さてさて、現在。
俺と愚弟は中学からの友人___いや親友だな。
その親友、五反田弾の家に来ている。
ちなみにだが、とりあえず左腕と内臓以外はほとんど治っている。
と、いっても戦闘行為や激しい運動は出来ないけどな。
「で?実際どうなんだよ?」
「何だよどうって?」
ゲームをしている弾が隣の愚弟に話しかける。
ちなみに俺は弾のベットの上でフードロイドたちの整備中だ。
「だから女の園の話だよ。どうせいい思いしてんだろ?」
「してねえっつの。何回説明すりゃ納得するんだよ」
「嘘を吐くな嘘を。お前のメール見てるだけでも楽園じゃねえか。なにそのヘヴン。招待券ねえの?」
「ねえよ馬鹿」
愚弟は邪険に扱っているが俺は違う。
「来たきゃ来ても良いぞ」
「マジで!?」
驚いてこちらを向く弾と愚弟。
しかし愚弟は試合中なのを思い出し、画面のほうを向くとたたみかける。
「隙あり!」
「あっ!てめ、一夏せこいぞ!」
「よそ見しているお前が悪い!」
と、弾は言ってるが弾は負け続けている。
正直、弾より愚弟のほうがゲームは上手い。
まぁ、こないだ俺がやったときは俺一人でふたりともボコしたがな。
と、コントローラーを置いた弾が姿勢を直し、俺のほうを向く。
「で、マジか!秋二、マジで行っても良いのか!?」
「なんなら、話し通してフリーパスでもやろうか?」
「ちょっ!?シュウ兄!そんなことできんのか!?」
「当たり前だ。だけどな、弾」
「ん?」
明らかに喜んでいる弾に一言。
「あいつになんて言われても知らねーぞ」
「うっ・・・」
顎に手を当てて考え込む弾。
一方、愚弟は俺の言った「あいつ」が誰だか分からずに困惑している。
まぁ、愚弟は会った事ないがな。
「・・・やっぱりやめとくわ」
「ククッ。賢明な判断だと俺は思うぞ?」
「そうだな。で?お前はどうなんだよ、秋二」
「俺か?俺は彼女が3人出来た」
「・・・何故だろう。秋二なら出来る気がするのが怖い・・・」
「俺も・・・ってかシュウ兄彼女出来たなら言ってくれよ!」
「聞かれなかったからな」
「・・・それには鈴は?」
「含まれます」
急に真剣な顔になる弾。
まぁ、弾はあのことを知ってるしな。
「・・・俺としては嬉しいかな。お前に彼女が出来て心を赦せる相手が増えて」
「サンキュ、弾」
「俺も彼女が欲しいぜ~」
急に表情を戻し、伸びをする弾。
しかし、その言葉、まずいと思うぞ。
「弾。この会話、送信されてるって言ったらどうする?」
「・・・ゑ?」
その体勢で止まった弾はロボットのようなスローモーションでこちらを向く。
その視線は、俺の手元で起動状態のバガミールに向けられる。
「・・・USO?」
「残念、ホントだ」
青ざめた表情になる弾。
と、急に扉が蹴り飛ばされ、少女が入室する。
「お兄!さっきからお昼出来てるって言ってるでしょ!さっさと___」
「んあ?・・・蘭か、久しぶりだな」
そこで、俺と目が合う。
少女は目が合った途端に、顔を真っ赤にする。
「しゅ、秋二さん!?な、何でここに!?」
「何でっつってもな・・・遊びに来たんだよ」
「そ、そうですか・・・」
「・・・俺が居ないほうが良かったか?」
「いえっ!そんなことないです!あの・・・よかったらお昼食べていきませんか?」
「んじゃ、遠慮なく」
走り去った蘭を眺めていると、弾が視線を送ってくる。
「なんだ、弾」
「おまえさっき、凄い意地の悪い笑顔だったからな」
「さぁ?何のことかな?」
視線をそらすと、愚弟はなにやら考えていた。
・・・まぁ、どうせろくでもないことだろうがな。
「どうした?」
「あ、いや、蘭ともかれこれ3年の付き合いだけど、心を開いてくれないなと思って。なんかよそよそしいし」
