と言うわけで書き上げました最新話!!
アニメを待つ間にでもお読みください!!!!
「えーと……これで良いのでしょうか?」
「はい。アルトリアさんはパソコンは初めてで?」
「本当に片田舎で自然と過ごす生活を送っていたものですから……ありがとうございます。」
「いえいえ。それでは私はリビングにいますから何かあったら声をかけてくださいね。」
それでは、と背を向けて歩いていくエプロン姿のセラにもう一度謝意を述べると顔だけこちらに向けてニコッと会釈し、今度こそ部屋のドアを開けて去っていく。
パタパタと去っていく足音を聞いた後私も席を立ち、扉が閉まっているのを確認するとカチャリ、と鍵を回した。
「さて……」
再び席に座り、それと向かい合う。
ゴクンっとつばを飲み込む。チカチカと発光し何やらウィーンという音をたてているそれは先日のキャスター以上に手ごわく見えた。
しかし、これを使いこなすことが出来れば私にとって大きな力になるに違いない。
覚悟を決めなければ。
「おっと、その前にこれをつけなければいけませんね」
そこで机の隅に置かれたものに気づく。
あまり近づけすぎると目が悪くなるからこれを、とセラに渡された縁の細いメガネだ。
それをかけると少し視界が鮮明になった気がした。
おおっ、と思ったが逆に考えて見れば対峙するこいつはそれだけ目に負担をかける、とも言える。直前で間に合ったとはいえ1つの判断が致命傷になりかねない。
気をつけなければいけない。
私は一層の集中を自らに求めた。
「……」
手の動きが鈍い……それどころか中途半端に伸ばされたそれは空中で行き場を失っている。最初の作業は聞いている。単純かつ明快。至極簡単な事だ。今までの戦いに比べれば造作もない。
だというのにこのプレッシャーはなんだ!?
まるで締め付けられているかのような圧迫感。ジワッと手に汗をかいているのを感じる。腕は震え、手元を狂わせんばかりにばたつく。
--おもしろい。それは王に対する挑戦と見ていいのだな?
それを見て、深くにある闘争心に火がついた。
ここまで表立って反骨する相手は久しぶりだ。それも本来味方であり部下であるような存在であるものにされたならば尚更だ。
この縦横数十cm、奥行き数cmの機械仕掛け、必ず攻略してみせる。
一度座る座席の背もたれに深くもたれかかり深呼吸。
抑えつける。震えなど心で制することができるもの。
それが出来ないのは恐れ、気圧されているからだ。王たる私にそれは許されない。
心をおちつけると身体の主導権が戻る。
--いま!
目を開く、上体を戻すとその勢いで手を伸ばす。我に開けない道なし。
そもそもこれは切嗣も、セラも、それどころかイリヤスフィールでさえも自然に使っていたものだ。
私が無理な道理はどこにもない!
「やった……!」
内で爆発した歓喜の声が外にも小さく漏れた。
手に初めて感じる感触。手で包むようにつかむとまるでその扱いを知っていたかのように自然と人差し指はそれを押しカチッという音を響かせる。
無機質な青一色だった画面がその形を変える。
長い日々の中でもこれほどまでに一度で多大な成果を上げたことは数えられる程度だろうという満足感が私を占める
検索サイト、今ここにアーサー・ペンドラゴンは現代の情報を入手する手段を手にしたのだ。
「やはり……この世界は……」
どれだけ時間が過ぎたかわからない。予想通りの答えに私は天を仰いだ。
目の前の画面を見れば私の知りたかったことに対するインターネット……世界を繋ぐ電子の海からの回答が示されている。
例え数百万の間諜を張り巡らせたところでこの大海から導き出される答え以上のものを得ることは不可能だろう。逆に言えば、ここに示されないということはその事実はなかったということ。
もう一度画面をむーっと睨む。分かってはいたがそこに誤字などはない。
【10年前 冬木 大火災】
それが私の知りたかったこと。かつての聖杯戦争で残した消えることのない爪痕。
--あれだけの火災、隠せる訳がない。そもそもこの世界に聖杯戦争はないのか?
