ウィズ・デッド)といった呪文も存在する。

 ナティはまさに死体から情報を引き出すことで襲撃者――『禍の団』の情報を断片ながら取得していた。

 そして断片さえ掴んでしまえば――

 

「『禍の団』には旧魔王派、人間の英雄の子孫が集まる英雄派、それから魔術師の派閥がいくらかあるみたいね。流石に旧魔王派を視ることは出来なかったけど、英雄派と魔術師の主だった連中、それから白龍皇の動向までは把握してるわ」

 

 ――念視(スクライング)をはじめとする占術により居場所や周辺の状況まで丸裸にすることが出来る。

 

「俺達はこの中では特に人間の旗頭となりうる英雄派を抑えられれば、と思っています。彼らの性質次第ですが、可能なら取り込めれば、とも」

「『禍の団』に加担といっても、三陣営に振り回される頃と、『人間』陣営が出来た今とじゃ状況も違うでしょうしね。まあ視た限りじゃあまり期待出来ないけど」

 

 フェイとナティが続けざまに語った内容に、アザゼルとセラフォルーが驚きを見せ、続けざまにナティに問いかけた。

 

「おいおい、お前らそんなことまで調べられんのかよ……悪いがヴァーリの情報は俺にも教えてくれや。アイツのことは俺の方で対処せにゃならん」

「ねぇねぇ、ナティちゃんのそれ、私にも出来るかな☆」

「白龍皇は今チームで行動していて美猴と呼ばれる猿の妖怪、黒歌と呼ばれる猫又、アーサーという人間の戦士、ルフェイという魔術師が周囲にいるまでは把握しているわ。動向や詳しい情報は後で話しましょう……セラフォルーの方は無理よ。私のは秘術呪文(魔術)ではなく信仰呪文(奇跡)だもの」

「えー、残念……じゃあフェイ君は?」

 

 ナティのつれない返答にセラフォルーは落胆を見せるが、めげずにフェイの腕に絡みつきながら尋ねる。

 しかし、フェイも肩をすくめながら首を横に振って答えた。

 

「生憎俺はそういった占術関連は殆ど扱えません。基本的に戦闘時の呪文か、防御関連の呪文、僅かに移動系の呪文を扱える程度なので」

「んー、残念☆ 色々と手取り足取り教わりたかったのにな☆」

「残・念・で・し・たっ」

 

 ナティが力任せにフェイの腕に絡みつくセラフォルーを引き剥がすと、レイヴェルがその間に入り込んで威嚇する。

 ナティは内心、悪魔の名門貴族でありながら堂々と魔王に牙を剥く同志であり好敵手の姿に感心するが、同時にこういった場面で一番に割り込んできそうだった眷族(小猫)の動きがないことが気になった。

 様子を見ると当の小猫は、青褪めた顔をしてその場に立ち尽くしていた。まさか、そんな、といった小さな呟きがその口から漏れ出している。

 後で話を聞いてやるか、それともフェイに聞かせるか。ナティはそんな事を考えながら、今は小猫に触れない事にする。

 ――少なくとも、魔王や堕天使総督のいる場で話す内容ではなさそうだ。

 しかし、ナティの思惑とは裏腹に動いたものがいた。他ならぬフェイが小猫の頭を優しく撫でると、ただ頷きかける。

 フェイ自身とて何もわかっていないだろうに、そうするだけで小猫は落ち着きを取り戻し、顔を赤らめながらフェイの後ろへと張り付いた。

 ――ナティは無性に腹が立った。フェイをそのように育てた(・・・・・・・)のはナティ自身だ。それを理解しているから尚更に。

 

「――まあいいわ、とにかくその行事(イベント)には合わせてあげるけど、それ以外はこっちの都合で通すわよ」

 

 だから――アザゼルに向かって八つ当たり気味に吐き捨てたのも、(フェイ)を差し置いて答えたのも仕方のないことである。

 

 ◇◇◇

 

「――白龍皇と共に居る黒歌という猫又は、私の姉さまです」

 

 小猫はそう話を切り出した。

 フェイが暮らしているマンションの自室で、フェイと小猫は二人で向かい合っている。

 冥界行きの話をした帰りにフェイが声を掛けた形ではあるが、小猫自身も訊かれることは予想していたのだろう、覚悟を決めた表情で顔を少し赤らめながらもフェイに従った。

 フェイの部屋に辿り着き、もてなしの茶を飲んで一息ついた後の第一声である。

 

