のんのんびより ~ 兄ガ見ル風ノ景 ~   作:凸凹凹凸

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書いて、しまった。


緑の風の景

 

優遊日和

・のんびりと心のままにするさま。

 

 

『田舎の生活、日々是平穏、ゆっくりゆったり、優遊日和』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  トントン! と鳴り響くのは鉄と鉄が打ち合う音。

  釘を刺す金鎚(カナヅチ)の音だった。 そして、その音源となる場所はというと、

 

 

「お~い。『旭丘分校』の字ちょっとおかしくないですか? 自分書いた字がミミズみたいになっちゃってますって、山先輩(やませんぱい)

 

「いやいやいや、お前さ、これわざとだろ? じゃなきゃこんな長いミミズ字にならねーよ。マジ勘弁しろよ仕事終わりで疲れてんだからさぁマジでー」

 

宮内兜(みやうち・かぶと)さん、越谷山彦(こしがや・やまひこ)さん」

 

「おいおい、なんだよ急にオレらのフルネーム呼んで、……なになに? なんかオレらを誰かに紹介でもしてくれんの? だが生憎と目の前にあるのは緑溢れる田んぼと、土臭い畑と佐竹じいちゃん家しか見えないぞ」

 

「いや佐竹さん確か隣町に引っ越してあそこ空き家だそうで」

 

「えっ、佐竹のじいちゃんいつの間に!?」

 

 

 そんな事をぶつくさと呟きながら作業をしているのは、どうやら仕事帰りなのか、指定されてそうなくたびれた作業服を着た青年、越谷山彦(こしがや・やまひこ)は木造建築で建てられた『学校』の敷地内に入る門の前にて(たむろ)していた。

 

 『旭丘分校(あさひがおかぶんこう)』という小・中学生を含む田舎の小さな学校。全生徒五人しか居ないと言われているこの小さな学校に来て、立て掛けられた木製の看板を仕立て直している真っ最中だった。

 

「いやぁ悪いなぁ、(けい)も会社終わりで帰りだったんだろ?」

 

「早めに終わって暇だったんで全然問題無いんスけど、山彦先輩は普通に残業とかしてたんじゃ無いんスか?

カブ(・ ・)先輩に呼び止められてなかったらオレも帰ってましたし………」

 

「あー大丈夫、大丈夫ですよ。山兄(やまにい)は仕事大好き人間ですマスから」

 

「はぁー良く言うわー。このオタッキー&シスコーンお兄さんがぁー……。オレぁ毎日を苦しい肉体労働やって家帰っては、妹たちに無理難題言われて更に苦行に勤しむこのオレに良く言うわぁー」

 

 そう言って工具を片手に看板を綺麗に整備するのは、アフロなんじゃないかと思うほどに頭が特徴の見た目ヤンキー風の兄貴、越谷山彦は唯一の弟である(すぐる)くんと似ていて、眼鏡をかけていない長身の方が長男だという方式で覚えた。

 四人兄妹で、山彦さんの下に二人の妹に一人の弟がいる。螢と妹と同じ分校生徒だ。

 

「ちょっと待ってくださいよ!!」

 

「うわわっっ! ちょっ、や……山彦先輩! カブ先輩にシスコンなんて言うからおこっ──────────」

 

()シスコンなんですよッッ!! マジで!」

 

「────あれ、オレ誰をフォローしたんだっけ? あっ、ノコギリ使います?」

 

「おーノコギリはもう使わんなぁ。もう綺麗にしたから終わりだ」

 

 自信満々に答える螢より年上の宮内兜に、ある意味で戦慄を覚えつつ、山彦先輩と工具の後片付けに入る。

 宮内兜、特徴と言えばそ男の子が好きそうなカッコイイ名前ランキングに入りそう名前で、そして昆虫のようなその名と、アニメ見ないと死ぬ体質や変に間違ったような敬語口調ぐらい。それが今現状の螢による兜の対する見解だった。

 

 あとシスコンらしい。

 

 

  田舎だから家族を守る意識が高まるからそうなのかなーそうなんだよな? じゃないと堂々と『俺ドシスコンだから!』なんて言えないもんなぁ。あーうん、うん。そうだきっと。ドシスコンなんて聞いたことないぞ、と螢はマヒする脳を鎮静化させていき、何分こういう類いの人種にはまだ会ったことが無かったから対応がむずかしいのだ。

