Fate/kaleid saber   作:faker00

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無印編これにて完結。
とんでもなく忙しい2週間でした笑
皆様本当に応援ありがとうございます!


epilogue 穏やかな日常

「……っ、朝ですか--」

 

 目が覚めると窓からは光が差し込んでいた。

 段々と夏が近付いているのか、枕元に置いてある時計の針が指し示している時間はまだ5時前だと言うのに窓を空け忘れた部屋の空気はうだるような熱気を持ち、着ている薄手のパジャマはうっすらと汗ばんでいた。

 

 --シャワーを浴びないといけませんね……

 

 流石にこのままでいるのは気持ちが悪い。

 タンスからセラのお下がりである薄い緑のワイシャツと茶色いロングスカートを取り出す。どうもセラとは嗜好というか考え方が合うようでなかなかに気にいっている。

 リズにもらった服もあるのだが露出度が高く恥ずかしい上にどうもバストサイズを求められるものが多いのであまり着こなせずレギンスなどズボン以外は手に取るのも億劫になってしまっている。

 そういうわけで専ら手に取るのはセラのそれだ。

 

「--」

 

 なるべく音を立てないように部屋のドアをゆっくりと開いて閉める。

 流石にこの時間だと起きている人はおらず電気のついていない廊下は薄暗く静かだ。

 そんな廊下を静かに歩いて浴室へ向かう。

 最近はこれが日常になっている。

 

 あれからもう2週間が経っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おっ、セイバーおはよう。相変わらず早いんだな」

 

「おはようございます、シロウ。朝ご飯の支度ですか?」

 

「ああ、セラとちょっと揉めたけどとりあえず今日は俺だ--全くセラも強情だよな」

 

「それに関してはシロウもセラのことを言えないと思いますが……」

 

 シャワーを浴びて髪をタオルでふきながら再び廊下出ると何か焼ける音と共に美味しそうな匂いが私の鼻腔を刺激する。

 それに釣られてリビングに向かうとそこには制服にエプロン姿といういつもの格好で調理をするシロウの姿があった。

 

 挨拶をするとシロウは笑顔で返してくる。

 この笑顔をみることが私にとって1日の始まりを告げる至福の時間になっていた。

 

「セイバーさんの言うとおりです。強情なのはどちらですか……これで今週の朝食は3回目です。明日は私ですからとらないでくださいよ」

 

「分かった、分かったからそう睨まないでくれよ。せっかくの美人が台無しだぞ」

 

「なっ--!? 貴方は本当にどこでそんなやり口を覚えて--それが祟ってのシスコンですかこの変た--」

 

「おはよう! セラ。朝からゴミ捨てお疲れ様です」

 

「あら、セイバーさんおはようございます。セイバーさんもシロウに何とか言ってくださいよ」

 

「ですからどっちもどっちだと」

 

 そんな穏やかな時間はあっさりと終わりを告げる。

 玄関の扉が開く音がする。パタパタという足音が近づき少し不機嫌そうな顔をしたセラがその顔を見せる。

 

 こんな風に朝食当番をシロウに取られた日のセラはどうも機嫌が悪い。

 話を聞く限りどうもセラはメイドとしての誇りが少しばかり行き過ぎているほどに強く、その仕事の領分にシロウが時折踏み込んでくることに関して否定的なのだ。

 これさえ無ければ女性として文句無し、言うことなしで尊敬出来る方なのですが……まあそう上手くはいかないものですね。その欠点もそう大したものではないですし。

 

「--はあ、分かりました。ですがシロウ、明日は私ですからね。 それをお忘れなきように」

 

 とりあえずは諦めたのかセラが折れる。もちろん最後にビシッと指を指し牽制は忘れない。

 

「りょーかい……それよりもそろそろ皆起こしにいった方がいいんじゃないか?」

 

 シロウもそれを了承しここに和平が成立する。そして壁につけてある時計を見ると朝一番の仕事の到来を告げた。

 

「あら? もうそんな時間ですか。セイバーさん、手伝ってもらってもいいですか? この家の皆さんはどうも朝に弱くて……」

 

「分かりました。私はイリヤスフィールとリズを起こしてくるのでセラはキリツグとアイリスフィールを」

 

 セラの言葉通りこの家の住人は皆朝に弱い。

 自然と起きてくるのは今ここに揃っている3人くらいなのだ。

 そしてそれを起こしにいくのもお決まりなのだがそれも簡単ではない。リズは全く起きないですしイリヤスフィールは寝ぼけて私とシロウを間違えてキスしてくることもある。

 

 --今日は平穏無事に行くでしょうか?

