新・一話~目覚め~
「う・・・・・・」
小さく呻き声をあげて、飛龍は目を開けた。
「・・・・・・ここは・・・」
視界に移る真っ白な天井と壁、そして所狭しと置かれた点滴や心電図の測定器が、まだボーっとして思考の働かない飛龍の頭に、ここが病室であるということをかろうじて認知させる。
「痛っ!?」
身体を起こそうとして走った鈍い痛みで、飛龍は初めて、自分の身体のあちこちが包帯で巻かれ、腕には数本の点滴用の管が延びていることに気付いた。
「なに・・・・・・これ・・・」
ゆっくりと身体を起こし、改めてあたりを見回す。壁には一つの扉と、大きな窓があるだけでそれ以外はすべて医療器具しかない殺風景な部屋だった。
「う・・・・・・」
包帯の巻かれた腕を伸ばし、飛龍は閉じられていたカーテンを少しだけ開けた。窓の向こうには見慣れた建物と遥か彼方まで広がる海が見えた。
「鎮守府・・・・・・帰ってきたんだ、私・・・」
そう呟く飛龍の中で、ぼんやりしていた意識が少しずつはっきりし始め、同時にそれまでのことを思い出し始める。
「確かあの作戦で・・・・・・私は意識を失って・・・それから・・・・・・」
何か大切な人達と出会い、話していた気がするのに、それが誰だったのか、どこで会話をしていたのか、それだけがまるで深い霧がかかっているかの如く思い出せない。
「いったい誰だったんだろう・・・・・・」
いくら思い出そうとしても一向にその片鱗すらつかめないまま、数分が経過していた。
「・・・駄目だ・・・・・・思い出せないや・・・」
あきらめてもう一度ベッドに横になろうとした時。
「失礼します。」
扉が開き、聞きなれた声とともに、一人の少女が部屋のなかに入ってきたのだった。
「吹雪・・・さん?」
「え・・・・・・」
飛龍のか細い呼びかけに、吹雪は目を丸くして彼女を見つめた。
「ひ、飛龍さん・・・・・・」
みるみるうちに吹雪の目に涙が溢れていく。
「あ、あの・・・」
「みなさん!飛龍さんが!!飛龍さんがっ!」
飛龍自身が訳のわからないまま、吹雪は大声で叫びながら病室を飛び出していってしまった。
やがて、一分も経たないうちに廊下の方からドタドタとたくさんの足音が聞こえたかと思うと
「Wow!ようやく目が覚めましたか!Good morning!」
溢れんばかりの笑顔の金剛を筆頭に、よく知った艦娘達が病室に飛び込んできたのだった。
「あ、あはは・・・・・・」
突然の出来事に驚きながらも、飛龍はみんなと再会できた歓びをゆっくりと噛みしめた。が、ふと自分を囲む顔の中に数人足りないことに気が付いた。
(先輩に蒼龍も・・・・・・それに長門秘書艦がいない・・・・・・)
そんな形容しがたい不安とともに、頭の中にあの作戦の様子が鮮明に映し出される。
(・・・ううん。大丈夫、私だって生きてたんだもん。きっと先輩達も・・・・・・)
そう自分に言い聞かせ、
「あの、大丈夫ですか?まだ顔色が・・・・・・」
心配そうに自分をのぞき込む吹雪に
「大丈夫大丈夫。ちょっとめまいがしただけ。寝起きだからかなぁ」
と笑顔で返すと、
「まったく、寝起きだなんて。ふふっ、まぁ二か月も眠り続けてたらめまいの一つぐらいは起きるわよ。まだけがの方は完治していないみたいだし。当分はゆっくりと休息をとりなさいね。」
クスリと陸奥が微笑みながら言う。
「二か月も!?」
予想外の言葉に飛龍はまじまじと自分の身体を見つめた。確かに包帯の隙間から覗く腕はまるで自分のものではないかのようにやせ細っているうえに、血流も悪くなっているのか、異様に青白い。そして、ふと自分の顔が気になったが、鏡を見る勇気は起きなかった。
それから約一時間、とるに足らない話で盛り上がったあと、皆はそれぞれの持ってきた見舞いの品を置いて、病室を後にしていった。
「はぁ・・・・・・」
誰もいなくなった病室で、飛龍は一人ため息をついた。
「二か月・・・・・・かぁ」
どうも、うp主です。前の投稿からとてつもなく間が空いてしまいました。スイマセン。
今回後日譚にするとかなんとか言ってた気がしますが、数か月のラグを経て、もう少し後編を継続します!ぱんぱかぱーん
というわけで、また次回お会いしましょう!