「後はお前に託す!」
「そんな・・・待ってくれよ!俺じゃ・・・無理だ」
「お前なら・・・必ず、出来る!頼んだぞ、秋二!」
目の前にいる影は、もう一つの影を抱えると空へと飛び立つ。
「世界を・・・みんなを、守ってくれ・・・!」
その影ははるか遠い上空で大爆発を起こした。
それを俺はただ呆然と見つめることしか出来なかった。
~★~
___柔らかい。
それが意識が目覚めた第一感想だ。
確か俺は無人機と戦ってて。
第二移行した無人機の刀奈を狙った攻撃を受けて。
刀奈が持ってたスイッチの力でなんとか倒して。
そのあと気を失って。
「・・・ん・・?」
「「!?」」
うっすらと片目を開ければ、そこにあったのはふたつの顔。
が、俺の目が開いてるのを知ると驚いたのか飛び跳ねるように逃げた。
まだこの唇に残っている感触。
あれは人のもの。
つまり、
___俺は、キスをされた・・・のか?
突然の事実に覚醒しきっていない俺の脳内は混乱しきっていた。
~★~
さて、キスされた秋二が困惑しているのなら、した本人たちはどうか。
このふたりは困惑を通り越し、真っ赤になって俯き、固まっていた。
無人機を倒した後に倒れこんだ秋二はモニタールームから飛び出してきた千冬によって運ばれた。
そもそも、第二移行した無人機の攻撃を何度も喰らった時点で秋二の体はボロボロだった。
それでも戦ったのは本音、鈴、刀奈を守ると言う誓い、あとは本能だ。
人間の限界まで体を動かした秋二は半日眠り込んでいた。
秋二の元へ来た鈴と本音は目覚めないことが心配で仕方なかった。
そこで彼女たちはシンデレラのように、キスで目覚めるのでは、と思った。
気付けばふたりで同時に秋二の唇に自身のそれを重ねていた。
しかし、タイミング悪く目覚めた秋二を見て、行ったことの大きさを知った。
そこで彼女たちは固まってしまった。
と、いち早く膠着状態から開放された秋二は目の違和感に気付く。
「・・・なー、本音、鈴」
「な、何ー!?」
「な、何よ!?」
「・・・ククッ」
慌てふためく鈴と本音。
その姿を見た秋二は目を見開き、こらえきれずに笑い出した。
~★~
あー、笑った笑った。
本音が慌てふためくのは見たことあるが鈴のは珍しかったし、
何よりふたりの動きがシンクロしてたのが面白かった。
っと、本題に入んなきゃな。
「んでさ」
「んでさ、じゃないわよ!」
「もぉー!いきなり笑わないでよー!」
「ハハッ、ワリー。で、俺のコンタクト知らね?」
「「コンタクト?」」
首をかしげるふたりの後ろからフラシェキーが跳んできた。
右手に乗せると、フラシェキーは頭の上に予備のコンタクトを持っていた。
それを受け取り、目にはめる。
「・・・あんた、コンタクトなんかしてたのね」
「あん?知らなかったっけ?」
「うん。っていうかー、アキの目って蒼いんだねー」
「・・・まーな。だからこその、このカラコンだよ」
「ふーん」
再びの沈黙。
こういう間が嫌いなんだけどな・・・
とりあえずは・・・
「楯無は無事か?」
「うん・・・。でも、すごい落ち込んでたよー」
「・・・ま、そらそうか。後で謝っとかないと」
「そーだねー」
「愚弟と篠ノ之は?」
「ふたりともたいした怪我はないみたいよ」
「そ。ならいーや」
いつもより若干元気がないふたりに苦笑して返すと、揃って悲しげな顔になる。
・・・そういや、全身が地味に痛いかな。
「なぁ、俺の身体、どうなってる?」
「・・・んとね、左脚が粉砕骨折?で、右脚は折れてはないけど筋肉がボロボロみたいでー」
「右腕は複雑骨折。左腕は損傷が激しすぎるから動かしちゃダメだかんね」
