紅の牙と黒提灯   作:雅音かぐや

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第8話

「確かに頂きました」

「全く、挨拶なんてしなきゃよかった。薬も無事に貰ったし、帰る?」

「そうしましょう」

 

「ちょ、待てぇえ!!余りにも酷すぎるだろ!雅ちゃんはともかく、なんでお前が出てくるんだよ!!」

 

「あ、復活した」

「なぜって、一応私の部下ですからね。手を出されると困りますんで」

「!ははーん、もしかして部下と言いつつ嫉妬したんじゃないの?雅ちゃん可愛いし」

「誰があなたに嫉妬しますか」

 それはそうだろう、と心の中で思っていた雅だったが

 

 

 

「しかし、雅さんは可愛いというよりも、美しいが似合うと思います」

 

 

「・・・・・え?」

 

 

 刹那、あまりにも突然で言葉もそれしか出てこず、白澤もあんぐりと口をあけ固まっていた。

桃太郎「ほ、鬼灯様が褒めた・・・!?」

「褒めていませんよ、ありのままに言ったまでです」

「やっぱり嫉妬じゃないか!雅ちゃんのことが好きなんだろ!」

「好きではありません」

「ちょ、ちょっと待て…!え、なに。昨日の初日で会ったばかりで心底嫌ってるんじゃ…」

「その通りですよ。貴女も誤解しないでください。あなたと私は上司と部下、オフィスラブを期待するどこかの偶蹄類と一緒にしないで下さい」

「ああ、今ので確信したわ」

 安堵の息を漏らした中で、白澤は引き下がらなかった。

「いーや、僕は良くないね。こいつの口から美しいなんて、奇麗事が出てくるなんて思わなかったし。雅ちゃんはどうなの?こいつのことどう思うの?」

「は?どうって言われても・・・」

 チラッと上目で鬼灯の顔を見上げる。

 男の癖にわりと綺麗な顔してるし、職場の女性陣が黄色い声を発するのも当然だろうな。

 しかし、あくまで上司。

 それにさっきのは私に対してからかっただけだろう。

 

「ただの上司だ、それ以上もそれ以下も無い」

 

「だよね~!こんなャローを好きになっちゃ幸先が良くないよ」

「だからといって、お前のことは眼中にないからな」

「随分ときっぱり言うねぇ・・・」

「もうこんな時間ですか、雅さん。先に戻っててください」

 鬼灯は懐中時計を見て、風呂敷を雅に渡した。

「!ああ、あんたは?」

「少し寄るところがありますので」

「分かった、じゃまた夜に」

 そのまま来た道を帰る雅に、

「また来てね~♪」

「くるか!」

 不機嫌になりながらもすたすたと帰っていった。

「うんうん、あれは脈アリと見たな」

「そんなわけないでしょ!思いっきりボディブロー喰らってたじゃないですか…!」

「白澤さん、忠告しときますが彼女に手を出さない方が身のためですよ」

「え?」

 どことなく鬼灯の表情が真面目に強張っているのを、桃太郎は気づいた。

「何だよ。お前に興味はないって雅ちゃんも言ってただろ?僕は満々に興味はあるけど」

桃太郎(ああ、だめだこの人・・・)

「そういう意味ではありません。彼女は羅刹です、ましてや神獣であるあなたが、知らないはずはありませんよね」

「それはそうだけどさぁ…」

 白澤もポリポリと頬をかき困った表情を見せる。

「あの、お二人ともどうかしたんですか?」

「桃タロー君は、雅ちゃんを見てどう思った?」

 笑みを浮かべながら自分に問う白澤に、眉をしかめた。

「え?それは、まぁ今日初めて会ったわけですしどうと言われても…見た目は真面目そうな感じがして、口調は強いけど悪い人には見えませんし・・・それに、結構美人だし」

 最後には少し頬を赤らめる桃太郎であった。

「お、桃タロー君少しは女性を見る目あるじゃない」

「あんたが言うか!」

 

「でもね桃タロー君、彼女はああ見えて美人で優しそうでも『人喰い鬼』なんだよ?」

 

「ぇえ!?ひ、人喰い・・・!!」

 衝撃の事実を知らされた。あの女性が、人喰い鬼だなんて・・・むしろ違う意味で食べられそうだけど・・・。

「人喰い鬼って、だとしたらよくある内なる凶暴性を秘めているってことですか?想像がつきませんよ…」

「それが真実かどうかまだ分かりません。あと彼女曰く、鬼も食べるそうですよ」

「と、共食い・・・!?」

「だとすると、そのうち食べられるんじゃない?」

 ニヤニヤと笑う白澤を睨みながら、

「神獣ってどんな味がするんでしょうね・・・見た目と違って中身が薄いんでしょうが」

「それどういう意味!?」

「そういうことなので、余り関与しないでください」

「もしかして僕が喰われるとでも思ってるわけ?お門違いにも程があるね。むしろ逆に食べちゃうけど」

「だからそういうことじゃないでしょうが!」

「それでは失礼します」

「!おい、今日夜に何かあるのか?雅ちゃんが言ってたけど」

「貴方には関係ないでしょう、では桃太郎さん」

「あ、はい。お気をつけて」

 鬼灯が立ち去ったあと、白澤は顎に手をあてた。

「アレは何かあるな、地獄で夜になにかあるとすれば・・・アレしかないだろーなぁ」

 ニヤリと笑む白澤の横で、桃太郎はやれやれと肩を落とした。

 

 

 







「まったく、地獄といい桃源郷といいろくな奴がいないな・・・」


 愚痴をこぼしつつ地獄へと帰る雅であった。


 でも、なんだろうこの胸のひっかかりは・・・

 鬼灯と会ったときもそうだ。
 白澤、あの二人、何処か会ったような・・・



「やめやめ、考えても仕方ない」



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