Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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48.Une infraction et punition

「んっ、あぁん! い、一夏さん、もっと優し、ひゃぁぁぁん!」

 

 ……

 

「だ、だめです、そこは、あぁん! ……い、いえ、き、気持ちいいですわ、あっ!」

 

 セシぃ……中で何をしてるんですか!?

 ……というかナニをしてるんですか?

 

「あ、アリサ、か、確認してみてよ、お願いだから!」

「り、鈴ちゃんが気になってるんだから自分でっ!?」

「バカっ! 声大きいわよ!」

「むぐ、むーむー!」

 

 鈴ちゃ、苦し……!

 

「鈴、不破の顔が青くなってるぞ?」

「ふ、ふん、イギリスのメスぶ……メス猫は喘ぎ声もはしたないな」

 

 し、篠ノ之さん、助かりました……というか私が名前呼ばないからって苗字呼びに戻しましたね!? いえ、構いませんけど。

 というかラウラさんは今、セシぃのこと雌豚って言おうとしましたよね?

 確かに、あの無駄に大きな胸部の脂肪塊は豚……さんを想像させますけど!

 ……織斑先生と織斑君の部屋――通称、織斑部屋の前に集まってひそひそ話している赤面した五人……他の生徒からはどういう風に見えるんでしょうね?

 

「というか、時間を改めて来た方がいいんじゃないでしょうか」

 

 私がそう提案した時、新たな声が部屋から聞こえてきました。

 織斑君でもセシぃでもなく織斑先生の声です。

 

「ふん、歳不相応な下着だな。期待してたのか?」

 

 さ、3P!?

 やっぱり、一刻も早くここから離れるべきです!

 シャルもそう思いますよね!?

 

「ん?」

「ですから、巻き込まれない内に……あれ?」

 

 私、鈴ちゃん、ラウラさん、篠ノ之さんの四人全員真っ赤なのですが……シャルだけ動揺していませんね……?

 あ、織斑君と普段からしているから慣れて……って織斑君、浮気じゃないですか!

 殺します!

 そして不能にします!

 

「いや、一夏って薔薇? だからただのマッサージだと思うけど……」

「「「「……それだ!」」」」

 

 さすがシャルですね。

 私たちと違って冷静な判断です……あれ?

 

「薔薇ってどういうことですか?」

「男同士の人のこと言うんでしょ? もやしさんが言ってたよ? 女の子同士は百合なんだってね」

 

 もやしさん……あぁ、図書委員の(ゆかり)さんですね。

 そっか、あの人、そういう人でしたね……

 腐ってやがる、女子校生活が長すぎたんだ……とでも言えばいいのでしょうか? いや、それだとむしろ仲間認定されて喜ばれそうですね。

 仲間だと思われても困りますし遠くから眺めるにとどめましょう。

 というか、私が聞きたかったのはそこではなくてですね。

 

「あの、彼氏が薔薇って困りませんか?」

「……彼氏って何の話?」

「いえ、ですから、織斑君とシャルは付き合ってるんですよね?」

 

 つまり、織斑君はリバってやつなんですか?

 なんというか、人生を楽しめるタイプですよね。

 

「ちょ、シャルロットと一夏が付き合ってるなんて聞いてないわよ!? 詳しく聞かせて!」

「あっ!」

 

 そうでした……鈴ちゃんたちがいたから内緒にしてたのに!

 私の馬鹿!

 これではシャルが困っちゃうじゃないですか!

 

「いや、僕にも本当にどういうことか……アリサ、なんで一夏と僕が付き合ってるの?」

「え!? えと、ですから、先週、水着を選んでもらった日の数日前に告白されていたじゃないですか! 付き合ってくれ! って……」

「んー? ………………あぁ!」

 

 相当考え込んでからシャルが手を打ちました。

 確かにシャルは織斑君の告白を受けた立場なので、もしかしたらあまり興味はなかったのかもしれませんけど、それでも覚えてすらいないのは織斑君があまりにも不憫だと……

 

「あれは違うよー。ただ、ほうっ!?」

 

 バシッと音がする程の勢いでシャルが自分の口を抑えました……痛そうです。

 シャルが見ているのは……篠ノ之さん?

