Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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「白色空間」




36. Blanc espace

 しばらくアリサと関わるな、か。

 ……仕方、ないよね。

 だいたい、一瞬でもアリサのことを怖がった僕だから……アリサに会う資格もないよ。

 でも、

 

「……謝りたいな」

 

 そんなこと、できないのも分かってる。

 また、同じようなことになるかもしれないし……二木さんの言ったとおりなら、謝るには遅すぎる。

 まだ、生徒にいじめられていたなんて思わなかった……僕との確執が原因だと思ってたから。

 でも、関係がなかった。

 不破さんは一夏と仲がよかったからもとから少なくない人に疎まれていて、そこに僕との関係性までがあったから余計に嫉妬されてたんだね。

 僕との噂はただの起爆剤。

 状況は似ているのにリンたちが何にもされていないのは、多分アリサの雰囲気が小動物みたいだから。

 この間の原田さんの件で多くの人が見方を改めざるを得なくなったみたいだけど、それでも納得できない人はいると思う。

 悪い子じゃないのに……周りの環境がアリサを苦しめてるのかも。

 

「シャルル、大丈夫か?」

「ん……ありがとう、一夏」

 

 一夏の優しさには下心がないから素直に受け入れられる。

 多分、女の子に対する興味が薄いから何だろうけど……今は、その優しさが素直にありがたい。

 でも、リンとラウラは大変だね。どうにかして一夏の中に女の子に対する興味を芽生えさせなきゃいけないんだし。

 

「シャルル。俺、一つ思いついたんだ。でも、これは結果的にいろんな人に迷惑をかけるだろうし現実的じゃないと思うから……」

「思いついたって?」

「あぁ、そっか、そこからか」

 

 一夏は何を思いついたんだろう?

 少しためてニヤリとした得意げな笑みと共に、

 

「不破さんをちょっとだけ助ける方法」

 

 そう言った。

 

 

 一夏の提案した方法はすごく単純だった。

 前にアリサが一夏に対して提案した一夏が僕を助ける方法と同じくらい根本的なところを突いてるし、僕と一夏が協力しないと実行できない。

 必要なのは、僕の勇気。

 いろんな人を困らせてたとしてもアリサを助けたいっていう気持ち。

 でも、僕はどう思ってるのかな。

 確かにアリサのことは大切だと思ってるけど、アリサのためにもっと多くの人を不幸にする可能性に賭けられない。

 自分でも、薄情だと思う。

 アリサは身を挺して……精神的に辛いことも我慢して僕を助けてくれたのに、僕はアリサを助けるための覚悟ができない……

 

「アリサは、なんであんなことができるんだろう……?」

 

 初めてあったときからアリサは僕の数歩先を行ってる。最初はISに乗るための覚悟を教えてくれたし、今は彼女の全てを代償に僕を守ってくれてる。

 育ちなら、僕の方が苦労しているのに……なにが違ったんだろう。

 ……ダメだ。考えが纏まらないし、一日寝て、また明日考えよう。

 

「一夏、おやすみ」

「ああ、おやすみ」

 

 いい夢見たいな……

 

 ◇

 

「あぁ、やっときた!」

「ま、早い方だったと思うけどな」

 

 ……あれ、誰?

 白い、壁も床も天井もわかれていない空間で僕は誰かに会ってる。

 誰だろう。

 二人とも声はするのに姿が見えない。

 

「まぁ、待ってろ。すぐ見えるようになるから」

「私はこのままでもいいと思うんだけどねぇ……」

「そう言わずに、ここは協力してくれよ嬢ちゃん」

 

 段々と二人の輪郭が浮かび上がってきて……

 ひとりは僕たちと同年代の男の人。

 もう一人は……アリサ?

 

「だいせいかーい、おめでと! ……でもね、ちょっと違うよ。私は本来のアリサ。あんなにネガティブじゃない。あぁ、あと、本来の私はもっと可愛い服着てて髪の毛もこうじゃないんだけど本当の姿を見せたら(あの子)が困るからね」

 

 ……アリサの姿を借りてるってこと? 確かにアリサと違ってクール? な感じだし納得かも。

 …………うん、夢だね。

 夢の中で夢って気付くのも珍しいなぁ。

 

「今、私達はISのコアネットワークを介してあなたの無意識に干渉してる。あぁ、もちろん私達の発信元はあなたの知る不破アリサよ」

 

 夢にしては現実的な言葉が出てきたけど夢だよね!

