さて、デュノアを救うと約束してから一晩。
鈴と本音を起こさないように抜けて、俺は生徒会室へと向かった。
理由は簡単。正体をバラすタイミングの相談だ。
っと、姉貴見っけ。
「姉貴」
「ん?・・・ああ、秋二か。おはよう」
「おう。・・・んあ?名前呼びで良いのかよ?」
「まだ学校は始まっていない」
「せっこ・・・」
「・・・五月蝿い。行くぞ」
「はいはい」
姉貴と生徒会室に行く。
・・・あれ?ひょっとしてこの気配。ここでは初遭遇じゃね?
「楯無、来たぞ」
「あ、来た来た♪はーい。虚ちゃん、おねがーい」
「はい。どうぞ、お入り・・・」
「・・・よう、久しぶり、だな」
「・・・!まさか・・・千秋くん・・・?」
流石。虚は見て分かるのな。
「ああ。正確には秋二。織斑秋二だ。よろしく頼むぜ」
「・・・!はい、よろしくお願いいたします」
うん、こういうときの笑顔は姉妹そっくりだな。
可愛い。
「もうシュウくん、いつまで虚ちゃんの笑顔に見惚れてるのよ」
「拗ねるな楯無、話が進まなくなるだろう」
椅子に座ったまま不機嫌オーラを散布している刀奈。
「つーんだ。最近構ってすらくれないシュウくんがやっと構ってくれると思ったら業務のほうなんだもん・・・」
「最近のお嬢様はずっとこんな感じなんです」
「・・・はぁ、分かったよ。週一で生徒会の仕事の手伝いに来る。それでいいか?」
「別に嫌なら来てくれなくても良いもーん」
頬を膨らませてそっぽを向く刀奈。
確かに最近構ってなかったのは事実だし、悪いのは俺だな。
「・・・!あっ」
「悪かった、寂しくさせたな。お前ともっと居たいから手伝いに来てもいいか?」
軽く髪を梳きながら撫でる。
「ずるいわよ、そういうの・・・」
「んー、なんのことやら」
しばらくこれを続けてたら姉貴から睨まれた。
「・・・睨まないでくれよ」
「ふん。いつまでやっているつもりだ、早く話を進めろ」
「へいへい」
自分もして欲しい、って感じだな。
後でこっそりやりに行こう。
「んで、デュノアの話なんだが」
「ああ、フランスの彼女ね。正体をばらすタイミングだっけ?」
「そうだ。いつごろならすんなりいける?」
「こっちとしてはいつでも大丈夫っちゃ大丈夫よ」
「姉貴のほうは?」
「私としては書類関係もあるのでな。タッグマッチトーナメントの後くらいが楽だな」
「了解、それまではまだあのまんまでいてもらわなきゃな」
「そうね」
「・・・秋二、鈴と本音にも言っておけ」
「んあ?なんで?」
「フォロー役が居た方が良いだろう。名義上は同じ男とはいえ、いつでもお前が近くに居るわけじゃない。女子のほうが多いしな」
「なるほどねえ。分かった」
話はまとまったな。
そろそろ戻るか。
「んじゃな、楯無、虚」
「ええ、またね」
「はい、また今度」
とっとと戻って飯つくってやんなきゃな。
走って戻ろう。
余談だが、生徒会室を出てからちょっと姉貴を撫でたらめっちゃ頬が緩んでた。
~★~
そんなこんなで放課後。
デュノアを連れて俺はアリーナへ向かっていた。
本音が自主練したいらしいので、俺と鈴が呼ばれたわけだが都合上こいつも居たほうが楽だと思ったから愚弟に呼ばれかけていたのをスルーして引っ張ってきた。
「もう!いきなり引っ張るからどこに連れてかれるのかと思ったよ」
「悪い悪い、あの馬鹿の前では話し辛いし、こっちの都合もあるもんでな」
「都合?」
「・・・こっちで話すぞ」
言って俺は右耳に触れ、プライベート・チャネルを起動する。
俺の言わんとしていることを察したのか次いでデュノアも起動させる。
『・・・いいの?勝手に校内で起動しても?』
『まあ、そん時は俺が怒られっから』
『フフッ、秋二は優しいんだね』
『・・・馬鹿言え。くだらないこと言ってねえで本題に入るぞ』
隣で楽しそうに笑うデュノア。
・・・これを男で通そうとするのは無理があると思う。
可愛いわ。
『ごめんごめん。__で、話って?』
『お前が男装しとく期間だ。タッグマッチトーナメント終了後だとよ』
『分かったよ。・・・ありがとね、僕のために』
『いーや、気にすんな。俺の個人的な理由だからな』
『そういえば僕が秋二に助けてって言った理由言ってなかったね』
『ああ、そうだな』
『二年前のフランス』
『っ!?』
思わず息を呑んでデュノアの方を向いた。
まさか、あいつが来たときの・・・
