予定では完結の予定だったのですが、気付いてみるとすでに文字数が前回の三倍近くになっていました。
ですので、もう数話、お付き合いください。(気長に)
そして、今回からアニメとはまったく異なる展開になるということと、戦闘シーンに若干グロシーンが含まれる可能性があるので、ご注意ください。
「敵護衛艦隊撃破!先輩方、行けます!」
吹雪の声が戦場に響いた。
「制空権、奪取成功。これで空母の脅威は排除しました!大和さん!飛行場姫に攻撃を!」
大和に伝えながら、飛龍自身も矢筒から一本、矢を抜いた。
「MI作戦主力艦隊旗艦大和以下、全砲門射の撃準備!目標、飛行場姫。仰角合わせ!」
その言葉に、金剛をはじめとした戦艦クラスから、吹雪のような駆逐艦クラスまでのすべての艦娘達の砲門が、前方に佇む飛行場姫に向いた。
「・・・・・・全砲門、攻撃始め!てぇーっ!」
一呼吸置いて、大和は叫んだ。と同時に、合計数十にも及ぶ大小の砲が、轟音を轟かせ、火を吹いた。
撃ち出された砲弾は、まるで吸い込まれるように、飛行場姫に向かって、放物線を描いて飛んでいく。
次の瞬間、飛行場姫の姿が、凄まじい量の爆炎と煙に包まれるのが見えた。
遅れて数十もの砲弾が一斉に炸裂した音と衝撃波が、飛龍達の身体を叩いた。
「うぅ、ここまで衝撃が届くとは・・・・・・でも、これで・・・」
「いいえ、見てください・・・」
比叡の言葉を遮って、大和はまだ硝煙のたちこめる着弾地点を指さした。徐々に晴れていく硝煙の中に、人型の影が確認できた。
「シールド!? そんな・・・・・・あれだけの砲撃を耐えるなんて・・・」
「無敵っぽい!?」
その時、背後から砲撃音がしたかと思うと砲弾は大和の頭上を越え、飛行場姫に直撃した。
「ちぃっ、やはりシールドを無効化しなければ倒せないか・・・・・・」
「長門秘書艦!? それに陸奥さんも!」
吹雪が驚きの声を上げた。
「長門秘書艦、どうしてここに?」
「何を驚いている、飛龍、私もあの通信の内容を読んでな。なぜだか私も戦いに参加しなければならない気がしただけだ。」
飛龍の問いかけに、長門は飛行場姫を見つめたまま答えた。
「これより秘書艦長門以下、MI作戦主力艦隊及び、飛龍を除く第一機動部隊は、全力をもって、敵の防御を崩す!全艦、砲雷撃戦用意!対空防御も忘れるなよ!」
「長門さん、私はどうすれば・・・」
「航空母艦飛龍、お前は私たちが敵のシールドを無効化し次第、とどめを刺せ、その二本の矢でな」
「・・・了解です!」
「敵機来るぞ!全艦攻撃始め!」
飛行場姫から、無数の戦闘機及び爆撃機が飛び立ち、長門達へと飛来する。同時に、
長門達の砲も一斉に火を吹く。
「対空防御は任せてください。主砲、三式弾装填、対空戦用意!てぇーっ!」
長門の後方で、大和の四十六センチ三連装主砲がに火を吹き、敵機の集団めがけて三式弾を撃ち出す。
飛龍は弓に矢をを番えると、飛行場姫をじっと見つめ、攻撃の機会を待った。
「敵機の発艦が止まった!もうひと押しだ。全艦、これで決めるぞ、主砲一斉射!」
再び、すべての砲が同時に火を吹いた。
着弾。今度は、先の一斉射撃の時とは違う、何かが砕け散る音が、はっきりと聞こえてきた。
「敵シールド消失・・・今だ!仕留めろ、飛龍!」
長門の声が響いた。
(赤城さん、加賀さん・・・今度こそ、二人の力、使わせていただきます!)
