保護した喰種はヤンデレでした   作:警察

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第1話

(まじで何やってんのぉおおおおおおおおおおおおお)

 

 俺の名前は青履勇。

知らない人はいないと思うが

喰種捜査官という職業に就いている。

喰種というのは人を喰う化け物と

一般的には理解されているが

人間と大して変わらない。

奴らも人間と同じ言葉を話すし

家族だってもっている。

 

あっ、クインケは尾赫を使ってます。

得意なスタイルは類まれな身体能力にあぐらをかいた一撃離脱のスピード型です。

 

 いや、違う。

何自己紹介なんかしてんだ。

落ち着け。

どうやら混乱状態にあるらしい。

この現実が発するやっちまった感が半端ない。

 一人暮らしのせいで部屋は、適当に脱ぎ捨てられた服

煙草の吸殻が詰まった空き缶

飲みっぱなしのアルコール飲料で散らかっていた。

男一人で暮らしている典型的なダメ人間の部屋だ。

普段から寄り付く人などいない。

 なのにあろうことか小さな女の子が存在した。

隅の方で三角座りでうずくまり目が死んでいる。

見た感じ12から14あたりの中学生あたりだろう。

この時点でアウトなんだがもっとヤバい事があって

この子が”喰種”だということだ。

 

 

 

 

もうおしまいだぁ

俺下手しなくても普通に職失うんじゃね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は部屋に女の子が存在するという犯罪者確定な現実より少し前まで遡る。

俺は上官と同僚とともにとある喰種を追っていた。

正確にはとある親子の喰種を誘き出すため、雨の中傘を手に待機していた。

20区に逃げたとの情報をもとに俺たちも20区に移動し

ありとあらゆる方法で調査。ようやく親子の手がかりを得たのだ。

 まずは父親の喰種を発見・殺害を行った。

鑑識の報告にはこの喰種は家庭を持っていた可能性が高いとの証拠があり

残りの家族目標の駆除を目的とした。

被疑者は限られた証拠では多数に渡ったのだが、

そこは英語名「Commission of Counter Ghoul」通称CCG 二十区支部喰種対策局の捜査能力の高さよって、720番/722番/721番/723番に絞り込むことに成功。

 中でも特段、目下有力視されていた723番が動きをみせた。

戦闘職ではない20区の喰種捜査官の中島さん’ズが尾行に成功。

 

被疑者は電車を使い5つ目の駅で下車

さらに移動しB地点へ移動、一度は見失いかけたが

資料C地点”石碑のようなもの”の前で再確認

十数分の滞在後徒歩での移動を開始

知人の車に乗り合わせ帰宅した模様

 

 との成果報告を行ったのだ。まぁ、亜門の野郎に叱咜されていたがな。

 

「車のナンバーは?」

「それと石碑は実際は”墓”では? 埋蔵品の中に696番(父親の喰種)の喰種との関連性が見出せれば723番は”クロ”と確定する。何故そこまでやらなかったんです?」

「貴方がたは墓を掘り起こす程度の”倫理”に囚われたのですか……?」

「”倫理”で”悪”は潰せません」

「我々は”正義”。我々こそが”倫理”です」

ってな。

 亜門は喰種によって生み出される悲劇を誰より憎んでいる。

それは親を喰われて局で保護されている子供のためであったり

俺たちの同期で殉職した女のためだったり。

 常に人のためを考えて休むことなく職務を行う

自分の事なんて一切顧みずに。

出来たやつであり同時に悲しいやつなのだ。

 

 

 まぁそんなこんなで、

亜門がまさかの墓を一人で掘り起こしに行くなどという

前代未聞の暴挙に躍り出たあげく

”696番”のマスクを発見する大金星で”723番”はクロ確定。

 

 ようやく喰種を殺せるねぇ……と自分のクインケにスリスリと頬ずりして興奮している上司と

 やるべきことをやったまでです。喰種捜査官として…

とドヤ顔で手柄を誇っている同僚に囲まれながら今現在出撃しているわけだ。

作戦は父親のマスクを囮にして目標を呼び出すという策だ。

 俺は反対した。

五感に優れる喰種の特徴をうまく踏まえているとしても

遺留品から発する父の匂いに誘われたところを殺すなんて間違っていると。

 顔も割れていることだし普通に出向き殺せばいいんじゃないかと。

何より喰種対策法・13条「”喰種”に対し必要以上の痛みを与えることを禁ずる」

 これは心の痛みにも適応されるのではないかと。

亜門には鼻で笑われ、真戸さんには目をギョロギョロさせながら説教された。

『駄目だろう?その間に罪のない一般市民が捕食されたらどうするんだい』

……確かにその通りだと思った。

人と喰種なら比べるまでもない。

 

 

 

現在地は東京、十字の交差点。作戦決行の場だ。

ここには5人の人間がいる。

戦闘を主とする俺、亜門、真戸上官の3人。

非戦闘員の中島さんと草場の2人。

戦闘員と非戦闘員を見分けるのは簡単で

科学者のような白服を着ているのが戦闘員。

着ていないのが非戦闘員だ。

一応、中島さんと草場もHG(ハンドガン)を装備しているが

喰種相手には効果がない。

だから役割は戦闘が始まったら周りの人たちを避難させることだ。

 

 戦術はこう。

亜門・真戸班は地上で戦闘要員として待機。

俺は4階建てのテナントビルの屋上で待機。

敵の応援がないかを監視、又不足の事態に備える。

中島・草場は真戸班の反対側で待機、挟み撃ちにする形だ。

 

 

 

 

雨の音に混じって、声が聞こえてくる。

足音とともに。

 

ーーーぉ……さん、、に……ぉぃ!! むか……にきて………!!