その問いに自答するなら答えはイエスだ。この世界軸の聖杯戦争は間桐、アインツベルン、遠坂の3家が揃い踏みしなければ始まらない。
しかし間桐はまだ不明にしてもアインツベルンと遠坂が関与している様子は全くない。
これではあの戦いは起こらない。
「さて……となると次は--」
「なーにしてるのー?」
不意に後ろから声がかかる。
「リ、リズ!?いつの間に」
「ついさっきー」
想定外の出来事に通常以上に驚いたこともあったのか自分でもびっくりするような速度で椅子ごとクルッと回転して後ろを見る。
アイスを舐めながらジーっとこちらを興味深そうにこちらを覗き込む大きな瞳、いつものように短いレギンスにタンクトップという見る者が見れば扇情的に見える格好のリズがいた。
--セラと違ってなんというか掴み所がないんですよね……
常にダラダラ、のんびり。
この女性を表すならこの言葉が一番しっくりくるだろうし周りもそう思っているだろうし私もそう思う。
しかしそれだけではない気がする。時々不意に目があったりすると全てを見透かされているような……そんな不思議な人物がリズなのだ。
「その前に鍵は…‥」
「閉まってる鍵を見ると開けたくなる……ブイッ」
根本的な疑問を述べるがそんなものは彼女には意味がないらしい。
目の前で誇らしげにVサインを作る彼女に頭痛に近いものを感じる。
そもそも鍵を閉めるということは見られたくないからそうするわけなのですが……言ってわかるタイプでもないのでしょう。
諦めの感情が支配する。その瞬間を侵入者は見逃さなかった。
「これなーに?……冬木の災害?」
「こ、こら!」
スルッと入り込まれる。
まずい。こんなもの、不自然にもほどがある。追求されれば相当にめんどくさいことになりかねない!
頭をフル回転させる。何とかして誤魔化さなければ今後に差し支えるのは目に見えているから必死だ。
「ふーん、つまんなそうだからいーやー」
「え?」
私の緊張とは裏腹にリズの対応は淡白なものだった。
言葉通り興味を失ったのかパソコンから離れるとピョーン なんて声と共にベットへと倒れ込む。
あの……一体なにがしたいのでしょうかあなたは?
「報告。イリヤ、今日は美遊の家に行くって」
「あの、それがどうしたと……」
「それだけ、じゃ、また」
私の止める声など意に介さず立ち上がったリズは部屋を去っていく。
なんというかとんでもなく疲れましたね……
今日はもう良いかとパソコンの電源を落とし先程リズが倒れ込んだため若干温かいベッドに座る。
これはかつてアイリスフィールが使っていたものらしいですし綺麗に使わないといけないですね。この世界の彼女はまだ存命のようですし。
「それにしても」
聞き流してしまったがイリヤが美遊の家に行くっというのは気になることだ。
単純に遊びに行ったという可能性もないことはないがそれよりもクラスカード絡みの可能性のほうが高い。
--ならどうして私も呼んでくれないのでしょうか……
なんとなく感じた疎外感。
ええ、意外と寂しいものですね。
時計を見ると7時前。士郎は今日遅くなるからご飯は先にみんなで食べておいてくれと言っていた。
となるとそろそろ良い頃合いでしょう。
背伸びをしてから部屋を出る。そうして廊下に出たところでそれはきた。
「--!」
直感に近い感覚。
具体的にどう、と説明することは難しい。
それを感じたとたん私は走り出した。
「セラ!少し出てきます!夕食は先に済ませておいてください!」
「え!あっアルトリアさん!?」
台所で食事の支度をするセラに声をかけるとそのまま玄関から外へ裸足のままでる。
どうせ転身すれば吹き飛んでしまうのだからこだわる必要もないだろう。
「ここならいいでしょう」
屋上に飛び移る。
誰も見ていないことを確認するといつものように青と銀の甲冑を呼び出す。
もしもリズがいなければこの感覚の正体に気付くのは遅れたかもしれない。それを考えるとどうせ気まぐれのあの不可解な行動にも感謝しなければならない
「イリヤスフィール、凛!」
屋上から屋上へと飛ぶ。
夜の森へ向かって駆ける。
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「ここか……!」
周りとは一線を画す雰囲気の場所を見つけるのはたやすかった。
これは私の力だけではなくクラスカードというものの効果もあるのだろう。
これほど遠くの魔力察知をできるほど私は器用ではない。
--入り方も何となくですがわかりますね。
中では戦闘が行われている可能性もあるので逸っていた気持ちがそれで少し落ち着いた。
そして触れる。それだけで反転する世界は私をすんなりと受け入れた。
「まずい……!」
飛び込んでみればそこにあるのは最悪の光景。
正規のアサシンを相手に自らには遮蔽物がなく、相手にはあるという場所で戦闘するなど愚の骨頂だ。
しかしどう誘い込まれたのかまでは私に知る由はないが4人はその状況に追い込まれ更に1人は詰めの段階に入っている。
それが状況を見た私の出した結論。何故か放り出されたのは空中だ。
彼女達までの距離は縦に7,8m、横に30mと言ったところか
--間に合う!
1人倒れ込み自衛の手段を失っているのはイリヤスフィールだろう。その彼女に向けられる無数の短剣
いかに私が速かろうと彼女を救い出すことは不可能に近い。
だが、それよりも遙かに早い突風ならどうだ。
「風よ!」
聖剣を不可視たらしめている 風、を開放する。
普段、超高密度で逆巻くことによって剣の周りを埋めるそれは光すら曲げる。
それだけの質量を開放すれば一度のみだが必殺の威力をもつ疾風となる!
