Fate/kaleid saber   作:faker00

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そろそろUBW終わってしまう……無限の剣製カッコいいしみたいけど悲しくなってくる。
そしてプリヤヘルツ始まる前にこのツヴァイ編終わるか不安になってきた。


第19話 ブレイク

「何よ。なんであんた達まで残ってるのよ」

 

 クロの言葉は半分呆れ、半分困惑と言ったところだろうか。

 

 そうなるのも当然だ。

 彼女の姉が決死の思いで作った退却のチャンス。

 これに乗らなければ待っているのはまず死だろう。にも関わらずここに残るのはある意味自殺行為だ。

 なら自分は何をしているのかと問われれば口を噤むしかないが、それはそれである。少なくともまともな神経の持ち主が選べる選択肢ではないのだから。

 

「確認するまでもないでしょう。私の目的はあくまでカード回収だ。目の前に1枚でもあるのならそれを手にするのは当然です」

 

「私は少し違うのだが……恐らく撤退した所で結果は同じなのでな」

 

 が、目の前にいる二人にそんな常識は通用しないのか。

 綺礼とバゼットはこの危機的状況においてもいつも通りである。

 

「……? どういう意味?」

 

 クロは目を細めて無表情な綺礼を半ば睨むように見る。。

 別に2人がいつも通りなことではない。そんな事は気にかけるだけ意味がないだろう。

 人としての感覚などとうに壊れているであろうだけの修羅場を潜り抜けてきた戦士の精神構造など気にかけるだけ無駄というもの。

 それよりも気になったのは、少し自嘲気味にもとれるように呟いた綺礼の言葉だ。

 撤退した所で同じとはどういうことなのか。

 

「私は場に対する勘は鋭くてな。先の戦闘でこの空間は既に悲鳴を上げている。このままこいつがここにいればどうなるかは……わかるな? お前は勘が良い。それが分かっていたからこそ残ったと思っていたのだが」

 

「まさか……!」

 

 綺礼の言葉でクロはようやく感じていた違和感を理解した。

 元々戦闘時の彼女は現実主義者だ。と言うよりも勝手に現実という答えがが見えてしまう。だからこそ不合理、明らかに間違えっていると分かる選択肢は無意識のうちに自分から避ける節がある。

 その流れから行くと彼女こそ真っ先に撤退するはずだし、事実セイバーとほぼ同じタイミングで退くように周りに促していた。

 それなのだが、セイバーと8枚目の戦闘が激しくなるにつれその選択に対する確信が徐々に揺らぎ始め、最後には疑問になりこの場へクロを残らせた。

 ただの勘であったため彼女自身その理由を細かくは分かってはいなかったのだが、その理由が絡まっていた糸をほどくように解けていく。

 

「鏡面界は固有結界と同じであくまで現実世界とは別のもの……ならもしもそれが崩壊でもしたら……」

 

「そういうことだ。それが嫌ならばこいつはここで片付けるしかあるまい」   

 

 虚構には何も留まれない。必ず何処か実数世界へ弾かれる。そして辿り着く先は合わせ鏡のように存在する現実世界。

 つまり、セイバー達が撤退したその行き先だ。

 

「あんなんが外へ出たら一体どれだけの数の人間が犠牲になるのかしらね。街一つなんてもんじゃすまないだろうし……貴方達の秘匿の仕方によっては更に劇的に増えるんじゃない?」

 

「さあな。私にそんなものを決めるな権利など無い。たがお偉方の頭は私の拳などよりよっぽど堅い。想像通りの結果が出るだろうな」

 

「……あんたほんとに性格悪いわ。凛が毛嫌いするわけよ」

 

 肩をすくめる綺礼にクロは吐き捨てた。

 煮ても焼いても食えないような人間は稀に存在すると言うがそれは綺礼のような人のことを言うのだろうと

 

「とにかく今は私がどのような人間であるかどうかを議論するしている場合ではあるまい。それよりもだ――」

 

 綺礼は少しだけ緩んでいた口許を引き締めクロから視線を外す。

 そして次にその冷たい目が向いた先は先程とは打って変わって沈黙を守る8枚目。

 

「ええ、なに? おねーちゃんの時は嬉々として攻めてきたくせに……私達には関心もないと言わんばかりね」

 