 なんでここで篠ノ之さんが出てくるんでしょう?

 

「ま、まぁ、あれは買い物に付き合ってくれって意味だったんだよ。確かに一夏は言葉足らずだけど少し考えれば分かるでしょ?」

「まぁ、確かに一夏の方から告白するなんて考えられないわね」

「だな。遠回しな告白にすら気付かない唐変木が告白だなんて……」

「しかもその相手が幼馴染の鈴や箒でも、裸で同衾した私でもなくシャルロットという辺りがな」

 

 確かに少し考えが足りませんでしたね。

 シャルが可愛すぎるので織斑君がシャルに惚れても仕方ないと思考停止していましたが、鈴ちゃん篠ノ之さんラウラさんと織斑君の周りには可愛らしい人が沢山いますしね。

 …………というか皆さん、ラウラさんが織斑君と裸で同衾したことにはつっこまないんですね。

 

「一夏が惚れるとしたらとセシリアとアリサもだよね」

「セシぃはともかく私ですかっ!?」

 

 私なんて小さくて乱暴で貧乳で甘えたがりで重い女ですよ!?

 しかも生身で織斑君より強いってのもマイナスですよね!?

 

「……乱暴っての以外結構プラスになる可能性があるわよね」

「ロリコン、という人種が日本には多くいるらしいしな」

「千冬さんが姉の一夏のことだ、自分より強い女に惚れるのも頷けるな」

 

 いや、あの、私は織斑君にあまり興味がないので、私を褒めながら落ち込んでいかないでください。

 小さくて乱暴で貧乳っていうのは鈴ちゃんもですし、ラウラさんも乱暴でどちらかといえば貧乳で強いですし、篠ノ之さんも乱暴で強くて重いですし!

 

「なんでかしら、褒められてる気がしないわ」

「というかアリサは私たちをバカにしているんだな?」

「……私だけプラスにすらならないものの集まりだった気がするんだが……誰が乱暴だ、誰が」

「皆ですってひゃぁ!?」

 

 皆さん落ち着いて……ね?

 そ、そんなに怖い顔されたら私、泣いちゃいますよ?

 あと、プレッシャーでお腹も壊しちゃいそうです。

 ……森で熊に遭遇したときは気を逸らしつつ背中を見せずに後ろに逃げるんでしたっけ?

 そーっと……

 

 ぽふん

 

「あ、シャル……」

「まぁ、そもそもアリサは可愛いもんね?」

 

 ぎゅっ

 

「な、にゃぁ!?」

 

 後ずさりしていたら背後に立っていたシャルにぶつかってしまったのですが、なぜかそこから抱きしめられます!

 なんで!?

 というか、かっ、かわ、可愛いだなんてそんな……私が可愛いんでしたらシャルはもう言葉で表せなくなっちゃいますよっ。

 あ、あと、それと、ですね……

 

「あの、シャル、ちょっと苦しいので……腕を緩めてください」

 

 ……こう見えてシャルも力が強いんですよね。もちろん私やラウラさん、篠ノ之さん程ではないですが鈴ちゃんくらいはあります。

 ……そうですね。筋力の序列ですと、私≫篠ノ之さん≧ラウラさん=織斑君>鈴ちゃん=シャルくらいでしょうか?

 わ、私だって好きで力が強くなったわけじゃないんですよ?

 ただ、ママが女の子でも鯖折りくらいは出来ないとって……

 

「あっ、ごめん! これで平気……?」

「はいっ! ……えへへ」

 

 本当は離れてくださいって言おうとしたんですけど、私が離れたくなかったので甘えちゃいました。

 あれ、でも織斑君とのことが誤解だったということは、シャルってフリーなんですよね?

 …………ということは、ですよ?

