ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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長らく更新出来ずに申し訳ありませんでした。


3話

「ハハハハハハハハッ!」

 

 レーティングゲーム参加者達、そして悪魔、天使、堕天使の代表達が居並ぶ会場に、魔界の重鎮達の笑い声が響き渡る。

 一通りの式典を執り行い、サーゼクスが挨拶の締めにと各参加者に今後の目標と意気込みを問いかけた。

 その問いかけにサイラオーグやリアスが答え、続けてシトリーが答えた直後の事だった。

 シトリーの目標は既にフェイが聞いていたように、下級悪魔や転生悪魔でも通えるレーティングゲームの学校を作ること。

 それを聞いた魔界の重鎮達の反応は、フェイが危惧した通りのものだった。

 それは無理だ、滑稽だなどと、口々に嘲笑の言葉を並べ立てる重鎮達。

 しかしシトリーはそんな嘲笑にも正面から相対し、本気であると高らかに宣言する。

 だが――

 

「ソーナ・シトリー殿。いくら悪魔の世界が変革に迫られているとはいえ、変えて良いものと変えるべきではないものがありるのですぞ。転生悪魔、下級悪魔は上級悪魔に仕えその才能を見出されるという伝統を、旧家の誇りを、そのような養成施設で汚されては困りますな」

 

 重鎮は諭すような言葉をシトリーに投げかける。

 

「なんで会長の――ソーナさまの夢を馬鹿にするんスか!? 俺達は本気で――」

「口を慎しみたまえ。 全く……下僕の躾がなっておりませんな、ソーナ殿?」

「……申し訳ございません。後で言って聞かせます」

 

 その言葉にシトリーの眷属である匙が反発するが、その行為もシトリーに頭を下げさせる結果となるだけだった。

 

「会長! どうしてですか! 俺達の夢を馬鹿にされて、どうして黙っていられるんですか!」

「サジ。お黙りなさい。今、この場で私は将来の目標を語っただけ。()()()()そのような態度を取る場ではないのです。」

 

 それでも匙はシトリーに食い下がるが、当のシトリーに諌められ口を閉ざした。

 

「――確かに、滑稽ではあるか」

 

 そこで投げかけられた言葉には、魔界の重鎮達、そしてシトリー本人も顔色を変えて発言者を振り返った。

 当の発言者――フェイは涼しげな顔で注目を集め、その隣のナティは軽く頭を抱えていた。

 

「どういうお積りですか?」

 

 目を細めたシトリーがフェイに問いかける。

 問われたフェイは肩をすくめて答えた。

 

「言ったとおりの意味だ。伝統、誇りと取り繕った所で、格下と見ていた者達に知恵や力をつけられて追い落とされるのが余程恐ろしいと見える。それが非常に滑稽だな、と」

「貴様――人間の代表だったな。人間風情が我々を滑稽だと!?」

 

 フェイの言葉を受けて重鎮達が色めき立つ。

 

「ああ、滑稽だとも。真に力を持った()()という自負があるのなら、()()の者たちがいくら力をつけようが実力で跳ね除ける位の気位が欲しいものだ。実際俺は特例としてフェニックスとのレーティング戦に参加したことがあるが、フェニックス――ライザー・フェニックスは貴族としての傲慢さこそあれど、リアス・グレモリーに訓練期間を与えるなど、上位の者としての気位は感じられた。ただ()()として生まれたということに胡坐をかいている連中と違ってな。そもそも――既に悪魔だけの『レーティングゲーム』は終わろうとしている。こうして俺がここに並んでいるのが然り、そしてそちらに天使や堕天使がいるのがまた然り。なにも今の秩序を完全に捨てて全ての者の相手をしろと言う訳ではない。例えば下級悪魔だけでゲームを行い、そこで勝ち残った者だけが上級へと挑戦できる形でもいいだろう。下級の者にも機会は与えられるべきだ。――それでもまだ与えられただけの立場にしがみ付こうというのか?」

「人間めっ、言わせておけばっ!」

「そこまで」

 

 フェイの挑発交じりの言葉に激昂した悪魔達が、荒々しく立ち上がろうとする。

 だが……たった一言。サーゼクスがたった一言を発しただけで、場は静まり返った。

 

「フェイくん。事実ではあっても流石にその言い方はどうかな。それ以上は見過ごせなくなってくるよ」

 

 穏やかに語るサーゼクスだが、その言葉を受けるフェイは途方もない圧力を感じ取っていた。

 

