For Your Happiness   作:皆斗

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長いですが、心があったまるような、そんな感じの話です。




副官の存在~ existence of adjutant ~

〜〜〜〜〜〜

先日のバージスとの戦いはなんとか敗戦にはならずに済んだ。国民に被害も出ていない、理想の形と言っていい。

しかしである。ここ、1.2年大きな戦いはほとんど起きなかった。そんなところにこの戦闘だ。海を越えてまで攻撃してきたバージス。周りの国も戦の準備を整えるのも当たり前だ。世界は戦闘の色へと変わりつつある。

瑠璃姫の目指す平和から遠ざかってしまっているのも仕方の無い事だが、肩を落とさずにはいられないのがラピスの兵士たちである。

 

~~~~~~~

 

晃政の調査用紙に目を向ける湊真。

その報告書にはこうあった。

『隣国のアリュースの王女亜美が同盟を持ちかける可能性大』

そんなことよりも

かなりの魔法技術を持った魔女がいると言う話の方に湊真は興味を示していた。

「魔法使いが気になりますか?」

となりで眺めていた副官のほのかが、声をかけてきた。

「あぁ、もちろんだ」

その後、ほのかは各国に飛ばした諜報員からの情報をまとめはじめる。

この仕事を任せられるのも、仕事が早く正確な仕上がりを期待できるほのかだからである。

その結果、晃政を除くと大将、副官の中で一番働いていると言ってもいい程の仕事量になっている。

《海の道での戦い》から3日が過ぎた今日。

戦闘報告、その際にバージスに潜入させたスパイからの報告(これは魔法の力で稼働する携帯端末から送られた魔導メールによる)、各国に在中している諜報部隊(これは晃政の部隊)からの報告で手一杯になっている。

 

ほのかも二日連続徹夜で目の下にクマは出来てはいないものの、かなり疲れている様子である。

現在3日目。時刻は13時半。南中した太陽が少し傾き始め、天井の窓から昼の光が煌々と射している。

 

「はぁ」溜息をつく湊真に少し休むようほのかが繰り返し言うのだが、

「私は大丈夫ですから、休んでください」

それに対して、

「いや、流石に俺が休むわけにはいかないでしょ。ほのかに任せっきりは気が引けるよ」

と返すのだ。これでは、ほのかはなんとも言えない。

実際、報告書を読まなくてはいけない湊真もかなり披露は溜まっている。

 

ほのかが来てからというもの湊真は真面目に仕事をしている。周りから見てみても、異常なほどの仕事率のアップである。

 

ほのかが来たのはちょうど2年前、17歳の時だ。

湊真達、現在の大将達がその座についたのは3年前、16歳である。

わずか、16歳で彼らは国の中心人物になったのだ。

何故、そのようになったのか。

答えは明確だ。革命が起きたからである。

腐敗しきった専制君主制を敷いた、瑠璃姫の叔父に当たる、馬亜瑠皇帝は暴君を貫いた。その結果、国民は貧窮した。貿易の利益は全部独占され、税は生きることのできりギリギリのラインまで取られ。

もちろん不満は高まっていく。しかし、農民は反抗する力もなく、どうしようもなかった。

それは、軍も同じで、兵をコマとしか思っていない皇帝は犠牲を気にも止めない戦略を中心に戦争をした。

この国が腐敗したのもこの皇帝政策が敷かれたからである。

 

前皇帝であった瑠璃の父。彼は良い皇帝で、国民の支持は100%に近かった。

その皇帝の娘である瑠璃が16歳になった日にこの国は変わった。一人前と認められ皇帝を倒すための反乱軍のリーダーに祭り上げられた瑠璃は、仲間と力を合わせこの国を変えたのだ。

それから、瑠璃が姫となり、国王制になり、民主政治へと変わったのである。

 

 

革命の中心人物であった湊真達は重く用いられたのである。

だが、まだ、16歳。めんどくさい仕事など、革命軍の中の情報処理にたけた人に任せていた。

そして

