Fate/kaleid saber   作:faker00

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やばいな。これ無印結構かかりそう……

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第7話 ten years ago 前編

「うし、そろそろ行ってくるけど大丈夫か?」

 

「ええ。大丈夫です。私もこの家の間取りはいい加減把握していますから……こちらも何度目か分かりませんが時間は大丈夫なのですか?イリヤスフィールが家を出てからもう15分は経っていますが」

 

「え--おわっ!?もうこんな時間!すまんセイバー、昼は冷蔵庫に入ってるから!」

 

「だから大丈夫ですと。シロウは心配性すぎるのです--いってらっしゃい」

 

 急いだ様子で靴を履いて駆け出していくシロウを玄関先で見送る。

 今日はセラとリズが何やら緊急の呼び出しとやらで朝から家を留守にしている--それを昨日の夕食で話すセラは本当に申し訳ありませんと泣き出さんばかりだった--ので現在私のことを心配し過ぎて遅刻しそうになっているシロウを最後にこの家にいるのは私だけになった。

 

 --全く……私のことをまるで子供のように扱って

 

 不思議とそれも悪い気はしなかったが。

 

「さて、と」

 

 取り敢えずリビングに戻ることにする。

 あの戦いから2日が経ったがそれ以前と今では色々な状況が変わりすぎているし一度整理するのもいいだろう。

 

 付けっぱなしになっていたテレビを消してお茶を入れる。

 セラに教えてもらったやり方だが今ではなかなかましになったと思う。

 

 机にお茶請けのクッキーも用意してどちらも一口ずつ。

 ほんのりとした甘さは朝の喧騒を忘れさせるものである。

 純和風だった衛宮家とは随分違うがお茶の味は変わるわけではないし、こういう洋風な家も悪いものではない。

 

「1人には慣れていますしね」

 

「だーれが1人ですか~?」

 

 否、最大の喧騒要因は珍しく家に残っていた。

 

「カ、カレイドステッキ!?イリヤスフィールと一緒では?」

 

「あ~今のイリヤさんは私がいても辛いだけですから時間をおくことにしますよ~ それとセイバーさん!私はカレイドステッキではなくルビーと呼んでくださいよー! 」 

 

「わ、分かりました……ルビー」

 

 突如天井から降ってきたルビーが耳元で騒ぐ。

 正直言ってかなり煩い。

 

「それで、何をしにきたというのですか貴女は?」

 

「いえいえ~セイバーさんがそろそろ今おかれている状況を整理しようかなという顔をしていたので私も混ざろうかと、貴女とは一度じっくり話してみたいと思っていたので--あの、もううるさくしないですから出来ればその左手をどけてください。 机ぐりぐりは痛いです」

 

「申し訳ありません。つい手が勝手に」

 

 --ルビーには人の心を読む機能でもついているのでしょうか?

 

 この人を食ったような態度もそれなら頷けると何となく納得してしまったのが恐ろしいところだ。

 

「ふう……ひどい目に遭いました。まっそれでも凛さんよりは遥かにましですけどね~ ……それでセイバーさん、貴女の身体は大丈夫なんですか?見たところその治癒は表面的なものだけみたいですけど」

 

 一転、ルビーの空気が変わる。 

 元々誤魔化す気はないがそんなことしたところですぐにばれるだろうと思わせるには充分なものだった。

 

「……シロウやイリヤスフィールには他言無用でお願いします」

 

「もちろんですよ~はい、続き続き」

 

「貴女の考え通りです。ゲイ・ボルクでつけられた傷はそう簡単に癒えない。 徐々に快方にこそ向かっていますが戦闘は難しい」

 

「--やはりですか。おかしいと思ったんですよ。いくらセイバーさんの魔力量が桁外れでそれを治癒に回していたとしてもあまりに早すぎますから」

 

「あの場ではああするほかに。イリヤスフィールに傷を見せるわけにはいかなかった」

 

 思い出す。あの時イリヤスフィールの精神は既に限界だった。

 そんな状態で自分が付けた傷--それも命に関わるようなものを見てしまえばそれこそ彼女は潰れていたはずだ。

 

「ああ、勘違いしないでくださいよ~その判断自体は感謝しています。それよりも私が心配してるのは貴女の身体です。まだ内部はズタズタですよね~気を抜けば卒倒しかねないくらいに」

 

「流石にそこまでは。確かに涼しい顔をしているのは大変なのは否定しませんが」

 

