さて、デュノアの歓迎会的なものを勝手にやった俺たち。
鈴とも本音とも上手く馴染めたようで既に呼び捨て名前呼びになっている。
就寝時間前に部屋に返したから特に問題は無いだろ。
時間は現在に戻り、週明け。
本音を首からぶら下げ、鈴と此間から一緒に登校しているデュノアと共に廊下を歩いていると
「それは本当なんですの!?」
雫さんの大声が聞こえた。
何事かと思い鈴と顔を見合わせ、教室に向かう。
入室すれば一際目立つ女子のカタマリが出来ている。
そのど真ん中に雫さんがいた。
「本当なんだって!学年別トーナメントで優勝すれば秋二くんか一夏くんと付き___」
「俺とシュウ兄がどうかしたのか?」
「「「「きゃああっ!?」」」」
唐突にクラスに入ってきた愚弟はそのカタマリで自分の名前が出ていたためか、質問したのだろうが・・・
「はぁ・・・あそこまで言ってて聞こえてねえとか馬鹿だろ」
「何であれでわかんないのか理解できないわ・・・」
「あれはーもう病気レベルだよねー」
「あはは・・・なんとなく秋二たちが言ってたことが分かった気がする・・・」
順に俺、鈴、本音、デュノア。
あそこまで聞いてれば普通に優勝したら付き合える話になってるって理解できるだろ。
それより俺が気になってるのはあいつだけじゃなく俺まで入ってること。
俺は優勝した奴と付き合う気なんてさらさらねえが・・・
「多分~、ほうきんのせいなんじゃないかな~」
「篠ノ之?」
「ああ、確か、一夏の部屋の前で「優勝したら付き合ってくれ」みたいな話してたらしいわね」
「成る程ねぇ・・・」
それが女子の間で広がるうちにあること無いこと脚色マシマシにされた結果ああいうことになったのね。
まあ・・・
「どっちにしろ俺は気に入った奴としかそういう関係になる気はねえけどよ」
「えへへ~」
「・・・ま、そう言うと思ってたけどね」
鈴と本音の頭に手を乗せながら言う。
本音は満面の笑み、鈴は恥ずかしそうに顔を赤く染めている。
っと、忘れちゃいけねえな。
「・・・もちろん、お前もな」
「え?・・・!~~っ!」
振り向いてデュノアに小さな声で言ってやると、理解したのか顔を真っ赤に染める。
言ったのは俺だけどさ・・・
「・・・もう少し顔をなんとかしてくれ」
「秋二のせいだよ・・・ばか」
そんな顔でそういわれても困るんだがな・・・
っと、時間がそろそろやばいな。
「鈴、そろそろクラス行っとけ。チャイム鳴っちまう」
「ん、オッケー」
「あ、いや、ちょっと待て」
「・・・何よ、どうかしたの?」
つんのめりそうになった鈴がジト目でこっちを向く。
一応気になったので言っておこう。
「朝から感じる感覚、嫌な予感がするからな。一応言っとく」
「何であたし?」
特に理由は無いが強いて言えば
「勘ってヤツだ。お前だけクラスも違うしな」
「ふーん。ま、気をつけとくわね。シュウの勘はあたしより当たるし」
「ああ」
「んじゃ三人とも、お昼でね」
「ああ」「は~い」「うん!」
軽く手を振りながら去って行った鈴と入れ替わるように姉貴が入ってくる。
本音を降ろして、二人の背中を押す。
「ほれ、お前らも。もーそろ鳴るぞ」
俺たちが席に着いたタイミングで丁度良くチャイムが鳴った。
さーて、何事も起こらなきゃいいけどな・・・
~★~
時間は進み昼休み。
いつものようにいつもの面子+デュノアと一緒に昼飯を屋上でとってから教室に戻る道。
よく知る二つの気配が人目につかない廊下から感じられた。
「はあ・・・」
「秋二、どうかした?」
「いや、めんどくさい事が起きる予感しかしねえと思っただけだ」
「めんどくさい事?」
「余計な詮索はいいの、デュノア。あたしたちは先行ってたほうが良い?」
「ああ、悪い」
「別に良いわよ。次の授業にはちゃんと間に合うようにね」
こういうとき、鈴は察しが良いってか気がきくってか。
まあ、素直に感謝したら面白くねえし。
「お前は俺の保護者かっての」
「うるさい!さっさと行く!」
「怒んなよ。じゃあ後でな」
軽く手を上げ、気配のほうへと向かう。
「何故ですか教官!」
やっぱりか・・・
取り敢えず視認出来る位置まで移動すると、兎が姉貴に詰め寄っていた。
その様子は駄々をこねている子供のようにも見えるがな。
「こんな極東の地で教師など、あなたのやるべきことではない!」
「なんの話してんだよ?兎」
「なっ!?兄様・・・」
突然の俺の登場に動揺する兎。
姉貴は近づいた時点で気付いていたからたいした反応は無いけどな。
「んで姉貴、なんの話してんの?」