革命から、1年後。優秀な政治手腕の持ち主であった源一が政治顧問として支えてくれたお陰で、国は安定した。彼は、瑠璃姫の父の補佐もしており、長い間、悪逆皇帝馬亜瑠によって地下牢に閉じ込められていたのだ。

1年という短いあいだで、身分制度(軍内のみ)も出来上がった。

軍属だけになっているのも、瑠璃姫の今まで自分の叔父が国民に与えた苦しみに対する申し訳なさもあるのであろう。

国も安定した頃、湊真はある少女と出会った。

それが、穂乃果だ。

 

 

士官学校を卒業したばかりのほのかは、すぐに王国直属の兵として入隊した。

最初は、雑用が普通なのだが、ほのかの才能を見出した政治顧問源一は、書記官としてほのかを採用することにした。

 

そして、3ヶ月が過ぎた頃。

彼女は彼に出会った。彼とは湊真のことである。

それは、よく晴れた日だった。

気温は24度ほど、春の気候である。時折風がほのかの髪を撫でる。

その日ほのかは源一の使いで湊真を探しに出ていた。源一から、湊真に書類を渡すよう頼まれているのだ。ほのかは湊真の部屋を訪れたが、そこには湊真は居らず、湊真の執務室を見て見ても山積みになった書類だけが置いてあった。

その結果、彼女は城の外に探しに出ていた。もちろん闇雲に探しているわけではない。1度源一の元へ戻り、よくいる場所を聞いた。それが、この王城のすぐ横にある一面に気持ちよさそうな緑が広がっている丘である。

その天辺に人が寝転んでいるのが、微かながら確認ができた。長めの髪でくせっ毛だという事しか確認できないが、彼が湊真であろうと彼女は確信した。丘を上り、その人物を確認する。

湊真だ。

「あの・・・・・」恐る恐るほのかは声をかける。軍の最高地位の一つに当たる大将である彼に少なからず恐れを抱いていた。絶対に縁のない人だと思っていた、大将を今目の前にしているのだという事から、ほのかの声は緊張し、震えていた。

「ん?」湊真は寝転んだまま自分を呼んだ人物の方を向く。女性の士官服が目に入った。おそらく、書類を持ってきたのだろう。

「源一さんから渡すよう頼まれました」源一に階級はない。「さん」「様」以外の敬称で呼びようがないのだ。様で呼ばせなかったのは、源一の人間性からも良く分かる。よそよそしいのは嫌いなのだ。

「あぁ。」封書を受け取り、おもむろに封を切り、なかの紙を取り出す。

『明野穂乃果を一等書記官に昇格させ大将:宮野湊真の副官に任命する。』こう記してあった。 それをその場で読み上げる。

「明野書記官。」

「はい。なんでしょか?大将」応答がぎこちなく続く。

「この内容は君も知っていたのか?」

「いえ、ただ今知りました」

湊真は疑問で仕方なかった。彼女はたった3ヶ月前に書記官として採用され王城に入ったばかりだ。それなのに、大将の副官に付けるとは甘すぎるのではないか。実際、湊真には副官はいなかった。それ故にこの事態になっているということはわかっていた。しかし、疑問はそこではない。なぜ、彼女なのか。それが一番の疑問だった。

「まぁ、いいや。明野」

「はい。」

「座れ」湊真は彼女に隣に腰を下ろすよう促した。

「明野書記官。君はなぜ軍に入った?」素朴だが、一番重要である質問を湊真は問い掛けた。

「私は、2年前従兄弟を亡くしました。2歳年上の従兄弟です。それから、すぐに父が戦争で死にました。」

「君の目的は復讐か?」そう問う湊真。

「違います。私は、守るための戦いをしたいんです。誰も死なせたくない。」

ほのかは、強い意志を持った目で湊真を見つめた。この子には強い意思がある。湊真もそれを確認した。自分にできる最善の事について湊真は考え始めた。(書類仕事もちゃんとやらなきゃなぁ)

「ほのか」湊真は、彼女を下の名前で呼んだ。

「はい?」少し驚いた様子で、ほのかは聞き返した。

「ほのか。俺の事も下の名前で呼んでくれ。階級とか、そーゆーのに縛られるのは好きじゃないんだ」返事は返ってこない。

少し迷った末にほのかは嬉しそうに口を開けた。