「赤城攻撃隊、全機発艦!」
飛行場姫を力強く見据え、飛龍は弓を射た。
「続いて、加賀攻撃隊、全機発艦!」
間髪いれずに、飛龍は最後の矢を射た。
矢から生まれた十数機の戦闘機達は飛行場姫をめがけてまっすぐに飛んでいく。
「とどけぇぇぇぇぇぇぇぇっ!」
飛龍は、声の限り叫んだ。
「「「とどけぇぇぇぇっ!」」」
飛龍に合わせるように、吹雪達も声を上げた。
そんな彼女達の声に応えるかのように、飛龍から飛び立った最後の戦闘機達は、速度を上げて飛行場姫との距離を縮めていく。
そして、飛行場姫の目前で投下された多数の爆弾は。シールドを失った彼女へと、勢いよく、されど正確に落下していった。
直後、大きな火柱が上がった。
「・・・・・・あたった・・・」
飛龍の目には火柱の中で倒れ行く人影がはっきりと映っていた。
「・・・やりましたね、飛龍さん!」
「本当によくやった、飛龍。これで彼女達も・・・・・・いや、ここで言うのは野暮だな」
ポンと、飛龍の肩を叩いた長門は何かを言いかけたまま、大和を囲む皆の輪に入って行った。
「やりましたよ、先輩に姉さん。これからは私が誇りを受け継いでいきますから、どうか、ゆっくりと休んでいてください。」
真っ黒な海に向かってそう呟くと、飛龍も、大和たちの輪に加わりに、駆けていった。
「さて、全員鎮守府へ帰投する! 提督が私たちの帰りを待っている。」
「「「「はい!」」」」
束の間の休息を終え、一同は帰路についた。はずだった。
「飛龍先輩!後ろ!」
偶然後ろを振り返った吹雪が叫んだ。
「え・・・?」
振り返った時にはすでに遅く、一体どこから飛来したのか、敵の戦闘機が、飛龍目がけて爆弾を投下するところだった。
「あぐぅっ・・・・・・」
爆弾の直撃をかろうじて耐えた飛龍は、痛みに耐えながら、索敵を開始した。すでに弓と飛行甲板を破壊された飛龍には敵空母を目視で探す以外に、なすすべは無かった。
「あ、あれを見てください!」
大和が叫んだ。
「な・・・・・・三隻だと!?」
大和の指を指す方向、丁度先程攻略したはずの棲地MIの方向に、空母ヲ級が三隻見えた。
三隻のヲ級のうち、二体は互いに接触しそうなほど近づきながら、残りの一体も、少し離れた場所から、艦載機の射出口を開いたまま、徐々に飛龍達へと向かってくる。
「おかしい・・・・・・先程まで索敵にはなにも反応がなかったはずなのに・・・」
大和が呟いた。
「あぁ、何かがおかしい。そもそもなぜあの三体は、空母だけで向かってくるんだ」
長門も、独り言のように呟いた。
「見てください!あれは・・・・・・飛行場姫!?」
三体のヲ級の後方から、倒したはずの飛行場姫が波を立てながら近づいて来ていた。本来海上で活動するはずのない飛行場姫が。その周囲には何か膜のようなものが確認できた。
「そんな・・・・・・今までの攻撃は全部無駄だったの・・・?そもそもなんで飛行場姫が海に出てきているのよ!?」
「考えるのは後だ!敵が艦載機を出す前に沈めるぞ!」
長門が砲の照準を接近しあっている二体のヲ級に定める。
「全艦、撃ち方はじ・・・」
「待ってください長門さん!」
砲撃を開始しようとした長門を、大和は制した。
「何をする!艦載機を出されたらこちらは圧倒的に不利になるんだぞ!」
「あの三体、様子が変です」
「なに・・・?」
言われてみればそうだった。先程からずっと、艦載機の射出口は開いているのにかかわらず、肝心の艦載機が、飛龍を攻撃した一機を除いてまったく撃ち出されないのである。
「それに、苦しんでいるように見えませんか・・・・・・? まるで何かに抗っているような・・・」
「抗っている・・・だと? ・・・まさか」
「えぇ、長門さんも気付きましたか。・・・あの三体のヲ級は・・・いいえ、彼女たちは・・・」