 数十m先に見える威圧感と雰囲気自体は消えていない。

 しかしそれは今まで対峙していた騎士に向けていたものとは別物とクロは感じていた。

 

 今は何というか……そう、緩いのだ。

 たとえ喉元に剣を突き付けられていたところでお前には出来るわけがないと。絶対の自信を持つがための緩み。

 言うならば慢心というのが1番近くなるだろうか。

 こちらが殺意を持っていることは分かっていて、それでいてなんの脅威にもならないと捨て置いている。

 実力差があるのは確かなのだがこうも露骨だとイラッとする。そんな感じ。

 

「こちらをはるか高みから見下すような態度……任務の時は感情を殺すなんて初歩中の初歩の筈なのですがそれすら難しい」

 

 同意見なのか今にもその顔面を殴り飛ばすべく拳を握り締め飛び出しそうなバゼットが歯軋りしながら呟く。

 相当ご立腹なのか彼女から放たれる殺気は尋常ではない。

 もはや人の出せる領域を飛び越えたそれは、さながら獅子や豹のような鋭さを辺りに撒き散らしており、クロは思わず鳥肌が立つのを感じた。

 

「詳しい事はセイバーに聞けば良いだろう。奴が彼女に反応したように、彼女も奴に反応していた。そうでなければあんな出鱈目に対応できる訳がない。生前か、それとも聖杯戦争か、どちらかは知らぬが縁があるのは間違いない」

 

「――? 綺礼、あんた聖杯戦争のこと――」

 

「少しだけだがな。10年前、私も本来マスターとして参加するはずだったのだが……まあ今は置いておけ。とにかく今は――」

 

 そこまでで言葉を区切ると綺礼は一歩前へ出てバゼットの横へ並び同じように拳を握り8枚目に構え

 

「どんな理由かは知らんがせっかくあちらからくれたチャンスだ。これを活かさない手はあるまい。なにより、いつまでも手をこまねいている意味はないだろう?」

 

 そう抑揚も何もないまるで機械のように言った。

 

「――――」

 

 戦闘を見据えた途端にクロの頭の中で幾つものパターンが浮かんでは消えを繰り返す。

 相手はセイバーさえも一蹴した最強の英霊だ。

 生半可な手段では審議の必要もなく死のイメージというゴールへ直行してしまう。

 ありとあらゆる攻撃パターン、こちらの特性、相手の特性、更に現在の状況を絡み合わせ凡そ無限にすら思えてくる未来から最適解を引き出すべく全神経と勘を導入する。

 そして……

 

「粗は否定できないけどこれなら行けるかも……」

 

 ようやく一つの答えに彼女は辿り着いた。

 はっきり言って必勝を期すには不確定要素が多すぎて心許なく、いつものクロならば他の手段を再考する為にそのイメージにブレーキをかける程度の答え。

 しかし、あの相手を打倒するならリスクに構ってはいられない。

 

「何か思いついたのか? ならさっさと決めるぞ。奴はどうやら存在するだけで世界に影響を及ばすような化け物だ。あと数分もすればここは消え去る」

 

 顔を背けたまま綺礼が告げる。

 彼の言うとおりこの鏡面界の歪みは今や肉眼ですら分かるようになっていた。

 所々に不自然な裂け目ができ、そこからは何とも形容し難い不可思議な空間が顔をのぞかせている。

 その正体がなんなのかわかる人間は恐らく世界のどこにもいないだろう。

 

「任せて綺礼。1分もすれば片がつくわ」

 

 そんな不穏な言葉にクロはあくまで自信たっぷりにそう返した。

 実際の所内心では想定し切れていない粗とそれに対する不安が引き返せと叫んでいるのだがその声に耳をかたむける気がない以上、あるのは自信だけだ。

 

「綺礼、バゼット、私が合図したら前へ出て。守りは気にしなくていい」

 

 目を瞑り、集中して自分の内側からそのイメージを引きずり出す。

 兄がつくったそれは数秒で限界を迎えたが、自分ならばより精巧なそれを作り出せるはずだ。

 ポテンシャルで彼を上回るのは難しいにしても現状の投影魔術において負けるつもりは毛頭ない。

 

