紅の牙と黒提灯   作:雅音かぐや

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第10話

「あの~、雅さま?」

 

 すると、腰帯に蛇二匹を巻いている、おっとりとした鬼の女性が雅に声をかけてきた。

「はじめまして、私衆合地獄に勤めている、お香と言います」

「ん、あぁ。わざわざどうも」

 ぺこりと会釈し、なぜかお香は雅の顔をじっと見詰めていた。

「・・・・・あの、私の顔に何かついてる?」

「あら、ごめんなさい。今日のお昼ごろ衆合の歓楽街で一騒動あったでしょう?あのとき治めてくれた雅様のこと、男の人かと思ってて」

「お香ちゃん、雅ちゃんはれっきとした女の子だよ?僕は絶対見間違えない自信あるね」

「あなた女性なら手当たり次第でしょう、いっそ一線越えて自滅すればいい」

「するか!!僕は女性オンリーなんだ!!」

「あら、また始まっちゃった…ごめんなさい、気に障りましたか?」

「この二人はもう放っておいたほうがいいと思う。それに気にしなくていいよ。よくあることだから、…大体羅刹も男や女もたいした比じゃない、ただ威厳と力量の畏怖が強いだけ」

「そんなことありませんわ!凛々しくていかにも大和撫子といった感じで、女性の極卒として申し分ないと思いますわ」

 ニコニコと笑顔を振りまくお香を見て、なんだかこそばゆく感じた。

「!そ、そうか?そんな率直に言われると困るんだが・・・」

 少し言葉をかみ、ちびちびとお酒を口に含む。

 

 

「あ!今の顔、とっても可愛かったよ♪やっぱり女の子だ…」

 

 ゴリッ!!

 

「ねぇえ"え"え”っ!!?」

 

 

 雅は白澤の言葉にすかさず反撃した。立てかけて座っていた白澤の脛に強烈な手刀を喰らわせた。

桃太郎「これは完全にアンタが悪い…」

「ったく、いい加減二人とも、私を挟んでの口喧嘩はよしてくれないか」

「だからってなんで僕だけ暴力を振るうの…!」

 床に倒れ、脛を押さえる白澤であった。

「自覚なしか」

「無駄ですよ、この珍獣は報復に対しての耐性がついてないんです」

「ここまでガードが固いとはね、誘いがいがありそうだよ♪」

「アンタの言うとおりだな」

 三人そろっての険悪ムードに、お香は話を切り出した。

「ま、まぁ皆さんその辺にしておきましょう。せっかくの歓迎会なのですから、お鍋でもつつきながら話を…!」

「そ、そうっすよ…!あ、俺よそいますよ…!」

 桃太郎はいそいそと鍋をつつき始めた。

「謝謝、ありがとね~♪」

「はぁ、そうだな。ただ飯だし食べるにこしたことは無いか」

「そうですね、申し訳ありませんでした。大人気なかったです」

 ほっと胸をなでおろす桃太郎は、よそった小皿を雅に渡した。

「どうぞ」

「ありがとう。って、これなんか赤いな…」

「そりゃキムチ鍋だからね~、発汗作用もあって新陳代謝もよくなるよ」

「さすがは漢方の神獣、色欲以外はまともな知識はあるんだな」

「それって褒めてるの?」

「あんたを褒めるくらいなら舌を抜いた方がマシ」

 毒を吐きつつよそってくれた具材を食す雅。ふと隣を見てみると、鬼灯の皿には何もよそっていなかった。

「おい、鬼灯にはないのか?」

「いえ、私は結構です」

「何、まださっきのこと根に持ってるのか?」

「違いますよ、遠慮なさらず」

「あ、鬼灯様はいいんです…別の鍋がありますから(この展開、デジャブ…!)」

 少し顔を曇らせる桃太郎に打って変わり、白澤は間髪いれず、

 

「辛いのが苦手なんだよね~、こいつは」

 

 ニヤニヤと悪意をこめた笑みを鬼灯に向けた。

「え?そうなのか、意外」

 鬼灯は舌打ちをうち、眉間に皺をよせた。

「あーもう!前にもこんなことがあったから、触れないでほしかったのに…!!」

 と落胆する桃太郎の前でへらへらと笑う白澤に苛立ちを覚えた。

「ふん、私は対したことないな。この辛さなら食べれなくもないし、一度食べてみたら?」

 と鬼灯によそった小皿を差し出す。

「別にいいです。私は別のを頂きますので」

 すっといやみな顔をして小皿を戻す。

 

「食わず嫌いはよくないぞ、一口だけでいいから」グイッ…

 

「ですから、結構ですといっているでしょう!」グイッ

 

「他の奴が食えるんだったら食えると思うのが常識だろ!」グググ…

 

「それは常識ではなくあなたのルールというものでしょう!」グググ…!

 

 食わせる食わせまいとする、どうでもいい意地の張り合いが勃発した。

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