IS~宇宙戦士~   作:煉獄 龍騎

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第2話 試・合・準・備

 

織斑秋二の朝は遅い。

睡眠時間は7~10時間。最低でも6時間は取らなければ気がすまない。

そのため、寝たままほとんどのことができる。

 

昨日、荷解きに時間がかかり消灯時間よりもかなり遅れて布団に入った。

が、今日の彼は珍しく早く起きた。

否、起きてしまった。

 

左腕の痺れ。左側から感じる熱。

明らかに自分以外の何かがある。

 

それに気付いた秋二は重い瞼をなんとか押し上げ、左に首を曲げる。

そこには___

 

___本音がいた。

 

いや、正確にいえば秋二の左腕の上に本音の頭・・・

俗に言う「腕枕」というやつになっている。

 

さて、秋二は睡眠時間が足りないことが我慢ならない。

しかしそろそろ起きて食事を取らなければ、遅刻し千冬(暴力大魔神)の餌食になってしまう。

それを回避するために秋二は起きることにする。

しかし、快適な睡眠を邪魔された秋二は軽いイタズラを思いつく。

 

「布仏」

「ふみゅ~、なぁ~に~?」

 

可愛らしく目を擦りながら此方を向く本音。

そんな彼女に軽く微笑みながら一言。

 

「天誅」

「ひゃうっ!」

 

額に割と強めのでこピン。

しかも、彼は知人の間ではでこピンがかなりうまいことで有名。

寝起きでもかなりの威力を持つ。

そんな秋二の一撃を喰らった本音は・・・

 

「うぅ~。痛いよ、あっきーぃ・・・」

 

涙目で訴える本音をスルーし、洗面所へ向かう秋二。

冷水で覚醒した秋二は先ほどのことを再確認。

 

そして今彼の脳内、というか全神経に先ほどの感覚が甦る。

結論は

___ふむ、なかなかに柔らかかった。久しぶりだな、誰かの温もりは・・・

 

戻ると本音は小さな体を目いっぱいに広げて此方を睨んできた。

が、体躯と服のせいか小動物のようなかわいさがにじみ出ている。

秋二は本音の頭を強く撫で付けると一言。

 

「さっさと行くぞ。布仏」

「うん!」

 

太陽のような眩しい笑顔で返事が帰ってきた。

そのまま、食堂へと向かう。

 

「もう、俺の腕を枕にして寝るなよ?」

「添い寝はいいー?」

「はぁ・・・好きにしろ」

 

秋二は呆れながらも笑顔で返した。

 

 

 

~★~

 

 

 

「どうしてここまで弱くなっている!中学は何部だった!」

「帰宅部!三年連続皆勤賞だよ!」

 

さて、放課後。俺はなぜか剣道場にいる。

愚弟は俺に、

「シュウ兄!俺にISのことを教えてくれ!」

と、頼んできたが俺は

「やだね」

と、返した。

特に理由はないが、強いて言うなら俺や姉貴にすぐに頼る癖があるこの馬鹿に、

そろそろ自分で何かするやる気を出させるためだったのだが、この馬鹿は

俺が無理なら・・・と、篠ノ之に頼りにした。その結果の、剣道。

観衆の前でボコボコにされる愚弟。

無様。

 

「あっきー、なんかおもしろいことあったー?」

 

と、隣にいた布仏は俺に問う。

おっと、顔に出ていたか。

 

「いや、愚弟は無様だなと思っていただけだ」

「ぐていー?」

 

可愛らしく小首をかしげる布仏。そんな布仏に笑みを返していると

 

「そうだ、シュウ兄も箒と戦えよ!シュウ兄だってあいつと戦うんだろう!」

「あ?」

 

馬鹿が俺に話を振ってくる。が、正直俺にとってはどうでもいい。

 

「馬鹿か、俺はお前と違って強い。別に代表候補生程度何も準備せずに勝てる。

 更に言うなら俺は武道も武術もマスターしているからな」

「そういえば秋二はかなり強かったな。手合わせ願おう」

 

篠ノ之が戦る気になってしまった。面倒だが相手をしてやろうか。

 

「いいだろう、相手してやる」

「そうこなくてはな」

 

地面に倒れている愚弟から竹刀を取り上げ、不満顔の篠ノ之に向き直る。

 

「なんのつもりだ」

 

殺気立った視線を送ってくるがそれに対し俺は獰猛な笑みを浮かべ言い放つ。

 

「なんだ?あんな動きづらいものをつけて欲しいというのか?ハンデでも欲しくなったか?」

 

