孤独のプレイヤー   作:ベリアル

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努力はしました


努力はしました


努力はしたんですよ?


攻略会議

 

 

 

――――パリーン

 

 

デスゲームが始まって、ひと月が経過し未だ第二層に行けぬまま停滞している。

 

 

俺ことエイトはモンスターを投擲用ナイフ″スローイングダガー″で倒しまくっていた。

 

 

槍と投げナイフで曖昧でありながらも、仲間もいないし、ひたすら狩りをしてレベルを上げていた。

 

 

結局、リトルネペントを狩り終えた後、キリトとは別行動しようと持ちかけ、渋い顔をされたが致し方ない。

 

 

ボッチの方が集中できるし、誰にも迷惑をかけることだってないのだ。

 

 

更に【隠蔽】スキルを手に入れ、敵に気付かれぬようひたすら、投げナイフで攻撃を繰り返し、熟練度が低いのでバレたら槍で対応。

 

 

デスゲームといえど、一層でそこまで強い敵は現れないだろう。

 

 

それでも槍を6対4でメインにしておく。

 

 

投げナイフが尽きたら村に戻って、補充してはまたレベルを上げに出て行く。

 

 

疲労もあるが、【隠蔽】スキルと投げナイフの組み合わせで、2日に一度宿で寝ては速攻で狩りに出掛ける。

 

 

 

 

いやー、【隠蔽】スキルとか俺の為にあるもんじゃないんですかね。常に使っているから熟練度はぐんぐん上がるわでもぉ、才能を感じるまでである。

 

 

ついでに言うなら、リアルでも【隠蔽】が発動されている。

 

「……………」

 

 

自分で自分の地雷を踏み抜いていると、背後から声をかけられた。

 

 

俺の【隠蔽】スキルを破って近づける人物は1人しかいない。

 

 

「よオ、″忠犬″」

 

 

「″鼠″」

 

 

互いのあだ名を呼び合い、顔を見合わせる。

 

 

″鼠のアルゴ″

 

 

元βテスター兼情報屋でキリトを介して知り合った守銭奴である。まあ、俺もこいつには大分世話になった上に、関係がはっきりしてる分、楽だ。

 

 

俺が忠犬と呼ばれるのは忠犬ハチ公からとったのだ。

 

エイト→ハチ→ハチ公→→忠犬といった具合に。

 

 

俺もそのまま名で呼ぶのが癪なので″鼠″と呼ぶことにしているのだ。

 

 

「なんの用だよ」

 

 

フードを被り金褐色の髪をこぼし、両頬には六本の線が飾られ、どこぞの猫型ロボットだ。

 

 

「ニャハハハハハ!素っ気ない態度だネ。忠犬のそういうとこ好きだヨ」

 

 

 

 

 

俺はこいつが苦手だ。いやね、こいつどころか人間全般苦手でもあるんですよ。

 

 

「用件はボス攻略会議のことサ」

 

 

「ほー、思ったよか早いな」

 

 

「あんまり驚かないナ」

 

 

「予想ではあと1ヶ月と考えていたんだがな。いずれは動き出す話だったんだ」

 

 

なんにせよ、絶望してる連中に希望の光が射すんだ。早い方がいいに決まっている。

 

 

 

 

 

「日時は後で送っとク。それと悪いニュース」

 

 

「情報屋がそんなに教えちゃっていいのかよ?」

 

 

「話しとかなきゃいけない内容だかラ………」

 

 

陽気雰囲気から一転して悲しげな表情をする鼠のアルゴの口から出た、SAOの被害者。

 

 

「この1ヶ月で死んだプレイヤーは2000人を越えた」

 

 

表情には出さないが、内心驚いていた。

 

 

「随分死んだんだな。攻略が益々大変になりそうで、俺も余計に働くんじゃねえの?」

 

 

「それだけカ、冷たい奴だナ」

 

 

軽蔑したぞ、と続けた鼠。

 

 

「好きに言えよ。ニュースで赤の他人が死んだって聞いて、お前は一々悲しむのかよ」

 

 

「…………………」

 

 

やれやれ、普段テンションが高い奴ほど暗くなると厄介なんだよな。いつもみたいに笑えっての。

 

 

「生憎、顔も名前も知らない奴の為に流せる涙は持ち合わせちゃいねえよ」

 