 もしかしたらこれから先に私とシャルが、なんてことも……

 

 ぼんっ!

 

「ってアリサ!? 顔真っ赤よ!? やっぱり溺れたから……調子悪いなら早く言いなさいよ!」

「い、いえ、そうではなくてですね」

「あんたのそうじゃないは聞き飽きた! 一夏もマッサージなんでしょ? 織斑先生、失礼します!」

 

 本当にそうではなくて、これから、もしかしたらシャルにいつでもこうしてもらえるような関係になれるかと想像してしまって……うわ、うわぁ……

 

「アリサ、どんどん赤くなってるよ!? 本当に平気なの?」

「へ、平気です! 平気ですから、シャルもちょっと離れててください……」

「あ、うん……ごめん」

 

 あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

 シャル違うんです! 違うんですよ!

 どっか行けとかそういうことではなくてですね!

 その、シャルに顔を覗き込まれると余計に赤面してしまうってことで!

 えと、えとなんて言えば……そうだ!

 

「シャル、頭を撫でてください!」

「へ?」

 

 って、違う!

 これは私の願望じゃないですか!

 ああ、もう!

 しばらく大人しくしてましょう!

 もう誤解は後で解きます……なんだかシャルがいきなり近く感じられるようになって調子が狂いますね。

 

 ぽふ

 

「……ぅ?」

「えと、こうでいいのかな……?」

「あの……?」

「違う撫で方がいい?」

 

 撫でられちゃいました!?

 あぅ……子供みたいで、恥ずかしぃ……

 で、でもですね!

 せっかくなのでもう少し要求しちゃいましょう!

 ……自分でも調子に乗っているのが分かりますね。

 

「あの、できれば髪の毛を梳くようにこう、縦に……」

「ん……こうかな?」

「ばっちりです!」

 

 たまにシャルの指先が軽く頭に引っかかって、余計に撫でられているという感覚がはっきりします。

 はぅ、この感覚を忘れてしまわないようにしばらく頭を刺激しないようにしましょうっ!

 具体的には頭を洗いません! ……ってのは冗談ですけど。

 

「……こほん」

「あっ!」

 

 篠ノ之さんが軽く咳払いをするとシャルが慌てたように手を引っ込めました。

 むぅ、残念です……篠ノ之さん、恨みますよ?

 

「その、鈴とラウラがもう入っていってしまったのだが……」

「あ、ああああ! ごめんね、すぐ行くから! ほら、アリサも」

「わ、ちょ、っとと」

 

 いきなりシャルが手を引いて駆けだしたので転びかけました。

 強くは握られていないので私から離せばいいんですけど……えと、転ばないようにです。

 転ばないように、シャルの手を握ったままなんですからね?

 ほら、溺れたので三半規管とかおかしくなっているかもしれないですし!

 

「し、失礼します」

 

 シャルに手を引かれて織斑部屋に入るとセシぃが随分リラックスした様子で座っていました。

 やっぱりマッサージだったんですね。

 

「アリサ、立ってないで座りなよ」

「え、あ、はい!」

 

 先に座ったシャルの隣があいていたのでしっかり確保しました。

 なんだか本当に今日はシャルと一緒にいられる時間が長いですね。

 ……嬉しいんですけど、私が溺れたことを気にしてなら安心させてあげたいです。

 シャルは、自分がもう少し私を見つけるのが早ければと考えているようですが、そもそもシャルが見つけてくれたので私はこうして無事に生きているのです。シャルは、私を助けたことを誇りに思いこそすれ、責める必要は無いんですから。

 でも、それを私が伝えても信じてもらえませんから……私は無理に無茶と無謀を足したような性格をしていると思われているようですからね。

 無理も無茶も無謀なこともしない性格なんですけどね。こう見えて、自分でできる範囲のこと以外のことはしたことないんですよ?

