宴会から3~4時間、閉店まであっという間に過ぎ去り周りは酒の余韻に浸っていた。
閻魔「あー楽しかったねぇ。一時はどうなることかと思ったけど」
「そうでしょうか、当の本人は酒豪と言いつつもつぶれていますけど」
雅「う~~~~・・・・・」
頭を伏せうずくまり、唸り声をを発しながら気持ち悪いオーラを出していた。
「全く、自業自得です。見栄なんかはるからこうなることになるんです」
「飲みたかったから飲んだだけだし…あいつより悪酔いしてないし…」
あいつとはぐでんぐでんに酔いつぶれた神獣のことだろう。あの後、迎え酒であっという間にダウンし、桃太郎に支えられ帰ってしまったのだ。
「一緒にしないでもらいたいな・・・」
雅が顔を上げると、瞼が半分落ち頬はほんのりと紅潮していた。
「…はぁ、とにかく閻魔庁へ戻りますよ。ほら、立って下さい」
「ん~~・・・もうちょっと休んでから行く」
「…世話のかかる部下を持ったものです。先にお帰りになってください」
閻魔「え、いいの?」
「いいも何も、明日も仕事なんですよ。飲みなおしはさせませんし、きっちりと働いてもらいます…雅さんは私が連れて行きますので」
「わ、わかってるよ…!じゃあ先に行くね、お疲れ様」
(いつもならかまわず置いていくのに、案外気遣ってるのかな?)
閻魔大王とその他の極卒達はきりあげて、残ったのは鬼灯と雅だけになった。
「いつまでここにいるつもりですか、置いていきますよ」
「あー…わかったわかったから、ちょっと待って…」
壁に手をつきながらふらふらと立ち上がり、息を整えた。
「ふぅ、少し楽になった気がする…あれ?アレ何処いった?」
「アレ?あぁ、これですか」
朱漆と金細工を施した鞘に納まった刀を、鬼灯は雅に手渡した。
「あぁ、アンタが持ってたのか。ありがと」
と、受け取り腰に帯刀する。
「そういえばあなた、どこで寝泊りするんですか?昨日は天部に帰られたようですが」
「んー?大丈夫大丈夫、閻魔庁に空いてる部屋を大王が見つけてくれてさ、そこに住み込むカタチになるから」
「いつのまに・・・」
「へへ、伊達に羅刹天の補佐やってないから。少しは見直した?」
「全然」
「くぅー!厳しい上司についたもんだ!」
手を額にぺしっとたたく、大げさな身振りをさらす目の前の羅刹女にじとっとみつめざるおえなかった。
「・・・貴女、いささか悪酔いしてませんか」
「悪酔いなんてしてない!これでも冷静なほうです」
「ならば一人で帰れますね」
呆れたのかその場を離れようとする鬼灯に、
「あ、待ってって!!」
鬼灯の袖を掴み、酔いで赤らめた頬をかきながら、
「今日は飲みすぎたから、その、足取りが悪いというか…!鬼灯も閻魔庁に住み込みなんだろう?一緒にかえ・・・」
「貴女、羅刹でしょう?ここは地獄。己の身は、己で守るのが鉄則です」
「否定しずらいこと言うな…帰り道一緒なんだから、酔い醒ましに付き合ってくれよ」
「・・・分かりました。但し、少しでも立ち止まるならそのまま置いていきますからね」
「ほんと厳しいな・・・」
そう言い、鬼灯の袖を離して二人並んで夜の地獄を歩き始めた。
「ん~、いい風。心なしかあったかい気がする」
「八大地獄は炎で覆われていますから、当然ですよ」
「ふーん。その真逆の八寒地獄は雪で覆われてるんだっけ?地獄は変わったな」
「そうです。いずれ八寒によりますからそのときはついてきてもらいますよ」
「ん、了解」
他愛もない会話が続き、気がつくと閻魔庁に到着した。
「さぁて、明日に備えて寝ますかね」
「ではまた明日。おやすみなさい」
「あぁ、おやすみなさい」
鬼灯と別れ、大王から新しく用意された自室へと向かう。ドアを開けるとまだ整理整頓されていない部屋が雅を迎えた。
「はぁ、先に荷物を整理しておけばよかったな・・・」
彼女が去る姿を見届けると、鬼灯は息を一つ吐いた。
酒が入り、彼女の頬が紅潮してうらめしそうに見つめてくる姿が脳裏に蘇る。
危なかった。
押し殺していたはずの欲が、逆に駆られたいという衝動が襲ったのだ。彼女が羅刹だからか?あの赤い髪と赤い瞳。強調せざるをえない色彩を纏いつつも、地獄(ここ)では一瞬で融けこむ。
雅…。名前からして何処が「雅」なのか…。