・・・まぁ、予想はしてた。
ホントこいつは何なんだろう。
「今、心の底から蘭がこいつを好きにならないで良かったと思ったわ」
「奇遇だな、弾。俺もだ」
「でもお前が弟ってのはなぁ・・・」
「別に良くないか?」
「なんで弟の話が出て来るんだ?」
「いいからいいから。行くぞ秋二、一夏」
「あいあい」「・・・?まぁいいや。おう!」
~★~
そんなこんなで食堂。
着いてすぐに弾の雰囲気が少し変わったので何事かと見ると、視線の先には蘭がいた。
先ほどのラフな格好からおしゃれに着飾った格好へと変わってはいたが。
「着替えたのか、蘭?」
「は、はい」
「・・・」
「あのぅ・・・」
「ふむ。似合ってるぞ」
「~~!あ、ありがとうございます・・・」
顔を赤くし、俯いた蘭の頭の上に手を乗せる。
そのまま軽く動かせば、気持ちよさそうに目を細める蘭。
「ただ・・・」
「はい?」
「俺はいつものラフな格好の蘭も好きだがな」
「~~!」
もはやトマトと変わらないくらい顔を赤くする。
事実を言っただけなんだがな。
ほら、なんかこうボーイッシュな感じの服装が好きなんだよね。
「蘭、デートなのか?」
「違います!」
ダァン!と音を立てて机を叩き立ち上がる蘭。
馬鹿をした愚弟の脛を蹴る。
と、弾は不機嫌な顔になる。
「・・・人の妹を目の前で口説くなよ」
「お前が言えた事か」
すると、後ろから銀色の物体が飛来する。
俺は受け止めたが、弾と愚弟はクリーンヒットした。
「さっさと食わねぇと下げんぞ」
現れたのは弾の祖父で、この五反田食堂の店主でもある厳さん。
・・・まぁ弦さんとややこしいからおじさんと呼んではいるが。
「どもっす、おじさん」
「・・・おう。怪我したんだってな、たっぷり食って速く治しちまえ」
「あざっす」
おじさんの厚意をありがたく受け取り、蘭の隣に座る。
「「「「いただきます」」」」
「おう、食え」
合掌してから、定食に手をつける。
「そういや一夏、例のファースト幼なじみと再会したって?」
「ああ。箒だろ?久しぶりに会えたよ」
「・・・?誰ですか?」
俺の袖を軽く引いた蘭。
ちなみに俺はポロシャツにジーパン。薄手のパーカーである。
「前にこいつが話してたファースト幼馴染だ。ちなみにセカンドは鈴らしい」
「そういえば鈴姉も居るんですよね!」
食い気味の反応を示す蘭。
鈴と蘭。音の響きも近いこのふたりは何かと仲がいい。
「メルアド教えといてやろうか?」
「是非!」
眼を爛々と輝かせた蘭は俺の顔の前に来る。
自然と距離が近くなる。
「蘭、食い気味だなぁ」
「あっ・・・!」
愚弟に指摘され、そのことに気付いた蘭はあわてて離れる蘭。
ったく。
「・・・ふぇ?」
いきなり乗せられた俺の手に驚いた蘭は素っ頓狂な声を上げる。
・・・こういう不意打ちの声はぐっと来るよな。
「わざわざ無理すんな、自然体で居ろ。そのほうがお前は可愛らしい」
「~~!はい・・・」
またも赤くなり、俯いた蘭。
と、そこで馬鹿が余計なことを言った。
「そういや、シュウ兄の部屋だけやけに豪華だよな」
「・・・まぁな」
「え?なんでですか?」
至極単純な質問なんだが答え辛い。
弾に視線を送れば「言ってしまえ」と言う。
「・・・俺の部屋は3人住んでいる」
「3・・・人・・・?」
「俺、鈴、布仏本音というやつだ」
「秋二さん、鈴姉と同じ部屋に住んでるんですか!?」
「まぁ、そうなるな」
蘭の周りの空気だけ冷えていく。
そしてここで馬鹿がバカした。
「あれ?でもシュウ兄の部屋ってベッド一個だった___痛って!?」
膝を強く蹴り上げるが時既に遅し。
蘭は怒りのボルテージを上げまくっている。