 フェイはそのまま続きを待つ。 

 

「私と姉さまは、小さな頃からずっと一緒に過ごしてきました。父さまも母さまも私が小さい頃になくなってしまい、頼れるのは姉さまだけ……いえ、あの頃はお互いに助け合って生きていました。その日暮らしの生活でしたけど、なんとか支えあって過ごしていけた。そう思っていました。それが、ある時姉さまが上級悪魔の目に留まって、眷属として誘われました。その時の主さまは私も姉さまと暮らせるように、と手を差し伸べてくれて。私はその時、これから姉さまと幸せに暮らしていける……そう思っていたのに……」

 

 湯のみを両手に包むように持ちながら、小猫は訥々と語っていく。

 ナティが念視した黒歌は、かなりの力を持った悪魔らしいが……姉妹に何があったというのか。

 フェイは黙したまま小猫が続きを語るのを待っていた。

 

「私も姉さまも猫魈という種族の猫又です。猫魈は仙術をも使いこなすと言われ……事実転生悪魔となった姉さまは仙術の力を目覚めさせ、急速に成長しました。――その力が主さますら上回るほどに。そして、その力に溺れた姉さまは、主さまを殺して『はぐれ悪魔』になりました。でも姉さまはその追撃部隊の悉くを撃退して、その姿を隠します」

 

 ――私には見向きもせずに。小猫はその言葉を押し殺した。事情を話すとはいっても、その事実を自分の口から語るには、まだ勇気が足りていなかった。姉に捨てられてから、グレモリーに救われるまでの事は思い出したくもない。それでも話すべきことは話さなければ、と小猫は声を絞り出す。

 フェイはそれを止めるでもなく、ただ静かに耳を傾けていた。

 

「本来なら、私も危険と見做されたのですが、そこを救ってくださったのがサーゼクス様でした。そしてリアス様が私を眷属として迎えてくれたんです」

 

 フェイは瞑目した。まさに小猫にとって、サーゼクスやリアスは恩人なのであろう。バハムートの眷属となったことも様々な葛藤があったと思われ、リアスが『戦車』の駒を使い切っていなければ――キャスリングの余裕があったならば――思い切ることもなかったであろう。

 小猫がした選択は、それだけ重要なことだったのだと、心を引き締める。

 

「姉さまの痕跡を知るのもそれ以来です。SS級のはぐれ悪魔として冥界指名手配されていますから、名前を聞くことはありましたが――私は、私は姉さまみたいになりたくない。あんな風に人を不幸にする黒い力を振るって……でも、私にも同じ血が流れていて……」

 

 小猫は涙を溢しながら語り続ける。

 フェイは唯一つだけ、小猫に訊ねた。

 

「小猫はどうしたい?」

「っ――わ、私は。姉さまを止めたい! 止めるだけの力が欲しい! でもあの力はっ――!?」

 

 半ば泣き叫ぶ形となった小猫を軽く抱きかかえるようにしながら頭を撫で、フェイは小猫に囁いた。

 

「任せておけ。足りない力は貸してやる。未熟な力は鍛えてやる。それに――仙術。気の力を扱うことなら俺だって専門だ」

 

 小猫はしばらく、顔をフェイに体に埋めながら嗚咽を漏らしていた。

 

 ◇◇◇

 

「――俺達は白龍皇の対処を先に行います」

「おいおい、いきなり方針が変わったな」

 

 冥界行きの話をした翌日のフェイの宣言に困惑するアザゼル。

 しかし、小猫の話を聞いた以上、後回しにするつもりはフェイにはなかった。

 勿論、ナティやレイヴェル、イリナもそれに賛同した。

 

「事情が変わりましたので。……すみませんが、白龍皇達の因縁は譲ってもらいます」

「……仕方ねぇな。まあ、昨日の様子を考えりゃ、事情は察せんでもない」

 

 溜息を吐きながらアザゼルは頷いた。

 

「まあ、奴のやらかしたことを考えりゃ死んでも仕方ねぇんだが、出来れば――」

「可能な限りは。――勿論、見過ごす事で他の者に被害が出るならば別ですが」

 

 アザゼルの言葉を遮るようにしてフェイは言う。総督(指導者)の立場であまり私情を挟ませてはいけない。

 ――フェイの言えた話ではないのだが。

 

「――悪いな」

 

 アザゼルは苦笑しながらその言葉を告げた。




感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。

活動報告にヒロインのについて少しだけ書いています。
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