「なーる。どーりで身体中が痛い訳だ。んで?本体は?」
「・・・」
「・・・」
「あん?」
なぜか黙り込むふたり。
まあ、一番痛いのは腹の辺りなんですけどね。
「ロケットの全開を複数回使用、4度に亘ってのリミットブレイクの発動で身体が
限界を迎えた。フォーゼ以外だったら死んでいたかもな。束に感謝しておけ」
「ノック位してから入って来いよ、姉貴」
腕を組んだまま入ってくる姉貴。
ったく、デリカシーがないんですかねえ。
「お前には言われたくない。・・・内臓、左腕は全治1ヶ月。それ以外は3週間だ」
「あれまぁ、3週間でほんとに治んのか?」
「お前の回復力は高いからな。外の怪我はすぐに治るだろう」
「へいへい・・・」
姉貴はチェーンを取り出し、抛ってきた。
「修理が済んだらしい」
「サンキュ。さすが束だな、速え」
「そうだな」
軽く笑いあうと、真面目な顔になる姉貴。
ポケットからスイッチ・・・刀奈が渡してきたエレキを取り出す。
「これはブランクスイッチだったよな」
「ああ」
「なぜこうなったと思う?」
「さーな、俺は投げ渡されただけだし」
「更識の話に寄れば、涙に反応したらしい」
「涙・・・?」
「ああ。束からは手紙が送られてきた」
チェーンと共に渡された紙を見る。
『多分スイッチが感情の高まりにあわせて反応したんじゃないかな!
けど力が強すぎるっぽいね。セカンドシフトしてから本領発揮かな!
それじゃー早く身体を治してね!
天災プリティ束さんより
P.S.早くあっくんの造った機体を見たいな!』
「なーるほど。大体分かった」
「そうか。で、どうだ?」
「こいつは多分、未完成品だ」
「ほう」
「あれで未完成って・・・」
鈴が呆れているがスルーさせてもらう。
「おそらく、楯無の感情・・・あの場合は悲しみで高ぶった思いがコズミックエナジーとして
スイッチに流れ込んだんだろうな」
「なるほど。つまり残りもその可能性が高い、か」
「ああ。ただ、感情で生まれたコズミックエナジーはどでかいが、制御が難しい」
「だからこその未完成品・・・」
「そ。束が言うにはセカンドシフトすりゃ本領発揮できるとさ」
「そうか」
一人頷いた姉貴は踵をかえす。
「帰んのか?」
「ああ。仕事は終わった。ゆっくり休めよ?秋二」
「あいよー」
手を軽く振って見送ると、鈴と本音はベットに座った。
ふたりとも俺の目を見て動かない。
軽く笑えば、ぎこちないながら笑い返してきた。
「まったく・・・面倒なことになったな」
「そうね。・・・いまのあんたなにが出来んの?」
鈴の問いに答える代わりに右脚で足元に置かれたエレキを蹴り上げ、胸ポケットにしまう。
「こんなとか?」
「・・・ほんと、意味わかんないところでオーバースペックなんだから・・・」
「意味分かんないは余計だ」
と、右側に座っていた本音が寝転がる。
着地地点が右脚だったおかげで左は無事だが、右も地味に痛い。
そして、わりと早く落下した本音を受け止めた俺は___
「痛ってえ!?」
体中に激痛が走った。
同時に鈴は右肩に勢いよく突っ込んでくる。
身動きが出来ない俺はまともに受け止め___
「だから痛いっての!」
全身への衝撃。
右腕は右脚より痛いから威力もアップ。
ってか
「いきなりなんだよ・・・」
「心配させた罰でーす」
「あん?」
心配・・・か。
俺を心配してくれる奴がここにもいるとはねえ・・・
「ほんと、助けてくれたのは感謝してるけど無茶しすぎ」
「俺の怪我くらいでお前が助かるなら安いもんさ」
「馬鹿・・・」
今度はゆっくりと寄りかかってくる鈴。
