タイトルは特に思いつきませんでした。
文章が雑になっています。
すみませんでした。
──────アルゴside
デスゲーム宣告を受け、恐怖に支配されたあの日でも、涙を流すことはなかった。
βテスターである自分が何をすればいいのか直ぐに理解したからだ。
戦闘力は皆無に近いオイラが命懸けで集めた情報が遠回りに彼が肯定してくれた時は嬉しかった。
初めて会った日、キー坊に紹介された彼、アホ毛を立たせるエイトの目は今と変わらずアバターでも存在しないような濁り具合だった。
エイトという名から忠犬と呼べば、鼠と返される。
口を開けば碌でもないことを吐く忠犬に呆れながらも、捻くれた解答が嫌いでもなかったし、意外と面倒見がいいから好印象であった。
働きたくないと言いながらも、社畜ばりにレベル上げをする忠犬の背中はどこか大きかった。
攻略会議に誘ったあの日に話した被害者の人数を告げた時、なんでもなさそうに言っていたが、悲しげな表情をしていた。
だからだろうか、その日に言われた言葉。
『俺達の関係は利用したり利用されたりで、仲良しこよしじゃない』
真偽はともかく、心にくるものがあったのは確か。
そして、フレンドからオイラが削除されて初めて、この仮想世界で涙を零した。
その後は宿に戻り泣くことしかできなかった。
どんなに取り繕ってもオイラは女の子で、死と隣り合わせのゲームで頼りにしていた忠犬に、あんなことをされれば泣きたくもなる。
頼っていると気付いたのはその日なんだけどね。
ただ、何時までもくよくよはしてられない。悲しみを振り払うように今日はとある迷宮区を歩いていた。
ここはモンスターが少なく、オイラでも問題ないようなレベルだと知り、自らマップを作り高値で売ろうと決めていた。
事実、モンスターと出会うことは一度もなく、順調にマップの制作に励んでいた。
「にゃハハハハ!出来ター!」
完成すると、達成感が生まれやってみればいいものだなと思ってしまう。
忠犬の件も頭から抜けて、いいストレス解消になった。
「あれ、でもこの迷宮何のためにあるんダ?」
隠し扉もアイテムもモンスターも非常に少ない迷宮を普通作ろうと考えるであろうか?
茅場どころか一般人でさえ、そんな愚行はしないはずだ。
ここまで考えた矢先に前方から3m程のシルエットが近付いてきた。
″彷徨える兎″
白い体毛に覆われた赤い目の現実世界にいる兎をそのまま大きくしたよう感じ。
1層の″コボルドロード″と同じ実力だと察したオイラは全力で背を向けて、駆け出した。
これはヤバい。なにがヤバいかってもうヤバい。
攻撃してもいいが、大したダメージにはならない。それに背後から大きな足音が鼓膜に響き振り向くのが怖い。
害がなければモフモフしてやったのに。モフモフモフモフ。
冗談を言ってる場合ではない。
だんだんと距離が近くなっており、【隠蔽】スキルと【索敵】スキルをやってもこの迷宮区では発動しない。
しかも、やりがいがあっただけに入り組んでるので簡単には出られない。
「あっ………!」
背中に伝わる不快な感覚。それにより、右足が左足かかり床に倒れ込み、肩越しに迫り来る脅威を直視してしまった。
「あ…あ……ああ…」
だめだ…たすからない………。
フロアボスと同じくらい強いのにオイラ1人で倒せる道理がない。
足掻こうとも思えず、恐怖のあまり手が震え立つことすらままならない。
「…み…妙な…とこも……リアルじゃないカ………茅場………」
死ぬぐらいなら笑って死のう。怖くても、強がって、去勢を張って、無理矢理笑顔を作るのがせめてもの抵抗。
「に、にゃハハハハ!にゃハハハハハハハハ!にゃハハハハハハハハハハハハ!」
端から見たらイカレてるかも。
鼠なのに猫みたいな笑い方。我ながらよくここまで道化られた。
案外楽しかったゼ、キー坊。
βテストからの付き合いの少年を浮かべて自然と笑みがこぼれてしまう。
そして…………、もう1人の彼を考えると我慢していた涙が溢れ出た。
打算とか利用とか、理屈で考える繋がりものじゃなく、一緒に笑い会える関係でいたかったなぁ………。
もう抵抗の笑顔という名の仮面を失い、うつむいて大粒の涙を床にこぼすだけとなった。
巨大な影がオイラを覆い尽くし、次第に濃くなっていく。
兎が小さく口を開けると、オイラくらいなら丸ごといける。
「こんな………終わり方…やだよ………」
誰にも見られず、知られず、ひっそりと現実世界からも仮想世界からも永久退場。
悲しいなぁ。
虚しいなぁ。
「俺でも押して駄目なら諦めろをモットーにしてるんだ。まず押せよ」
「………へっ…?」