「沈んだはずの赤城、加賀、蒼龍と、そういうことか」
「はい。そしておそらく、彼女達を生み出したのは、後方にいる飛行場姫。私はそう考えます。」
「・・・・・・皆。聞いていたか。これより我らは、攻撃目標を飛行場姫に指定。ただちにこれを撃滅する。大和は対空射撃の用意、飛龍は後方に退避を」
「了解」
「・・・・・・了解」
「全艦、これで終わりにするぞ、撃ち方始め!」
(飛龍・・・・・・すべてのけじめをつけてやるからな・・・)
轟音があたりに響き渡った。
「なぜだ・・・・・・なぜシールドを破壊できない・・・」
数回にわたって数十の砲による集中砲火を浴びせたにもかかわらず、飛行場姫の防御シールドは健在のままであった。
「本当に無敵っぽい!?」
「そろそろ残りの弾薬も厳しい状況になってきました・・・・・・」
「くっ、このままじゃ埒が明かん・・・・・・」
長門の頭に撤退の文字がよぎった時だった。
「シ・・・ズメ・・シズ・メ・・・・シズミナサイ・・・・・・」
飛行場姫から、不気味な声が発せられた。その声で、三体のヲ級の目が、黄色く変わった。
「ヲ級を・・・彼女達の身体をを完全に掌握した!?」
大和が悲愴な声を上げた。
「敵機、来るぞ!対空防御!」
言うが早いか、三体のヲ級から、一斉に艦載機が撃ち出された。
「飛龍先輩、直上!」
「あ・・・・・・」
一体誰の声だっただろうか、気付いた時には、大和達の対空射撃を潜り抜けた数機の戦闘機が、上空から動けない飛龍に向かって、爆弾を投下していた。
直撃だった。
(ごめんなさい・・・先輩方、約束したのに・・・・・・私は・・・私は・・・)
薄れゆく視界の中に、三隻のヲ級が見えた。
『貴女に・・・・・・私たち一航戦の誇りを託します・・・・・・』
『ここから先の運命は、貴女が変えるのです』
赤城と加賀に言われた言葉の断片が、そのときの光景とともに、走馬灯のように頭の中を駆け巡った。そして最後に、先の長門と大和の会話が浮かんだ。
(このまま逝くわけ・・・にはいかないわ・・・・・・先輩・・・・・・蒼龍姉・・・私が・・・私が解放しにいくから・・・)
飛龍の目に光が戻った。同時に、怒り、悲しみ、憎しみ。その全てが異常なほどの殺意となって、飛龍の身体を動かし始めた。
「先輩を・・・・・・蒼龍姉を・・・・・・返せ!」
「飛龍・・・・・・さん?」
大和の呼びかけも飛龍には届いていなかった。
「返せ・・・」
すでに飛行甲板は焼け焦げ、弓も矢筒も失い、ボロボロになった飛龍は、それでも飛行場姫へと向かっていく。
「あれだけの直撃弾を喰らって・・・・・・もう轟沈しているはずなのに・・・」
「信じられん・・・・・・飛龍にあれほどの力があったとは・・・」
「シズメ・・・」
再びヲ級から艦載機が撃ち出される。
「先輩!避けて!」
吹雪が砲を構えて叫んだ。
「・・・・・・」
飛龍は応えず、代わりに右手を艦載機に向けて突き出した。
無数の戦闘機から投下された爆弾は、すべて飛龍の前方で爆発した。
「あれは、飛行場姫と同じ防御シールドだと!?それにあの姿は・・・」
長門が驚愕の表情を浮かべた。
防御シールドだけではなかった。徐々に飛龍の髪が白く変化しているのだ。
「深海棲艦に・・・なりつつあるのか・・・?」
「止めてください飛龍さん!艦娘に・・・艦娘に戻れなくなってしまう!」
(私はどうなったっていい・・・でも、先輩と姉さんだけは・・・・・・)
「行け!飛龍!この作戦のためじゃなく、お前自身の願いのために!」
長門の言葉に応えるように、飛龍は海面を蹴った。そのままヲ級を通り抜けて、飛行場姫の目前にまで迫る。
「あなたを沈めて、先輩たちを解放するんだ!」
渾身の力を込めて、飛行場姫目がけて手刀を突き刺した。