「セイバー、ちょっとこっち来て」
「――? なんでしょうか、リン」
リンが私を小声で呼びちょいちょいと手招きしたのは、エインズワース城から帰還後彼女の一言で
「とりあえずお茶でも飲みましょうか。話はその後」
と言って重たい空気に僅かな風穴を開けた直後の事だった。
彼女は人見知りをして目立たないように声を落とすような人間ではない。
となれば理由は1つ。何かしら聞かれたくないことがあるという事だ。
そう結論付けて席を立ちキッチンの奥へいる彼女の元へと向かう。
「あの娘、どっちとして扱えばいいのかしら?」
「あの娘……? ああ、イリヤのことですか」
「そ、私の世界のイリヤスフィールは……何というか子供と大人が同居してるような子だったじゃない? けどあの娘は……」
柄でも無くこっそりと物陰からイリヤを覗き見るリン。
当のイリヤはというとあれから一言も発していない。
今も掛けられるがままに掛けられた毛布に包まり、ソファーに座り込んだままずっと下を向いている。
その表情は見ることができないが、芳しくないものであるのだけは確かだ。
……正直なところ私にはどうしたら良いものなのか分からない。
「普通の少女……出来れば年の離れた妹のような扱いをしてあげてください。こちらのイリヤは紛れもなく一般的な少女ですから――あ、リン特有のハッパはだめですよ。シロウだからこそ上手く糧に出来ていましたが、彼女にそれをしては心が壊れてしまう」
「するか! 全く、貴女は私を一体何だと思ってるのよ……了解。その方がよっぽどやりやすいわ。私、意外と子供好きみたいだから」
エプロンを巻いたままグッと親指を立てるリン。
ココアにするべきかオレンジジュースにすべきか迷っていたようだがオレンジジュースを並々グラスに注ぐとそれを持ちイリヤの方へと向かっていく。
どうも心配なので私も後ろから様子を伺うことにしましょう。
「大丈夫? お腹減ったりしてない?」
「あ、凛さ……えーと……」
「凛で良いわよ。貴女の知ってる私とここにいる私は確かに別人だけど、遠坂凛であることに変わりはないんだから――はい、オレンジジュース。甘い方がいいでしょ?」
「ありがとう、凛さん」
イリヤは両膝をついて視線の高さを合わせたリンからグラスを受け取るとちびちびと中身を飲む。
そこでようやく顔が見えたのだが、先の戦闘でついたのであろう傷と――恐らくそれ以前からの――泣きはらしたためだろうか真っ赤に腫れた目とが重なって酷いものであった。
リンはそれを見てとてもいたたまれないような目になる。
――私も同じだ。幼子のこんな顔を見るのは心が痛い。
無力さに拳を握る。私にもっと力があったならば、あそこで撤退などしなかった筈だ。更に元を辿ればあの時シロウと美遊を連れ去らせたりなどしなかったというのに。
「私は――」
オレンジジュースを飲み干すとようやく少し落ち着いたのかポツリポツリとイリヤが口を開く。
「どうしたの?」
「私は――美遊もお兄ちゃんも助けられなかった! せっかくあと1歩のところまで行ったのに! あと……あと少しだったのに!」
それは、慟哭だった。一人の少女では抱えきることの出来るはずのない孤独と、突き付けられた現実。それを一筋の希望を頼りに必死に抑え込んで前へ進み、その糸さえ断ち切られ何もかもを見失った者の叫びだ。
私には、痛いほどわかる。
自責の念と自らの無力さから拳を握りしめた。
「イリヤ」
「ふぇ――?」
彼女の嘆きが続く中、ガチャンという音が部屋に鳴り響いた。
それに合わせて顔を上げると、自分のカップを地面に捨てたリンがイリヤの全身を包むように抱きしめていた。
「凛さ――」
「よーしよし、辛かったわねー……もう大丈夫だから」
「――――!!」
一瞬だけビクッと身体を震わせたイリヤだがリンは構うことなくその頭を撫でるとそのまま身体ごと引き寄せる。
そんな彼女にイリヤも次第に身体を預けた。
「大丈夫。貴女のお兄ちゃんも、美遊ちゃん? もちゃんと皆助けて元の世界に戻してあげるから……お姉ちゃんが約束してあげる。
もう誰も貴女を一人になんかしないし、一人に荷物を背負わせたりしない。
だから今は泣いていい。全部……私が受け止めてあげるから」
「凛さぁん……! 私――私!!」
「杞憂だったようですね」
時は人を変えるとは良く言ったものだ。
優秀な魔術師であり、何でも出来た彼女だからこそかつては少しばかり普通の少女に比べると感情の機敏に疎い――彼女が強い、己のコントロールに優れていたからこそであるのだが――というか弱者の気持ちを理解しようとするものの仕切れずに不本意なすれ違いを生み出してしまいそうな危うさを感じていたものだが、目の前にいるのは正に淑女であった。