 

「オイラは忠犬のそこが嫌いダ」

 

 

 

 

 

「………構わねえよ。俺達の関係は利用したり利用されたりで、仲良しこよしじゃない」

 

 

「…………………そうだな」

 

 

それだけ言って、去っていく鼠のアルゴ。

 

 

――――パリーン

 

 

そばにいたモンスターに槍を突き刺す。

 

 

何百体目と数えるのも億劫になるだけのモンスターを倒した音がやけに耳に残った。

 

 

 

 

 

偽りの太陽が昇っては沈んではが繰り返され、俺は攻略会議に参加するべく足を運んでいた。

一瞬、キリトと目があった気がするが、離れた場所に座る。

 

 

だって……、初対面ではないけど、知り合いとまではいかないような仲だ………。

 

 

中途半端な関係はどう接すればいいのか、分からないから困りものである。どうせなら、鼠のアルゴのように打算で繋がっていればいいのだが。

 

 

今日はあくまで様子見であって、実際に参加するわけではない。働きたくない俺にとって、極力参加はしたくないのだ。

 

 

「今日は集まってくれて感謝する!俺はディアベル。気持ち的に、ナイトやってます!」

 

 

な、なんだあのリア充臭漂う奴は…………。

ディアベルと呼ばれた男の言葉に笑いが起こり、うっすらと現実世界にいる知り合いの姿が重なる。

 

 

やっぱ、帰ろうかな………。

 

 

「俺たちのパーティーがあの塔の最上階でボスの部屋を発見した。俺たちはボスを倒し、第2層に到達して、このデスゲームをいつかきっとクリアできるってことを″はじまりの街″で待ってるみんなに伝えなくちゃならない。それが今この場所にいる俺たちの義務なんだ。そうだろ、みんな?」

 

 

今この場所にいる俺たちって、ぼくも含まれてるんですかね?というか、義務とか勝手に決めつけないで欲しいんだが………。

 

 

しかし、このデスゲームの先頭に立ち、みんなを引っ張ろうとすることは打算であっても名誉が欲しいとかでも簡単ではない。

 

 

素直に素晴らしいと思う。

 

 

こんな漫画やラノベな王道みたいな展開、俺TUEEEEEEとか夢見る読者なら憧れるかもしれないが、実際はそんなもんじゃない。

 

 

そんな能力が手に入ったら楽しいだけで、手に入らなかったら泣きべそをかいて許しをこうのが現実。

 

 

意外にもこの世界は平等である。そうじゃなきゃ、つまらないだろうと茅場が考えたのではないかと考察する。

 

 

攻略とは関係ないことを考えていると、1人の男が前に出た。

 

 

「ちょお待ってんか、ナイトはん」

 

 

第一印象はモヤットボール。他は………うん、ないな。頭にモヤットボールを付けた変態と判断した。

 

「そん前に、こいつだけは言わしてもらわんと、仲間ごっこはでけへんな」

 

 

俺は最初から仲間ごっこはするつもりもない。なんなら、お友達ごっこもやるつもりもない。

 

 

できないだけなんだけどね。

 

 

「ワイはキバオウってもんや。こん中に、五人か十人、ワビ入れなあかん奴らがおるはずや。そやろ、みんな!」

 

 

仲間ごっこできないとか言った傍から、人に同意を求める辺り相当な小物であると俺は認識している。

 

 

誰かと会話する度に同意を求めたり、会話する直前に友達と顔を見合わせたり、聞こえる陰口で相手に伝えたりするのは大半が女である。

1人になれば黙りこくる無能なキョロ充。

 

 

おっと、これ以上はトラウマに塩を塗るので止めておこう。

 

 

「キバオウさん。あなたが言っているのは元βテスターのことかい?」

 

 

「せや!奴らが何もかんも独り占めしたから、一ヶ月で二千人も死んでしもたんや!奴らが見捨てへんかったらこないなことにならなかった!」

 

 

下らねえな………。

 

 

周囲には沈黙が走る。

 

 

キリトの方を見ると、顔をうつむかせ罪悪感を感じているようにも見えてしまう。その姿がどこか妹に似ていたので、深くため息を吐き、後頭部を掻く。

 

 

「なあ、ちょっといいか」

 

「なんや!」

 

 

