描写が無茶苦茶になってるかもしれませんが、ご了承下さい。
2層に繋がるボス部屋の前に40を越える攻略組が集い、ピリピリした空気が最後尾にいる俺にまで伝わる。
今の気持ちは?
そう問われれば、帰りたいの一言で一蹴するだろう。
今日も目を腐らせつつ、サボる気満々で武器を握る。
最前列のディアベルは拳を掲げ、肩越しに振り向く。
「勝つぞ!!!」
薄暗い通路に反響するディアベルの言葉は彼等を奮い立たせるのに十分な威力を発揮し、一様に緊張を振り払うように吠える。
キリトも笑みを浮かべて、うずうずしているのが分かる。
俺は……ほら、こういうノリ苦手だから。
大きな声出して裏変えって、恥ずかしくなって周りにくすくす笑われるのがオチで、結局やる気を削がれてしまう。
ボス部屋の扉が開かれ、突入すると本日の主賓″イルファング・ザ・コボルドロード″は全身をワインのように染め右手に斧、左手には盾を。
背中には何かしらの武器を背負い、向かってきた。
アルゴの情報通り、周囲には3体の取り巻き″ルインコボルド・センチネル″が存在する。
「みんな攻撃だッ!」
ディアベルの言葉に反応した攻略組は決められた作戦に沿って動き出し、キリトとフェンサーも遅れをとらぬよう床を蹴る。
ぼくたちの仕事は取りこぼしだからね。
働く意欲のない俺は溜め息を吐きながら、一体の取り巻きに先手を打つべく、何本かナイフを投擲し後を追う。
見事に鎧の隙間に当たっていき、前方にいるキリトとフェンサーは驚いた表情で振り向く。
「前見ろ馬鹿前」
そこでハッとしたフェンサーは前を振り向くと、センチネルの攻撃が振り下ろされていた。
フェンサーの襟を掴み先へ進めるのを止め、目の前でメイス似た武器が空振り床を叩きつける。
その隙を見逃さないキリトは間合いに入り、センチネルのダメージを与えた。
「ほれ、スイッチ行ってこい」
「あ、ありがとう」
「おう」
礼を言われたが、今はセンチネルに集中し槍を構え、動きを見極めながらぎこちない連携で鎧の隙間を槍で突く。
会って少しの時間で連携がいくことはないが、幸い相手は雑魚。
こちらのミスも突いてはこない。
これなら問題なく勝てる。
さっさと終わらせよう。
──────キリトside
センチネルを剣で一文字斬りつけ、それに続き長い髪を揺らしながらセンチネルの鎧の隙間を突き刺すアスナ。
その驚異的な速度はプレイヤーの中でも間違いなく、トップクラスといっても過言ではないだろう。
しかし、それよりも注目すべき存在が俺のパーティーにいた。
瞳に光を宿さず曇るに止まらずドブのように濁りきりながらも、平然とセンチネルと戦うエイト。
目立った動きはない。だが、状況に合わせて近づけば槍で攻撃し、離れれば【隠蔽】スキルを使って正確無比にナイフを飛ばしていく。
加えて、即席の連携だけに目立ったミスはないが、細かいミスが多くセンチネルに攻撃されそうになると、必ずと言っていいほどにエイトがフォローしてくれる。
「凄いな………」
無意識に呟いていた。
ステータスではβテスターであった俺の方が上を行くが、ゲームでは表せないスキルをエイトは持っている。
働きたくないなどと愚痴る癖に他人の分まで動く。
『お前は強いけど、少し年上の俺に頼れ。伊達に現実じゃお兄ちゃんやってないんだ』
思い出してしまうと笑みがこぼれてしまう。
嬉しかった。言質はしっかりとっているんだ。
とことん甘えてやるよ、エイト。
止めの一撃を入れて、センチネルは弾けて消え去る。
どうやら、ボスである″コボルドロード″のHPも残り僅かで、一層攻略を確信した時に訪れた。
「下がれ!俺が行く!」
「はっ?」
違うだろ……。ここは一気に畳みかけるべきなんだ。
コボルドロードは武器を捨てタルワール、ではなく野太刀に持ち替え、βテストとの変更点だと察した。
「ダメだ!全力で後ろに跳べ!!!」
自分でも驚くほど叫んでいた。
それも虚しくディアベルは吹き飛んだ。
──────エイトside
キリトは吹き飛んだディアベルに駆け寄り、少し話すと文字通り見る影もなくなる。
「…………………」
頭が真っ白になり初めて人の死を目の当たりにしながらも、腰のホルダーに手が伸びていた。
ナイフを抜いた瞬間、腰を落とし突き進んでいた。
なにやってんの俺?