 

「嬢ちゃん、そんないっぺんに言っても混乱するだけだと思うぞ?」

「でも(あの子)が起きる前に全部伝えないと!」

「ま、そうだけどさ」

 

 えっと、今、私達って言ったよね? じゃあ、男の人の方もアリサと何かしらの関係があるってことなの?

 女の子の方は二重人格とかで納得できないこともないけど……

 

「二重人格じゃないよ。私はあの子に食べられちゃった不破アリサ。あぁ、もちろん比喩よ?」

 

 どういうこと?

 

「私はね十歳の誕生日の後、しばらくして壊れちゃったの……その原因はこの男。なんでか知らないけどね、誕生日を迎えた瞬間にこの男の記憶とか人格とか……まぁ、いわゆる人間の中の(形の無いもの)全部がごそっと私の中に溢れかえったの」

 

「続けるよ? それで私は苦しんだ。だって、いきなり知らない人の知らない記憶が自分のものになったって受け入れられる訳ないじゃん。楽だったのは最初の数日だけだったよ」

「ちなみに俺も同じだ。いきなりこの嬢ちゃんの記憶が溢れて、嬢ちゃんと同時に壊れた」

「今の不破アリサはそのときに生まれたの。壊れた二つの精神を無理矢理繋ぎ合わせて人の形に押し込めたの。まぁ、必要のない記憶は省いたけどね」

 

 必要のない記憶って?

 

「背中の傷のこととその原因とか、ね。とは言っても(あの子)も最近気づき始めたけどね」

 

 え?

 

「知ってるかもしれないけど九歳の時に学校で火事が起きたの。その時に、この火傷痕が出来た。そこまでは私(あの子)も知ってる。でもね、原因は知らない」

 

 原因って……なに?

 

「もう気付いてるんじゃない? まぁいっか。見ての通り、私は可愛いから同級生の男子にからかわれてたのよ。あの日は理科の実験でバーナーを使ってた。男の子は火なんて怖くないぞって強がって、あろう事か私にバーナーを向けてきた」

 

 それで、服に火がついて……とか?

 

「それだったら傷痕はもっと酷いことになってたわ。私は、そのバーナーを叩き落としたの。私達の学校は木造でさ、先生もお爺ちゃんだったからすぐには動けなくて火は止まらなかった。唯一、私だけがその落ちたバーナーを拾える場所にいたけど、一人でトイレに逃げたの」

 

 それで火が燃え広がったんだね?

 

「でもトイレだって燃えるからね。結局私も火に巻かれて、でも運が良かったのかな。そのクラスで助かったのは私だけ。先生も生徒も皆逃げ遅れた。遺体はね……先生が、皆を抱きしめて守るようにしてたんだって。感動的だね」

 

 ……それで?

 

「あとは分かるでしょ? 唯一の生き残りで火事の原因を知ってるのも私だけ。あんな怖いこと誰にも言えなくて、だから誰も私を責めない……だから、自分で自分をヒトゴロシ! って責めて。すごく、苦しかった」

 

 だから、そういう記憶はアリサに渡さなかったの?

 

「うん。でもね、やっぱり傷痕と一緒に引き継がれたみたい。自分を軽視して人を助けるのもトラウマみたいなもの何じゃないかなー?」

 

 ……自分だけ助かったから罪滅ぼしのつもり?

 

「かな。でもそれだけじゃないよ。一人になりたくないの。捨てられたくないの。自分はヒトゴロシだけど、それ以上に価値があるってことを示さないといけないの……まぁ、(あの子)の罪はもっと増えたみたいだけどね」

「それは、俺のせいだな。契約で戦争に加担するなんて今だと考え無しだったと言わざるを得ない」

 

 契約? 戦争?