はぁ、しゃーねーか。
「お兄、跡で話が___」
「まあ待て蘭」
蘭には悪いが話を遮る。
「なんなら後で一緒に寝てやろうか?」
「えっ!?」
驚愕する蘭に微笑みかけて水を一口飲む。
「別にいいぞ。昼寝になるがな」
「え・・・っとぉ・・・そのぉ・・・」
歯切れの悪い蘭に先ほどのような意地の悪い笑顔を浮かべて聞く。
「嫌か?」
「ぜ、是非!」
クルクル表情を変える蘭に苦笑しながら飯を食べていく。
と、先に食べ終わった蘭は箸を置くと、口を開いた。
「決めました。私、来年IS学園を受験します」
「はあぁぁ!?」
驚愕した弾が立ち上がるが、おじさんのおたまで撃沈。
「え?受験ってなんで?蘭の学校ってエスカレーター式で大学まで出られて、しかも超ネームバリューあるとこだろ?」
「大丈夫です。私の成績なら余裕です」
「IS学園は推薦無いぞ・・・やめとけ・・・」
復活した弾が反論するが、蘭は意に介さずに続ける。
「私は筆記で余裕です。それに・・・」
ポケットから取り出した紙をテーブルの真ん中に広げる。
「IS簡易適性試験A判定・・・」
弾が暗い表情で呟く。
「で、ですので秋二さん。合格したら、先輩としてご指導を・・・」
「・・・」
こちらを向く蘭。
俺は味噌汁を飲み干し、箸を置いて蘭のほうへ向く。
「端的に言う。答えはノーだ」
「え・・・?」
驚いた蘭は眼を見開く。
と、同時におじさんが厨房から出てくる。
左腕の怪我を考慮してか、おたまが飛んでくることはなかったが明らかに怒っている。
「蘭の決定に文句があるのか?」
「秋二さん、何でですか!?」
ふたりに詰め寄られるが、とりあえずは蘭のほうを向く。
「蘭。その気持ちは嬉しい。俺の後輩になってくれれば俺だって楽しいだろうさ」
「だったら・・・」
「でも」
困惑した蘭の眼を見返し、肩に手を置き答える。
「同時に俺は、お前に傷付いて欲しくないとも思う」
「・・・?」
「ISは危険だ。下手をすれば死ぬことだって考えられる。事実俺は大怪我を負った」
蘭は俺の左腕を見つめる。
「もちろん俺はお前を危険にさらさせない。が、極力善処するとはいえ完全に守りきれるとは限らない」
「・・・」
「だからこそ、俺はお前にそんな危険を冒して欲しくない。弾もそうだ。
蘭に危険な場所に行ってほしくないからこその行動だ」
弾は実際にその脅威を知っていることは言わなかった。
言わない約束になっているからだ。
「ただ、結局決めるのは蘭自身だ。さっきも言ったが後輩として来る事は歓迎だ。
俺や弾の思いも飲み込んで受験するというなら応援しよう。勉強も手伝う。
まだお前には時間がたくさん有る。良く考えてくれ」
「・・・わかりました。私、よく考えます」
頷いた蘭に頷き返し、おじさんのほうを向く。
「と、いうことです」
「・・・なるほど、ありがとうな」
「いえ、ご馳走様でした」
おじさんは頷いて厨房に戻った。
蘭を溺愛しててもやっぱり危険なことはさせたくないんだな。
「サンキュな、秋二」
「なに、当然のことをしただけだ」
「やっぱすげえよ、シュウ兄は!俺にはそこまで思いつかなかった」
「お前はもっと頭を使え」
「酷ぇ!」
3人で笑い会っていると、蘭が俺の袖を引っ張る。
「あの・・・」
「流石に食後すぐは良くないな。どっか行くか?」
「え?いいんですか?」
「いいよな?」
弾と愚弟に視線を送る。
「・・・まぁ、たまにはいいんじゃねえの?蘭、楽しんで来い」
「ありがと、・・・お兄」
「弾がいいなら俺はいいぞ」
許可を貰った俺は蘭を引き連れて扉を開ける。
さーて、どこ行くかな・・・
祝、UA10000突破!
皆様、これからもよろしくお願いします。