「確かに頂きました」
「全く、挨拶なんてしなきゃよかった。薬も無事に貰ったし、帰る?」
「そうしましょう」
「ちょ、待てぇえ!!余りにも酷すぎるだろ!雅ちゃんはともかく、なんでお前が出てくるんだよ!!」
「あ、復活した」
「なぜって、一応私の部下ですからね。手を出されると困りますんで」
「!ははーん、もしかして部下と言いつつ嫉妬したんじゃないの?雅ちゃん可愛いし」
「誰があなたに嫉妬しますか」
それはそうだろう、と心の中で思っていた雅だったが
「しかし、雅さんは可愛いというよりも、美しいが似合うと思います」
「・・・・・え?」
刹那、あまりにも突然で言葉もそれしか出てこず、白澤もあんぐりと口をあけ固まっていた。
桃太郎「ほ、鬼灯様が褒めた・・・!?」
「褒めていませんよ、ありのままに言ったまでです」
「やっぱり嫉妬じゃないか!雅ちゃんのことが好きなんだろ!」
「好きではありません」
「ちょ、ちょっと待て…!え、なに。昨日の初日で会ったばかりで心底嫌ってるんじゃ…」
「その通りですよ。貴女も誤解しないでください。あなたと私は上司と部下、オフィスラブを期待するどこかの偶蹄類と一緒にしないで下さい」
「ああ、今ので確信したわ」
安堵の息を漏らした中で、白澤は引き下がらなかった。
「いーや、僕は良くないね。こいつの口から美しいなんて、奇麗事が出てくるなんて思わなかったし。雅ちゃんはどうなの?こいつのことどう思うの?」
「は?どうって言われても・・・」
チラッと上目で鬼灯の顔を見上げる。
男の癖にわりと綺麗な顔してるし、職場の女性陣が黄色い声を発するのも当然だろうな。
しかし、あくまで上司。
それにさっきのは私に対してからかっただけだろう。
「ただの上司だ、それ以上もそれ以下も無い」
「だよね~!こんなャローを好きになっちゃ幸先が良くないよ」
「だからといって、お前のことは眼中にないからな」
「随分ときっぱり言うねぇ・・・」
「もうこんな時間ですか、雅さん。先に戻っててください」
鬼灯は懐中時計を見て、風呂敷を雅に渡した。
「!ああ、あんたは?」
「少し寄るところがありますので」
「分かった、じゃまた夜に」
そのまま来た道を帰る雅に、
「また来てね~♪」
「くるか!」
不機嫌になりながらもすたすたと帰っていった。
「うんうん、あれは脈アリと見たな」
「そんなわけないでしょ!思いっきりボディブロー喰らってたじゃないですか…!」
「白澤さん、忠告しときますが彼女に手を出さない方が身のためですよ」
「え?」
どことなく鬼灯の表情が真面目に強張っているのを、桃太郎は気づいた。
「何だよ。お前に興味はないって雅ちゃんも言ってただろ?僕は満々に興味はあるけど」
桃太郎(ああ、だめだこの人・・・)
「そういう意味ではありません。彼女は羅刹です、ましてや神獣であるあなたが、知らないはずはありませんよね」
「それはそうだけどさぁ…」
白澤もポリポリと頬をかき困った表情を見せる。
「あの、お二人ともどうかしたんですか?」
「桃タロー君は、雅ちゃんを見てどう思った?」
笑みを浮かべながら自分に問う白澤に、眉をしかめた。
「え?それは、まぁ今日初めて会ったわけですしどうと言われても…見た目は真面目そうな感じがして、口調は強いけど悪い人には見えませんし・・・それに、結構美人だし」
最後には少し頬を赤らめる桃太郎であった。
「お、桃タロー君少しは女性を見る目あるじゃない」
「あんたが言うか!」
「でもね桃タロー君、彼女はああ見えて美人で優しそうでも『人喰い鬼』なんだよ?」
「ぇえ!?ひ、人喰い・・・!!」
衝撃の事実を知らされた。あの女性が、人喰い鬼だなんて・・・むしろ違う意味で食べられそうだけど・・・。
「人喰い鬼って、だとしたらよくある内なる凶暴性を秘めているってことですか?想像がつきませんよ…」
「それが真実かどうかまだ分かりません。あと彼女曰く、鬼も食べるそうですよ」
「と、共食い・・・!?」
「だとすると、そのうち食べられるんじゃない?」
ニヤニヤと笑う白澤を睨みながら、
「神獣ってどんな味がするんでしょうね・・・見た目と違って中身が薄いんでしょうが」
「それどういう意味!?」
「そういうことなので、余り関与しないでください」
「もしかして僕が喰われるとでも思ってるわけ?お門違いにも程があるね。むしろ逆に食べちゃうけど」
「だからそういうことじゃないでしょうが!」
「それでは失礼します」
「!おい、今日夜に何かあるのか?雅ちゃんが言ってたけど」
「貴方には関係ないでしょう、では桃太郎さん」
「あ、はい。お気をつけて」
鬼灯が立ち去ったあと、白澤は顎に手をあてた。
「アレは何かあるな、地獄で夜になにかあるとすれば・・・アレしかないだろーなぁ」
ニヤリと笑む白澤の横で、桃太郎はやれやれと肩を落とした。
「まったく、地獄といい桃源郷といいろくな奴がいないな・・・」
愚痴をこぼしつつ地獄へと帰る雅であった。
でも、なんだろうこの胸のひっかかりは・・・
鬼灯と会ったときもそうだ。
白澤、あの二人、何処か会ったような・・・
「やめやめ、考えても仕方ない」