ハイスクールD&D 転輪世界のバハムート   作:生ハムメロン

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ルビ周りを少々修正(4/12)


6話

 この世界での悪魔の契約は大分機能化されているようだ。使い魔が『欲』を持つ者に召喚術式を組み込んだチラシを配り、それを受け取った者が願いを込めて召喚する事で初めて『顧客』となる。

 召喚された悪魔は『顧客』の願いの聴取り調査を行い、願いの内容に応じて要求する報酬を提示する。提示した以上に報酬を要求することもない。

 報酬が支払えなければ破談となるが、破談とならぬように代案などを提供するのも悪魔の手腕である。

 なるほど、とフェイは感心する。やっている事は元の世界で冒険者に依頼を出し、報酬の払うのと変わらない。あとは気になるのは悪魔に依頼を繰り返すと自動的に地獄に行く仕組みになってしまうのか。

 元の世界でのデヴィルは売魂契約により対象を堕落させ死後の魂を刈り取るが……。

 

 フェイはオカルト研究部に滞在する傍らで、契約が破談しては『顧客』の評価は高いという兵藤の様子を見て、この世界の悪魔の活動がどのように行われているのかに興味を覚え、兵藤の仕事に同行する事にした。

 兵藤が魔方陣による転移が出来ないため、直接『顧客』の元へ向かうのも都合が良かった。

 

「なんで……自転車より……速いん、だよ……」

「鍛えてますから」

 

 自転車のハンドルに寄り掛かり、息も絶え絶えの兵藤が涼しげな顔をした徒歩のフェイに漏らす。

 自転車も便利な道具のようだが、早足で時速18マイル(28キロメートル)、疾走すれば時速36マイル(56キロメートル)を出せるモンクの機動力と競うのが間違いなのだ。……少し大人げなかったと反省はしている。

 

 兵藤と共に『顧客』の家に入ろうした時に、フェイは屋内の異常を察する。

 玄関も半ば開かれたままとなっている。『悪魔』を迎え入れる為……でもなさそうだと判断。

 

「兵藤先輩、先に行きます。先輩は合図したら後から来て下さい」

 

 それだけを伝え、フェイは気配を殺して玄関から入り込む。玄関を入った時点で気付く程の濃厚な血の臭い。これでは住人は無事では済むまい。"竜の感知能力(ドラゴン・センス)"は廊下を進んだ先の居間、血の臭いの発生源に何者かが居る事を知らせている。他の気配は感じない為、そのまま居間へと進む事にする。

 居間に入って目に付いたのは死体。それも上下を逆に磔にされた男の死体。痛めつけられて殺されたのか、体中に傷がつけられ臓物も溢れ出ている。そんな悪趣味なオブジェを作り出したのは……

 

「おやおや、この家の家族かな? 不法侵入者かな? でもでもコレを見て涼しい顔をしてるだなんて()()()だったりするのかな!?」

 

 おそらく年の頃は十代であろう白髪の少年だった。聖印(ホーリー・シンボル)を下げているということは聖職者か。

 

「これはお前がやったのか?」

「イエスイエス、だって悪魔召喚の常習犯みたいだしー、殺すしかないっしょ」

 

 少年のその回答で男の正体を判断する。

 

悪魔祓い(エクソシスト)か」

「イエスイエスイエース! あっ、申し遅れちゃいましたかね。俺のお名前はフリード・セルゼン。とある悪魔祓い組織に所属している末端でございますですよ。別に俺が名乗ったからって名乗り返さなくていいよ。おまえさんがどこの誰であろうと、ぶっ殺しちゃえば関係ないもんね。俺の脳のメモリに余計な名前を記録したくないしさ。だからおとなしくぶっ殺されてちょ。ま、最初は痛いかもしれないけど、すぐに泣ける程快感になるからさ。死ぬ前に新たなMの扉を開こうZE!」

 