ーーーまちな……いっ!!

 

「真戸上官! 来ましたよ!!」

 

「そうか……ありがとう青履君。亜門君、構えなさい」

 

「はい!」

 

現れたのは2人の親子。

ほぼ喰種で確定……でいいだろう。子供はすごく幼いじゃないか……。

少しだけ気分が悪い。

母喰種は2人の白服を見て子供を背に庇い戦闘態勢に入る。

 

「いい雨ですなぁ。だがこれ以上強く降られるのは困る……。

あなたがたの断末魔が聞こえなくなるからなぁ」

 

中島さん達が退路を断つように移動しながらジリジリと距離を詰める。

母喰種は子供の肩に手を置き、微笑む。

まるで最後の別れかのように。

そして次の瞬間、決意に満ちた表情で白服を睨みつけ

自分と子供を包むように赫子を展開させる。

 

「ほぅ……あれは良いクインケになりそうだ」

 

「真戸さん、収集癖は後にしてください!」

 

母喰種の赫子が中島さんを襲う。

 

「中島さん!」

 

「ぐっ……! 大丈夫だ! 右腕を掠っただけ! かすり傷だ!」

 

中島さんが怯んだ一瞬のスキを突き子供は走り出す。

 

ーーーひなみ、逃げて

 

ーーーお母さん……

 

ーーー大丈夫、先に……に逃げてて。

お母さんもあとで行くから。

 

ーーー嫌…嫌っ!……お母さんといっしょがいいっ……

 

ーーー行きなさい!!!

 

ーーーぅ………ぅぅ

 

そんな声が聞こえた気がした。

 

「親子愛のつもりか? 反吐がでる

青履君、君は追いたまえ!」

 

「はい」

 

屋上からテナント看板を足場に飛び降りる。

向かったのは大通りの方か。

距離は100m程。これならすぐに追いつける。

全速で追う。

ものの10秒で子供に並走し追い抜き、対面する。

 

「止まってくれ。お嬢ちゃん。

喰種対策法12条1項、赫眼および赫子の発生が確認された対象者を

第Ⅰ種特別警戒対象”喰種”と判別する……。一緒にいた女の人に赫子が確認された。お嬢ちゃんに関係者の疑いがかかっている」

 

「なんでっ! なんで私たちを狙うの!」

 

「ーー同条2項、喰種と判別された対象者に関してあらゆる法はその個人を保護しない。

無駄な抵抗をしなければ、いや。

もがいてくれても構わない」

 

「ひっ……! 私を………殺すの?」

 

「……」

 

「なんで……迷惑をかけないようっ! 生きなさいって……

私たち、人を殺したこともないのに……!」

 

「……っ」

 

大丈夫。

こんなケースは初めてではない。

何回も親子を殺したことはある。

今更だ。

大丈夫。

 だが……人を殺したことがないだと?私たち(・・)が?

アタッシュケースから片手剣のようなクインケを展開する。

赫眼や赫子が発見されていない以上、

威圧目的でしか使えないが、終わったと思った。

あとは真戸上官らと合流してこの子を捕獲する。

 

 

 

だが予想外なことが起きた。

「やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」

 

「なっ!」

顔に眼帯をした一般人が殴りかかってきた。

慌てて頭を低くし避け、反射で鳩尾を突くように殴る。

 

「うごっ!!うぼぇぇぇぇぇ」

 

「誰だお前は! くっそ一般人が相手は喰種だぞ!!」

 

 たまにいるのだ、正義感のあふれる無知な一般人が

我々を犯罪者か何かと思って攻撃することが。

たまにが今回遭遇するなんてついてない!

殴られた高校生位の男は足にしがみついて離れない。

 

「くっ……許せよ! 少し痛いぞ!」

 

緊急措置的に足で倒れている男の顎を蹴る。

男は脳を揺らされ体の力が抜ける。

足を掴む手を振り払って拘束から抜けるも子供の姿はなかった。

見失ったか?

……いや。ギリギリ追えそうだ。

 

「すいません! だれかこの人に救急車と警察を呼んでください!

事情は後からやってくる白服の男に話しててもらえますか! お願いします!」

 

軽く手を携帯所持していた拘束テープで固定し

子供の跡を追う。

雑音に混じる小さな足音を頼りにして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして俺は気がついたら子供を気絶させ、家に運んでいた。

 

あ…ありのまま今起こった事を話すぜ!

 

「おれは喰種の子供を追っていたと思ったらいつのまにか誘拐していた」

 

な…何を言っているのかわからねーと思うが 

 

おれも何をしたのかわからなかった…。

 

頭がどうにかなりそうだった…催眠術だとか超スピードだとか

 

そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。

 

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…。

 

 

 

 

 

 

 

 


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