全てをさらけ出し泣きじゃくるイリヤを優しく受け止めるリンを見ながらそんな感傷にひたった。
「むむむ……私の知ってる凛さんもいずれこんな風になるんですかねえ……? なんか100年経っても無理な気がするんですけど」
「彼女ならばだいじょ――って何やってるんですかルビー。もしもここで邪魔を入れたら――」
「流石にそんなことはしませんよー――イリヤさんをあそこまで追い詰めてしまったのは私の責任でもあります。今は全てこちらの凛さんに任せましょう」
神出鬼没。いつものように知らぬ間に私の横へと表れたルビーですら同じように黙ってその光景を見つめていた。
「――寝ちゃったか。まあそれもそうよねー……こんなの普通の女の子じゃ絶対に耐えられない。同い年の頃の私だったらどうなるかと思うとぞっとするわ」
「お見事です、リン」
数分後、次第にイリヤの声は小さくなり、次第に安らかな寝息へと変わっていた。
私の賛辞にリンはやめてよ、と僅かに赤面すると眠ってしまったイリヤを抱っこして立ち上がる。
「ベットで寝かせてくるわ。だいたいの事は掴めたし。戻ってきたら作戦会議よ」
そう言うとイリヤを起こさないように静かに扉を開け部屋を出る。最後に見えたその目は、私の知る魔術師でありマスターの遠坂凛に戻っていた。
―――――
「結論から言うと敵の総本山はあそこで間違いないみたいね。そして連れ去られた私の世界の士郎とイリヤのお兄ちゃんの士郎、そして友達の美遊ちゃんもそこにいる」
イリヤを寝かしつけて帰ってきたリンは開口一番にそう核心をついた。
先ほどまでとは違うピリピリした空気の中私と彼女は席につき、ルビーもの真ん中にふよふよと浮かぶ。
意外なことにリンはルビーの登場にも驚いた様子を見せなかったが、なにか向こうでおぼえがあるのだろうか。
「そうなります。私の探知機能は妨害されていたのか当てにならかったですけど、カメラ&ズーム機能は生きていてなんとか見えましたよー」
視認というのは最も古典的かつ、有効な識別の1つだ。
それができているのならもう確定と言ってもいいだろう。
「ただ――もう一人奥にいたみたいなんですけどその人は確認できなくて……申し訳ないです」
「もう一人……? リン、貴女に心覚えは?」
「ないわね。あの時大空洞にいたのは私と士郎と先生だけよ」
「こちらもです。となるとその人物は――」
「まあそこは気にしなくていいんじゃない? 助けるべき人なら一緒に助ける。違うなら放っておく。それでいいわ」
それなりに気になるよう情報ではあるのだがリンはバッサリと打ち切る。
確かに趣旨を考えるとそれはそれでありなのかもしれないが、何となく気にかかった。
「とにかく当面の問題は戦力の確保ね。こっちの最大戦力であるセイバーと士郎を完封出来るのが1人とサーヴァント能力を使役するのが分かっているだけでも2人。
実質最低でもサーヴァントを3……いや、4騎以上相手にするのと変わらない。これは」
「――そんなもんじゃないよ、残念ながらね」
「ギル?」
リンの戦力分析に頭を痛めていると、冷たい声が私達に注がれる。
その声の方向を見てみれば、ロードと共に田中さんの面倒を見ていたギルが部屋に入りドアを閉めるところだった。
「田中さんは大丈夫なのですか?」
「うん。体調は大丈夫、寝てるだけみたい。けどちょっとばかり問題が――まあそれはおいおい彼が説明してくれるはずだから今は置いておこうか」
――どうも歯切れが悪いですね。
どこまでも饒舌なはずのギルが微妙な態度を取るとは珍しい。
「で、どういうことよギル。今の不穏な言葉は」
「言葉の通りですよリンさん。あなたの見立ては甘すぎる」
当然のように上座に座るギル。そんな不遜な態度をリンは何も咎めることはない。
と言うよりもこの二人、やけに相性が良い。
ロードともそうなのだが、それとはまた少しベクトルの違うものだ。
「サーヴァントクラスが二人と言ってもその二人の間には大きな差があると言うことです。
最強の財を持つ王とただの雑種では同じ英霊でも格の差がある――そうですね。セイバーさんと打ち合ったベアトリスを1とするならば、僕の財を盗んだアンジェリカは3だ。
ほら、これでもう4人分でしょ?」
「3人分!? 何言ってんのよあんた! そんな英雄いるわけが――」
「世界にはいるんですよ。常識なんて枠にに囚われない傑物が……それが僕、英雄王ギルガメッシュです。セイバーさんはよく知っているだろうけど」