「私より目の前のこいつに聞け」
「それもそうか」
言われて兎に向き直る。
此間ぶつけた殺気を思い出したのか俺を見て若干気圧されたがどうにか持ち直して再び話し始めた。
「教官、あなたはこんなISをファッションか何かと勘違いしているような奴らに教えているような人ではない。ドイツに戻って我々にご指導ください!」
またこいつは勝手なことを・・・
兎は俺のほうを向き、言葉を発した。
「兄様もです!あなたの力はこんなところで振るわれるべきではない!あんな女たちに___」
「ッ!」
「・・・そこまでにしておけよ小娘」
鈴たちを侮辱してきたのがムカついたので手を出そうとしたら姉貴に肩を掴まれ、止められた。
姉貴がなんか言いたそうなので、取り敢えず俺は下がる。
「少し見ないうちに随分偉くなったものだな。その年でもう選ばれた者気取りとは」
「そんな・・・私はあなたたちのことを・・・!」
「勘違いも甚だしい。この学園の者たちは私が将来有望と判断し育てたいと考えたものたちばかりだ。お前が愚弄していい存在ではない」
「しかし・・・」
「くどいぞ!」
姉貴の言葉を聞いてなお説得を試みようとする兎だったが、一蹴された。
意気消沈している兎は俺を見てくる。
「ちなみに俺も戻る気は無い」
「なっ!何故ですか!?」
「俺がドイツに行ったのはまあ他の理由も何個かあるけど単純に姉貴に会いたかったからだ。教えたのも姉貴の負担を減らすため。まあ、何人か面白いやつに会えたのはラッキーだったが」
実際あの時行ったのは暇つぶしと姉貴の顔を見に行きたかったからで間違っちゃいない。
別の理由もまああるがそれは今わざわざ言うことじゃねえし。
あの場所で教えてたのもそれに関連してるが今俺が言ったことも間違ってない。
そして___
「何より俺の力は俺の使命のために振るう。それはこの場所でしか出来ない。そしてあいつらは俺が見込んだ奴らだ。この力はそのためにも使う」
「っ!」
さっきよりも沈んでいる兎。
おおかた俺と姉貴の答えが自分の考えてたものと違ったからだろうが。
「もうすぐ次の授業だ。さっさと戻れ」
言われて兎はくるりと身を反して戻っていった。
姉貴を見ればため息。
「昔とどうも変わってしまっているな、あいつは」
「そうだなぁ。どーしてこうなったんだか」
「本人に聞いてみるしかあるまい。・・・秋二、ひとつ頼んでもいいか」
「兎のことだろ?分かってるよ、俺も出来るだけやってみるさ」
「・・・すまない、頼む」
手をひらひらと振って姉貴と別れる。
さて、ここからあの兎はどうでるか・・・
~★~
さーて、シュウに気をつけろとは言われたもののぶっちゃけあたしから出来ることは無いと思うのよねー。
ということで、学年別トーナメントに向けての特訓をしようと思ってあたしはアリーナに来た。
同じことを考えてる奴は少なからずいるようで___
「・・・あ」
「・・・あら」
あたしの前に現れたのはセシリア。
きっと優勝すれば一夏と付き合えるって噂を信じてきてるんでしょうね。
どうせデマでしょうけど・・・
そういうあたしも、毎度の如くシュウが出してきた優勝したらご褒美につられてるんだけどね。
「あたしはトーナメントのために特訓しに来たんだけど、あんたは?」
「わたくしもですわ」
予想通りね。
丁度いいし、山田先生のときの決着でもつけようかしら。
「セシリア、ちょっと提案あるんだけどいい?」
「奇遇ですわね鈴さん、わたくしも提案しようと思っていたところですわ」
どうやら考えることは同じようね。
お互いに得物を構え、戦いを始めようとしたんだけど__
「っ!セシリアっ!」
「きゃあっ!?」
直感的に嫌な予感がしてセシリアを突き飛ばすと、あたしたちがいた場所に砲弾が降ってくる。
次いでハイパーセンサーに襲撃者の反応。
正体は・・・
「ラウラ・ボーデヴィッヒ、ね」
こちらに向かってくる奴は心なしか目が血走っているようにも見える。
そしてあたしを見て、
「凰鈴音、私と戦え」
まさかの決闘の申し込みときた。
しかしねえ、この場にはあたしとセシリアがいるのになんであたしなのかしら。
「ちょっとボーデヴィッヒさん?わたくしのことをお忘れではなくって?」
「・・・フン、イギリスのブルー・ティアーズか。データよりも弱そうだな」
「何ですって!?」
セシリアを挑発するボーデヴィッヒ。
「そもそもあんな雑魚に現を抜かしているような者には負けん」
「言ってくれるじゃないですの!」
ていうか、あたしはセシリアより強そうに見えてるわけ?