 見境いなしか! だが悪魔と敵対している勢力の者は確定。そしてコイツの勢力は……力を持たぬ者を平気で惨殺する連中。ならば相対するには十分だ。

 フェイが構えを取ったとき、後ろから狼狽した声が聞こえてきた。

 

「な、なんだよ、これ……。フェイ、どうなってんだ?」

 

 兵藤だ、合図をしてからと伝えたのにもう来てしまったのか。

 

「んっん~? あれあれ~? これはこれは悪魔くんではあーりませんかー」

 

 兵藤を見て悪魔祓いの口角が釣り上がる。とても嫌な予感がする。

 

「そっちの黒髪のキミは人間みたいだけど、悪魔くんとお友達みたいだし、悪魔崇拝者けってーい! 悪魔とお友達なんて人間として最低レベルのクズだってこと理解してますぅ? まあ何を言ってもぶっ殺すんだけどNE! あ、元々ぶっ殺すつもりだったから変わんないか♪」

「人間が人間を殺すってのはどうなんだよ! おまえらが殺すのは悪魔だけじゃないのか?」

 

 兵藤が悪魔祓いに対して喚くが、この街はよほど平和だったのだろう。人間を殺すのは、人間である事も多い。欲や憎しみばかりでなく、善の道を歩いている者とて身を守る為に人間を殺さざるを得ない状況も多々あるのだ。

 そんな兵藤を悪魔祓いは嗤う。

 

「ハハハ、笑える~。悪魔の分際で俺に説教ですか? ナイスジョーク! お笑いの賞も取れますですよ。 いいかよく聞けクソ悪魔。悪魔だって人間の欲を糧に生きてるじゃねぇか。悪魔に頼るってのは人間として終わった証拠なんですよ。エンドですよエンド。だから俺が殺してあげたんですよ。俺ってば悪魔と悪魔に魅入られた人間をぶち殺して生活してるんで。お仕事なんですよ、お仕事。オーケイ? ま、問答してるカロリーも惜しいので、さっさとぶっ殺されてちょ!」

 

 悪魔祓いが懐から刀身のない剣の柄と、あれは銃という武器だったかを取り出す。

 ブィン、音と共に柄のみの剣から光の刀身が生まれる。あれは元の刀身こそないが太陽剣(サン・ブレード)のようなものか。恐らく悪魔の類いにはより効果があるのだろう。ならばそれが振るわれるより先に。

 

「おおっと! さっすが悪魔崇拝者、こっちから仕掛ける前に襲ってくるなんで卑怯だねぇ。一方的にやられなさいっての!」

「言われてただやられる間抜けがいるか」

 

 鉤爪を出して右から掬い上げるように斬りかかり、左手の籠手で光の剣の斬撃を弾く。バックステップで鉤爪を避けられたので、一歩詰めてからの右の裏拳。手応えなし。

 

「ぐっ」

 

 その声は悪魔祓いではなく兵藤の物だった。悪魔祓いが左手に握っている拳銃から煙が出ている。拳銃の向く先は……兵藤。

 

「ちっ、貴様!」

「おおっと、この拳銃は連発出来ちゃうからね、あんまり近付くと悪魔くんから先に殺っちゃうよ? こんなふうにねっ」

「ぐあぁぁっ」

 

 兵藤の呻き声、また撃たれたのだろう。フェイから距離を取る悪魔祓い、フェイはまず兵藤への射線を封じるように動く。

 

「どうよ! 光の弾丸を放つエクソシスト特製の祓魔弾は! 銃声音なんて発しません。光の弾ですからねぃ。達してしまいそうな快感が俺とキミを襲うだろ?」

 

 異常快楽者め! フェイが悪魔祓いの隙を伺っていたときに横から声がかけられた。

 

「やめてください!」

 

 女性の声。悪魔祓いが視線だけそちらに向ける。フェイもそちらを確認する。

 金髪の若い修道女がそこに居た。

 

「アーシア」

 