その不遜な言葉にムッとしたようにリンがジロリとこちらを見る。
ここでスパッと一刀両断できるなら、彼女の溜飲は下がる筈なのですが……
「ええ、残念ながら。3人かどうかは知りませんが確かに彼の力は普通の英霊とは一線を画している」
リンは溜め息をつく。
「何でもかんでも好き放題に宝具の原典を持ち出して攻撃する……まあ規格外よね。じゃあ何かしら? ボスはそれ以上と考えたら相手の戦力はサーヴァント7騎分以上は確実、要するに聖杯戦争そのものを相手にするよりも難しいって言いたいの、あんたは」
「ハハッ! その通りだとも! いやあ、なかなか良い表現をしますねリンさんは。ますます気に入りました」
半ばやけ気味に言い放つリンの言葉にギルはどこが惹かれたのか大声で笑う。
それと反比例するようにリンのしかめっ面が見る見るひどくなっているように見えるのは気のせいだろうか。
「それに対して私達の戦力はセイバーさんとイリヤさんを最高にしてサーヴァント換算すると精々3騎分が良いところですかねー。圧倒的不利ってやつです」
「バゼットや言峰、それにクロがいればもう少しはましになるのでしょうが」
話題を変えたルビーの言葉に冬木以降合っていない顔が頭を過る。
皆無事でいるといいのですが。
「とりあえず戦力補強は必須な訳だ。で、そんな皆さんに朗報があるんだけど――」
待ってましたとばかりにニヤリと笑うギルだがそこで言葉を区切る。
「ちょっとだけ待とうか。そろそろ悩める先生のお出ましだからね」
「先生?」
首を傾げると同時に再び扉が開く。
「すまない。少し遅れたようだな」
ロードは頭を下げると私達に歩み寄る。
「アインツベルンの娘は?」
「寝かしつけました。なに聞きたいことがあるのでしたら起きてからにして下さい」
「そうか。ならば仕方ないか――ではお前たちにだけでも話しておこうか」
そう言うと深刻そうな表情で席につく。
そして彼が次に放った言葉はその表情に違いないものだった。
「あの田中という少女はイリヤスフィールが気がついた時には一緒にいたと言う話だが――彼女は一体何者だ? 少なくとも人間ではない。言うなれば超高密度の魔術炉だ。それこそ聖杯クラスのな」
どうもです!
ゲームリリース当日以来の課金、いってもどちらも3000円ですが。に挑んで10連引いてきたfakerです。
せっかくなので今回はその報告を。
まずTwitterなどの報告例から聖遺物を用意したほうが良いということで今回はホロウコミック1巻 UBWコミックアラカルト鋼の章 UBWコミックアンソロジーの3冊を用意。右手にはコンビニで買ってきたグーグルプレイカードを握りしめる。
他にもzero小説などもあったのですが、下手に使用してもしも旦那なんかが出てきたら僕のライフがzeroになるので今回は見送りました笑
そして万端の準備を行い運命の10連――
リアルタイムテンションでお送りします。
1発目前 ――f「こい、セイバァァァ!!」――とりあえず叫んどく。
1発目……石油王 f「概念だけどnew☆4きたぁ!! 出だし悪くないんちゃう!?」――既に発狂気味
2発目……ガンド f「聖遺物マジでワロタww いやまて、☆4が2枚って初じゃね?」――既に興奮しております
3発目……………… 遂にサバ出現を表すカード。枠は……セイバー(金)!! f「きたぁぁ!! いやまて、しかしこれでデオンちゃん二枚目の可能性もある。下手に喜んでは宝具を使えない苦しみが……!」――携帯握りしめ祈る。なんとかしてまともな宝具のセイバーよこい!!
そして現れたそのサーヴァントは――セ イ バ ー オ ル タ f「ん……?(目こする) えーと(もっかい)……マジできやがった!?!? オルタ!? 念願の対軍宝具きたぁぁ!!」――狂喜乱舞
なんと! 聖遺物使ったら現状最強宝具と誉れ高い黒聖剣使いのオルタさんが来てくれました!! そして石油王が被り☆4は計4枚!
槍兄貴との相性もバッチリ(クラス的にも宝具的にも)な彼女の出現は正に奇跡と言って差し支えないレベル!!
と言う訳で暫くは貢いである程度のレベルに達したらリーダーに据えます。
皆さん良かったら使ってあげてください!!フレ申請はまだ受け付けておりますので感想にでも!!
以上、テンション上がりすぎたfgoガチャレポートでした!!(しれっと兄貴とけーかさんも被り即死二人の宝具がレベル2に進化しました)
それではまた!評価、感想、お気に入り登録じゃんじゃんお待ちしております!!
ps皆さん、ガチャるときには聖遺物を用意しましょう(迫真)