「――だが、彼の言っている事もまた間違ってはいない。『悪魔の駒』は既に他陣営との技術交換を始めており、彼は人間でありながら『眷属』を持つ『レーティングゲーム』参加者の一人だ。そしてこの先天使陣営、堕天使陣営の『駒』所有者達と交流戦を行っていくという計画がある。技術は既に悪魔のみならず広がっているのだ。『レーティングゲーム』を上級悪魔のものとも言えなくなっているのではないかな?」

 

 続けて発せられたサーゼクスの言葉に、悪魔の重鎮達は何も反論できずに黙り込んでしまう。

 技術を広めた当の本人であるサーゼクスが良く言ったものだ。とフェイが内心で考えていると、サーゼクスの矛先は更にフェイへと向けられた。

 

「とはいえ、だ。フェイくんの言葉は流石に挑発的に過ぎた。ならば、それだけの言葉を吐くだけのモノをみせてもらわないとね」

 

 それだけを言うとサーゼクスはニヤリと笑い、続ける。

 

「サイラオーグ、君程の実力者になってしまうと人間相手は歯ごたえがないかな?」

「いえ、この上なき相手です」

 

 サーゼクスの言葉に、待っていたとばかりにサイラオーグが頷いた。

 

 

 ◇◇◇

 

「まったく、フェイは落ち着いているようでいつもとんでもない事をするんだから!」

 

 リアスがため息を漏らす。

 顔合わせの式典は波乱を残しつつも終了し、フェイ達はオカルト研究部の面々と合流していた。

 

「それでサイラオーグ様との戦いは想定通りかな?」

「少々出来過ぎですがね」

 

 苦笑する木場の問いかけに、フェイは頷きを返す。

 

「呆れた! じゃあ、あの言動は狙ってやっていたの!?」

「ええ、アレだけ大言壮語を吐けば実力を見せてみろ、位にはなるかと」

「全く、放っておいてもいずれ『レーティングゲーム』は出来たというのに」

 

 開いた口が塞がらない様子のリアスに、フェイはしれっと答えた。

 ナティもリアスと同じように呆れを顔に出してはいるものの、あの場面であのような言動を行った理由も含めて察している為、諦め混じりに嗜めるのみだ。

 

「いくらシトリーの為とはいえ、あそこまで言ってしまえば他の悪魔の風当たりも強くなるでしょうに」

「だからこそ、ですよ。本気で闘って実力を見せないと、人間はいつまでも舐められたままです」

 

 フェイの言葉にもう手が付けられないとばかりにナティは肩を竦め、他のバハムート眷属達に声をかける。

 

「アンタ達も引き返すなら今のうちよ。フェイに着いて行くととこの調子で地獄の底まで付き合わされるかもしれないわ」

「師匠が行くならどこへだろうとお供します」

「悪魔なら地獄の底なんて軽いものですわ。もっとも天界の頂であってもフェイ様がいるなら構いませんわ」

導師(メンター)ナティ、そんな問いかけ今更すぎますよー」

 

 ――当然、引き返すなどと答えるものは居なかったのだが。

 

「それで、私たちはグレモリー領に戻って合宿、皆の戦力強化をするけど、あなた達はどうするの?」

 

 リアスがフェイへと問いかける。

 あの式典の際に、デビュー前の非公式戦としてフェイ達バハムート眷属とサイラオーグ眷属とのゲームが定められた他、グレモリー眷属とシトリー眷属のカードも打診された。リアス、及びシトリーはそれに諾と答え、それぞれのゲームは二十日程先に行われる事となった。

 リアス達グレモリー眷属も、非公式戦とはいえ間近にゲームが迫ることとなり、その準備に追われることとなる。

 オカルト研究会の副顧問であるセラフォルーはこの場には居ない。魔王としての政務に忙殺されている身だ。

 そして顧問という立場を持つアザゼルがフェイが答える前に口を挟んだ。

 

「会議で言っていた通りでいいんだよな? グレモリーの面倒は俺が見る。お前等はお前等で何かやるんだろ?」

 

 フェイはアザゼルの言葉に頷きを返す。

 そしてサーゼクス達にこの先の予定を告げた時には居なかったグレモリー眷属達にも、フェイはこの先の予定を告げた。

 

「俺達はしばらく()()()()に戻ります」

 

 ◇◇◇

 

「うわー、月が二つある! 本当に別世界だー!」

「全く……子供じゃあるまいし、そこまではしゃがなくてもよろしいでしょうに……」

 

