翌朝、飛龍はけたたましく鳴り響くサイレンの音に叩き起こされた。
『緊急警報発令! 本鎮守府の南方五十キロの地点に深海棲艦の大艦隊を補足。敵性反応はなおも増大中。進路は・・・・・・本鎮守府とみられます! 出撃可能な全艦娘は艤装着装の後海上にて待機してください! 繰り返します・・・・・・』
「深海棲艦の襲撃!? しかも大艦隊なんて、一体どこから・・・・・・」
慌てて起き上ろうとして、飛龍は思いとどまった。
『お前は何があってもこの部屋を出るな』
つい昨日、長門に言われた言葉が頭の中をぐるぐると回る。
「・・・・・・そう、よね。艤装もこんなだし、私が行っても足手まといなだけだよね」
窓際に立てかけられた歪な弓から顔を背け、飛龍は再び布団を顔まで引き上げ、横になった。
どれくらい時間が経っただろうか、激しい砲撃音で、飛龍は反射的に飛び起きた。今の砲撃が開戦の合図だったのか、断続的な砲撃音が辺り一帯に轟き始めた。かなり近い位置で海戦が行われているのが飛龍にも分かる。
「もしかしたら、私がここにいるせいかもしれない・・・・・・」
窓際の弓を一瞥して、そんな事を考えた。
「・・・・・・行かなきゃ」
もし、半ば深海棲艦と成りつつある自分の存在が敵を呼び寄せたのだとしたら。
考えた途端、頭に響く長門の言葉を振り払い、飛龍はベッドから立ち上がり、弓を掴んでいた。幸いにも、傷の痛みはほぼ消えていた。
轟き続ける砲撃音を潜り抜け、飛龍は出撃所ドックへ続く連絡通路を駆けた。
既に全員が出撃をしているのだろう。ドック内には誰一人おらず、出撃用のカタパルトだけが、うっすらと海の青色に染まっている。
「私も、戦わなきゃ・・・・・・!」
飛龍は自分に言い聞かせ、『出撃』の文字が刻まれたパネルに足を乗せた。
「・・・・・・どうして反応しないの!?」
本来ならば飛龍がパネルを踏んだ瞬間に、空母としての艤装が装着されるはずである。が、その事実に反するように、ドック内には飛龍の声が響くばかりで艤装はおろか、出撃ゲートが開く気配すら無い。
「・・・・・・そうか・・・・・・私、もう艦娘として認識されてないんだ・・・・・・」
飛龍はその場にへたり込んだ。
「艤装無しじゃどうにもならないよ・・・・・・」
頬を伝う涙がパネルを濡らしていく。
「何ヲシテイル・・・・・・艤装ナラ、既ニ手ニシテイルジャアナイカ」
突然、頭の中にそんな声が響いた。妙にノイズがかったその声は紛れもなく自分自身のものだった。
「艤装? こんな弓だけじゃ何もできないよ・・・・・・」
「オマエハ既ニ特別ナ存在ダ。艤装ナド無クトモ戦エル。早ク立テ」
「・・・・・・わかった」
もう一人の自分の声に導かれるまま、飛龍は弓を握りしめ、立ち上がった。その決意を待っていたかのように、弓が無数の黒い糸へと解け、身体中に巻き付き、身体と一体化していく。同時に、飛龍は今まで感じたことのない、異常な力が自分の中に渦巻いていくのを感じた。
もう一人の自分の言葉を信じ、飛龍はパネルを蹴り、海面へと跳んだ。水しぶきをあげて着水した彼女は、確かに艤装の装着なしに、自分の足だけで水面に立っていた。
「オマエノ肉体ハ半分ハ深海棲艦、半分ハ艦娘ダ。ダガ、オマエノ信念ガ失ワナイ限リ、ソノ心ハ艦娘トシテ在リ
続ケルダロウ・・・・・・」
その言葉を最後に、頭の中の声は聞こえなくなった。きっと深海棲艦としての自分の声だったのだと、飛龍はそう感じた。
「・・・・・・ありがとう、もう一人の私。これで私は戦える・・・・・・!」
飛龍はそのまま閉ざされたゲートの前まで歩み、そっと手を翳した。直後、ゆっくりとゲートが開き、外の光がドック内を照らした。
「二航戦、空母飛龍。出撃します!!」
弓も矢も、飛行甲板も持たず、それでも飛龍は空母としての信念のみを携え、戦場へと駆け出した。
どうも、うp主です。二年ぶりくらいでしょうか。どうにか更新することができました。 いろいろ忙しかったですW。
さて、次回はついに戦闘回ですが、飛龍自身の戦闘については、正直自己解釈と妄想99%でいきたいと思っています。早ければ明日、また更新できるとは思いますが、そうでなければまた、思い出したときにでも見に来てくださいW
それではまた!