 

「一夏、もう一度風呂にでも行ってこい。汗臭い部屋で眠りたくはないからな」

「ん。そうする。皆はくつろいでってくれ。って難しいかもしれないけど」

 

 ……まぁ、織斑先生と一緒に部屋に取り残されるなんて経験は少ないですからね。

 しかも授業がない分、教師と生徒という境界線があやふやな臨海学校という現状では特にどうしていいのかが……

 

「おいおい、夕飯の時と言い、通夜でもしたいのか? お前ら得意のバカ騒ぎはどうした?」

 

「い、いえ、その」

「教官……ではなく先生とこうして話すのは……」

「あまりありませんし……」

「まぁ、私は割と織斑先生と話してますけどね。クラス代表ですし」

 

 じろっ

 

 あ、あれ?

 なんでか分かりませんが裏切り者みたいな目で見られてますよ?

 というか鈴ちゃんラウラさんセシぃは織斑先生に対して猫を被るにしても今更ですよ?

 というか、セシぃは本当に陥落してしまったのでしょうか……?

 初めて仲良くなる男の子にドキドキ、程度ならまだ引き戻せるのですが……ほら、私は鈴ちゃんを応援していますし。

 

「不破は代表だからと言うより問題児だからだがな」

「私のどこがっ!?」

 

 いえ、自覚はしてますけどね?

 ですが、これでも学年内での成績はトップだと思いますよ?

 筆記と実技を合わせたら少なくとも十指には入ると思います! というかぶっちゃけ学年で一番をとることだって難しくないはずです!

 

「飲み物、何がいい? 奢ってやるぞ? 篠ノ之は何を飲む?」

「え、ええと私は何でも……」

「ふぅ……お前とは一番付き合いが長いんだから遠慮をするな。他の奴らも少しは不破を見習え。今もほら……」

 

 私は……あ、フルーツオレ発見です♪ む、奥の方に何か……ケーキ!

 

「先生! 奥にケーキがちょうど人数分あります! 私、ショートケーキでいいですか!?」

「……見習うのは少しだけな? 不破、選ぶ前に全部冷蔵庫から出してしまえ」

「了解です!」

 

 ショートケーキにモンブラン、ミルクレープ、フルーツタルトにガトーショコラ、そしてレアチーズとプリン・ア・ラ・モードですか。

 うむむ、全部を見てしまうと迷いますね……特にショートケーキとミルクレープ!

 ですが……

 

「わ、私はクラス代表なので皆さん先に……どうぞ!」

 

 わ、私はどれでもいいです!

 

 ◇

 

 アリサ、あの千冬さんにも物怖じしないとかすごいわね……しかも結局、飲み物どころかケーキまで奢らせたし。

 んー……私は、

 

「烏龍茶とショートケーキ、」

「あぅ……」

「じゃなくてプリンにしよっと!」

 

 ……アリサ、こういうのって不自由な選択肢っていうのよ?

 

 ◇

 

 私は、どうするかな。

 やはりケーキと言えばショートケーキが王道だが……先程の鈴と不破のやりとりを見る限り不破はショートケーキ狙いだ。

 となると、飲み物とケーキの組み合わせとして有りなのは……

 

「レアチーズとオレンジジュースをお願いします」

 

 まぁ、選択肢が多い内に選べただけ僥倖だろう。

 

 ◇

 

「わたくしは紅茶とショートケーキをお願いしますわ」

「うぇ……」

「もう! 冗談ですわ! わたくしはフルーツタルトを!」

 

 遠慮する気はなかったのですけれど、潤んだ目で見つめられてしまうとわたくしも……まったく、アリサさんはいつまでたっても甘えん坊なのですから。

 ……わたくしたちが甘やかしすぎているだけなのでしょうけれど。

 

 ◇

 

 残ったものは何だ?

