ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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遅くなって申し訳ありません。
次話はもっと早くお見せできるようにします。


2話

「それで、彼らは仕掛けてくると?」

「まずは偵察といった所でしょう。本格的に仕掛けてくるのはもう少し先――恐らくは『レーティングゲーム』の本番が始まる頃と見ています。ただ――」

 

 サーゼクスの問いかけに、淡々とフェイは答える。

 魔王領へと足を運んだフェイ達は、サーゼクス、そしてリアス達と一旦別れたアザゼルと合流し、今後についての打ち合わせの場を設けていた。

 既にナティの占術により『禍の団』の大まかな動向は掴めている。ヴァーリ達についても『禍の団』の特殊部隊として半ば独立して動いていること。今現在は悪魔達に対する動きを潜めていることなどの現状は探っていた。

 

「しばらくは動きがないと見ていますが、特に白龍皇達の動向は定期的に探るつもりです。そして、動き次第ではこちらから仕掛けることも検討します」

「それは、どういったつもりの発言なのかな?」

 

 フェイのやや過激とも言える発言にサーゼクスが眉を潜めて問い返す。

 

「可能な限り()()()捕らえようと考えているので、彼らが単独行動をするようなら徐々に切り崩していく方針です。逆に頼みがあるのですが――」

「捕らえた彼らの処遇かい? そうだね、君達が()()を持つというのならば僕は構わない」

 

 フェイの答えから頼みごとの内容を察したサーゼクスが先回りするように答える。責任――捕らえたヴァーリ達が問題を起こした場合の責任をフェイが取るという条件を付けて。その言葉は鷹揚に見えて、さすが魔王と呼ばれるだけの威圧も含まれていた。

 

「私もフェイ君がそう考えるなら構わないよっ☆ あ、でもでも問題起こした時の(ペナルティ)は覚悟してねっ☆」

 

 セラフォルーの言葉も軽いように見えてなお、フェイにすら薄ら寒いものを感じさせ、ナティの顔を顰めさせた。

 彼女もやはり魔王なのだとフェイも改めて気を引き締める。――余談であるが、ナティが顔を顰めたのは別の理由である。

 

「そうですね、あなた方は彼らに更生の機会を与えるつもりなのでしょう。無条件の赦しは彼らの為にもならないとは思いますが、あなた方のやり方を学ばせていただきましょう」

 

 そう語るのは天界陣営から来ているガブリエルである。天界陣営は信じる神が異なるとはいえ、フェイ達とどこか考えが通じるところもあるのか、フェイ達の意図を推察出来ていた。

 そして、ヴァーリ個人に対して思うところのあるアザゼルが反対意見を出すはずもなかった。

 

「俺はまあどうこう言える立場じゃねぇわな。――任せるぜ。 ……ところで、グレモリーの眷属は冥界にいる間に俺が修行の面倒を見るつもりだが、お前さんたちはどうするつもりだ?」

「こちらはこちらで考えがあるわ。暫く留守にするけど、『禍の団』のこともあるし定期的に様子を見に来るけどね」

 

 アザゼルの問いかけには、ナティが含み笑いをしながら答える。そのナティの回答に真っ先に驚きの声を上げたのはセラフォルーだった。

 

「ええっ! 聞いてないよっ! フェイ君たちは私のところで過ごすんじゃないのっ?」

「そんな決定はしていないというか、フェニックスの所との話もついていないでしょうが。……まあ、様子を見に来たときにはフェニックスの所と交互に顔を出させるわよ」

 

 ナティが呆れた顔をしながらセラフォルーに返す。実際冥界での滞在先としてはセラフォルーとフェニックス家が共に名乗りを上げたものの、どちらにするかという話は決まっていなかった。

 元よりフェイとナティは冥界での行事(イベント)以外の期間は()()をしようと考えていたため、決めなかったとも言える。

 

「ナティちゃん達だけ独占するのずるいよ☆」

「どうせアンタはしばらく()()()()()が忙しいでしょ。魔王様の手を煩わせないようにしてやってるのよ」

 

 セラフォルーが頬を膨らませながら今一緊張感のない声を漏らすが、ナティはそれを適当にあしらう。

 サーゼクスはその様子を微笑みながら眺めていたが、フェイに向き直って声を掛けた。

 

「さて、事前に伝えていた通り、フェイ君たちには明日行われるレーティングゲーム前の若手悪魔の集まりに顔を出してもらうことになる。フェイ君達もレーティングゲーム参加者となるわけだからね。それで、若手悪魔の王達には慣例として今後の目標を聞かせて貰う事になるんだが……フェイ君には人間の代表(ゲスト)として悪魔の重鎮達と共にそれを聞く側か、参加者として語る側の選択を用意してある。どちらが良いかな?」

「当然参加者で」

 

 フェイにとっては悩むまでもないことであった。魔王や堕天使の代表(アザゼル)、天使の代表《ガブリエル》が並ぶ中で、人間の代表がその席に着かないというのもおかしな話ではあるが、もとより降って沸いたような立場だ。