いやいや待って下さいよ。このままじゃディアベルの後を追うことになってしまうのだが。
ナイフが当たり″コボルドロード″がこちらに意識を向けてる間に槍スキル【三連突き】を見舞う。
名の通り高速で突きを繰り出す。
そこへ、キリトとアスナの連携が加わるが、ギリギリで倒しきれず、野太刀が迫り来る。
「クソッ」
避けきれないと判断したとき、黒人のスキンヘッドが割り込んで野太刀を防いだ。
「俺が支えてる!早く!」
そこで素早く動いたキリトは一層の支配者である″コボルドロード″を打ち倒した。
「「「「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」」」」
それにより、歓喜で湧き立つ。
キリトもアスナも笑みを浮かべ、俺は死なずに済んだという安心感で肺にたまった空気を吐き出す。
「なんでや!!なんでディアベルはんを見殺しにしたんやっ!!」
盛り上がった空気をぶち壊したのは、トゲゾーをリスペクトしたような頭をしているキバオウ。
「見殺し………」
呆然とした様子で一つの単語を復唱するキリト。
「そやろが、ジブンはボスの使う技知っとたやないかっ。最初からあの情報を伝えとったら、ディアベルはんは死なずにすんだんやっ!!」
これが起爆剤となり他のプレイヤーも正義感を振りかざした言葉を投げ掛け始めた。
1人の少年に飛ばされる罵倒。
馬鹿馬鹿しい。本当に知らないなら最期まで演じて、ディアベルを止めたりはしないだろうが。
しかし、それを伝えたところでこの状況は治まらないだろう。
ディアベルの死による感情の爆発。
恐らく奴はLAボーナスを狙っていたのだろう。
ここで説明してもいいが、証明は出来ないしここまで早く攻略が進めたのもディアベルのおかげだ。
キリトはディアベルの身を案じ、コボルドロードに止めを刺したのだ。この少年がここに居なければ、あと何人死んでいただろうか。
青年はゲームクリアの為に。
少年はこの場にいる皆の為に。
それぞれのやり方で未来と命を救った。
このままだと、本格的にβテスターの迫害が始まってしまう。これでは攻略に支障が生じてしまう。
だったら俺は俺のやり方で、正々堂々、真正面から卑屈に最低に陰湿に、やるまでである。
やり方は簡単。
矛先を別の方向にすればいいのだ。
ホルダーのナイフに手を何本か上に投げ、キバオウを含むプレイヤーに触れないギリギリのところに落ち床に刺さる。
そこで罵声は止み、溜め息を吐き出しきり、そのままちょっとしたコツで独特な声を発した。
「っはぁー…はあ!」
そこで限界まで口角を吊り上げ、目が細くなるほどに目尻を下げれば、相手はイラつく。
「なんやワレ!」
ましてやこの状況だ。一気に全員の視線がぶつけられる。
こっからが本番だ。
「ディアベルが死んだぐらいで喚くなよ、カスプレイヤー共。ヒーロー気取って死んだそれだけだろうが」
「なんやお前もこいつの味方でβテスターか!?」
「そんなに声を荒げるなよ、小物臭がこっちにも漂うぜ。つうか、俺とそこのチビを仲間とかキメエよ。あーあぁ、俺の計画がおじゃんだ」
腰に手を当て、計画という言葉に反応しだした。
「カスプレイヤーは知らねえだろうが、βテスターから話を聞いた俺は知ってんだよ。フロアボスに最後の一撃を与えりゃレアなアイテムである、LAボーナスが手に入ることをな」
更に続ける。
「βテスターであるディアベルに交渉したんだがな。どうやら、感づいたみたいで計画が潰れたんだよ。チッ、無駄に正義振りかざしやがって、しかもこのチビが持って行きやがった」
ここでβテスターにもいい奴がいますよアピールをする。
「まあでも、構わねえか。ディアベル程度の代わりなんざ吐いて捨てるほどいるわけで、攻略組の底が知れた」
「ふざけんなクソ野郎!」
「テメェの所為でディアベルさんが死んだんだぞ!」
「死んで償いやがれ!」
「好きに言えよ。カスプレイヤー共。ディアベル以外俺の計画に気付かなかっただろうが、無能集団」
それに沈黙する集団。
穴だらけの内容だが、重要なのはそれっぽく言い、故人を蔑めば問題ない。頭に血が上った連中だ、あまり気にしないだろう。
「じゃあな、カスプレイヤー諸君。俺は先に二層に行ってるぜ」
二層へと続く扉を開き長い階段を上り始めると、背後から声をかけられ振り向く。
「んだよ」
【隠蔽】スキル発動しとけば良かったと後悔したが、もう遅い。
そこには超絶美少女のフェンサーさんがいる。
「………改めてありがとう。あなたのお陰で″センチネル″の攻撃を受けずに済んだ」
「それだけか?」
「もう一つだけ!……あれが嘘だって分かってるからね」
「嘘じゃねえよ。序盤でLAボーナスとっときゃあ他のプレイヤーに比べて有利だからだ」
「なら私を助けてくれたのはなんで?あなたにとって私程度は代わりはいるんじゃないの?」
「あの時はパーティーだったからな。しっかり働いてくれなきゃ困るんだよ」
「…………………」
ここまで言いやもう大丈夫だろ。俺と喋っていると周囲からなにを言われるか分からねえぞ。
再び階段を上ろうとしたら一言。
「私はあなたのやり方が好きじゃない」
「…………………」
会ったばかりの彼女に心は揺さぶられない。
しかし、聞き覚えのある発言に一瞬足を止めてしまうが、二度も振り返ることなく階段を上がっていく。
早く帰りたいものだ………。
温かいマッ缶で傷付いた心を癒したい。
俺ガイルキャラ
誰を何人出そうか、何時出すか迷ってます。
しかも、明確にヒロインが決まってるわけでもなし。