 ショートケーキにミルクレープ、ガトーショコラとモンブランか。

 アリサがショートケーキ狙いなのは間違いないから残り三種。

 教官は大人のメンツとして生徒の前で甘いものを食べると言うことにも抵抗があるだろう。恐らく少し渋みがあるモンブランが教官にはぴったりだ。

 飲み物は……教官がコーヒー党だからな。私も飲むという名目で教官の分もすぐ準備できるようにするべきか。

 

「私はコーヒーとミル、」

 

 じわ……

 

「クでガトーショコラを食べるとするかな!」

 

 ミルクレープも食べたかったのか!?

 

 ◇

 

 うーん、アリサはミルクレープとショートケーキ、どっちが食べたいんだろう?

 モンブランを選べばいいんだろうけど、さっきラウラが先生にモンブランとか呟いてたし……なによりアリサと先生の争いは見たくないし……

 あ、そっか。

 どっち選んでもいいんだ。

 

「私はショートケーキと紅茶をお願い」

「しゃ、しゃるぅ……」

 

 アリサが涙目だけど……これは確かに、悪いことしてないのに罪悪感があるね。

 皆が選んだのを変えちゃった理由も分かる気がする。

 

「僕は変えないよ?」

「うぅ……」

 

 おぉ、と他の皆が感心したように息を漏らすけど……まぁ、それでも僕も甘やかしたがりだから。

 

「でも、僕ミルクレープも食べてみたいから半分こしよう?」

「っ! はいっ!」

 

 ……ケーキだけでこんなに喜んでくれるんだから甘やかしても仕方ないよね?

 結局、アリサがミルクレープにフルーツオレ、織斑先生もモンブランとコーヒーで正解だったみたい。

 

「では、いただきます! シャル、あーん」

 

 アリサの号令で皆食べ始めるけど……アリサ、いきなりだね。

 一口目は自分で食べればいいのに……ぱくっと。

 

「ん、美味しいよ。アリサも口開けて」

「ふぇ!? いえ、私は自分で! 自分で食べます!」

「そう? じゃあ食べたくなったら言ってね?」

「は、はい」

 

 遠慮なんてしなくていいのに……

 

「食ったな?」

「え?」

「まぁ、食べましたけど……」

「な、何か入っていましたの!?」

「ふぅ、まったく……織斑先生が私達に飲み物だけでなくケーキまで奢ってくれるなんて裏があると思ってたんです」

 

 やれやれ、って感じでアリサが言うけど――

 

「不破、お前がそれを言うか……だが、まぁその通りだ。口止め料だな」

 

 ホント、その通りだよね……んー、アリサのテンションがいつもより高いなぁ。

 僕たちに心配かけまいとしてるなら、無理して欲しくないな……

 織斑先生の言う口止め料っていうのはお酒のことみたい。

 

「これは百人殺しっていう銘酒でな! これがなかなか美味いんだよ。名前の由来も一升で百人を酔わせたからだとか、」

「うわー……酔わなくても吐き気のする名前ですねー」

「えっ?」

 

 今の、アリサの声?

 隣に座ってた僕以外には聞こえてなかったみたいだけど……なんで、そんな暗い声をだしたの……?

 

「シャル? どうかしましたか? ……あ、そういうことですか! はい、あーん」

 

 やっぱり、あのお酒の瓶から目を逸らしてる。

 名前がいやなのかな……?

 確かに殺すなんて字は気持ちのいいものじゃないけど、鬼殺しとか珍しくもないって聞くのに。

 

「シャル? 食べないんですか?」

「あ、ごめん!」

 

 少し慌てて首を伸ばしたけど……

 

 ぽとっ

 

「ぁ……えと……」

 

 少し、遅かった。

 

「な、何か拭くもの取ってきますね!」

「アリサ、ティッシュならここに、」

「皆は座っていてください!」

 

 アリサ……?

 

 ◇

 

 がんっ!

 

 石造りの壁を感情にまかせて殴る……痛いです。当たり前ですけどね。

 ……私は、何をしているのでしょう。

 シャルが、織斑君と付き合っているとかいないとか、そんなのは最初から関係なかったのに……

 私は、あのお酒を見て、私自身の罪を思い出してしまいました。

 あの火事のように、私を守るために作り上げた罪ではなくて、純然たる事実としての私の忘れることは許されない大罪。

 百人殺し?