「はい!湊真さん」このとき、大将という地位への敬遠も、湊真に対する大きな遠慮も、尊敬と羨望の気持ちへと変わっていた。

 

この出会いが、湊真を変えるきっかけとなった。もちろんほのかにとってもそうであった。

その翌日、自室ではなく、執務室で目を覚ました湊真は、

自分の執務室の机に人影があることに気がついた。仮眠用のソファーに寝ていたため、少し腰が痛い。湊真は立ち上がり伸びをすると、深呼吸をし、人影の方へ歩き出した。

「あ、湊真さん。コーヒーいりますか?」

自分に問いかける声を聞いてやっと、その人物が誰かわかった。正確には、思い出した、の方が正しい。差し出されたコーヒーを受け取ると彼は昨日のことを思い出した。

丘から帰ると15時半ほどになっていて、そこから山積みの書類を片付け始め、夕食をとり、午前1時を回ったところで残りをほのかに任せて仮眠に入ったはずだが、おそらく6時間と、普通に眠ってしまったようだ。驚くべき事に、机の上の書類は全部片付いている。軽く目を通すと、全てしっかりとミスもなく、正確に綴ってあるレポートに、目を通した報告書の一部を抜粋して重要なデータを抽出した報告書まで出来上がっていた。いくらなんでも優秀すぎる。

「ほのか、全部君がやったのか?」

「はい。文章を読むのは速かったので、意外と早く終わりましたよ?」

「どの位で終わった?」

「5時間くらいですね」さらっと時間を告げるほのかに、湊真は心配そうな声で言った。

「ほとんど、寝てないじゃないか」

「大丈夫です。湊真さんは戦うことが出来ますけど、私はこれしか役に立てないのので、これくらい苦でもありません」湊真は心を打たれた。こんなにも、素直で健気なほのかに。 自分には勿体無いのではないかとさえ思った。

 

このときから、湊真は変わった。仕事をちゃんとやるようになった。ほのかにあまり負担をかけないよう、出来る限りの仕事をするようにしたのだ。

 

 

 

〜〜〜〜〜〜〜〜〜

「ふぅ。これで、4分の3位終わったか?」

息を吐き出して、机に突っ伏しながらほのかに問いかけた。

「そうですね。この様子なら今夜はしっかり寝れそうです!」

長かった書類仕事の終わりが見え始め、ほのかも少し生気を取り戻した。

時間は3時半。思い出に浸りながらも、仕事を続けた結果、進行状況は案外良い方へ向かっていた。このままいけば10時には寝れるだろう。

「ほのか」

「なんですか?」手を動かしながらほのかは、答える。

「外に出ないか」

「そうですね!私も眠気が襲って来そうなので少し外に出たいです」

ほのかの疲労もそろそろ限界だった。

湊真もほのかもゆっくりと立ち上がり、部屋を出た。少し長い廊下を抜け、城の門まで辿り着いた。この時点でほのかは、半分程目が閉じていた。

「大丈夫か?」湊真はだんだん心配になってきた。寝ながら歩き出すのではないか。この場で寝てしまうのではないかと。

そうなったら、困ったことになる。ほのかの名誉にも、湊真の名誉にも多少なりとも傷が付く。 その心配は杞憂に終わり、やっと丘に辿り着いた。そのまま二人は緑の絨毯に寝そべって、街並みを俯瞰した。

「ここだったな、初めて会ったのは」

「そうですね。覚えてますか?」ほのかは2年前とは変わった街並みを確かめながら、湊真に聞いた。

「ん?何を?」そう言って湊真は視線を街からほのかへと切り替えた。ちょうどそこで、同じく視線を街から湊真へ移したほのかと目が合った。

するとほんの少し恥ずかしそうにして、何のことだかわかっていない湊真にほのかが答えた。

「私のこと最初は苗字で呼んでましたよね。」

すると困った顔をして湊真が弁解した。

「あれは・・・・・仕方ないだろ。たった三ヶ月で副官になるんだから、疑問とか疑いの目を向けるだろ?」

「なるほど・・・」

「ごめんな。疑ってて。」2年も前の事なのに心から謝る湊真に、ほのかは笑顔で

「いいですよ。名前で呼んでくれたときは私、すごく嬉しかったんです。」

と、答えた。