「トレース……オン……行って!!」

 

「む……!」

 

「なるほど……!」

 

 クロの意図を理解した2人がほぼ同じタイミングで飛び出す。

 それに対応するように8枚目の後ろの空間が歪み、数十の宝具が出現、そして真正面から突っ込んできたバゼットと綺礼を呑み込まん勢いで射出され――

 

「ロー……アイアス!!」

 

 彼らを覆うように出現した "七枚"の花弁によってその悉くが撃ち落とされた。

 

「グゥッ!!」

 

 単純な衝撃、そして自分の限界近くの能力を引き出したことによるフィードバックでクロの右腕から激痛が走る。

 彼女が投影したのはその兄がつい先程投影したのと全く同じ物。

 彼女の持ち得る最大の守り、アイアスの盾。

 それだけならば先の戦闘の焼き直し、ただひたすらに耐えるだけの戦いになっても不思議はないのだが……クロには勝算が3つあった。

 

「……いけるっ!!」

 

 ます1つ、アイアス自体の強度の違い。

 士郎のアイアスは不完全なものだった。本来七枚の筈の花弁は五つしかなく、その存在強度そのものがどことなく希薄なものであり、ある意味具現化した瞬間に崩壊の道を辿っていた。

 しかしクロのアイアスは違う。

 伝説とほぼ同じ姿を再現したそれは段違いの安定感と守備能力を実現し、雨あられと撃ち込まれる宝具の山にも対抗する。

 

「おっ……せえ!!」

 

 圧力に負けないように、全力で踏ん張りながら前進。

 特攻する綺礼とバゼットの前に盾を張り続けるために彼女自身も合わせて前へと進む。

 じりじりと、だが確かに距離が詰まっていく。

 それを見てクロは額に汗を滲ませながらニヤリと笑った。

 

「へえ……やっぱり私達には本気を出すつもりはないってわけ」

 

 これが2つ目の勝算。

 確かに盾の強度は上がった。しかしそれだけでどうにかなるほど本来8枚目の攻撃は甘くはない。なぜならば、単純にその攻撃の一つ一つがアイアスと同じく宝具に分類される。

 それが例え単調な射出であったとしても威力は全てが一級品。

 士郎のアイアスを破るまでの時間から計算してみれば、より完成形に近いクロのそれであってもせいぜい+数秒の時間を作るのが精一杯であり押し返すなど不可能……のはずなのだが彼女の目論見は当たった。

 

 その理由が、8枚目の慢心とも言える手抜き。

 賭けた彼女自身どういう訳かは知らないが、目の前の敵はセイバーを相手にした時に比べ露骨に手を抜いていた。その証拠に明らかに打ち付ける宝具の量は少なく、一つ一つの質も落ちている。

 それ故の反撃。

 

「――と言ってもそろそろ限界かな……」

 

 だがそれもあくまで8枚目の攻撃としては、と言う話。

 

 軋む腕と少しずつひび割れ始めた盾にもう一度渾身の力で魔力を注ぎ込みながらクロは舌打ちした。

 ここまでは予定通りに来ているが、この守りはもう保たない。

 それだけ前進に使ったエネルギーは大きく、今の彼女の腕からは鮮血が飛び散り始め、外からは見えないものの魔力回路は焼ききれんばかりの勢いで回転していた。

 

「けど……あともうちょい……!」

 

 クロは歯を食いしばり更にスピードを上げる。

 壊れる事は分かっている。無傷でどうにか出来るほど甘い相手ではないのは想定のうちだ。

 だが、勝機を見出す為には一歩でも前へ進まなくては――

 

「ああ……!」

 

「あとは任せたまえ」

 

 そうして限界を迎える本当にぎりぎりのタイミングで、彼女の限界を察したかのように2人が自ら守りの外側へと飛び出した。 

 

「え――? やばっ!」

 

 突然守るべき対象を失ったことで揺らぎが生じ、一瞬で盾が霧散する。

 クロはすぐに方向展開し上空へ飛び上がり宝具の射程圏外へと逃れた。

 

「何考えてるのよバカ綺礼!! まだその距離じゃ!」

 

 ――届かない

 