そしてまんまと挑発に乗っちゃうセシリア。
あんたはもーちょっと我慢しなさい。
「それよりも凰鈴音・・・貴様は隣の者よりはまともそうだ」
「・・・あんま実力に差は無いと思うけど?」
「そうとも言えん。あの教師との戦いはまあまあだった」
「あっそ・・・」
なんか上から目線でムカつくわね、コイツ・・・
「んで?なんであたしに勝負を挑むわけ?」
「貴様は兄様に気に入られているらしいな。貴様を倒せば兄様はきっと私をまた認めてくださるはずだ・・・」
「はあ?」
あたしを倒して、か。
「あたしを倒しても、きっとシュウはあんたを認めはしないと思うけど?」
「黙れ!それは貴様が決めることではない」
「あんたが決めることでもないでしょ」
それに何より・・・
「あたしは、簡単に倒せるって侮られて黙ってられるほど大人じゃないのよね・・・!」
双天牙月を構えてボーデヴィッヒを見据える。
と、セシリアが前に出る。
「セシリア?」
「鈴さん、わたくしも同じ気持ちですわ。ここはひとつ、協力といきませんか?」
「フン、ひとりもふたりも同じだ。まとめてかかってくるがいい!」
「・・・いいわ、行くわよセシリア!」
「はい!」
ブッ倒してやろうじゃない!
~★~
さて、放課後になり本音とデュノアとこの後について話す。
「鈴の気配がアリーナのほうからするし、取り敢えずアリーナ行こうぜ」
「は~い」「うん」
「ああ、そうだ。デュノア、本音の特訓に付き合ってもらえるか?」
「もちろんいいよ!」
「よろしくね~、でゅっち~」
デュノアは操縦技術高そうだし、本音の技術向上に役立つといいんだが。
・・・ん?なんだ、微妙にみんなが荒れてる・・・?
「あ、秋二くん、大変だよ!」
「・・・なにかあったのか?」
「アリーナのほうで凰さんとオルコットさんがドイツのボーデヴィッヒさんと戦ってるらしいんだけど・・・」
「・・・分かった、ありがとな」
あの馬鹿、ほんとにやりやがったな・・・
とにかく、現状把握が先だ!