「そっか」笑顔が眩しすぎて返す言葉が見つからない湊真に、ほのかは続ける。

「湊真さん。名前で呼べて嬉しいです。」

湊真は喜びを感じていた。(俺の副官がほのかでよかった)と。心の中で留めておくか、それとも本人に伝えるか。湊真は迷った。

「俺は・・・・・。ほのかが副官でよかった」

その言葉を聞いたほのかは、涙を零さずにはいられなかった。

「私も・・ぐすっ・・・・・う。同じ気持ちです・・。」

「お、おい。」戸惑いながらも、湊真はほのかの頬に指を置いて、涙を拭いた。

ほのかから街並みへと再び視線を切り替えると、街の一角が賑わっているのが見えた。なんだろうと、よく見てみると結婚式のようだった。幸せそうな笑顔。湊真もほのかも笑顔を守るために戦うと決めていた。そんな笑顔が目の前で見ることができて、自分達の願いはかないつつあるのだと思った。隣にいるほのかにも教えるため、ほのかに声をかけた。

「ほのか」

返事はない。

「ほのか?」

返事はない。ほのかの方へ目を向けると、ほのかは目を閉じていた。耳を澄ますと、すぅーすぅーと可愛らしい寝息が聴こえてきた。余程疲れていたのだろうと、湊真は思った。春だとはいえ、日のくれる頃には気温も下がってくる。時刻は午後4時半。

「風邪引くなよ?」一度立ち上がり、湊真は自分の上着をそっとほのかにかけた。

「お疲れ様」そう言って、再び寝転んだ。

しばらくほのかの寝顔を見ていた彼はふと思った。(彼女の寝顔を見るのは初めてなのではない?)

「可愛い寝顔してんな」

今まで、自分の方が先に寝て、残りの仕事はほのかに任せていた。自分がそうさせていた訳ではなく、ほのか自身の強い希望によるものだ。

そう考えると、ほのかは湊真の寝顔を毎週、下手すれば毎日のように見ていたことになる。

湊真は自分が寝言や変な顔をしてないことを祈った。

時間が経ち時刻は5時半になった。

「あ、私寝てました?よね・・・・」

「ぐっすりね」目覚めたほのかに微笑む湊真。

「変な顔してませんでしたか?」

「大丈夫。可愛かったから」湊真はほのかが恥ずかしがることを知っていてこの言葉を口にした。

「え、あ、そんな・・・・・嬉しいです・・・・・。」

もちろんほのかは照れた。顔を真っ赤にして。

「帰るよ?」

「は、はい」夕方の冷たい風がまだ引けなかったほのかの顔の熱を冷ました。

 

 

執務室に戻ると、早速仕事に取り掛かる。

休憩を入れたことにより、効率も良くなった。そのおかげで当初予定していた10時から大幅に時短ができ、8時に仕事が片付いた。

 

「ほのか、お疲れ様」執務室のソファーに倒れ込んだ自分の相棒に労いの言葉を投げかけ、湊真はほのかのとなりに腰を下ろした。

「はい。湊真さんもお疲れ様です」今まで何度も行われてきたこのやりとりだが、今回ばかりはほんとにお疲れで、この言葉の有り難みが身にしみて分かった。

ほのかも湊真もそのまま朝までソファーで寝てしまった。

「う・・・・・」強い光に射されて湊真は目を覚ました。執務室のカーテンも締めずに寝てしまったため、朝の光が部屋中に溢れている。となりで寝ていたほのかはいない。辺りを見回すと、シャワー室のドアが開いた。そこから、バスタオル姿のほのかが出てきた。

「あ、おはようございます」

「おはよ」

「コーヒー入れますね」

「いや、そのまえに、服を着てくれ」その言葉でほのかも気付いた様子で、いや気付かなければおかしい。慌てて、執務室の棚から換えの服を取り出し、シャワー室へと戻った。

数分後出てきたほのかは、すぐにコーヒーを入れて湊真の元へ運んできた。

「昨日はお疲れ。今日からちゃんと休めよ」

「はい!」

湊真もほのかもやっとの休暇に喜びを隠せなかった。




長い文章読んでくださってありがとうございます。としか言えませんが。
ほのかは一番好きなキャラですから、一番書きたかったんです!!

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