 そう分かっていたからこそ踏ん張っていたのにとクロは叫んだ。

 まだ8枚目と3人の間には10mは距離があった。

 上はビルの建築に使われる足場やら階段やらで身を隠す場所もあるものの、平面で見れば遮蔽物なんてものは無い。

 彼女の狙いは綺礼とバゼットが宝具の射出よりも早く8枚目に辿り着ける距離まで接近することだった。

 一撃でも当たれば致命傷な以上無傷で決めるしかない。

 その為には相手に攻撃させないことが第一条件だったのだ。

 だというのに彼等が飛び出した場所はまだ遠すぎる。これではいくら常人離れした瞬発力を持っていようと、光の速さで駆けることは出来ない。

 

 事実として、彼等と8枚目との間には外敵を殲滅せんと宝具のカーテンが敷き詰められ……

 

「バゼット」

 

「はあ……相変わらず人使いの荒い……」

 

「え……ちょっと、嘘でしょ!?」

 

 1つ残らず、スッと前へ出たバゼット一人(・・・・・・)へと降り注いだ。

 

「――!!」

 

 そのあまりの酷さにクロは思わず目を背けた。

 後ろ向きに倒れようとするバゼットから噴き出した血は例えるならば噴水だ。10か20か、正確な数は分からないがその全てが正面から突き刺さり肉を抉ったのだ。

 どう考えても生きてはいられない。

 

「よくやった。後は私がやる」

 

 そして無機質な声で再び視線を戻す。

 倒れる彼女になんの感慨もないのか、顔色1つ変えずに綺礼がその後ろから飛び出した。

 

 目の前に、彼と8枚目を隔てるものは何もない。

 

「あいつ――」

 

 そこでクロは綺礼の狙いを悟った。

 彼は最初からバゼットを犠牲にすることを前提に彼女の案に乗ったのだ。

 そしてそのやり方が正しいどうかは別として、その狙いは元々彼女が狙っていた通りの結果に近い形で成就しようとしていた。

 

 ゼロ距離での接近戦、相手の特性からすれば果てしなく無謀に見えるそれがクロの立てた勝利への小さな道筋。

 

「――――!!」

 

 相手も想定外の生存で形勢の逆転に気付いたのか、焦ったようにセイバーの相手をした時と同等の量の宝具を空中に出現させる。

 しかし――

 

「遅い。本人はこんなものか」

 

 懐にもぐり込まれては放つ事など出来ない。それをしてしまえば自分自身もただですまないから。

 

「――!」

 

 8枚目が急いで手元に剣を取り出す。

 そのままの勢いで一閃するが、焦りから単調になったその剣を綺礼はやすやすと掻い潜る。

 

「さらばだ。名も知らぬ英雄よ。自らの財の海へその屍を沈ませるがいい」

 

 拳が腹へとめり込む。

 クロが見出した第三の勝機。それが8枚目自身の戦闘能力。

 世の中何でも表と裏がある。善意の裏に潜む悪意、優しさの裏に隠れる臆病、それこそどんなものにもだ。

 それと同じように、多彩な武具を持つ英雄は純粋な本人の力量に劣る傾向がある。

 だがあくまでそれは傾向であり、例外はいくらでもある。本来賭けに出れるようなものではない。

 しかし、8枚目の宝具はあまりに飛び抜けていた。自らが戦う必要がないほどに。だからこそ信じることが出来たのだ。

 無論、信じる以外に選択肢が無かったのが一番の要因だが。

 

「――これか!」

 

 何かを見つけたのか綺礼が手を引き抜く。

 その手には最初は無かったはずの何かが握られていた。

 

 そしてそれを確認すると目へ魔力を注ぎ視力を上げたクロはその手の中の何かを見て驚愕した。

 

「アー……チャー……?」

  

 

 

 

 

 

 

 




どうもです!

これ絶対ubw使う流れですわ。ufoの映像美に心揺さぶられる作者です。

幸せな3か月が終わってしまうなー。この作品もだいたい同じくらいに生まれた訳ですがえらい密度の違いだ笑

とにかく、自分なりに最終局面突っ走ります。いよいよAUO戦も佳境へ。

それではまた! 評価、感想、お気に入り登録じゃんじゃんお待ちしております!
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