 魔王たちはともかく他の悪魔の重鎮達は良い顔はするまい。ならば、参加者側から実力で認めさせるだけの話である。その為にレーティングゲームの参加も承諾したのだ。

 フェイがナティに視線を送ると、ナティもセラフォルーとの言い争いを止めてうんうんと頷いていた。

 

 ◇◇◇

 

「言ったはずだ。最後通告だと」

 

 低い男の声が大広間に響き渡る。

 冥界に到着した翌日、フェイが参加者達の集合場所である大広間へ足を運んだのは、声を発した男――黒い短髪の筋肉質の男性悪魔――が緑髪で全身に刺青(タトゥー)を入れた男性悪魔を殴り飛ばした時だった。

 刺青悪魔の眷属と思われる連中がいきり立ち、筋肉悪魔へと敵意を向ける。だが――

 

「まずは主を介抱しろ。これから行事が始まろうとしている中、お前達が俺に剣を向けた所で何一つの得もないぞ」

 

 筋肉悪魔の言葉で刺青悪魔の眷属達は殴り飛ばされた主のもとへと駆けていく。

 続けて筋肉悪魔が刺青悪魔の傍にいた眼鏡の女性悪魔に声を掛けると、眼鏡悪魔はフェイと入れ違いに広間を後にする。自然、眼鏡悪魔を見送るようにしていた筋肉悪魔とフェイの視線が交錯した。

 

「む、おまえは……」

「フェイ!」

 

 訝しむ筋肉悪魔と、既に大広間にいたリアスの呼びかける声が重なる。

 

「フェイ……なるほど。おまえが人間の代表という奴か」

 

 リアスの声に得心した様子で筋肉悪魔は頷くと、フェイのもとへと歩みを進めた。

 フェイもまた無言で筋肉悪魔のもとへと歩み寄っていく。

 そして、二人は同時に歩みを止める。互いが歩みを止めて出来た()に、筋肉悪魔は口角を上げながら構えを取った。

 同様にフェイも構えを取り、そのまま筋肉悪魔と相対する。

 

「フェイ? サイラオーグ? 一体どうしたっていうのよ!?」

 

 戸惑うリアスが声を掛けても、相対した二人は構えながら向き合い続ける。

 

「フェイ様はいったいどうなさいましたの?」

「しっ、少し黙ってて」

 

 レイヴェルが戸惑いながら小声で小猫に尋ねるが、小猫は二人を注視したまま視線を逸らさず、レイヴェルを黙らせる。

 ある程度拳の修行を積んだ小猫には、二人の僅かな動きから想定されるその先の攻防が朧げながら視えていた。

 だが、実際にはほぼ動きがないため、その他の大部分の者にとっては理解の出来ない行動である。

 周囲の奇異の視線を浴びながらも二人は相対を続け、四半刻を過ぎたあたりでフェイが表情を緩め構えを解く。

 遅れてリアスにサイラオーグと呼ばれた筋肉悪魔が構えを解いた。

 

「参りました」

 

 一礼し、声を発したのはフェイだった。

 

「俺もまだまだ修行が足りない。いや、これほどまでに修行されている悪魔がいるとは思いもしなかった傲慢さを恥じ入るしかありません」

 

 そう続けたフェイの言葉に、サイラオーグも苦笑しながら答える。

 

「フェイ、おまえは魔術師と聞いている。それでこれだけの修練を積んでいるのだ、本来は魔術と格闘を合わせた型なのだろう。それならばこんな形では実力は測りきれんさ。……意外とこんな行事も参加してみるものだな、少しゲームが楽しみになってきた。――申し遅れたが、俺はサイラオーグ・バアル。バアル家の次期当主だ」

「人間の魔術師、バハムートの信徒フェイです」

 

 フェイとサイラオーグは改めて挨拶と共に握手を交わす。

 その様子を見ていたリアスが、胸を撫で下ろして二人に声を掛ける。

 

「フェイ! サイラオーグ! 貴方達はいったいなんなの!? あまり驚かせないで頂戴!」

「あまり声を荒げるものじゃない、リアス。それとすまんな、一目見て()()()ようだから試したくなった。まあ、フェイも同じ事を考えたようだからお互い様だ」

 

 サイラオーグは半ば怒鳴るような形となったリアスを窘めながら、悪びれた様子もなく謝った。

 続けてフェイもリアスに頭を下げる。

 

「すみません、拳士の性分とでも思ってください。しかし、失礼ながら悪魔もなかにもこれだけの修行を積まれている方がいるのは驚きました」

「……仕方ないわね。サイラオーグは悪魔としては一風変わっているかもしれないけれど、その実力はフェイが感じたとおりよ。若手悪魔のナンバー1と言われているわ。ついでに言えば、私の母方の従兄弟にあたる関係よ」

 