「
風が吹く。秒速mに直すと優に3桁に届くであろう速度で瞬時に到達した疾風はほぼ同じタイミングで投げられたはずの短剣よりも早くイリヤにたどり着き、短剣の悉くを跳ね返した。
「凛!」
「え? セイバー? じゃあ今のは……」
風から遅れること数秒、地面に降り立つとそのまま駆け寄る。
なにが起こったのか分かる間もなく茂みに吹き飛ばされ焦る凛だが私を見ると安心したように立ち上がる。
「私の剣を少しですが開放しました……皆さん怪我は?」
「私は問題ないわ」
「わたくしもですわ」
「……大丈夫です」
ルヴィアと美遊もまた巻き添えを食らい別の方向へと飛ばされていたが大事件と多少飛ばされはしたもの目立った傷外傷もなく本人達も大丈夫だと手を挙げると此方へ歩み寄ってくる。
「セイバー、あなたどうして……」
「今は後です。あれはアサシン。百の貌のハサン。個々の戦力は大したことはないですが集団でこられると厄介です。イリヤスフィール!」
不意を突いたことで吹き飛んだだろうが致命傷にはなり得ない。
相手が体制を整える前にこちらが準備を整えなければならない。
「----」
「ん……?」
私の声に反応したイリヤスフィールが立ち上がりこちらを向く。
しかしその姿に大きな違和感を感じる。確かにあれはイリヤスフィールだ。姿、形、間違いない。ならこの感じはなんだ?
--目が違う
そう思うと堰を切ったように違和感の正体が頭から流れ出す。
--待て、他の3人は巻き添えを食らっただけでも吹き飛んだ風王鉄槌を受けてその場にとどまっていられる?
彼女は見てはいなかった。耐えられるはずがない。
--なぜ、転身が解けているのにあれだけの魔力を保っている?
変わらない、と思ったのがそもそも可笑しいのだ。イリヤスフィールは普通の少女のはず。その彼女が魔力を帯びていること自体が既に異常だというのに!
悪寒が走る。これは、悪い方の直感。何となくだがわかってしまった。
「イリヤ!」
「ダメだ凛!彼女は!!」
イリヤスフィールとは別の何かだと
強引に引き止める。
いち早く回復したハサンの1人がイリヤスフィールに飛びかかろうとする映像が目の前に広がっている。
それでも……行けば死ぬと分かっていて行かせるわけにはいかない。
「----……」
「皆伏せて!!」
叫ぶ。その時には何となく程度の違和感は感じていたのか私の警告に対してルヴィアゼリッタと美遊の反応は早かった。
それを確認すると凛を抱きかかえて私も伏せる。
その刹那、私の目に駆ける天馬と蹂躙される無数の人影が映った。
「なによこれ……」
「正確にはわかりません。ですが……これが彼女の宝具の威力だと言うことは」
「彼女!?まさかこれをやったのがイリヤだって言うの!?」
「残念ながら」
立ち上がると凛が取り乱したように私にそう怒鳴る。
なかなか理不尽ではあるがこうなってしまうのもまあ仕方ないことではある。
私とて声こそ挙げはしないがこの光景に少しの動揺もないと言えば嘘になる。
「森が全方位少しずつ広がっているってどういうことよ……」
「信じられないことですが……恐らくイリヤスフィールがアサシンを一掃した際に巻き込まれたのでしょう。アサシンの気配がありません。それに……ほら、正面だけ更地になっている範囲が他の倍以上です」
「嘘……いったいどうなって……」
「直ぐにわかります--きます」
「なっーー」
今や広場は広がり直径50mを上回る広さに拡張していた。
その外縁10m程度は不自然な程にまっさらになっている。
私と凛はだいたいその縁から5,6m内側に入った位置にいて、気を失って倒れているルヴィアゼリッタと美遊は中心を挟んで同じような距離感の所に倒れている。
そして……その中心に彼女は舞い降りた。
「イリ……ヤ……?」
凛が言葉を失う。
降りてきたのはもちろんというかイリヤスフィールだ。そこに疑問もなにもない。
しかしそれだけだ、他は全く違う。
充満する魔力は人としての常識を飛び越え英雄の領域に片足を突っ込んでいる。そしてその姿は凛も、そして私も見たことがあるものになっていた。
「なんで……なんでライダーの姿をしてるのよ!」
真っ黒な服装と手にもつ鎖。髪の毛も心なしか紫色に変わっているように見えた。
「----」
--来るか!