「本音、デュノア」
「分かってるよ~」「え、あ、うん」
早く行きたい俺はふたりを両脇に抱える。
「飛ばすぜ、舌噛むなよっ!」
~★~
アリーナまで一気に駆け抜け、本音とデュノアを降ろす。
内部に眼をやれば___
「きゃあああああっ!」
「セシリアっ!」
「余所見とは余裕だな!」
「くっ・・・!」
兎のレールカノンを喰らって吹き飛ぶ雫さん。
ダメージが大きすぎたのか展開が解除されて転がっていく。
そこに気をとられた鈴に仕掛ける兎。
何とかそれを受け止める鈴。
近接戦闘ではギリギリくらいつけているが、あいつの機体には確か・・・
「このっ!」
「効かないと言っている!」
鈴は龍砲を発射するも、兎が手を振ると弾丸は空中で霧散する。
そう、あいつのISにはAICが積まれている。
あれは殆どの攻撃を無効にできる。
鈴の機体じゃ相性が悪い・・・
俺はチェーンをドライバーに変え、腰に巻きつける。
そのままトランスイッチを下げようとすると___
「(助けは、要らない!)」
「っ!」
俺に気付いた鈴は口だけを動かし意思表示をした。
察しの良い鈴は今の兎がどんなやつか、俺がどうしたいかを理解したみたいだな。
そのためには俺があいつを倒すんじゃなく、別の・・・鈴や本音でなくちゃいけない。
それを分かって、自分でその役目をになうか、もし自分が負けてもヒントになるように、ひとりで戦うことを選んだのだ。
「・・・本音」
「アキ、助けに入らないの?」
「鈴自身がそれを望まないなら最悪の時まで手は出さない。それより、お前はこの戦い、よく見ておいてくれ」
「わたしが?」
「そうだ。この後のためにな」
「・・・分かった」
「頼むぜ」
頭を軽く撫でながら本音に言う。
きっと俺が言いたいことをなんとなく察してくれたのか、真剣な表情で鈴と兎の様子に見入る。
俺はデュノアの元に寄り、
「準備しといてくれ」
「分かったよ」
いつでも入れる準備を頼んだ。
俺もその戦況を見守る。
鈴は先ほどから何度も双天牙月を投擲している。
そのたびに兎に捕まり、攻撃を受けて吹き飛ばされている。
一瞬俺も鈴が何をしたいのか分からなかったが、何回か繰り返すうちに気付いた。
鈴は、相性最悪のあの能力を破る気だ、と。
そしてその時は訪れる。
鈴は再び双天牙月を投擲。と同時に龍砲で牽制を行う。
兎はしびれを切らしたのか、先ほどまでと違い双天牙月を避け、龍砲のみをAICで止めた。
更に鈴自身も停止させる。
「終わりだ、凰鈴音・・・!」
「それは・・・どうかしらね!」
プラズマ刀を振りかぶっていた兎の、後ろから双天牙月が戻ってくる。
その双天牙月が当たるのとほぼ同時に、プラズマ刀によって鈴は切り裂かれ、吹き飛ばされる。
鈴が捕まったときに場所を移動し、もう既にトランスイッチを下げていた俺は、エンターレバーを倒すと同時にスイッチをオンにする。
「変身!」
《Rocket On》
アリーナのシールドにぶつかるがロケットの出力を上げてブチ破る。
空中でスイッチを入れ替え、ロケットを解除しながら鈴をキャッチ。
と同時に身を回転させながら入れ替えたスイッチをオンに。
《Chainsaw》
《Chainsaw On》
チェーンソーで鈴に向けて放出されたワイヤーを切り裂く。
腕の中の鈴はかなり疲労はしているものの外傷はそこまで酷くなかった。
「鈴、大丈夫か」
「まあまあ平気よ。それより、さっきの。惜しかったわね」
「ああ。だがあれは確実に次へとつながる一歩だった。上出来だな」
「それなら良かった」
疲れながらも笑顔を見せる鈴。
遅れて俺が開けた穴から入ってきたデュノアに鈴を預ける。
「鈴を頼む。それから雫さんの回収も」
「任せて!」
兎に向き直り、スイッチを入れ替える。
《Chain Array》《Gatling》
「さて、兎。俺が前言ったことは覚えてるな?」
「兄様、これは・・・!」
「言い訳は要らん、覚悟は良いな!」
「くっ、こうなったら仕方が無いか・・・」
《Chain Array On》《Gatling On》
チェ-ンアレイとガトリングを展開して兎を睨む。
兎はこちらに突っ込んでくるが、俺はそれを無視する。
何故なら・・・
ガキィンッ!
「・・・そこまでにしておけ、ガキ共」
「教官!?」
姉貴が来たからだ。
来るならもう少し早めに来て欲しかったのだが、まあその辺はしょうがないだろ。
「模擬戦をすること自体は構わんが機体を必要以上に傷付けるのは良くないな。バリアの破壊もそうだが」
そう言って俺と兎を交互に見る。
「この決着はトーナメントでつけろ、いいな?」
「おう」「分かりました」
兎は展開を解除して去っていく。
普段なら追っかけてぶん殴るんだが、今はそれよりも優先しなきゃならねぇことがあるからな。
トランスイッチを上げると、ドライバーから煙が吹き出し、変身が解除される。
デュノアから鈴を受け取り、横抱き、所謂お姫様抱っこをする。
取り敢えず、医務室だな…