 リアスは謝っておきながらも反省の色の見えないサイラオーグとフェイに苦笑をしながら、フェイに語りかけた。

 フェイはその内容を受けて、軽く考え込む。

 純粋なモンクとしての実力は相手(サイラオーグ)が上、さらにバアルの家系ということは、リアスと同様に滅びの魔力を継いでいるということになる。悪魔として魔力を扱うことも考えると自身(フェイ)の上位互換とも言える相手だ。

 だが、まだ情報収集は行っていない。この先の戦い方を検討するにも材料が足りない――。

 そこまで考えると、フェイは情報収集をするまで一旦分析を棚上げにすることにした。

 一方のサイラオーグは鷹揚に周囲を見渡すと、ふむと頷く。

 

「すこし()()に気を取られていた間に大分片付いたようだな。アガレスも戻っているようだし、初顔合わせの眷属もいる。改めて若手同士で挨拶でも交わすとしようか」

 

 フェイの知る事ではないが、サイラオーグをよく知るものからみれば大分機嫌が良さそうに彼が声をかけると、フェイとサイラオーグの対峙を遠巻きに見ていた面々が二人の側へと集まっていき、用意されていた席へと着いていく。

 その中にはリアスやフェイの後に到着していたシトリー達に加えて、先ほど退出していった眼鏡悪魔も含まれていたが、サイラオーグに殴り飛ばされた刺青悪魔とその眷属は含まれていなかった。

 悪魔達は眷属を後ろに控えさせ、主のみ席に着くような形を取っていた為、フェイもナティの無言の圧力に圧されるような形で独り席に着き、王同士の挨拶が始まった。

 

 最初に口を開いたのは、先ほど一度広間から退出していった眼鏡悪魔だった。

 

「私はシーグヴァイラ・アガレス。大公アガレス家の次期当主です。――先ほどは見苦しいところを見せました」

 

 眼鏡悪魔ことアガレスが挨拶の後にそう一言加えて軽く頭を下げる。

 先ほどサイラオーグが刺青悪魔を殴り飛ばした騒動に関わっているのだろうとフェイは推測する。

 それを裏付けるかのように、フェイがこの広間に来る前に到着していたリアスが慰めるように首を振った。

 

「あれはグラシャラボラスから絡んできたのでしょう? あまり気にしすぎないことね。私はリアス・グレモリー。公爵グレモリー家の次期当主です」

「俺はサイラオーグ・バアル。大王、バアル家の次期当主だ。――もう過ぎた事だ、リアスの言う通り気にするな」

 

 リアスに続けてサイラオーグが名乗りを上げると共にアガレスに一言をかけると、アガレスもまたそれに頷く。

 

「僕はディオドラ・アスタロト。アスタロト家の次期当主です。皆さんよろしく」

 

 アガレスが一息つくのを待っていたかのように、フェイよりも先に到着していた悪魔のうち、騒ぎに加わっていなかった様子の少年の悪魔が口を開いた。

 その様子を見ていたフェイは、密かに警戒度を引き上げていた。

 柔和な雰囲気を保つアスタロトだが、微かに獲物を見定める気配も感じる。余人はほぼ気づかないような微かな気配ではある。フェイもそれが師匠(ナティ)眷属(イリナ)に向いていなければ気づかなかったかもしれない。

 無害な外面に覆い隠された悪意というフェイの世界のデヴィルに近い性質(モノ)を感じたフェイは、他の悪魔とは別の意味で気を付けなければならないと、内心で考える。

 

「私はソーナ・シトリー。シトリー家の次期当主です。よろしくお願いします」

 

 フェイがアスタロトを警戒しているうちに、シトリーが挨拶を行った為、フェイもそれに続くように挨拶を始めた。

 

「俺はフェイ、人間の魔術師です。悪魔や天使、堕天使達との会合上では当面の人間代表という扱いになっています。今回はレーティングゲームにも参加する為、同席させてもらっています」

 

 先ほどのサイラオーグとの対峙の際に人間であることを名乗っていた為か、驚きは少ない。

 微かに後ろに控える眷属同士でのどよめきが見受けられるが、その王達は落ち着いたものである。

 

「煩い奴が退場していて丁度良かったかもしれんな。だが、フェイを人間と甘く見ていると痛い目をみるやもしれんぞ」

 

 サイラオーグがそう言って薄く笑みを浮かべた。その言葉に、むしろ甘く見てもらっていた方が後々楽ではあったとフェイが苦笑を返すが、フェイの事を知らないアスタロトとアガレスはサイラオーグの言葉をあまり重要とは受け止めていない様子であった。

 その後も当たり障りのない範囲での互いの近況や、レーティングゲームに参加する残りの一人――サイラオーグが殴り飛ばした刺青悪魔がゼファードル・グラシャラボラスといい、お家騒動により次期当主が変わったばかりの者であることなどの情報を交換を行う。しばらくすると、廊下へとつながる扉が開かれ、使用人が広間へと入ってきて参加者たちに一礼するとこう告げた。

 

「皆様、大変長らくお待ちいただきました。魔王様方並びに冥界重鎮の皆様方、堕天使と天界の代表様方がお待ちです」




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