 他にもきっとお目にかからない実態が見つかるかもしれない。それも楽しみで毎日が愉快だ。

 今日の出来事も妹にでも話をしよう。

 

 

 兎にも角にも、愉快な方々と田舎暮らしが開始した。

 

 そう、この一条螢(いちじょう・けい)は都会から引っ越してきたのだ。

 

 

 

 

 

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 ぴゅる~ん、るりぃり、ぴゅ~~りぃら♪

 

 

「リコーダー上手ウマウマだよ~♡ れんちょん~♡」

 

 そう言っては可愛い可愛い末妹の頭を撫でているのは、宮内家の長男、宮内鍬形(みやうち・くわがた)。その鍬形と一緒に歩くのは小さな体の宮内れんげ、小学一年生だ。

  一人楽しく笛を吹きながら歩く小さな妹を、後ろから愛おしそうに眺めて歩く兄の構図。

 

「ちょっと、田舎じゃなかったら危ない絵に見える…………いや、田舎じゃなくても危ない絵に見える!」

 

「おっ、(けい)くん」

 

 ぴゅ~るりぃ~♪

 

「笛で返事たぁ高度な技っスね、れんちょん」

 

 そんな宮内兄妹に追いつくように、後ろから歩いて来たのは引っ越す前に行っていた会社の作業着姿の一条螢だった。

 無造作に伸ばした黒髪と、前髪が少し長めであるのが特徴的な“元”都会っ子だ。バリバリの19歳。

 

「珍しいスね、作業服っスか? じゃあれんちょんとは一緒にバスに?」

 

「ええ、そうなんですよ。姉を起こしてご飯作って食器を洗って洗濯物入れて……あ、祖母(ばあ)ちゃんに干しといてと頼んでおけば……」

 

 急に家庭の話に出してきたし口調もまた変わった。まぁそれが宮内鍬形なんだろうな。と一人解決して、宮内兄妹の歩に加わる。

 

「何か忘れ物をしたのかな、蛍ちゃんは?」

 

「あー…………分かります? 弁当を忘れちまったらしいので、母に駆り出されてしもうた」

 

  片手にぶら下がる可愛い袋包みの弁当に鍬形は微笑む。

 木々が並ぶ歩道を歩きながら、リコーダーの音をBGMに他愛ない話をしていれば、また背後から、

 

「やほーい、れんちょーん、鍬兄(くわにい)ー、ほた兄ぃー。はよー」

 

 制服を着た女子中学生がやって来た。

 越谷山悟の妹、越谷夏海(こしがや・なつみ)が元気にゆったりしながら朝の挨拶をしてきた。

 これまた特徴的な赤い髪を揺らして、軽い感じで敬礼してきている夏海にれんげも片手を上げて挨拶。

 

 ぴゅりんぴゅすう~♪

 

「あんだって?」

 

「にゃんぱすー」

 

「どのみちわけわからん。どう意味なのそれ」

 

  『?』を浮かばせているれんげにまたもやデレデレのユルユルな笑顔になっている年長者に、螢はポリポリと頬を掻きながら思う。

 

「妹に萌えてんねぇ、(くわ)ちゃん先輩」

 

「鍬兄を河ちゃん呼びたぁやるじゃん、ほた兄」

 

「オレはまだ〝ほた兄〟なのか? そりゃ蛍の兄だけど、んー…………堅苦しくなるか。まぁ、良いか 」

 

(ほたる)の兄ちゃんだからほた(にい)だろ」

 

「待ってくれYO~! 吾輩の呼び名に注目してくれYOー」

 

「なんだよ鍬ちゃん先輩。その口調疲れない?」

 

「それですYO~へいっ! 急に来ましたNE()チェケラ!」

 

「男にちゃん付けはどうかと思うよ。うん、やっぱ男だからあだ名もカッキーのにしないとな!」

 

ぴゅるぴゅりゅん~♪

 

 れんげはどっちなのかわからない反応をして、その場を流す。

 夏海は特に興味なかったのか『今日学校とかメンドーだなー』とか言っている。鍬形はプルプルと震えているが、もうすぐバス停に着く。

 