篠ノ之の顔があからさまに不機嫌な方向に変化した。

そして俺は竹刀を肩に担ぐと右手を小さく動かす。

 

「さあ来い、篠ノ之」

 

「挑発的だね~秋二くん」

 

「でもあれ、構えてなくない?」

 

「秋二くんも一夏くんみたいに負けちゃうのかな」

 

好き放題言っているが、相対する箒は内心困っていた。

それも当然、秋二の体からはプレッシャーが流れ出ている。

さらに一夏とともに剣道をやっていた秋二はまさに最強だった。

やる気がないくせに相対したものすべてをねじ伏せてきた。

その最強が目の前に立って威圧してくる。

それだけで勝てる気がしなくなってくる。

 

しかしそんな思いはすぐに瓦解する。

 

「あっきー、ふぁいとー!」

 

本音による、激励。よく通る本音の声に秋二は反応した。

試合中だというのに、だ。

先ほどまで挑発に使われていた右手は本音のほうに向けられ、視線も本音のほうへ。

さっきまでのプレッシャーから開放され馬鹿にされたと感じた箒は激昂し急接近。

勢いのまま竹刀を振り落とした。

しかし秋二は竹刀を左腕を前に出すことで受け止め、

そのまま力を抜いて姿勢を崩させた後身を翻すことで肉薄。

そして、竹刀を振り下ろす。

___面が決まった。

 

「すごい・・・」

 

観衆は沸いた。

 

「さすがだな、秋二」

「そんなことはない。お前が冷静だったならもう少し面白い試合になっただろう」

 

竹刀を愚弟に返すと俺は振り返り、布仏を探す。

が、布仏はクラスメイトに囲まれ慌てていた。

・・・ふむ、悪いな布仏。

 

その場から俺は立ち去った。

後で布仏に怒られたが、今度スイーツを作る約束をするととたんに笑顔になった。

 

 

 

~★~

 

 

 

 

「ねぇねぇ-、あっきー」

「ん?」

 

金粉との試合当日。朝食をとった後、部屋に戻ると布仏が聞いてきた。

 

「どれのことだ?」

「これこれー」

 

そういって俺の机の上にあるアストロスイッチと、フードロイド達を指す布仏。

 

「それは俺のISの武装だ」

「これがー?」

「ああ。『アストロスイッチ』っつってな。展開後のISで起動させっといろんな武装になる」

「へぇー。ってゆーかあっきーって専用機持ってたんだねー」

「ああ、まあな」

「おりむーも、もってるのー?」

「いや、愚弟は持ってないぞ」

「ふーん」

「見るか?」

 

悪戯っ子のような笑みを浮かべ、問う。

 

「だめだよー、あっきー。怒られちゃうぞー」

「冗談だよ」

 

しかし今度は普通の笑みを浮かべ問う。

 

「んじゃ、展開しないのを見せてやるよ」

「えー?」

 

俺はハンバーガーの形をしたフードロイドに「6」と描かれたスイッチを刺し込み

起動させる。

 

《Camera On》

 

するとハンバーガーはカメラアイを頭部・ミーティングヘッドにつけ、

具のレタス・トマトに当たる部分を手に見立てたロボットとなる。

 

「おー!すごいすごーい!」

「そいつはバガミール。映像とか写真とかの撮影が得意だ」

「かーわいい!」

 

布仏はバガミールを撫でている。

 

「他にもあるぞ」

 

さらに俺はフライドポテトのような形に「11」を

シェイクのようなものに「17」を

ホットドッグに「29」を

ソフトクリームに「32」を

チキンナゲットに「37」を

それぞれ刺し込み起動させた。

 

《Scissors On》

《Flash On》

《Schop On》

《Freeze On》

《Gyro On》

 

「わー!」

 

それぞれ

「ポテチョキン」

「フラシェキー」

「ホルワンコフ」

「ソフトーニャ」

「ナゲジャロイカ」

である。

布仏本人は遊んであげているような感覚だろうが、傍からみれば遊ばれている様にしか

見えない。

 

「さて、そろそろチャイムが鳴るぞ。行こうぜ」

「もうちょっとあそんでっていいー?」

 

ため息を一つつき、頭を撫で付ける。

 

「ほどほどにな」

「うん!」

 

そのまま俺はクラスへ向かった。

 

 

ドアが閉まると、本音はバガミールからスイッチを抜き

ポケットにしまう。

 

「ごめん、あっきー」

 

 

その日、授業には布仏は顔を出さなかった___

 

 

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