あとごめんなさい。今回だいぶ短いです。
――バゼット・フラガ・マクレミッツの今後 衛宮士郎、遠坂凛、ルヴィアゼリッタ・エーデルフェルト、イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、クロ・フォン・アインツベルン、美遊・エーデルフェルト、アルトリア・ペンドラゴンへの危害目的での接触、及び外部への情報提供の一切を禁じる。
――術者である遠坂凛、及び上記に上げられた人物のバゼット・フラガ・マクレミッツへの危害目的の接触の一切を禁じる。
ギアスによる強制的な停戦。
これが凛によるこの場の調停だった。
「どう? バゼット。貴女も見て分かると思うけど、貴女じゃどうやっても今のセイバーには勝てないわ。
彼女まで網羅したこの停戦なら貴女にとって破格の条件だと思うのだけど」
あくまで絶対的有利権はこちらにあるという態度で凛がバゼットに最終通告を突き付ける。
「――――」
対するバゼットは目に見えるほどの屈辱に対する悔しさと憤りに溢れながらも彼女を睨みつけ暫くの間沈黙し、そして頷いた。
「仕方ないですね。ええ、それで同意しましょう。どうも事前に聞いていたのとそちらの戦力が違いすぎる――命があるだけよしとするしかないでしょう」
怒りこそあっても状況の判断を誤るほど馬鹿ではないのだろう。
それだけ言うと彼女はうつむき気味に背を向け門へと立ち去ろうとする。
「待ちなさいよ。貴女も……と言うよりも協会が、かな。クラスカードを何とかしないといけないんでしょ。それなら提案があるのよ――
そして驚愕の表情で振り向く。
私は穴の中での凛の言葉を思い出して唇を噛んだ。
まだ戦いは終わらないのだ。
―――――
「では……」
「うん、8枚目なんて有り得ないのよ。おねーちゃん」
学校から帰るなり私をちょいちょいと部屋に手招きしたクロはドアを閉めて鍵を閉じたのを確認すると子供用の小さなテーブルを前に座って向かい合う。
そして神妙な顔付きでそう言った。
「おにーちゃんとイリヤは大して事情も呑み込めてないし、分かりもしない事で無駄に不安を煽るのもあれだからあんまり話したくないんだけど……」
「私なら問題ない、ということですね。確かに同じ様な違和感を感じてはいました。本来サーヴァントのクラスは7つのみ。8枚目というのは正規ではありえない」
もちろんそれは聖杯戦争の時の話ですが。と念おきするのは忘れずにクロに同意する。
この土地の地脈で今までのカードとは桁違いの魔力を貯め込んでいるという第8のクラスカード、凛がわざわざ冗談でそんな事を言うとは思えないから確かに存在はするのだろうが、私自身違和感を持っていたのは間違いない。
「ですが」
「分かってる。凛が嘘をついたとも思わない。どんなものかは分からないけれど8枚目はある。それで聞きたいんだけど……8枚目にはどんな可能性があると思う?」
何か心当たりはないかと問い掛けてくる。
そもそも私の知っている聖杯戦争と今回のクラスカード騒動はどこまで関係があるのか分からない。それ故に今までその知識を持っての事態の推測と言うのは控えていたのだが……そうも言っていられる状況ではないのだろう。
「1番に考えられるのはエクストラクラスというパターンでしょうか。セイバー、アーチャー、ランサー、ライダー、キャスター、バーサーカー、アサシンの7つがクラスの基本になりますが、その中でも3騎士を除くクラスは場合によってはそれとは全く別のクラスとして召喚されることもあると聞きます」
真っ先に思いついたのはこの可能性。
クラスというものは基本的には7つだが英雄というのはそれこそ星の数のように存在する。
ともすれば、その中にはもちろんそのクラスという括りには該当しない……と言うよりもそれ以外のほうが輝ける英雄も少なからずいるのも事実だ。
ならそんな英雄達をどうやって呼び出すのか?
その答えがエクストラクラスだ。あいにく私はその類の英雄と出会ったことはないが、例外という言葉で真っ先に浮かんだのがそれだった。
そしてその特例で呼び出されるサーヴァントは常にイレギュラーと言うことくらいは知っている。
それならば1枚だけ別にあったというのも頷ける。
「エクストラクラス……けどそれってあくまで召喚された英雄をベストの形に当てはめる為のものでしょ?