「あ、お兄ちゃん!」

 

「よぅ。忘れ物だぞ、ほたる」

 

 突然にバス停までやって来た兄に、蛍は驚きながらも事の重大さに気付き、(けい)に『ありがとう、お兄ちゃん』と笑顔で感謝していた。

 一条蛍。

 一条螢のたった一人の妹で、神様は贔屓して妹だけに恵まれたものを分け与えた。容姿とさ身長とか知識とか……。

 

「蛍ちゃん、おはよう。今日もれんげちゃんと仲良くしてね」

 

「あ、ハイ。こちらこそ色々と教えてもらってますし、私も仲良しになりたいです」

 

 まだ鍬形とは少ししか話していない為か、蛍は少しぎこちなくなってしまうが、それでも途切れなくきちんとした答えで反応してくれる。

 鍬形はその答えに満足したのか、それとも頑張って答えてくれた蛍に気遣ってくれたのか、微笑んだ後に飴玉を蛍にあげた。

 

「あっ」

 

「本当はいけないけどねぇ、これもお兄さんからの粋な計らいということでね。れんげちゃんに友達が増えて本当に嬉しいかぎり───ちょっと待って、各々にちゃんと渡すからその差し出した手を向けたまま迫らないで!」

 

 飴玉は皆と同じオレンジ味のものを、バス停で待っていた可愛い後輩たちに分けてあげた。

 

「あむっ……おいしい。あっ。そういえば(けい)さん」

 

「うん? なになに小鞠ちゃん?」

 

「螢さんは仕事大丈夫なんですか? もう7時くらいですけど」

 

 そう心配してきてくれたのは、先程一緒に来ていた越谷(こしがや)夏海(なつみ)の姉である越谷小鞠(こまり)だった。どうでも良いが、この少女たちの中で一番難しい漢字の名前の子が小鞠だということで覚えた螢は、しばし呆けてから意識が戻る。

 

「大丈夫ですか」

 

「あ、たぶんお兄ちゃん考え事しています。いつも考え事してると止まってしまうんですよね。おーい、お兄ちゃ~ん」

 

「……小鞠ちゃんの鞠って、この中で一番むずかしい漢字だよな」

 

「それ考えてたんかい!」

 

 バス停に集まったその集団に少女たちは仲良く雑談に興じていた。

 螢もついでにバスが来るまで待つことにしていると、れんげの隣に座っていた鍬形がふと疑問に思ったことを螢に聞いた。

 

「あれ、ケイケイの会社も街の方でしょ? 入社式とか終わったのかい?」

 

「入社式終わって、少しの間休み貰ってんすよ。ていうか、オレが入社した会社まだ立ち上げたばっかりらしいので、手続きやら書類関係の整理やらで、もうちょっと仕事始めるのにはかかるみたいすね」

 

「車はあるんだよねぇ?」

 

「ありますねぇ」

 

「えええええっっ!!?」

 

 突如乱入してきた声に、螢は耳をキーンとさせる。

 なんという大声だ。姉の小鞠なんて隣に居たから凄い渋い顔になって怒っている。

 

「ほた兄は車持ってるんだなぁ!!」

 

「まだちょっとしか会ってないから分からないけども、きっとオレ足にされるかも!」

 

「合ってる合ってる。兄貴に散々言ってるらしいからね。『街まで送ってって~』って」

 

「ぐぇ!? クワ兄まで知ってるの! さては愚痴ってんなぁ、山兄~」

 

 山兄。それはきっと越谷家の長男、越谷山彦のことだろう。

 

「あんた頼み過ぎるからよ。私だとちゃんと連れてってくれるし」

 

「それは違う! 姉ちゃんのは母ちゃんに買い物頼まれた兄貴に便乗して乗ってってるくせに!」

 

「……ちゃんと考えてるじゃない。私たちの食べる食材を選び、買い物も手伝って、荷物だって運んでるのよ。それでお兄ちゃんも私を想って『……連れてってやるか』ってなるのよ」

 

「汚い! 汚いぞ小鞠ん! そんな願望抱いて買い物になんか付き合ってもー! だが、私はそんな汚い真似はせず! 真正面から『連れてって』!! と言っている! その私の方がまだ堂々している!」