『あのとき、襲われそうだった僕を身体を張って助けてくれたの。秋二、だよね?』
『・・・なるほど、そういうことか。繋がった』
『え?』
『確かにそのときお前を助けたのは俺だろうな』
『やっぱり・・・』
俺がこいつを助けようと思った理由もそこにある。
二年前、フランスで怪物が発生する騒ぎがあった。
まあそのことで俺が「仮面ライダー」と名乗るきっかけになったんだが細かい説明は今は省く。
そのとき俺はある人物と共に鎮圧のためにフランスに向かった。
で、襲われかけの少女が居たから助けたわけだが。
まさか俺が仮面ライダーとなったきっかけの少女がこいつだったとは・・・
『人生ってのは何があるかわからねえもんだな』
『どういう意味?』
『こっちの話だ、気にすんな。んで、も一個の話だが』
『うん』
『お前の正体を鈴と本音には教えさせてもらう』
『え?ど、どうして?』
『まあ聞け。バラすまでの間のフォローは基本的に俺がするが、俺一人だと限界がある部分もあるし、なにより女だってバラしてからも俺と一緒に居る限りあいつらとは関わることになる。先にバラしておいたほうが親交も深められるし、俺が居ないときにもフォローを頼めるからな』
『・・・大丈夫なの?』
『あいつらなら信用が出来るぜ』
『なら、お願いしてみようかな』
『ああ。・・・っと噂をすれば』
この気配は鈴だな。
・・・ん?やけに荒立ってるな。問題ごとか・・・?
・・・!アリーナの方、何かある!
「シュウ!」
「鈴、何かあったのか?」
「・・・あんたも感じるでしょ、なんとなく」
「流石、感覚が優れてんな。俺も感じてるし、アリーナでなんかあるぞ」
走ってきた鈴の言うとおり、いやな予感や感覚を俺も感じている。
直感タイプの鈴は俺には及ばないまでも気配や予感等の感覚が優れている。
と、アリーナ方向からひとりの女子が走ってくる。
「鈴!と、秋二君にデュノア君!」
「アリーナで何かあったの?」
「ドイツの転校生が一夏君に喧嘩吹っかけてるみたいで・・・」
「ちっ!あの馬鹿・・・!」
話し終わる前に走り出す。
ボーデヴィッヒの奴・・・何する気だ。
「あ、ちょっと秋二!」
「あーもう!行くわよデュノア!園ちゃん、ごめんあたしたち行くから!ありがと!」
「あ、うん!」
~★~
アリーナのシールドバリアの外に到着。
少し遅れて鈴とデュノアが到着する。
「鈴、デュノア、すぐに展開できるか?」
「大丈夫よ」「うん」
「準備しておいてくれ」
視線の先にはボーデヴィッヒと、睨みあっている愚弟、オルコット、篠ノ之。
恐らく、ボーデヴィッヒが挑発して愚弟が拒んでるってとこか。
と、不敵に笑ったボーデヴィッヒは銃口をあらぬ方向へ。
その先は・・・
「本音!?」
「嘘でしょ!?」
銃口の先はラファールを置いて立っていた本音。
さらに反対側の方で打鉄を交代で回している生徒。
ふざけやがって・・・!
「行くぞっ!」
「「きゃっ!?」」
鈴を右脇、デュノアを左脇に抱え、21番のスイッチを出して駆け出す。
ヴォンッ!
一瞬姿を消し、シールドバリアを抜けると同時に鈴とデュノアを放し、シールドスイッチを出して起動させて射線上に着地し受け止める。
《Shield》
反対側にはリヴァイヴカスタムを展開したデュノアが回りこんでシールドで受け止める。
と、同時に甲龍を起動した鈴が突貫。
振り下ろされた双天牙月を辛うじて避けるボーデヴィッヒ。
が、デュノアがアサルトカノン、ガルムで射撃。
それすらも避けるボーデヴィッヒだが、地を駆けて接近していた俺には反応が遅れる。
そして素足のまま思いっきり蹴っ飛ばす。
まともに喰らったボーデヴィッヒは4、5メートル吹き飛び、停止した。
そのまま後方に宙返りして本音の前に着地。
右後方に鈴が、反対側の生徒の前にデュノアが降り立つ。
「・・・無事か、本音」「大丈夫?みんな」
「だいじょーぶだよー。ありがと、アキー、りんりん、でゅっちー」
ひとまず本音に怪我が無いことは確認。
向こうも特に何もなさそうだな。
問題は・・・
「・・・兄様、何故邪魔をなされるのですか?」
「貴様こそ、何故本音やみんなを狙った。本音はISを装備していなかったというのに」
「織斑一夏が戦闘行為を拒んできたので焚きつける目的で射撃しました」
「そこの馬鹿と本音たちに何の関係が有る」
「そいつらはクラスメイトです。全くの無関係ではありません」