涙で視界がぼやけた中で見えたのは頭上を飛び交う投げナイフ。
兎のHPゲージが削られていき、更に追い打ちを掛けるようにオイラの横を通り過ぎ、アホ毛を立たせた男が槍を突き出す。
「【五連突き】」
刺突から生まれたクリティカルの連続。
「忠犬………?」
「おぉ、まさかこんなヒーローみたいな真似するとは夢にも出なかったぞ」
そういって兎が怯んでいる時にオイラの腰を掴んで脇に抱え、色気もなく走り出した。
「な、なにすんだ忠犬!」
「うるせえな。どうせ立てねえんだろ」
「ここはお姫様抱っこだろ!?」
「ばっかお前!俺がそんなリア充みたいなことしてたまるかよ!つうか、それじゃナイフ投げれねえしってあれ速くね?」
「オイラより速いゾ。そこ右曲がレ。近道ダ」
「っと、あとどんくらいで着くんだよ」
忠犬はナイフを投げながら″彷徨える兎″の動きを少しだけ遅らせている。
「ギリギリだナ。けど、余裕で生き残る方法もなくはなイ」
「んだよ?」
「囮作戦って知ってるカ?」
「投げ飛ばすぞ?」
「にゃハハハハハハハハ!冗談冗談。そこ左、あとはずっと真っ直ぐダ」
「お前本当は楽したいんじゃないの?自分で走ってくんない?」
「そんなことないサ。情報屋嘘吐かない、冗談は言うけどナ」
「うぜえ」
「オイラと話したし、今の情報300コル。助けてくれたから、290コルでいいよ」
「ケチ臭すぎんだろ。お前の命10コルかよ」
軽口を叩き合って、命の危機が迫っているのに涙は引いて腹から笑えてしまう。
そうして、光が射すオイラが入ってきた場所を抜けると、オイラを抱えたまま地面を滑る忠犬。
迷宮区の入り口には″彷徨える兎″がじっとこちらを見つめたかと思えば去っていく。
「危なかったな」
「ああ、それより忠犬はどうしてここニ?」
「情報屋に紹介されたんだよ。そしたらお前がいてああなっただけだ」
情報屋………。オイラ以外の……。
「帰るわ。流石にあれにはまだ勝てねえ」
「待テ」
行かせないよ、忠犬。
「オイラに謝れ。勝手にフレンド削除して別の情報屋と組んだことをナ」
「お前には関係ないだろ」
言うと思ったぜ。けどな、こっちには切り札があるんだよ。
「忠犬、オイラ抱えてたよな?」
「は?ああ、まあな」
「ハラスメント警告が出てるゾ」
「……………………え?」
「ほれほれほーレ。オイラに謝レ。そんでまたオイラと組メ」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………押すゾ」
その一言で忠犬は溜め息を吐いて、土下座して謝罪の言葉を述べる。
「悪かったよ。これでいいんだろ」
「おぉ、土下座までするとはオネーサン驚いたヨ………。はい、フレンド登録」
「へいへい。もう余計こと言うんじゃねえぞ。お前は攻略に必要な人材なんだからよ」
「にゃハハハハ。そりゃ無理ダ。何度だって忠犬に説教かましてやるサ」
「おい」
「忠犬はそれぐらいやんなきゃ駄目だって分かっタ。……オイラはしつこいぞ。キー坊もアーちゃんも」
「………わあったよ。揚げ足とってやるから」
忠犬は根負けしたのか、ひねくれた解答をする。
「にゃハハハハ。忠犬のそういうとこ好きだゾ」
「勘違いさせるようなこと言うな。期待しちゃうぞ」
フレンド登録を終えて、胡座をかいてる忠犬にゆっくりと四つん這いで迫る。
「………勘違いしてもいいぞ」
忠犬は両眼を開き、顔を赤くさせてぱくぱく口を開く。
「助けてくれて嬉しかった」
「あああああああのねねねねねねねねねじゅみしゃん」
「目……閉じて…エイト」
オイラの人差し指と薬指が忠犬の瞼を閉じさせる。
――――チュッ
忠犬は目を開き、視線を下にズラす。
そこには唇と触れている、
オイラの人差し指。
「にゃハハハハハハハハ!オネーサンを突き放した罰だ!」
「あーそうかよ。分かってたよ、期待してないし………」
そう言って立ち上がるがっかりしたような忠犬。
「またな、鼠。罰はしっかり受けたぞ」
「ああ、しっかり忠犬にぴったりな罰を与えたヨ」
今度こそ、この場から去り、ここにいるのはオイラだけとなった。
そこで忠犬の唇と重なった人差し指を更にオイラの唇で重ねる。
命を救ってくれた。
迫ると顔を赤くした。
元の関係以上になれた。
目を閉じれば格好いいことが判明した。
『期待しちゃうぞ』
「オイラの台詞だよ」
俺ガイルキャラ出さなくていいと、ご意見がありました。
一応、出さなくていい理由を知りたいので良かったらお願いします。
出した方がいい方でもお願いします。
ただし、奉仕部の2人はでませんので。