「で、どうするつもりだよ親父どの」
「はて、何のことかな」
「惚けてんじゃねえよ。こんな方向に展開が動いたのはあんたがちょっかいかけたからだろ」
身長の倍はあろうかという大扉が勢い良く開かれ、壁と叩きつけられる。
自らが主でもない部屋に立ち入るのに扉の悲鳴とも聞こえるような騒音をたてるのはマナーとしては論外も良い所なのだが……そのような概念はこの訪問者にはないと見て良いのだろう。
黄土色のブレザーというかなり珍しい――これでも穂群原高校のれっきとした正装である――制服が歳相応に見える少年は前髪を掻き上げると、学生にあるまじき悪態と殺気を振り撒きながら静かに怒りの声を挙げた。
その双眸は形容し難い程の怒りに燃えている。
「私としては迅速に世界を救う為に最良の選択をしたつもりだが……最愛の息子にそんなことを言われるとは心外だね、ジュリアン」
「その寒気がするような笑顔むけんじゃねえっていつも言ってんだろ、ダリウス殿」
「そんな呼び方を許可した覚えはないが?」
ダリウス、そう呼ばれるとこれまで少年に顔だけ向けてどこまで続いているのか分からないほど高い本棚――この部屋は書斎なのか360度全て同じように本に埋め尽くされているのだが――の中身を弄っていた主が梯子からすっと飛び降りる。
そして、彼の息子である少年と同じような仕種で前髪を掻き上げると正面から向かい合った。
「思い通りにならないのはお互い様だ……とりあえずこれ見ろよ」
ジュリアンと呼ばれた少年がパチンと指を鳴らすと、部屋全体が暗転し、その中心に3つ立方体が浮かび上がる。
最初は無色透明だったその表面にノイズが走り、そして各々が異なる風景を映し出しはじめた。
「騎士王……わかっちゃいたがこいつは別格だ。足止めなぞ効きやしない、あと数分もしないうちに辿り着くだろうよ」
「ほう……彼女か。問題ない、むしろ期待通りだ」
その内の1つが他の2つと同じだったのが数倍のサイズまで巨大化した、と思えば映る映像の彩度も増した。
今や等身大といえるまでに拡大されたその中に映し出されたのは、クレーターの入り口から屋敷までの道中に広がるだだっ広い空間を一部の隙もなく埋めて波のように迫っていく骨や獣の山を紙くずのように消し飛ばしながら進む少年少女の姿だった。
その中でも先頭を突き進む蒼銀の騎士は別格である。
まさに一騎当千と言う言葉が相応しいその進撃は、防がんと迫る異形に感情というものがあるのならばその役割をあっさりと放棄し平伏すであろうと――同時にそれを責める気も起きないだろう――と言う事が容易に想像がつくほど苛烈であり、修羅であり、また美しくもあった。
そして、そんな彼女を見てダリウスは確かに微笑んだ。
「後ろに引っ付いてる魔術師連中はそこまで脅威じゃないがな。こっちの手にある人形と良い勝負ってどこだろ。で、次だ……」
「衛宮士郎か」
「ああ、取るに足らない雑魚と、少しだけ出来る雑魚の方は一纏め。もう一人は専用の独房へ収監中だ。こいつらは自力で拘束を解けるとも思えねーが取り敢えず目だけはつけとく」
「……彼らは美遊につづく大事なピースだ。君の個人的な感情がどうかは知らないが丁重に扱いたまえ」
「この化け物のせいでな」
ジュリアンの舌打ちと共に最後の立方体がすっと広がる。
そこに映し出されていたのは今までのものとは明らかに異質な、闇だった。
「……暴走が止まりそうにないな」
「ああ、こいつには一応耐久特化の自律型使い魔を放ってはいるがもう保たねーだろうな。と言うよりもそろそろこいつを放り込んである塔ごと別物に変えねえと時期にこっちまで危なくなりかねねえ……っ!」
「―――aaaaa!!」
二人が同時に後退る。
彼らの見ている光景はあくまで通信によって映し出された別の場所で起きているものだ。実際の距離としてはかなり離れていて、影響などはありえない。しかし聞こえてくる咆哮は、そんな事を忘れさせる程の怨唆の篭った叫びであり、呪いであった。
「聖杯の失敗作。もしも彼女がまともな機能を持っていたならば我々の願いは達成されていただろうにまさかここまでの厄災を招くとはな」
「破滅という道でしか願いを叶えられない願望器……御三家なんて輩は一体何を考えてやがった」
「いや、彼らもこんなものを作るつもりはなかったはずだ。元々聖杯戦争は根源に至るための道であり、その鍵となる聖杯がこんな不純物を含むなど魔術師であるならば看過できるはずがないからな。例えその外殻が人になったとしてもその本質は変わるまい。
創始者の目が届かぬどこかのタイミングでアクシデントが発生したと考えるのが妥当だろう」
あからさまに失望の表情を浮かべたダリウスがすっと腕を横に振るうと、漆黒とかした立方体が元のサイズへと縮小する。
それと同時に絶え間なく続いていた叫びもまるでテレビの音声を絞るかのように急激に
縮んでいった。
「……まあ今が想定内だって言うならそれで良い。俺は俺の邪魔をするやつを消すだけだ――ああ、1つ聞いていいか」
「なんだい、ジュリアン?」
一度ダリウスに背を向けて、扉に手をかけたジュリアンが振り返る。
「あの出来損ない……俺はあいつを使って術式を確保するために転移したわけだが、その反動がないのはどういうわけだ?
