Plongez dans le "IS" monde.   作:まーながるむ

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「それっていわゆる恋バナ?」


49.Est-ce que c'est ce qui est appelé la consultation de l'amour?

 千冬さんがグビグビと気持ち良く日本酒を飲む中、私達は全員……私の腕にしがみついてるアリサ以外ぽかんとしてるっていうか……千冬さんの豹変に付いていけなくてどうすればいいのかが分からない。

 

「ふむ、本当なら一夏に一品作らせるところなんだが……それは我慢……いや、不破、なにか肴を作ってこい。材料なら厨房に行けばもらえるはずだ。毎年のことだからな」

「了解です」

 

 了解しちゃうの!?

 というか、いつもはルールとかマナーとかに厳しい千冬さんに何が……?

 千冬さんに特にドイツで厳しくされていただろうラウラなんて目を白黒させて……かわいそうに。

 

「ほ、箒、千冬さんってこんな人だったっけ……?」

「いや、私の記憶が正しければ、昔から厳しいながらも不条理なことは言わない常識人だった……はずだ」

 

 ……そうよね。

 少なくともお世話になっている旅館の食材で生徒におつまみを作らせるような人じゃなかったはずよ。

 というか千冬さんが学校行事の間に飲酒することがまず信じられない。

 

「おかしな顔をするなよ。私だって人間だ。酒くらいは飲むさ。それとも、私は作業オイルを飲む物体に見えるか?」

 

 ニヤリと笑いながらそんなことを言う千冬さんに皆が否定の言葉を重ねるけど……

 千冬さんがお酒を飲んでるところより、作業オイルを飲んでるところの方が想像しやすいような気がしないでもない。

 

「というか仕事中なんじゃ……?」

「鳳、堅いことを言うな。それに、口止め料は払ったぞ?」

「「「「「あっ!」」」」」

 

 なるほど。

 あの飲み物とケーキにはそんな意味があったのね。

 

「ま、前座はこの程度にしておいて、だ。そろそろ肝心の話をするか」

 

 三杯目のお酒を空にして千冬さんが続ける。

 見ているだけで酔っぱらいそうな飲みっぷりだけど……大丈夫なのかしら。私達が黙ってても急性アルコール中毒とかになったら意味ない気がするし……

 

「お前ら、あいつのどこがいいんだ?」

 

 えーっと、一夏のことよね?

 つまり恋バナ?

 もしかして、千冬さん、真面目な顔で聞きにくかったからお酒の力を借りたとか……?

 いやいやいやいや……まさかね。

 

「わ、私は別に……以前より腕が落ちているのが腹立たしいだけですので」

 

 ……これは言質にさせてもらってもいいのかしら?

 少なくとも一夏に伝えれば今後、箒が気持ちを伝えない限りは剣の腕が落ちているから箒に絡まれると思ってくれるはずね。

 ……使えるものは使わなきゃね。

 

「わ、わたくしは専用機持ちとしての気概を持ってほしいだけですわ」

 

 うーん……セシリアが最近分からないのよね。

 一夏に好意を寄せているのは間違いないんだけど、小学生の恋愛みたいに子供らしいもののような気がしないでもないし。

 

「ふむ、そうか。ではそう一夏に伝えておこう」

「「言わなくていいです!」」

 

 ……私はどうしようかな。

 これを一夏に言えば間違いなく有利にはなるけど。

 そういうズルをしてでも一夏と付き合いたいし……でも皆には嫌われるわね。

 特に箒は正々堂々とか言いそうだし。

 

「それで、デュノアはどうだ?」

「…………」

 

 あー、考えてみれば答えないって手もアリよね。

 ただ、シャルロットはそういうことを考えてるわけじゃなくて、なにか別のことに気が向いてて気付いてないだけみたいだけど。

 そもそもシャルロットは一夏の事を恋愛対象として見てないんだし。

 

「デュノア?」

「っえ!? あ、僕は一夏を恋愛対象としてみてませんよ? でも優しいところはいいなぁ、って思います」

「ほう、まぁ、誰にでも優しくするからなぁ」

「一夏を好きな女の子にとってみればやきもきするところかもしれませんね」

 

 シャルロットはやっぱり一夏への興味はないのね。

 普段もあんまり好意を示すような行動はしてないし。

 シャルロットからすれば一夏は友達止まりってことなのかもね。

 ……ま、私のためにも、アリサのためにも一夏には惚れないで欲しいわね。

 見てれば分かるけどアリサはシャルロットに対して相当、だし。

 

「鳳はどうなんだ? お前も随分熱を上げているみたいだが……」

「私、ですか?」

 