 

 何故か無駄に緊張する朝の一時なのである。

 

 

 

 

 

 

「うう……眠いよー……」

 

「ほらイリヤさん、味噌汁がこぼれますよ。肘をテーブルにつかない!」

 

「あらあら、セラは本当のお母さんみたいね。こんな可愛いお母さんで私はイリヤちゃんが羨ましいわ~」

 

「奥様も茶化さないでください! 旦那様も何とか--」

 

「ん? ああいいじゃないか。僕もセラみたいなお母さんなら大歓迎だ。 ぜひお嫁にほしいね」

 

「キリツグ、ちょっといいかしら?」

 

「ハハハ、待ってくれよアイリ、冗談に決まって--分かった、言い分を全面的に呑もう。 頼むから後ろから出てる黒いオーラを消してくれ!!」

 

「キリツグ、弱い」

 

「--」

 

 --賑やかですね

 

 家庭の朝の食卓とはかくも素晴らしいものなのか。

 若干1名窮地に追い込まれている気がしないでもないがその光景に何の理由もなしに微笑みがこぼれる。

 経験がなかったので知りようがなかったが意外と私はこういった暖かさが好きなのかもしれない。

 

 箸を口に運ぶ。塩加減の利いた鮭は白米によく合う。

 セラとイリヤスフィールは食べ過ぎると太るだなんだと言って遠慮することも多いが私は別だ。美味しいものを満足するまで食べられるのは幸せだ。

 

「そう言えばセイバー今日からうちの学校に通うんだよな?」

 

「はい、やっと編入許可が降りたので」

 

 士郎が私に声を掛ける。

 そう、今日は私にとって大事な日なのだ。

 一応ではあるがこの家に来るに当たって私は留学生ということになっている。そうなるとずっと家にいるのは不自然。

 なのでルヴィアゼリッタに頼んで学校にねじ込んでもらうことにしたのだが昨日遂にその事で彼女から連絡がきたのだ。話が付いたから今日から学校に来るように、と。 

 

「セイバーさんの制服……」

 

「あらあら~イリヤちゃん焼き餅~? うんうん、分かるわよ~セイバー可愛いもの--シロウのこと、とられちゃうかも知れないわね~」

 

「ブッ--! アイリさんなに言ってんだよ! そんなんあるわけ!」

 

「そうだよ! 焼き餅なんて--否定できないけど……」

 

 シロウがお茶を吹き出しイリヤスフィールは顔を真っ赤にする。

 一連の流れを見れば分かるが完全にこの家の主導権はアイリスフィールが握っている。

 

「だめよーシロウ、アイリさん、なんて他人行儀な。ママ、それかアイリお姉ちゃんって呼ぶようにいってるでしょ?」

 

「だめだ、いろいろとついていけん。というかママはともかくお姉ちゃんって……」

 

 この天然っぷりが人を惹きつけているのかも知れませんが矛先が向いた方は大変でしょうね。

 頭を抱えるシロウを見て純粋にそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

-----

 

「ええと……これでいいのですか? なんだかピチッとしているような」

 

「うわあ……なにこの反則、ちっこい身体がとんでもなくいい感じにあってるじゃない」

 

「私も驚きましたわ……これでシェロを誘惑でもしようものなら……!」

 

 

 鏡に写る私と苦笑いの凛と何故か敵視の視線を向けるルヴィアゼリッタ。

 学校に行く前にルヴィアゼリッタの家にきて制服なるものを始めてきてみたのだがなんとも新鮮だった。

 

 --なぜこれが指定されているのかわかりませんが……なにか理由でもあるのでしょうか?

 

 この疑問をぶつけてみたが凛とルヴィアゼリッタからはなんとなく微妙な目を向けられるだけで満足のいく答えは得られなかった。

 

「まあとりあえず行きましょうか。セイバー、ちゃんとついてきてね」

 

 

 

 

 

 時刻は朝の8時過ぎ。校舎へと続く校庭は登校する生徒で溢れていた。

 その真ん中を私、凛、ルヴィアゼリッタは突っ切って歩く。

 なんとなく皆が距離を取っていたり視線が集中しているような気がするのが気になりますが……まあ気のせいでしょう。私も緊張しているのかもしれない。

 

「--」

 

「どうかしたのですか、凛」

 