 笑っちゃいますね。

 私は……その数倍、殺してしまいましたよ?

 そして、落としたケーキが戦闘機と重なって……

 中途半端な覚悟だったために敵も仲間も殺してしまった私が、幸せになっていいわけがないのに……

 血塗れの私がシャルの隣で笑っていていいわけがないのに……

 でも、火事の時と同じで私を責める人が一人もいないから……つい、錯覚してしまいます。

 ……私の罪なんて本当は何も無いんじゃないかって。

 誰も私の罪を知らないから、私が自分で自分を罰しないといけないと思うんです。例えば、可能な限り自分の幸福から距離を置くとかですね。

 本当なら一番愛しているシャルに嫌われて、そして大好きな料理が出来ないように味覚を殺す薬品を使うのが一番の罰になるのでしょうけど……想像するだけで涙がでるほど怖いです。

 

「どうして、私が……」

 

 転生してしまったからですか?

 もう、前世の記憶なんて塵芥のようにボロボロになってしまっているのに?

 私が選んだ訳じゃないんですよ……?

 でも、受けた恩は返さないといけませんから……いつか、私は解放されるのでしょうか?

 

「シャルと……いたいだけなのに……っ!」

 

 ……早く戻らないと心配されちゃいますね。

 

 ◇

 

「ごめんなさい! わざわざ部屋まで行かなくてもティッシュくらいここにもありますよね。ボケてました」

「アリサ、おかえり。まだケーキ残ってるから隣に、」

「鈴ちゃーん! 寮に戻ったら中華料理パーティーしましょう!」

 

 あれ? ……まぁ、アリサは猫みたいに気まぐれなところあるし変ではないかな。

 リンの隣に座るみたいだしお皿は向こうに動かしておこうかな。

 

「なに? もう旅館の食事は飽きちゃったの?」

「なんか、もう凄く鈴ちゃんの中華が食べたい気分なんです! もう鈴ちゃんをお嫁さんにして一生一緒にいたいくらいです!」

「あ、あんたは何をっ!?」

 

 おー、リンが照れてる。

 あの二人はいっつも仲良しだから見てて微笑ましい気分になるよね。

 ただ、アリサ、酔ってないよね?

 

「えー、私は鈴ちゃんのこと大好きですよ? 鈴ちゃんは私のこと嫌いですか?」

「わ、私だってアリサのことは好きだけど……」

「なら相思相愛ですね! 鈴ちゃん以外いりませんっ!」

「あら、アリサさん、それは聞き捨てなりませんわ。私のことも必要なのではなくて?」

 

 セシリアがニヤニヤしながらアリサに詰め寄る。

 一緒にいることが多い専用機持ちの中でもこの三人で一つのセットみたいな感じかな?

 

「んー、セシぃはお母さんですね。いて当たり前みたいな」

「ほう、では私は何だ?」

「ラウラさんですか? 前にも言ってましたがやっぱり不器用なお父さんとか?」

「……不破、私はどうだ?」

「篠ノ之さんはダメ姉ですかねー」

 

 どこがダメなんだ! なんてホウキが暴れる。先生が止めるかな、と思ったら余計に煽ったり。

 ……アリサって僕達の中では中心になることが多いよね。一夏もそうだけど人柄なのかな。

 ただ、アリサが中心になるといつもフリーダムというか……

 

「じゃあさ、アリサ。シャルロットはどうなのよ?」

「シャルですか? シャルは、えっと……大事な、お友達です。とても、大事な」

「……ふーん」

「つ、つまんなかったですね! 反省します」

 

 ……鈴が結婚相手なんだとすると僕以外は皆、家族だったのに。

 それに、アリサは家族はいて当たり前だって……友達の僕は、違うの?

 ねぇ、アリサ。

 何で僕の時だけ真面目に……泣きそうな顔で言ったの……?

 何か、言えないことがあるの?

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