 うーん。

 これは意外と難しいわね。

 本当に、いつの間にか好きになっちゃってたから……どこに惚れた、みたいなのが無いのよね。

 でも、あえて言うなら……

 

「一夏は、居て欲しいときに必ず側にいてくれるんです……まぁ、とは言っても一夏の全部が好きですけどね」

「ほう、つまりあいつを愛していると。なかなか大胆じゃないか」

 

 ~~~~っ!

 い、言われるとは思ってたけど相当恥ずかしいわね。

 ええそうよ! 大好きよ! 愛してるわよ!

 文句ありますか!?

 

「で、お前は?」

 

 最後にラウラ。

 あの子、さっきから全然喋らないけど千冬さんの変わりようがそんなにショックだったのね……

 まぁ、千冬さんを偶像化して崇拝してたようなところあったし仕方ないかも。

 

「つ、強いところが、でしょうか……」

「いや弱いだろ」

 

 ……確かに弱いけど、ラウラの言いたいことも分からないでもない。一夏は人が躊躇しちゃうような行動を平気でとる。

 保身とか不必要に怖がることとか、そういう弱さがないってことなんだろうけど……

 

「つ、強いです。少なくとも、安易な力を求めてしまう私よりは」

「そうかねぇ……」

 

 珍しくラウラが食ってかかったけど、当の千冬さんは気にしてない。

 のれんに腕押しみたいな感じね。

 

「まぁ、強いかどうかは別にしてだ。あいつは便利だぞ? 家事も料理もなかなかだし、マッサージだってうまい」

 

 マッサージ、の辺りでセシリアがうんうんと頷く。

 ……そんなに気持ちいいなら私も今度やってもらおうかな。普段からマッサージしてやろうか、なんて言われるけど触られるのが恥ずかしくて遠慮してたし……

 なんて考えてたら、厨房に行っていたアリサが戻ってきた。

 私達は座ってるからアリサが持ってるお皿の中は見えないけど香ばしい香りがする。

 

「織斑先生、便利さなら私だって負けてません! ということで鯖の骨煎餅とカワハギのキモを混ぜたガーリックトーストです」

「おお、これはなかなか……」

 

 便利さで張り合うのはどうかと思うけど……

 アリサが作ってきたおつまみは確かに美味しそう。

 お酒は飲まないけどおつまみは食べたいわ。

 

「ふむ。酒にも合うな……これは美味い」

 

 おー、千冬さんが手放しで褒めてる。

 ……アリサも料理のレパートリー多いわよね。フランス料理を初めにする洋食はもちろん、和食も作れるし変わり種で東南アジアの料理なんかも作っちゃうし。

 私がいるから作らないだけで、本当は中華も作れるんじゃないかしら。

 

「不破もいい嫁になるな」

「ヤですね、照れちゃいますよ!」

 

 ……バシバシと千冬さんの肩を叩くアリサ。

 酔ってる訳ではないみたいだけど……テンション高すぎじゃない?

 千冬さんも楽しそうだから止めはしないけど……やっぱり、臨海学校だからかしら。

 

「まぁ、不破があいつ並に便利だと言うことは置いといてだ。一夏と付き合える女は楽できるな。どうだ、欲しいか?」

「「「「「えっ!」」」」

 

 くれるの!?

 ……うわ、皆と同時に顔上げちゃった。これじゃがっついてるみたいじゃない。

 というか、アリサまでどうして……?

 

「織斑先生、織斑先生」

「どうした、不破?」

「あんまり織斑君に対して恋愛感情はないですけど便利そうなのでもらってもいいですか?」

「やるかバカ」

 

 ええ~……って皆思ったはずよ。アリサにも千冬さんにも。

 くれないなら欲しいかどうか聞かないで欲しいわ。乙女心が無駄に期待しちゃったじゃない。

 

「女ならな、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。自分を磨けよ、ガキども」

 

 千冬さんは楽しそうな顔でそんなこと言うけど、十分奪う気なのに効果がないんだから……

 

「鈴ちゃんは織斑君のファーストキスを奪いましたし、ラウラさんも唇と、あと童貞を奪いかけましたよね」

「「あ、アリサ!?」」

 

 な、なんてこというのよ!

 というか、あれ、一夏のファーストキスだったんだ……

 というかラウラが一夏のど、ど、どう……奪いかけたってどういうことよ!

 

「え? 織斑君のベッドに何度か全裸で潜り込んでますよね?」

「うむ」

「ですから、そのままえっちしちゃう気だったんじゃ、むぐっ!?」

「アリサ、女の子なんだからもう少し恥じらいを、というかそういう直接的な表現は……」

 

 つ、ついアリサの口を塞いじゃったわ。

 これ以上は私達の方が保たないわよ! 

 

「そういえば、不破は恋しているのか?」

「ひゃい!? ななな、何をいきなり……」