確実にあいつは俺達の願いを叶えた。正直俺としては帰ってきたらどっかの地形が跡形も無く吹き飛んでるくらいは想定していたんだが……」
「ああ、そんなことか。簡単なことだよジュリアン。これは物語の王道でもあるのだが……時に愛は容易く現実を飛び越える」
「はあ?」
ジュリアンの眉がピクッと跳ねる。無駄話に付き合う気はない、かといってダリウスの語りに変化はなく、嘘を付いているようにも見えない。
そんな感情の板挟みを表すように。
「あの濁った聖杯はコントロール不能だ。手懐けることはまず無理だろう」
「ああ、だから――」
「だが、一人だけそれを可能にし得る人物がいる――器となっている彼女だ」
「……あいつはもう自我を失っている。それは今のを見ればわかるだろ」
「しかし常にそうであるという訳でもあるまい。少なくとも君は見ているはずだ……違うかい?」
「っ…」
「彼女にほんの一縷残った自我は救いを求めている。それもある人物による救いを。だからこそ、君の飛んだ先のエミヤシロウが強者だったのは必然だった」
「……」
「起動可能な状態で残っている術式の確保、この願いに私は彼女の意志が介在する余地を残した。そうでもしなければその代償を払わなければならなくなるのは目に見えていたからね。そしてその代償がどれだけのものになるのかは分からない。
――エミヤシロウがマトウサクラを守り切る世界。使用者である我々の願いだけではない。聖杯そのものの願いだからこそ成し得た奇跡だ」
再び一人になった。
ジュリアンも去り、部屋の中心を埋めていたものも今は消え失せている。再び書庫の整理に勤しみながらダリウスは狂気に満ちた笑みを浮かべた。
「エミヤシロウ、騎士王アルトリア、聖杯、ジュリアン、ドールズ、これで全ての準備は整った――さあ、第六次聖杯戦争を再開しよう……!」
―――――
「あ、じゃあ僕はここで抜けますね。セイバーさん」
「はっ? 貴方何を言って……」
「僕には僕の事情があるので。雑魚共の処理はお任せします」
「待ちなさい! 何を考えてるのかぐらいちゃんと……」
「私も行こう」
「ロード?」
「あの英雄王の事だ。ついていきでもしない限り本心を知るのは不可能だ。この中で1番抜けても戦力ダウンの少ない私がついていくのが一番合理的だ」
「……お願いします」
「あれ、先生ついてくるんだ。いいの? あっち放っておいて?」
「お前を一人にするよりはよっぽどな」
「信用されてないなあ僕……まあいいですけど」
この作品はあくまでプリヤです。要するに何が言いたいかって?原作者様の言葉を借りると、細けえ設定とかは気にすんな!!と言うよりも比べちゃダメ、絶対ってこと。
どうもです! いや、ほんとお待たせしました……ええ、これからのんびりながら再開します。
年内で完結……までは無理でもその道筋ができるところまで行く予定です。
そして懲りずにFGO
オケアノス面白かったよ。素晴らしかった。けどね……イスカンダル出せやぁ!!!石160あるのに使えないんだよこのやろう!!
それではまた! 評価感想お気に入り登録じゃんじゃんお待ちしております!