ひぇええ……。凄まないで下さいぃ……。

 

 

 

「仮にβテスターがビギナーを見捨てなかったとしてどうなる?」

 

 

「どうって。決まっとるやないか。安全なクエスト教えたり、戦い方教えた「9000人をか?」………ッ!」

 

 

キバオウの言葉を被せ追い打ちをする。

 

 

「それをやったとして、何千人もの命を背負うんだぞ。しかも、お前みたいな奴がいるだろうから、死んだら責任をとれとか言う奴が必ず現れる」

 

 

「そ、そないなことあらへん!」

 

 

「いいや、ありえるね。これ、知ってるよな」

 

 

俺が取り出したのは一つの″アルゴの攻略本″

 

 

それを見せるように掲げ、同調してくれるようにキバオウを除く全員が出してくれた。

 

 

知らないとは言わせない。

 

 

「これのおかげでビギナーでも助かってる奴は大半だろう。お前も持っている筈だ。無論、これはβテスターが作ってくれたものだ」

 

 

「なんやて………!」

 

 

こいつは馬鹿か?たった1ヶ月でこれを作れるのはβテスター以外にいてたまるか。

 

 

「用はだ。ここまでしてもらってんのに何を望む?何から何までおんぶに抱っこしてもらうのか?」

 

 

「………グッ!」

 

 

「つけあがるなよ。これがなかったらもっと死んでいた」

 

 

脳裏に浮かんだのは金褐色の髪の少女。

 

 

少女でありながら何千人と間接的に救った存在を否定されるのが、腹立たしかった。

 

 

彼女の努力が、情報屋の情報が、命を賭けたデスゲームで救われた俺が、否定されたようで許せなかった。

 

 

それに気付かず弁えない言動が頭に血を上らせるのに十分だった。

 

 

「ついでにいうなら、死んだ何割かはβテスターだ。多少の変更があって対処仕切れなかったんだろ」

 

言い終えると、ディアベルは手を叩き場の空気を断ち切り、キバオウは舌打ちをしながら席についた。

 

 

「みんな、それぞれに思うところはあるだろうけど、今だけはこの一層を突破するために力を合わせて欲しいんだ。

 

どうしてもβテスターとは一緒に戦えない、って人は、残念だけど抜けてくれて構わない。ボス戦では、チームワークが何より大事だからさ」

 

 

ディアベルの発言に小さな疑問を抱き、次の発言で俺の心を抉るのだった。

 

 

 

 

 

 

「好きな人と6人組作ってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

「ガハッ………!」

 

 

小町。俺、このクソゲークリアできそうにないよ。

 

 

ディアベルは抜けて構わないって行ってたし、帰っても問題ないだろ。

 

 

渋々、席を立ちこの場からさろうとすると、俺より背の小さい少年に腕を掴まれた。

 

 

「エイト!」

 

 

「キリト………」

 

 

えぇー、中途半端な関係な割はガッツリくるね。コミュ力低いと思ってたのに。

 

 

キリトは間を空けて口を開く。

 

 

「俺とやらないか」

 

 

「……………………」

 

 

「……………………」

 

 

「……あの、そういう、趣味はないので。キリトさん、お世話になりました………」

 

 

「待て待て待て!違う違う違う!わた、俺とパーティー組まないか?パーティー!」

 

 

冗談だよ。必死過ぎでしょ。

 

 

顔赤くて可愛い。なに天使?戸塚?

 

 

初めて見たときは観察する余裕なかったからな。

 

 

「はいはい。パーティーな」

 

 

「あそこにあぶれている人も誘おう!」

 

 

そこにはフードで顔を隠された人物がいた。

 

 

コミュ力たけぇ……。

 

 

「よかったらパーティー組まないか?」

 

 

優しげに問うキリトマジ天使。

 

 

「………そこの目が腐った人も?」

 

 

初対面に失礼過ぎない?

 

 

「そっちからするならいいけど」

 

 

キリトは引きつったような笑みで俺を見やるが、めんどくせえタイプだなと悟る。

 

 

キリトはパーティー申請をして、俺と彼女は承認する。

 

 

名前は………″アスナ″。

 

 

後に″黒の剣士″と″閃光″と呼ばれる存在と初めてのパーティーを組むことになるのだった。







ハーメルンでの投稿に一苦労します………。


助け………。
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