 兵藤が声をかける。以前助けたという教会の関係者だろうか。そして悪魔祓いも声をかける。

 

「おんや、助手のアーシアちゃんじゃあーりませんか。どうしたの? 結界は張り終わったのかなかな?」

「! い、いやぁっ」

 

 修道女が部屋の遺体を見て悲鳴を上げる。こういった活動するとは教えられていなかったのか。

 

「かわいい悲鳴ありがとうございます! そっか、アーシアちゃんはこの手の死体は初めてですかねぇ。ならなら、よーくご覧なさいな。悪魔なんぞに魅入られちゃったクズ人間さんにはこうやって死んで貰うんですからねぇ」

「そ……そんな……! フリード神父、その人は……」

 

 青ざめて後ずさる修道女、その視線が兵藤を捉え驚きに目を見開く。

 

「人? 違う違う。コイツはクソったれ悪魔くんだよ。わからなかったのかなかな?」

「――っ、イッセーさんが……悪魔……?」

 

 驚きに言葉を詰まらせる修道女、悪魔祓いはその様子を見て愉快そうに嗤う。

 

「なになに? キミら知り合い? これは驚き大革命。悪魔とシスターの許されざる恋とか? マジ? 駄ー目だよ、アーシアちゃーん。悪魔と人間は相容れません! 特に教会関係者なんてね! その上俺らは神にすら見放された異端の集まりですぜ? 俺もアーシアたんも堕天使さまの加護がないと生きていけない半端物なんですぞぉ?

 

 教会の中では異端者ということか。フェイは目の前の悪魔祓いが異端だということに少し安心する。しかし、修道女も異端というのはどういった理由だろうか。

 

「フリード神父、お願いです。この方達を許して下さい。見逃して下さい」

「おいおい、マジですか? アーシアたん、何言っちゃってるかわかってんの?」

 

 涙目で悪魔祓いに訴える修道女――アーシア。それを険しい顔で問いただす悪魔祓い。

 アーシアと悪魔祓いの態度の違いに驚くフェイだったが、同時にアーシアが危険な行動をしているのも理解し、その対応の準備をする。

 

「もう嫌です……。悪魔に魅入られたからといって人間を裁いたり、悪魔を殺したりなんて、そんなの間違ってます」

「はぁぁぁぁぁぁぁ!? バッカこいてんじゃねぇよ、クソアマが! 悪魔はクソだって教会で習っただろうが! お前、頭にウジでも湧いてんじゃねぇのか!?」

 

 アーシアの訴えを憤怒の表情で切り捨てるフリード。

 

「悪魔にだっていい人はいます!」

「いねぇよ、バァァァァァァカ!」

「わ、私もこの前まではそう思っていました……。でも、イッセーさんはいい人です。悪魔だってわかってもそれは変わりません。やっぱり人を殺すなんて許されません! こんな、こんなの主が許すわけがありません!」

 

 恐怖に怯えた顔で、それでも悪魔祓いに物言いをするアーシアに、フェイは聖戦士(パラディン)の如き高潔さを感じていた。この娘を見捨ててはいけない。

 

 バキッ!

 アーシアを殴ろうとした悪魔祓いにフェイの跳び蹴りが突き刺さり、吹き飛んだ。

 

「大丈夫か?」

「は、はい……」

 

 驚いた顔でフェイを見るアーシア。

 

「兵藤先輩を看てやってくれ」

「あ、はい。イッセーさん!」

 

 フェイが声をかけるとアーシアはハッと我に返り兵藤の元へと駆けていく。

 

「おー、痛てててて。悪魔崇拝者くんも不意打ちとは卑怯なりよ。さっすが悪魔くんとツルむだけのことはありますなぁ」

「黙れ、快楽殺人者」

 

 フェイと悪魔祓いが間合いを計っていると悪魔祓いの足元から光が走る。青い光は徐々に魔方陣を形作っていく。

 

「おっと、これは何事?」

 