 フェイ達の元居た星であるオアースに着いた途端、はしゃぎ出したイリナとそれを嗜めるレイヴェル。

 当のレイヴェルも未知の光景に刺激を受けていたのだが、小猫が済まし顔でフェイの傍に控えていた為、己の矜持をかけて我慢していたのであった。

 そして小猫の内心もまたレイヴェルと同様で、どちらが先に好奇心に負けるかの我慢大会の様相を見せていた。

 

 そんな無益な争いに終止符を打ったのは、世話が焼けるとため息を吐いたナティであった。

 

「アンタ達は飽きないわねぇ……、全く。さて、各自で伸ばすべき分野や内容が違うから一箇所にまとまって仲良く修行というわけにはいかないわよ。 ――特にレイヴェル。貴方は『僧侶』として魔術の腕を伸ばす必要があるわけだけれど、貴方の魔術は悪魔としての本質といえるもの。()()()()()しっかりとこちらの魔術理論を学んで貰うわ。そこは前から言ってあったわね?」

「――ええ、一時的とはいえ皆様と離れるのは心細くありますが、役目は果たしますわ」

 

 ナティの宣言と確認に、レイヴェルが頷きを返す。

 レイヴェルが悪魔として備える呪文行使能力は、悪魔としての血統から大いに影響を受けるフェイと同様のソーサラーに近いものである。

 その為フェニックスの一族であるレイヴェルが扱う魔法も、炎の属性に大幅に偏っている。

 フェイとナティは長所のみを磨くか、それとも出来る事を増やすか……と検討した結果、究極の魔道師(アルティメット・メイガス)への道を見出した。

 元より持っている魔法の才能に加えて、魔術理論を高いレベルで修めなければ成り立たぬ非常に困難な道である。

 才能と努力。どちらかで挫折することがあれば、確実に中途半端な魔術師で終わってしまう。

 そんな道を示したのにも関わらず、レイヴェルは躊躇うことなくその道を選択した。

 

「ここで立ち止まってしまう位なら、最初からフェイさまに従わず無難な道を進みますわ」

 

 レイヴェルは気丈にもそう嘯く。フェイもレイヴェルのその心の強さを信じていた。

 だからこそ、元の世界で伝手のある賢者(ウィザード)に一時的とはいえレイヴェルを預ける決心もついた。

 

「フェイは今更アタシが見れるような所もないわ。――正しく言えば、真面目に修行する部分では――だけど」

 

 ナティの棘の混じった言葉に、フェイは申し訳なさそうに頭を掻く。

 

「そんな態度を見せるくらいならもうちょっと――まあいいわ。そんな訳でフェイは自分の修行は自分で面倒見ること」

 

 フェイの態度に頬を膨らせながらもナティは淡々と告げる。

 そして渋々ながらも後の言葉を続けた。

 

「……あとは小猫もフェイが面倒みること」

 

 フェイと小猫の得意分野を考えれば当然ではあるのだが、感情が納得しないレイヴェルは小猫を横目で睨む。

 小猫もそれを敏感に感じ取り、挑発するかのようにフフンと胸を張るのだが――

 

「フンッ、胸をお張りになるには少々盛りが足りないのではなくて?」

「……っ!? この焼き鳥っ! それを言ったら戦争っ!」

 

 ――結局いつもの口論の切欠となるだけであった。

 

「はいっ、導師ナティ。私は?」

 

 鳥猫の口論はいつものことと軽く受け流したイリナがナティに手を上げて質問する。

 

「貴方は私と一緒に行動よ。バハムートのパラディンとして相応しくなるよう、徹底的に鍛え上げてやるわ。ゲームまでにレッドドラゴンを一対一で倒せる位にはなってもらうわよ」

「…………あ、あの……ちょっとハード過ぎませんかね……?」

 

 事も無げに告げられたナティの回答にイリナの遠足気分は吹き飛び一気に蒼褪める。

 

「安心しなさい。死なないように――いえ、死んでも大丈夫なように私が一緒なんだから」

「ま、マスター……助け……」

 

 フォローをするようで追い討ちをかけるナティの言葉に、イリナは縋るようにフェイの方を見るが――フェイは黙って首を横に振るのみだった。

 




感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。

D&D知らない人向け無駄知識

惑星オアース。
 大いなる転輪世界に存在するフェイ達の故郷の星。
 地球とほぼ同じ大きさで、環境も近いが魔法的特性が強い。
 オアースの自転周期は24時間丁度。
 オアースの太陽であるリガの公転周期は364日で、1年は地球よりやや短い。
 またルナとセレネという二つの月が存在するがこれらは衛星ではなく、
 リガも含めてオアースを中心に公転している惑星(恒星)である。
 科学的におかしい? 神の力は偉大。




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