 

「あぁ、いや、気にしないでくれ。とにかくあの子は普通の女の子よりはるかに重いものを背負ってる。それだけは知っておいてくれ」

「あぁ、そうそう……(あの子)は、自分が生ゴミ以下の人間だと思ってる。私達のせいでね。だから、あまり、(あの子)を必要としないで……できれば放っておいてあげて。必要とされると、求められたことに一生懸命になっちゃうのよ。自分の価値を認められたと思って嬉しくなっちゃってさ。でも、必要じゃなくなったとき、余計に傷つくの」

 

 よく……わからないよ。

 

「簡単に言えばね。(あの子)は都合のいい存在なの。助けが必要だって言えば喜んでついていくし、もういらないって言われれば涙をこらえて身を引くの。こればっかりは、直らないわ。まぁ、それを利用して(あの子)を使い潰すかどうかはあなたの勝手だけどさ」

 

 そんなことしたくない……でも、もうしちゃってる。

 僕の知らないところで、アリサは頑張ってた。

 

「え? そうなの? ……ふーん、じゃ、ちょっとずつ変わってきてるのかもね。自分から何かをやるように出来てないはずだし」

「ま、一安心だ」

 

 よく分からないけど……ダメなことじゃないんだね?

 

「うん。というか相当いいことだよ。いいこと聞けたからいいこと教えたげる。あなたたちが考えてること、多分、いい結果につながるわ」 

 

 一夏が考えた奴?

 

「お、じゃあ俺も。シャルロット・デュノア。君の次のルームメイトはラウラ・ボーデヴィッヒだ」

 

 そ、そうなんだ……?

 

「ま、てことでバイバイだよ。機会があればまたね。ほら、起きな」

 

 ん……もう、朝なんだ……

 

「ああ、そうだ、その作戦実行したら、(あの子)にフォローよろしくって言ってあげて。でも、その代わり、あの子が暴走しないように見張ってあげてね。やりすぎてたらやめろって言えばいいから」

 

 ◇

 

「ええと、今日は皆さんに転校生……? を紹介……? します。ええと、それではどうぞ」

「シャルロット・デュノアです。皆さん、改めてよろしくお願いします」

「ええと、デュノア君はデュノアさんでした……部屋割り……」

 

 え……シャル、何でいきなり?

 

「女?」

「ああ、美男子じゃなくて美少女だったのね、残念」

「私は美少女でもそれはそれで美味しく」

「てか、織斑君と同室と言うことは……」

 

 あぁ、クラスが騒がしく……織斑先生に自重できないならシャルに近づくなって言われましたけど、これはクラス代表の仕事ですよね。

 あとそこの二木さん……シャルに手を出したら一松さんを寝取りますよ?

 

「はい、皆さんシャルが可愛いのは私が知っていますから、というか私だけが知っていればいいのでお静かにお願いします! 怪我してても私、仕事はします。ついでに私に負担をかけると織斑先生が怒ってくれるらしいです」

「あれ、だいひょー、接触禁止は……?」

「先週まで在籍していたシャルル・デュノアとの接触禁止であって、今週転入してきたシャルロット・デュノアは別人なので関係ありません。なので問題は、」

「無いわけないだろう、馬鹿者」

 

 えー……織斑先生は頭が固いです!

 って、シャル、どうしました?

 ん? 耳を貸して?

 

「……フォロー、よろしくね?」

「…………」

「ふぅ」

「ひゃん!?」

 

 し、思考停止している耳に息ふぅしないでくださいよ!

 び、びび、びっくりしたぁ!

 ……でも頼まれちゃったので頑張ります!

 とりあえずはイグニッション・プランを停滞させて……親父(パパ)に発破かけて……シャルにいろいろしてあげられます!

 

「でも、アリサの傷がまた開くのはイヤだから当分は大人しくしてて?」

「わ、わかりました」

 

 んー……?

 傷痕のこととかなにも解決してませんけど……シャルが笑っているからいいかな。

 どう思われてても必要としてくれてますし。

 

「不破、デュノア、もう一度言うが接触禁止だ」

 

 ブゥブゥ

 私の脳内会議はブーイングの嵐ですよ!




巡×アリサ(真)
なんてカプもありかもですね。
ってことでチラシの裏



「いいのか? あんなこと言ったら、またあの子頑張りすぎちゃうんじゃないか?」
「そうね。でもきっと大丈夫よ。あの子は捨てられないわ」
「でも、失敗したら」
「しないわよ」
「……随分買ってるんだな? 恨んでるんだと思ってたよ」
「恨んでないわよ? あの子のおかげでこうして巡といられるんだから。だいたい恨むなら貴方を恨むわよ」
「ロリコンの気は無いんだけどなぁ」
「いいじゃない。背徳は蜜の味よ?」
「辛い方が好きだ」
「巡ってマゾだったのね」
「……つらいって読むんじゃねぇ」


男人格「メグル」と「10歳までのアリサ」はアリサの中でラブラブな設定(
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