 その様子になにか凛が考え込む。

 

「セイバー」

 

「何ですか凛?」

 

 そうして意を決めたように前を歩いていた彼女が振り向いた。

 

「頑張ってね。これから色々大変かも知れないけど、それはある意味宿命よ」

 

 その目は何か諦めたように遠くを見ているようだった。

 

 

 

 

 

 

「HRで紹介する。少し待っていてくれ」

 

「分かりました。葛木先生」

 

 

 葛木先生--彼が私の担当らしい--が教室へと入っていく。

 扉が閉まっていて中の様子は確認できないがたくさんの生徒が騒いでいるのがよくわかる。

 

 --せっかくですし馴染めるといいのですが

 

 よくよく考えてみれば王として常に人の上に立つことが当たり前であった私にとって対等な立場での集団行動など始めてのことだ。未経験の事とはここまでドキドキするものなのかと自分でも驚いた。

 

「--では新入生を紹介する……入りたまえ」

 

 扉が横に開き葛木先生がちょいちょいと手招きする。

 

 その手に従い、教室に足を踏み入れた。

 

「--」

 

 --どこまで新鮮なのでしょうか

 

 最初に思ったのはそれだった。

 私を見てざわめくクラスメート。教室という場所は色々な感情が交差するという点である意味戦場に似ていた。しかしそこは、どんな戦場にもない柔らかさをもっていた。

 

「えーと……」

 

 声が詰まる。人前にでるなど日常だった。だが……こんな事は始めてだ。

 緊張は緊張だ、しかしそれは張り詰めたものではなくむしろ心地いいもの。

 

「私は……アルトリア・ペンドラゴンです。皆さんよろしくお願いします」

 

 

 

 

 

-----

 

「学校とはこうも大変なのですね……」

 

「あはは、しょうがないだろ。最初だけだから心配するな」

 

「そういうものなのでしょうか……」

 

 自転車を引くシロウと夕焼けのさす道を歩く。

 

 1日はあっと言う間に過ぎていった。

 授業とやらを聞いて勉学に励み、休み時間にはクラスメートに質問責めにあったり、お昼ご飯を食べようと誘われたり……  

 楽しかったと言って差し支えないものだった。

 

「そうだよ、それにこれからはセイバーと学校に行けると思うと俺も嬉しい」

 

 --なんでここまで眩しくなるようなセリフをさらっとはけるのでしょうか

 

 思わず赤面しそうになり顔を背ける。

 

「どうしたんだよセイバー……あれ、イリヤじゃないか?」

 

「イリヤスフィール? 御学友と一緒のようですね。それに美遊もいますね」

 

 シロウの声に顔を上げると彼は隣にある公園を見つめていた。

 そこからは少女達の笑い声が聞こえる。 

 その中にイリヤスフィールと美遊もいた。

 

「お、あれイリヤの兄ちゃんじゃねーか!? おーっす!」

 

「おう龍子ちゃん、相変わらず元気だなー」

 

「だろー? 相変わらずイリヤのシスコンに苦労してんのか?」

 

「そっちも相変わらずとんでもないこと言うな……」

 

 1人が駆けてくると士郎に飛び付く。

 私と同じ金色の髪をした活発そうな女の子だ。

 

「ちょ! 龍子なにいってるの!? ごめんねお兄ちゃん、それにセイバーさんも」

 

 顔を真っ赤にしたイリヤスフィールがブランコを飛び降り後に続いてくるとタツコ、と呼ばれた少女を強引に引き離すと私達に頭を下げる。

 その後ろからも一緒に遊んでいた少女達がつづいてきた。

 

「こんにちは士郎さん……ってこのお姉さんは誰だ? まさか……」

 

 眼鏡を掛けた一際身長の高い少女が私を認めるとキラン、とその眼鏡を光らせイリヤスフィールの肩をポンポンと叩く。

 ……まるで何かに同情するように。

 

「違うよ雀花! セイバーさんはそういうのじゃなくて--」

 

「分かってる分かってる。あーイリヤは面白いなーほんとに」

 

 更に赤くなり今や達磨のように赤くなったイリヤスフィールに耐えられなくなったのか雀花と呼ばれた少女はお腹を抱えて笑っている。

 イリヤスフィールの立場はどうも学校でも変わらないようだ。

 

「いや、しかしこれは怪しいぞー。突然現れた金髪美少女と2人で下校するなんて普通じゃない」

 

「な、那奈亀ちゃん……じろじろ見たら失礼だよー」

 

