みんなが先に出て行き、俺も出ようとすると瑠璃に引き止められた。
「待って湊真。あの、今夜空いてますか?私…いきたい。」
「気持ちの準備とか必要だから、少し待ってくれ。」
それから2時間ほどが経過し、準備も整った。
ほのかとの約束は、そのあとに回してもらった。
「いくよ?後悔しないよね?やっぱり、未来のためにもここで。例え、痛みを伴っても。」「……やっぱり見たくなかったねこんな悲しいの」と8年前に焼け、そのままになっていた村を見る。蜜羽達が住んでいた村、いや、村のあった場所を見る。
「けど、これで前に進める」
「そうだね。もうこんな悲しい事を起こしちゃいけない。でも、どうすればいいの?私わからないよ。」
「でも、希望はあるよ。天下二分の計」
「えっ?私の国と蜜羽の国で?」
「ああ、東を蜜羽達が、西を俺達がだ」
「私は戦争を終わらせたい。でも、戦わなくちゃいけないんだね。」
「ああそうだ。だけど、戦いだけじゃない。同盟だってある。いくらでも道はある。」
「そうかぁ。もう、誰も悲しませたくない。」
「そうだな。」
「力を貸して。戦いを終わらせる為に」
「ああ。」そう答えて、瑠璃の肩に手を置く。帰り道、湖の水面に映る月をみる。月と水面の月、裏と表、影と光。決して混ざり合うことのないもの。
部屋に戻り、
約束の時間通りにやって来た訪問者を迎え入れる。
「ほのか。入っていいよ。」
いつもと同じように、許可を求めるまで部屋に入らないほのかの態度は、ある人物にも見習って欲しいところだ。
「失礼します。」
ほのかは、部屋のドアを閉めて俺の目の前に立つ。
「座ってくれ。」
示された椅子に座るほのか。昼間の話の続きを促すことはせず、ほのかが話し始めるのを待った。
「湊真さん」
ほのかの呼びかけに、こちらも名前を呼んで返す。
「なんだい?ほのか」
真剣な眼差しを向けるほのかに、少々気恥ずかしさも感じる。
「湊真さんは、どう考えますか?」
何をどう考えているのか?という大事な部分が抜けているため、答えようにも答えられない。
「それは、どういうことだい?」
「天下を二分するとうい事です。」
ここでやっと、質問の意図をを察した。
それは、可能かどうかということだろう。
ほのかの単刀直入な質問に、こちらも本音で答える。
「正直、不安しかない。相手の出方がわからない以上、どうすることもできないかな。
でも、諦めるつもりはないよ。」
「そうですか・・・・・。わたしは、、、」口ごもるほのかを遮り、続ける。
「手伝ってくれるか?」
その言葉を待っていたかのように、ほのかは笑顔で、
「もちろんです!」と答えた。
どうやら、ほのかはこのために部屋に来たようだ。自分の意思を伝えるために。
本題は終わったようだが、ほのかとのおしゃべりはこのあと一時間ほど続いた。続いたと言うよりは始まったというべきか。少なくとも最初の話はおしゃべりではなかった。深刻な話におしゃべりというのは申し訳ない。
「湊真さんは、好きな人とかいるんですか?」
おしゃべり、は突然に終わりを告げ、がらっと空気が変わった。それは、10代なら誰もがする質問だと思う。少なくとも、自分の知識上はそうである。
さて、どう答えたものか。目の前のほのかは、少し恥ずかしげにし、目線を合わそうとしない。
「ほのか。その質問だが、、今はまだ。自信がない。」
必死に切り出した答えにほのかは、疑問の表情を浮かべる。
「へ?」
「俺には、その人を守る自信も、幸せにする自信もない。まだ、伝える資格もないんだよ。だから、それを言っちゃいけない気がして。」自分の目標にしているのだ。強くなり、一人でも守れると確信した時にこそ、ずっとそばにいて欲しいと伝えるために。強くなろうとしてるのだ。だから、それまでは伝えないと決めている。
「・・・・・・・・・・。私は、湊真さんが好きです。」しばらくの沈黙のあと、口から飛び出したのは、想像もしていなかった言葉。
もちろん、ほのかが好意を寄せていることは知っていた。しかし、ここで出てくるとは想像もしていなかったのだ。
「ほのか。君の気持ちには答えられそうもない。」この言葉がほのかを傷付けてしまうのはわかっていた。
それでも、これ以外にどうすることもできなかったというのは甘えだろうが、こうする以外には思いつかなかったのだ。仕方なかった選択だと思っている。
俺の言葉を受け止めたほのかは、悲しげな表情を浮かべる。けれど、それほど落胆しているわけでもなく、すぐに笑顔に変わる。それは、100%本物とは言えないが、あらかた無理して作っているわけではないと感じられる。恐らく、伝えられてよかったと、嬉しい気持ちも入っているのだと確信した。
「湊真さん。私、ずっと好きでいてもいいですか?」前向きすぎるほのかの肩を抱きしめたいという衝動に駆られたが、それはかえってほのかを傷つけることになるため、優しく答えるだけにした。
「いいよ」
すべてが解決たところで時計を見ると既に11時を回っていた。
「ほのか、そろそろ寝る準備をした方がいい。」部屋に戻るようほのかを促す。
「そうですね。じゃぁ、おやすみなさい」
「あぁ、おやすみ」
部屋を出るほのかを見送り、湊真も布団に入る。
その日の夜は、静かな夜だった。
悪く言えば、嵐の前の静けさだったのかもしれない。