イリヤスフィールがこちらを見る。
その目にあるのは純粋な殺意。
叩きつけられるように向けられるそれに凛の一歩前に立つ。
「----」
「え……?」
しかし次の一手は予想外のものだった。
イリヤスフィールは転身を解き再び彼女本来の私服へと戻ったのだ。
--さすがに宝具を使って魔力が切れたか?
宝具の使用は基本的に魔力を根こそぎ持って行くというリスクを伴う。故に一度使えば次はない。
ならあのイリヤスフィールが魔力切れを起こした可能性は充分にある……そんな希望的観測を抱くがその期待は一瞬にして裏切られた。
「まさか……」
元に戻ったイリヤスフィールだがそのスカートの裾から何かを取り出す。
その正体を見て顔から血の気が引いた。
何故ならそれは
「もう一枚……だと!?」
「--クラスカード、ランサー
ライダーとは別の、クラスカード。
イリヤスフィールはまたも姿を変える。
その姿は私にとってライダー以上に見知ったもの。
アイルランドの大英雄、光の皇子クーフーリーン
全身を青に包み、その手に持たれる赤い魔槍ゲイ・ボルクを武器に数々の戦いを制した正に神速の英霊。イリヤスフィールの姿は彼を彷彿とさせるものになっていた。
--魔力切れなどなんと都合のいい考えを
奥歯を噛む。
それとは真逆だ。彼女は戦意に溢れている。
対多数となればライダーのほうが優れているかもしれないがこと単騎戦においてランサー以上に優れる者はいない。
アサシンの殲滅を確認し、さらに確実に私達をしとめるための戦術的変更……!
「----!!」
呪いの赤槍を持ったイリヤスフィールが構える。
その構えは獲物をしとめる前の獣そのものだ。一瞬でも目を離せば、私の命は食い荒らされるだろう
「凛……」
「なに?」
後ろにいる凛に声をかける。
彼女にはこれからやってもらわなければいけないことがある。
「イリヤスフィールは私がなんとかします。その間に凛は美遊とルヴィアゼリッタを回収して撤退を」
「でも!」
躊躇うような声がする。
心配してくれているのか。
これだけ強大な相手に1人立ち向かうと言えばそういう反応になるのは必然だろう。
しかし、それこそが間違いだ。前提が違っている。
「凛、勘違いしないでください。何もあなた達を庇おうと言っているわけではありません。 あなた達を守って戦いきる余裕がないから言っているのです」
厳しい言い方になってしまうがこれが現実。
この相手とはそれこそ常に100%でなければ闘えない。そこに守るべき対象がいてもそんなものに気を配る余裕はないのだ。
「……!分かった。頼むわよ、セイバー」
その意味を察したのか凛は了承する。その声は覚悟を決めたと言わんばかりに強いもの。
--やはり凛は強い。いま立っているのが彼女で良かった
心の底からそう思う。
この状況を分かったとしても割り切れずに二の足を踏む人間はいくらでもいる。
だが刻々とその時が迫っている今その決断を待つ時間はない。
今必要なのは、冷徹なまでの決断力。
世界は違えど遠坂凛はそれを当たり前のように備えていた。
「ええ。この剣にかけて。イリヤスフィールを必ず取り戻すことを誓いましょう……あと数秒もすれば彼女は私に向かってくる。正面から迎え撃つのでその間に外から回ってください」
「了解……セイバー、死なないでね」
「貴女もご武運を、凛」
それを最後に全ての意識を前方へ間合いは30m強、彼女ならばあってないようなものだ。
呼吸が細かくなる、にわかに大きくなる威圧感。
すべてが破裂せんばかりに張り詰め……その時が訪れた。
「----!!」
「凛、走って!!」
「……っ!」
目前に迫る赤槍と戦士を迎え撃つ、私の剣とぶつかり合い夜空に甲高い音が鳴り響く。
おかしいな……本当はvsランサー(イリヤ)終わらす予定だったんですが……テンション上がりすぎて収まらず区切ることに。
次でたっぷりやるんでご勘弁を。
そして通算UAが開始一週間足らずで10000突破とは……嬉しいばかりです。
バーの色が変わってへこみもしましたがこれがあってなんとか本日更新まで踏ん張れました(笑)(現金な作者でごめんなさい……)
あと一応取っつきやすいかなと思って目次欄色々と変えてありますが正直いらんことするな、前の方がいい!などありましたら是非言ってくださると幸いです。
それではまた!
ああ、別に読むのは構わんが面白いと思ったら高評価投票、お気に入り登録しても構わんのだぞ?by今作では周りばかり活躍する予定の赤い人
追記 読者の皆様に良かったら聞きたいことがあるので 仕方ない、聞いてやるよと言う方がいらっしゃったら活動報告見てくれると助かります。すごく。