「お前とデュノアは一夏に惚れていないんだろう? あれはジゴロだからな。恋していない女をどんどん引っかけていくから、そうじゃないお前等はどうなのかと思ってな」

 

 千冬さんのナイスな判断でアリサの暴走も止まった。本当に、この子はたまに予測不可能な行動をするから大変よ。

 ……アリサはともかくシャルロットの方は気になるわね。

 

「それで、不破はどうだ?」

「……大好きな、というより愛している人がいます」

「ほう、不破にそうまで言わせる奴か。想像がつかないな」

 

 まぁ、普段のアリサを見てたら本気で誰かに恋愛してるなんて思わないわよね。

 ……でも、シャルロットのことをそこまで好きだとは私も思わなかったわ。

 好きっていうレベル止まりかと思ってたのに……

 あぁ、でもアリサはそもそもシャルロットのためにIS学園に来たわけだし、その前からずっとシャルロットを守ろうとしてたって言ってたわね。

 

「いたって普通の優しい人ですよ? 自分より他人を優先してしまう人です。だから、その人のことは私が守りたいなって……なんて、おこがましいですけどね」

「不破、お前はたまに男らしいな」

「これでも守ってほしい、大事にして欲しいという乙女心も持ってますよ?」

 

 ……それは、どうかしら。

 ラウラが暴走した学年別トーナメントの時のことを思い出すと、そんなことを想ってるとは考えられないけど……

 アリサは自分が死ぬかもしれなかったのに、昏睡状態になるだけのシャルロットを守った。シャルロットの昏睡は長くても数日間だったのに……

 

「あれ? そういえばアリサ、なんで学年別トーナメントの時、怪我したの?」

 

 エネルギーシールドがあればまず間違いなく怪我することはないのに……シールドエネルギーが切れていたなら動けなかったはずだし……

 

「え? あ、えと……その、シールドエネルギーを無視して攻撃できる雪片が相手だったので手動で絶対防御とエネルギーシールドを遮断してたんですよ? 意味ないですからね」

「「…………」」

 

 しまった。

 シャルロットとラウラがいる場でこの話題はタブーなのに。

 アリサはいつも気にしないで下さいなんて言ってるけど、そういうわけにもいかないのはアリサ自身分かってるはずよ。

 ……というか絶対防御を遮断ってどういうことよ。

 

「あの、なので、シャルもラウラさんも傷のことは気にしないでください……自業自得だったんですから」

「でも……」

「本当に、すまなかった」

 

 また言ってる。

 

「で、ですから、シャルを庇ったのは私の勝手ですし、ラウラさんも私のために怒ってくれていたわけですし……それに、私が守らなくても……」

「まぁ、確かに不破はいらんことをしたとは思うが理屈で割り切れる話じゃないだろう。というか海にまでそんな話を持ち込むな」

「あぅ」

 

 おー……千冬さんが一気に話を打ち切らせた。

 こういうことが自然に出来るようになりたいわね。どうしても右往左往しちゃうから。

 

「それで、デュノアは恋してるのか?」

「え、と……恋なのかは分からないけど、逢いたい人なら、います」

 

 ……あれ、今アリサってフラれた?

 だって逢いたいってことはこの場にはいないってことだもんね。

 心配でアリサを見てみるけど……変な表情。悲しいんだけどほっとしてるみたいな……

 

「皆には言ったと思うけど、僕の家は結構複雑でね。家族揃って食事したことなんて一度もないんだ」

 

 愛人の子で、疎まれているだっけ?

 アリサ以外の五人は家庭環境が悪いから、そういう意味で通じるところがある。

 私は親が離婚しているし、箒は篠ノ之博士の関係で親とは離れて生活してた時期もあるとか。セシリアは両親を早くに亡くしているし、ラウラなんて試験管ベビーだから親すらいない。

 悲惨さで言ったら、シャルロットは中間くらいね。計るものでもないけど。

 

「十三歳の時かな……初めて本邸に呼ばれたんだけど、そしたら本邸に入るや否や本妻の人に泥棒猫の娘がって殴られて……」

「あの、シャル……それは今までの話と関係ありますか……?」

 

 シャルロットの暗い過去話にアリサがツッコミをいれる。

 もう、分かってないわね。ここからがいいところなんじゃない!

 

「ってことで、アリサは黙ってるー」

「むぐぅ」

 

 アリサを後ろから抱きすくめて口を塞ぐ。

 うーん、ちっちゃくて、相変わらずいい抱き心地ね。臨海学校が終わったら、久しぶりに一緒に寝ようかしら。

 

「シャルロット、続けていいわよ?」

「うん。それで、なんで僕がこんな目にって思って、本邸から飛び出して、でも帰る気にもなれなくて……それで門扉の前で座り込んでたんだ」

 