 悪魔祓いが飛び退くと、魔方陣は光輝き、魔方陣から悪魔達が飛び出してくる。

 

「フェイ君、兵藤君、助けにきたよ」

 

 木場がスマイルを送ってくる。

 

「あらあら、これは大変ですわね」

「……神父」

 

 姫島と塔城。そして――

 

「イッセー、ゴメンなさいね。まさか、この依頼主の元に『はぐれ悪魔祓い』が来るなんて計算外だったの。フェイが居るから大丈夫だとは思ったんだけど……」

「……すみません」

 

 リアスが兵藤に謝るのを見て、フェイもまたリアスに謝る。そのフェイの様子から兵藤を見てリアスは目を細めた。

 

「……イッセー、怪我をしたの?」

「あ、すみません……。そ、その、撃たれちゃって……」

「初めて銃と相対したので庇いきれませんでした、すみません」

 

 リアスは冷淡な表情を悪魔祓いへと向ける。

 

「私のかわいい下僕をかわいがってくれたみたいね?」

 

 底冷えするような低い声。

 

「はいはい。かわいがってあげましたよぉ。本当は全身ザクザクと切り刻む予定でござんしたがねぇ。っていうか悪魔崇拝者くん足癖悪すぎでしょ。なんでおとなしく刻まれてくれませんかねぇ」

 

 軽口をたたく悪魔祓いに、リアスが魔力弾を発射する。悪魔祓いは軽く避けて、背後の家具が消し飛ぶ。

 

「私は、私の下僕を傷つける輩を絶対に許さないことにしているの。特にあなたのような下品極まりない物に自分の所有物が傷つけられることは本当に我慢できないわ」

 

 空気さえ凍りそうな冷徹な迫力。だが所有物扱いはどうなんだ? とフェイは思うが、空気を読んで発言はしなかった。

 殺気が部屋を包み、リアスの周囲に魔力が集結していく。そこに水を差したのは姫島だった。

 

「! 部長、この家に堕天使らしき者達が複数近付いていますわ。このままではこちらが不利になります」

 

 リアスが悪魔祓いをひと睨みする。

 

「朱乃、イッセーを回収しだい、本拠地に帰還するわ。ジャンプの用意を」

「はい」

 

 リアスの指示に姫島が呪文の詠唱を始める。そこで兵藤が叫んだ。

 

「部長!この子も一緒に!」

 

 アーシアを助けたいのだろう。フェイもそれには同意するが――

 

「無理よ。魔方陣を移動出来るのは悪魔だけ。しかもこの魔方陣は私の眷属しかジャンプ出来ないわ」

「つまり俺が残るので安心して下さい、兵藤先輩」

 

 フェイの言葉に兵藤が驚いた顔をする。……のはともかくリアスや姫島まで驚くのはフェイも勝手に眷属の悪魔に含めていたのだろうか。

 

「そ、そうね。気をつけてね、フェイ」

 

 バツの悪そうな顔で言われてもあまり嬉しくはない。

 フェイもアーシアの側に寄って呪文の詠唱を開始する。

 

「逃がすかって!」

 

 悪魔祓いが切り込んで来るが、塔城が大きなソファを持ち上げて投げつける。それを光の剣で薙ぎ払う間に魔方陣が輝き、リアス達の姿が消える。

 

「じゃあ、俺たちも」

「ど、どうやって逃げるんです?」

 

 慌てて問いかけるアーシアに笑って答える。

 

「こうやってさ……イセリアルの扉よ、我らを彼の場所に運び給え」

 

 瞬間移動(テレポート)の呪文が完成し、フェイとアーシアの姿は掻き消えた。

 

「んなっ、魔方陣もなしに転移するとか悪魔崇拝者くん実は悪魔なわけ!?」

 

 一人残された悪魔祓いの叫びは惨劇の居間に虚しく響いた。




思ったより分量が増えてしまいました。精進せねば。


感想・指摘などありましたらよろしくお願いします。
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