「大丈夫だよ、ミミちゃん。そういうのが気になる年頃なのは分かってるから」

 

 ピンク色の髪の毛が目立つナナキという娘は私とシロウを何度も見比べている。

 その後ろでシロウがミミと呼んだ短い黒髪の少女は今にも泣き出しそうな目でナナキの袖を引っ張りながら私達に頭を下げていた。

 

「彼女達はイリヤスフィールの友達なのですか?」

 

「うん! 皆私の大切な友達だよ!」

 

 眩しい太陽のような笑顔でイリヤスフィールはそう言う。

 そこに死地を魔法少女の潜り抜けてきた魔法少女の面影はない。

 

「それじゃあ一緒に帰ろう、お兄ちゃん、セイバーさん。みんな、今日は先に帰るねー」

 

「おう! またなイリヤ!」

 

「また明日なー」

 

「気をつけてねー」

 

 友達に手を振るイリヤスフィールを伴い3人で公園を後にする。

 

 平和な帰り道はとても穏やかで、何故か同時に儚いもの何じゃないかと思えた。

 

「ねえセイバーさん」

 

「どうかしましたか、イリヤスフィール?」

 

 イリヤスフィールが私をじっと見上げる。

 何かいいたいのだけど出てこない。そんな感じだ。

 

「えーと……」

 

「どうしたイリヤ? 何か言いたいことあるならちゃんと言わなきゃだめだぞ?」

 

 シロウもそんな様子に気付いたのかそう促す。

 それに後押しされたのかイリヤスフィールは一息つくと意を決したようにその先を言った。

 

「うん……私のことなんだけどイリヤスフィール、じゃなくてイリヤ、って呼んでくれないかなー? ほら、友達もみんなそう呼んでるし私もその方が距離感感じなくていいかなって--けどセイバーさんが嫌なら別に今まで通りでも--!」

 

「--くっ」

 

「フフっ」

 

 必死な様子のイリヤスフィールに思わずシロウと顔を見合わせると2人揃って笑ってしまう。

 

 なんと平和で可愛い勇気なのか。これには応えなければいけないだろう。

 

「ちょっと!? なんで笑うのー!」

 

「いえ、申し訳ありません……イリヤ、これからはそう呼ばせてもらいます」

 

 そう呼ぶとイリヤは嬉しそうに笑いながら私の腕にしがみついてきた。

 

 私も笑いかけると赤くなった空を眺める。

 

 今は間違いなく幸せだ。何が原因でこうなっているのかも分からないし、いつまでこうしていられるかもわからない。

 けれど……この穏やかな日常が続くことを願うのは、いけないことですか?

 

 

 こうしてまた、1日が過ぎていく。

 

 

 

 

 

 

-----

 

「ええ、分かっています……では」

 

「ほんとに困り者というか……まあ仕事に支障がなければ構いませんが」

 

「話はすんだかい? 私としちゃ待ったほうだと思うんだけどね。 感謝してほしいくらいだ」

 

「そうですね、あのエミヤを育てたとは思えない人情っぷりだ」

 

「勝手に育っただけさ。まっ一応保護者みたいなもんだし坊やが困るのを見過ごす気はないけどね」

 

「引く気はないのか?」

 

「ないね。お前も、教会も、時計塔も、一体何を考えているか知るまではね」

 

「そうか……なら仕方ない。あなたを相手にするのは気が進まないが立ちはだかると言うのなら排除するだけです。ナタリア・カミンスキー」

 

 

 

 

 

 

 




どうもです!

いやー、遂に終わりましたよ無印編。毎日6000文字前後書くのは楽しかったけどつらかった……けどセイバーさん笑ってるしまあ良しです


それでは今後の予定なのですが、正直セイバーさんこれで幸せだし完結でいいんじゃないか?とか思いましたがあまりにも無責任エンドなので続ける予定です。
ただこっからは今までと違い原作と違うことやったりオリ展ねじ込む可能性は十分にあります。
取りあえずは構想まともに練るのも兼ねてしばらく休みます。ちゃんと帰ってきますのでそこは心配なさらないでください。

それではまたツヴァイ編でお会いしましょう!
最後に読者の皆様にもう一度感謝です!!ありがとうございました!!
評価、感想、お気に入り登録じゃんじゃんお待ちしております!

ps 活動報告の方のアンケートはまだまだ募集しております。もしかしたら今後に響くかも知れないので良かったらコメントお願いします。
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