 

「どこがじゃ!!」

 

「ま、まぁまぁ二人とも」

 

「喧嘩するほど仲がいいのん」

 

 おりゃ~~! と姉妹ならではか、それともどっちも抑えているからか、ポカポカと可愛らしい擬音を流しているだけの喧嘩をしているが、仲違いをするほどでもない内容だった。

 

「……なんの話だったっけな?」

 

「あ、お~い。バス来たぞー」

 

 バスに乗るまで、越谷姉妹の微笑ましい喧嘩を見ながら、みんなを見送った螢だった。

 

 




簡単なオリキャラ紹介。


名前/一条 螢
年齢/19歳
趣味/散歩
特技/酒をいくら飲んでも酔わない
好きなもの/家族(特に妹)、野菜全般、蛍(虫の方)
嫌いなもの/イナゴ(蝗)の佃煮、グリンピース
◆一条家の長男。妹の蛍が大好きな典型的シスコン兄ちゃんその1。性格は妹の蛍より少しおおらかな感じ、順応性が高く、東京から来たというのに早くも地元民と仲良しになっている。越谷家や宮内家に気軽に遊びに行っては、おばあちゃん達に捕まり、東京の話をさせられる。畑仕事も苦とせず、むしろ初めての体験が溢れてて、毎日が楽しいという。山彦や兜とは引っ越す前から顔見知りで、今や気の合う友人たちポジション、これから親友ポジションまでのフラグ立ち上げ中。容姿は蛍を自信ありげにさせたような整った顔つき。身長も蛍より高く、年相応の体力の持ち主。知識では今では妹に勝っているものの、すぐに追い抜かれると蛍の聡明さに負けを悟っている。
名前の由来は蛍と同じ呼び名であるから。


名前/宮内 兜
年齢/20歳
趣味/アニメ鑑賞、ゲーム、本、ネット
特技/電気工事
好きなもの/家族(特に姉と妹)、とろろご飯、萌え声優
嫌いなもの/ゲスト声優、俳優声優
◆宮内家の長男。妹のひかげとれんげをこよなく愛する典型的(?)シスコンお兄さんその2。性格はとにかく寛大で、姉に発売日当日に買ってきたゲームのディスクを踏まれて割れた時も、妹(上)が眠っている最中に髪をおかっぱにされた時も、妹(下)が何故か最新鋭のゲーム機にジュースをかけられ、壊れてしまった時も血涙を流して許するくらい寛大。田舎ながらも、頑張ってアニメを見たいが為にネット環境を一人で整えた男。就職先は家から放れた街の電気工事屋。仕事用車で各田舎町の電気工事をしている。数少ない貴重な若い社員らしい。加賀山楓とは唯一同級生。容姿はれんげと同じ髪色で短髪。長身でよく家で頭をぶつけるくらいデカイ。眠そうな目をして、隈も常にある。
名前の由来は鎧甲冑の兜から。


名前/越谷 山彦
年齢/24歳
趣味/物作り、料理
特技/コーライッキ飲み
好きなもの/家族(特に妹と弟)、バーベキュー
嫌いなもの(こと)/ネタバレしてくること
◆越谷家の長男。妹の小鞠と夏海をツンデレして愛する逆算的シスコン兄貴その3。えっ? お前がツンデレなの!? と何回か言われたヤンキー風の兄貴。よく田舎で見掛ける見た目ゴツいヤンキー風な兄ちゃんなのに、普通の人でも少し臆してしまうことを男らしく堂々と善行をできる(おとこ)。例えば、街中で迷子になっているのか、なっていないのか微妙な子供にも声かけられる青年。ただその風貌でよく逃げられているから精神的疲労が大変。母の若い風貌にも最近不審がっているが、若いのは良いことだと一人納得している。若い連中を集めて、皆と騒いだり食べたりするのが大好きで、頻繁に収集して行動している。名前の由来は単純に『山』から。そして読み方は『やまびこ』ではなく、『やまひこ』。ここに本人もこだわっていたのだが、社会人となってから色んな人から『やまびこ』と呼ばれ馴染まれてしまったので、結局は『やまひこ』でも『やまびこ』でも良くなったエピソードがある。







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2015/07/07 改善! 名前変更など。
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