なるほどな、事情は大体理解した。
だが・・・
「ふざけるなよ」
「っ!?」
目の前に居る兎を睨みつける。
濃厚な殺気も混ぜているからヤツにとってはかなり負荷がかかっているだろうな。
「馬鹿が戦おうが、戦わなかろうが。お前が勝とうが負けようがどうでも良いが。そんなくだらない理由で本音を傷つけたらお前を消すぞ」
「ですが・・・!」
「くどい!」
反論しようとする兎を黙らせる。
「そんなに戦いたけりゃ、俺が相手してやる」
ドライバーを腰に巻きつけ、トランスイッチを下げようとして・・・
『コラ!そこの生徒!何をしている!』
「ちっ・・・」
アリーナの管制塔から教師の声が響く。
おせえんだよ、来るならとっとときやがれ。
「兄様、今回は引きます。どうか、私の邪魔をしないでください」
「・・・俺の大切な奴を傷つけなければな」
レーゲンを解除して去っていく兎。
次同じことしたら破片も残さず叩き潰してやる。
「ほら、シュウ」
「っつ!」
パシンッ、と背中を鈴に叩かれた。
訝しげな視線を送れば
「あんた、ずっと怖い顔しないの。みんなビビッてるわよ」
言われて殺気がダダ漏れだったことに気付く。
よく見れば鈴の手も震えているし、生徒たちは言わずもがな。殺気を見慣れてる本音でさえ少し震えている。
「・・・ふう。すまん、怖がらせた」
みんなに謝って、鈴と本音、デュノアを連れてアリーナから出る。
しまったな・・・つい頭に血が上っちまう。
気をつけねえと・・・
~★~
「デュノアは女だった?」
「ああ」「そーだよー」
放課後に部屋に戻って数時間。
怖がらせた鈴と本音を撫でたり抱きしめたりと甘やかし続け、やっと普段の調子に戻したところでデュノアを呼んで、事情説明。
ぜんぶ話した。
「んで、シュウはデュノアを助けるの?」
「ああ。既にこいつは俺の所有物件だ」
「物件じゃないよ・・・」
軽く笑いながら否定するデュノア。
あながち間違えた表現ではないんだけどな。
「それでぇー、わたしたちはどうすればいいのー?」
「まあ、単純に言えばこいつの正体がばれないようにフォローして欲しい」
「フォロー?」
「ああ。言っちゃ悪いがこいつは注意深く観察すれば結構ぼろが出る」
歩き方が女っぽいし、身体のバランスなどポイントはいくつもある。
その中で俺が最も懸念しているのは___
「何がまずいって、予期せぬことが起きたときに普通に「きゃっ!」っていうとこだ」
「うぅ~・・・ご、ごめん」
「それは流石にまずいわね・・・」
「だろ?フォローっつっても難しいかもしれんが、頼めないか?」
軽く頭を下げる。
これをやってもらえることのメリットは大きい。
この間に仲良くなって欲しいってのもあるし、単純に姉貴の仕事を増やしたくないってのもある。デュノアにこの学校に慣れてもらいたいし。
「・・・ま、シュウが認めたってなら悪い奴ではないでしょ。いいわよ」
「わたしもー、でゅっちーおもしろそーだしー」
「あ、ありがとう、ふたりとも!」
笑って礼を言っているデュノア。
うん、第一歩としては良いんじゃねえかな。
「んじゃ、とりあえず飯食ってくか?」
「え?いいの?」
「うん!アキのご飯はー、とぉーってもおいしいんだよー」
「・・・ハードルを上げるなよ本音」
「ほんとだもーん」
「へぇー!秋二の話詳しく聞きたいな」
「じゃ、シュウが作ってる間に話しましょうか!」
その後、飯が出来ても鈴たちの話は終わらず、結局消灯ギリギリまで話していた。
仲良くなんの早くね?
~★~
秋二たちがアリーナに走っていったあと。
寮の廊下を歩くひとりの生徒が居た。
「気付かれなかったわね」
それなりに整っている顔であるが、その口がわずかに歪む。
「奴の弱点はあの娘たち・・・」
そういって出したのは鈴、本音、楯無、シャルロット、ラウラ、千冬、蘭の盗撮写真。
「フォーゼ・・・貴様は私が必ず殺す・・・!」
そう言った彼女は激しい憎悪に燃えていた。
★おまけ
夕食にて
「あ、そうだ。デュノア」
「なに?」
「風呂入るときとかは絶対に鍵を閉めろ」
「それは閉めるけど・・・」
「絶対忘れんなよ」
「・・・一夏のやつ、なんかやるの?」
「あの馬鹿、男子だと思ってると人が風呂入っててもお構いなしに開けてくるからな。ノックなしで」
「はぁ!?頭おかしいんじゃないの!?」
「おかしいんだよ。だから絶対に忘れるなよ」
「う、うん。分かった」