ムードブレイカー ~実況パワフルプロ野球・レボリューションリーグ~   作:べいすた

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第一章 白球は飛ぶ
第一話 煩い連中


チームプレーなんてくだらないと俺は思う。

 

結局試合を決めるのは、個人の能力なのだから。

 

だから、八回表・一点ビハインド・無死一塁の場面、どうしても一点が欲しいこの状況でベンチから“右に打て”と指示が出ていたとしても、俺はそれを無視する。

 

 

俺のスウィングで、試合を決めるーー

そう決意して、俺は右打席に入った。

 

 

 

 

 

 

『放送席、放送席!今日のヒーローは勿論この人!

逆転2ランを放ち見事カイザースの連勝を止めた、港 杏介(みなと きょうすけ)選手です!』

 

アナウンサーがお決まりの文句を言い終えると、猪狩カイザースの本拠地・猪狩ドームのレフトスタンドに陣取っているパワフルズファンが歓声をあげた。本拠地ではないためか、客の入りは良くない。

……もっとも、俺が所属する“レボリューションリーグ”はすでに今日対戦した猪狩カイザースの優勝が決まっており、この試合は所謂消化試合だったのだが。

 

「いやぁ、素晴らしいホームランでしたね!」

「ありがとうございます」

確かにあれは良いホームランだった。去年までは手も足もでなかったカイザースのクローザー・一ノ瀬(いちのせ)の低めにコントロールされたストレートを力でレフトスタンドまで放り込んでやった。

変化球を上手く活用し、なかなか的を絞らせてくれない投手だったので狙い球をあえて決めないで打席に入った。考えていたのは、来た球をスタンドへ運ぶことだけーー

勿論、右打ちなんかしない。

 

普通の質問を、普通に答えていき、普通にヒーローインタビューが終わった。ヒーローインタビューはイレギュラーな質問が飛んでくることもあるが、今日はそんなことはなかった。

…厄介なのはこのあとだ。

記者達の相手をしてやらなければならない。クソみたいな時間だ。

ダグアウトに戻り、ベンチに腰掛けてペットボトルの水を飲む。慣れてきたとはいえ、人前で喋った後には咽が乾くものだ。

 

目の前の記者達にぶっきらぼうな口調で「いいですよ」と一言。

「今日の試合を振り返ってみて、良かった点は」

最初に質問を切り出してきたのは、タマギワスポーツ略称“タマスポ”の深川(ふかがわ)記者だ。

記者連中の名前を覚える気はさらさらないのだが、この人は別と言える。記者とは思えないほど人格が良いからだろうか?

勿論、警戒していないわけではない。

なぜなら、俺にとってマスコミは“敵”なのだから。

 

少し間を開けて、深川記者の質問に答えた。

「やっぱり、苦手だった一ノ瀬さんから打てたことが一番ですかね。」

「低めのストレートでしたね」

別の、ベテランと思える記者からの質問に港は頷いた。「まぁ、ストライクに来た球を思い切り振るつもりで打席に入りました。考えてしまうと、バッテリーにしてやられるんで。」

「港選手は昨年、一ノ瀬選手にはまったく対応出来ていませんでしたが、今年は良く打てていますね」

…こういう嫌味を交えて質問してくる奴には吐き気がする。どこの誰だか知らないが…

その記者の首から下がっている名札を見ると、“ パワフルスポーツ東京 佐久間 薫(さくま かおる)”と書いてあった。なるほど、パワフルスポーツ東京はデリカシーの無さに定評がある新聞社だ。

悪態をつきたい衝動を抑えて、港は黙って頷いた。

「なにか、攻略の秘訣という物はあるのでしょうか?」

秘訣?そんなもの教える義理はこっちにはないはずだ。

「自分のスイングをするだけです。」

的外れな答えだったからだろう、質問をした記者は納得が行かない様子だ。それでいい。

「明日の移動日を挟んで明後日でシーズン最終戦です、本拠地に戻ってバスターズ戦が控えてますが、意気込みを聞かせてください」

「明後日の先発は山森(やまもり)ですよね、明後日は彼から打ちます。」

予想通り、記者連中から微かなざわめきが起こった。気に入らない反応だが、記者を通して山森に宣戦布告しておかなければならない。とにかく、奴は気に入らない。明後日は奴から、打つ。

面倒な事は御免なので「失礼します」と言い残し、荷物を持ってさっさとロッカールームに移動した。

 

ロッカールームに入るなり、チームメイトの矢部(やべ)が話しかけてきた。相変わらず、分厚い瓶底眼鏡をかけている。

「不機嫌そうな顔してるでやんすね、大丈夫でやんすか?」

そう言いながらも、顔はにやついている。本心から心配してるわけではないだろう。

先輩ではあるが、俺はこいつは嫌いだ。

「いつもこんな顔ですよ」

「マスコミを敵に回すと、面倒くさいでやんすからね」

この先輩は嫌味をねちねちとこねくり回してくるタイプだ。ちなみに俺がマスコミを嫌っているのは矢部に限らず、チームの関係者ならほとんど知っている。

「別に、敵に回してはいないですから」まぁ味方に付ける気も無いが。

「そうでやんすかーてっきり、マスコミにサイン無視がバレたのかと思ったでやんす」

心臓が跳ねた。やはりバレていたか…矢部は相変わらずにやにやしている。

「放っといてください。」それだけ行って俺はある男のところに向かった。唾を飲み込み、咽の調子を整えておく。

 

 

 

東條小次郎(とうじょう こじろう)ーー

俺の宿敵に向かって、言ってやった。

「おい、これで一本差だぞ」

 

 




初めまして、べいすたという者です。
はい、その名の通りベイスターズファンです(笑)

こんな駄文を読んでくれた方々、本当にありがとうございますm(__)m
色々と試行錯誤しながら、パワプロを知らない人でも読める小説を目指して頑張っていきたいと思っているので、暖かい目で見守っていただけると嬉しいです。

この小説は、パワプロ14のサクセスが主となっており、今回の場面は14サクセスのプロローグの契約改正が始まる前となっています。
ちなみに本作は、作者の勝手な都合から、レボリューションリーグのみでの進行となります。ですから実在している球団を使用することはないと思います(実在球団も使ってほしいと感想が多数寄せられたら検討するかもしれませんが)。
選手は歴代サクセスキャラの他に、パワプロ15(2009)ペナントの新人選手を使います。今回の場合では山森がそれに当たります(ムードブレイカーこと港杏介は作者考案のオリキャラです)。
色々とごちゃ混ぜになっており、なにかと分かりづらいと思いますが、多めに見てください_(._.)_

ちなみに、戸井鉄男の出番は第一話ではありません。恐らく、二話か三話で出てくると思います。

なにか気づいた事や、質問があったら、感想をいただけると嬉しいです。

それではまた次回、お会いしましょう!
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