 うわぁ……それは確かに嫌ね。産まれたのはシャルロットの責任じゃないのに。

 ほんと、親って勝手よね。

 

「それで、そのまま数分した頃かな? 高そうな服を着た人が本邸に向かってきたの。本妻さんとの子供かなって思ったんだけど、その人は悪くないし……だから気にしないで下さいって言ったんだ」

 

 私だったら、そいつに八つ当たりしてたわね。シャルロットも少しは自分勝手に生きればいいのに。

 

「そしたらさ、その人、なんで怒らない、どうして恨まないって言ったんだ。僕にはその権利があるって」

「良い洋服着て、髪の手入れまでしっかりしていた人が言っていいことじゃないですよね」

 

 ……相変わらずシャルのことになるとアリサも本気で毒吐くわね。まぁ、それだけ好きってことなんだろうし、私もそう思うけどさ。

 

「うん。僕もそう思って、本気で怒鳴っちゃって……でもね、その人、本妻さんの子供でも何でもなかったの。なんでか私の事情は知ってたみたいだけど……」

「えっと、つまり、その人はなにしたかったの?」

「僕にも分からないけど……僕の負担を軽くしてくれようとしたんだと思う。言いたいことは言えってね。実際、僕は救われた。あんまり我慢しないようになったし」

 

 ……私にはシャルロットが今でも人を優先するタイプにしか見えないけど。

 まぁ、本人が納得してるならいいけどさ。

 

「そんなの、その人を好意的に解釈しただけじゃないですか。きっと、本当はシャルを憐れみながら見下していたんです」

「アリサ、言い過ぎよ。シャルロットの思い出なんだからいいじゃない。でも、なんで逢いたいの?」

「一つは沢山叩いちゃったから謝りたいのと、もう一つは恩返しをしたいなって……困ってたら助けてあげたいなって。それにキスもされたし……」

 

 あら。

 シャルロットが少し赤くなってるわ。

 

「ってキスぅ!?」

「あっ、いや!? おでこだよ! ファーストキスはまだだから!」

 

 な、なによ。驚かせないでよね。

 でも、いきなりキスしてきた人にまた逢いたいって……完全に恋よね。

 

「……その人のことは、忘れた方がいいですよ。シャルには、そんな自分勝手な人は釣り合いません」

 

 なのに、アリサはそれでも冷たい。

 

「アリサ……? なんでそんなこと言うの……?」

「だって! その人は結局シャルを助けてくれましたか!? その後だって、シャルは辛い目にあっていたじゃないですか! その人はシャルに何もしてあげてないです……ただの自己満足でその女の人は……」

 

 ……ずっとシャルロットを守ってきたのは自分だから、ってことなのかしら。

 自分が想われてないことにほっとしたと思えば、シャルロットの思い出の人に文句を言ったり、アリサも良く分からないわね……って、

 

「なに、その人、女の人なの?」

「え?」

「だって、今アリサが……」

 

 最後、女の人って言ったわよね? 

 

「アリサ! ……あの人のこと、知ってるの? 今、どこにいるの? ねぇ、教えて……?」

「知りません。でも、知っていたとしても……部屋に、戻ります」

 

 抱きついていた私を振り払って扉に向かったアリサ。

 その手を今度はシャルロットが掴んだ。

 まぁ、普通に考えてこのまま帰すわけにもいかないわよね。

 というか他の皆、千冬さんも含めて動かないけど止めないの? 険悪な雰囲気になりそうよ?

 

「アリサ、お願い。何でもするから、教えて……?」

「シャルは……その人をどう思ってるんですか?」

「すごく……感謝してる」

「そうですか。ならその気持ちを忘れないでください……その人には、逢えませんから」

「えっ……」

「それでは失礼します」

 

 アリサはそういって出ていったけど……もしかして、もう亡くなってるってことなのかしら?

 だから、アリサは逢わせられないって言い続けてたの? それなら最初からそういえば良かったじゃない。

 でもアリサのことだから絶対に逢わせないってことを言ってるのかもしれないし……

 

 ◇

 

 シャルが、あの時のことを覚えててくれました。

 そのことだけでも嬉しいのに感謝しているとまで……嬉しさで、どうにかなってしまいそうです。

 ……でも、いまさらどんな顔をして、あれは私ですなんて言えばいいんでしょう。

 今の私は、シャルの言うあの時の私とは全然違います。

 もう、私はシャルに相応しくないんです。

 

「なんで、愛していることになんて気付いちゃったんでしょうねぇ……」

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