仮にライダーのクラスしか空きがなかったとしてそこにエクストラ……例えば盾のサーヴァント、シールダー何てのが呼ばれたとしても8人にはならない。
ライダーというクラスがその戦いから消えるだけ……結局7つのクラスで争われる事には変わりないんだから」
「……そうですね。私の仮説ではそこを論破することはできない」
が、この案は自分で言うのも何なのだが穴だらけにも程がある。
それどころか根本的にはなんの解決にも繋がらない。
「むむむ……やっぱりおねーちゃんでも分からないか」
半ばお手上げという感情が表に出ていたのか。
そんな様子の私を見てクロがうーん、と唸る。
「けどこのまま8枚目に挑むのもなんとなく嫌な予感がするのよね……」
「それは直感ですか?――ええ、私も同意見です。ことこういう事に関して私達の勘は外れない」
二人揃ってため息をつく。
こんな答えの出ない議論を飽きることなく続けているのは私達が同じ様な感情を抱いているからだろうか。
正確に言えば畏怖と言う感情が近い。
目の前が真っ暗で何も見えないが、このまま進めばその先に何かとんでもない落とし穴があるのはわかるから足が控える。そんな感じだ。
「それじゃあさ、おねーちゃん」
「? 何ですか?」
「ママに聞いてみるって言うのはどうかな? ママは聖杯戦争を経験してるし私達よりも深く知ってるみたいだし。やっぱりクラスカードは7枚だけだったのかな?」
「は――?」
言っていることがよく分からず、変な声で聞き返す。
もう一度頭の中で今の言葉を反芻する。
結果は同じ。ということは、そういうことなのだろう。
「いえ……彼女に聞いても無駄でしょう。私やアイリスフィールの経験した聖杯戦争はクラスカード何てものは用いない。英霊の座から聖杯の魔力を通して直接本体の触覚として英霊を呼び出していましたから」
なぜクロの口からアイリスフィールという言葉が出てきたのか。
彼女が関わっていないことは明白だというのに。
「え――?」
さっきの私もこんな顔をしていたのだろうか。
トンチンカンなことを言ったクロは何を言っているのか理解出来ない、という風にきょとんとしたまま固まる。
そしてハッとすると同時に両手でテーブルをバン!と叩くと私に詰め寄る。
「ちょっと待っておねーちゃん。それ、どういうこと?」
「言葉の通りです。これは聖杯戦争ではない。少なくとも、この地で4度行われたそれとは全くの別物だ」
事実を述べる。
アイリスフィールと切嗣の話を聞く限りクラスカードなんてものを彼等は使ってはいない。
運命の分岐点が切嗣の心にあったから結末が違っただけで、根本は私の経験したそれと大差なかったはずだ。
「違う……そんな、そんな訳がない」
クロの顔が目に見えて青ざめていく。
私の言葉が信じられないと言うように。
「それは違うわ。これは聖杯戦争よ。だって、私の中の聖杯の機能は確実にこのクラスカードに引っ張られて機能してるんだもの……これが聖杯じゃなかったら一体何だって――っ!」
震える声で絞り出すとそのまま下を向いてブツブツと呟き出す。
次に顔を上げたクロの顔は信じられないという驚きと、それしかないという確信が入り混じったような、そんな2つの感情が見え隠れしていた。
「もしもよ、もしもだけど……幾つも連なる平行世界のどこかで聖杯戦争が行われていて、その舞台装置であるサーヴァントが何かの拍子に"他の世界"に送られてしまったとしたら……その戦いは場所を変えて続行されるんじゃないかな」
「ねえ、おねーちゃん。美遊はルヴィアの妹でもなんでもないのよね? 素性も知れない女の子。ただでさえこの法治国家でそんなみなしごが出てくるの自体不自然なのに、その娘が偶然ステッキを使いこなすほど魔術に適性を持ってるなんてありえるのかしら? この街の管理人である遠坂の目を子供ながら掻い潜って」
私は、何も言い返せなかった。
久し振りに文才の無さを嘆きました。
どうも、faker00です。
セイバーさんがいるならばクロのアイリ突撃やら、聖杯戦争関連諸々の話は一気に進むんじゃない? という事が今回の流れです。
ただ難易度が高かった……
いよいよ次回からツヴァイ編もラストバトルへ向かいます。
ついに奴の出番ということで作者もわくわくが止まりません。(だからこそ今回書きづらかったのか?笑)
そして唐突ですが大分前のアンケ、まだまだ募集しております!なにそれ?という方は活動報告へどうぞ!
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