その目には涙。よく見れば本音も泣いている。
右腕で撫でてやるとこちらを向く。
「お前らが信じてる限り、俺は死なねえよ」
「~~!アキーッ!」
涙腺が決壊した本音が抱きついてくる。
身体への衝撃で顔を顰めそうになるがこらえて撫で付ける。
鈴も抱きついてくるがそれは優しく、包み込むようだった。
「もう、無茶しないでよ・・・シュウ」
「・・・わーったよ」
返事を返せば、涙はあるものの笑顔だった。
しばらくそうしていると上に乗っていた本音が止まった。
「・・・zzz」
「ククッ・・・」
泣きつかれたのか、安心したのか、規則正しい息遣いで本音は寝ていた。
その様子に笑みをこぼしていると鈴が動く。
「鈴?」
「そろそろ帰んなきゃでしょー」
「そうか。んじゃ俺も」
ベットを降りようと動くが、鈴に止められる。
「あんたは動かない!シュウが動けない間の世話はあたしと本音がするわ」
「あん?別にやんなくて良いぞ」
そういうと鈴は首を振る。
「無茶ばっかする人の言うことなんて信用できるわけないでしょー」
「・・・」
「図星だからって黙り込むな!」
鈴のチョップを受けた。
・・・選択肢ねえじゃん。
「じゃあ頼むぞ」
「任せなさい!」
ドヤ顔の鈴に苦笑を返す。
ったく、せこい奴・・・
「んじゃ、車椅子持ってくるから待ってて」
「あいよー」
「・・・動くんじゃないわよ」
「わーってるよ」
ジト目でにらむ鈴に軽く手を振る。
と、入れ替わりに刀奈が入ってくる。
しかし顔はさっきの鈴や本音のように暗いものだった。
「よー刀奈。無事そうでなによりー」
「・・・うん。でも・・・シュウくんが」
暗い顔で頷く刀奈。
「俺ァ無事だよ。心配すんな」
「無事って・・・!」
詰め寄ってくる刀奈。
でもなぁ・・・
「生きてりゃ無事。死んでりゃ怪我。そんでいいだろ?」
「そんなのって・・・!」
悲痛な面持ちになる刀奈。
近くに来たその身体を、右腕で抱き寄せる。
「きゃっ!?ちょ、ちょっと!」
「・・・こーやって、俺を思ってくれてる誰かのぬくもりを感じてれば俺は生きれる。
お前らが信じてる限り、な」
「無茶苦茶よ、まったく・・・」
「・・・だからお前が心配する必要はない。いつもどおり、飄々としたお前でいろ」
「・・・うん!」
頷いた刀奈を撫で付ける。
と、束から貰った紙を手渡す。
「これは?」
「一応、束からの手紙。あのスイッチ・・・エレキの話が載ってる。読んどけ」
「ありがと。・・・じゃ、ゆっくり休んでね」
「おー」
刀奈を見送ってすぐに、鈴が戻ってくる。
「借りてきたわよ。特別仕様の車椅子」
「・・・それ、束の造ったやつだろ」
「知らないわよ。千冬さんに渡されたんだから」
持ってきたのはやけにメカメカしい車椅子。
俺が中学生くらいん時に束と一緒に作ったのに似てる。
ま、便利だしな。これでいいか。
本音を起こさないように抜け、車椅子に乗る。
「こんぐらいなら一人で出来っかんな」
「はいはい、本音も乗っけて大丈夫?」
「ああ」
鈴が本音を担いで俺の膝上に乗せる。
膝のダメージが一番少ないからな。
満面の笑みの本音が俺に寄りかかる。
「さーて、帰るか」
「ええ、行きましょう」
部屋に帰った俺たちは、そのまま寝床に入った。
と、いっても俺は車椅子の変形機能を使用して寝たけどな。
そろそろ休日が出来てヒマになるから、あいつんとこでも行くか・・・
俺の親友のとこに。
祝、お気に入り100件突破!
皆様、ありがとうございます。
秋二「これからも、応援よろしくな」
これからもこの作品と秋二をよろしくお願いします!