 ゲイ・ボルクの傷は思ったよりも厄介でなかなか良くならない。

 今でも戦闘になれば1分で腕が悲鳴をあげるはずだ。 

 

「それでは次は私の番です。イリヤスフィールは大丈夫なのですか?廊下なので私を見ると逃げてしまうので……」

 

「うーん、正直に言ってしまうとあまり芳しくないですねー。昨日凛さんにもう戦わないと宣言してましたし」

 

「そうですか……」

 

 予想通りの答えに落胆の感情が私の心に影を落とす。

 イリヤスフィールは変わってしまった。そもそも戦いというものを理解していない節はあったがあの戦いでそれが一気に顕在化したのだ。

 

 学校にこそ向かうもののそれ以外は部屋にこもっておびえる声が聞こえる。

 シロウやセラが心配して話をするも効果なし。

 もっとも2人が思っているより遥かに事態は深刻なので当たり前といえば当たり前なのだが……

 

「では彼女はもう魔法少女にはならないと?」

 

「その可能性は充分ありますね~ま、私はイリヤさんが立ち直るまで気長に待ちますよ~」

 

 まるで出来の悪い妹を見守るかのようにルビーは優しくそう言う。

 その姿にイリヤスフィールは彼女に任せておくのが最善だ、と心から思った。

 しかし、率直にそう思ったからこそどうしても聞かないといけないことがある。

 

「それではもう一つ。ルビー、貴女はイリヤスフィールが一体--」

 

「何者なのか、ということですね~……残念ながら私にも分からないです」

 

「ならなぜ凛と別れたあとイリヤスフィールを選んだ!ルビー、じっくり話したいと言ったのは貴女です。ごまかしはなしだ。イリヤスフィールのあの魔力は自分の内側に溜め込んでいたもの。ここ数日ではない、生まれた時から何かあったとしか思えない。貴女はイリヤスフィールと関わる中ではなにか掴んだのではないですか!?」

 

「--確かにただ者ではないと思ってましたよ。契約して初めて転身した時もセンスあるなとは思いました。けどそれだけです。あんな怪物級の魔力を持ってるなんて知ったのは一昨日です」

 

「では……」

 

「手がかりなし、ですね。私も貴女と掴んでるのは一緒のところまでです」

 

 申し訳ない、とルビーが小さくなる。

 彼女が知らないというなら本当に知らないのだろう。こういった真剣なシーンで適当なことを言わないのは何となくだが分かっている。

 

「異常と言うなら士郎さんもです。あの人もどうなっているのやら……」

 

「イリヤスフィールもそうですが何か鍵が開いた、というのが適当かもしれませんね。 --まあそちらはまだ自覚はないようですが」

 

 2人溜め息をつく。

 異常なのはイリヤスフィールだけではない。急を擁することではないとはいえシロウもシロウでおかしい。

 私がくる前は魔力の欠片も感じなかったというが、私を召喚してから最低27本の魔術回路の存在が確認出来るとルビーは言う。

 それだけの魔術回路が突如現れたとは考えづらい。

 

「まーもしかしたらこれから分かるかもしれません--だからこそ私も今日はここに残っているわけですし」

 

「それはどういう--」

 

 聞き返そうとしたところでピンポーン、と呼び鈴がなる。 

 それを聞いてルビーは私を急かすようにこう言った。

 

「後はお任せします。私はおもちゃに戻ってますのでお気になさらず」

 

 声をかけても、投げてみても、彼女はそこから何も言わなかった。

 

 

 

 

「一体誰だと言うのでしょうか?家の者なら呼び鈴をならす必要はないでしょうに」

 

 ルビーを机に置いたままスリッパを履いて玄関に向かう。

 

 そうして、その足は金縛りに合ったように止まった。

 

 --そんなバカな

 

 思わず目をこする。しかしそれは現実だった。

 

「ピンポンなんてしちゃったけど誰もいるはずないわよねー。士郎とイリヤは学校だしー、セラとリズは今頃来ない私達を空港で待ってるはずだし」

 

 懐かしい天真爛漫な声

 

「……アイリ、なんでそんな面倒なことを」

 

 私が聞いたことのあるそれよりも随分優しい声

 

「ご飯を作っていつも頑張ってるあの子達を労うのよーついでにーイリヤと士郎へのサプライズ!……それよりもなんで電気がついて--あら?」

 

「どうしたんだいアイリ……君は!?」

 

「キリツグ……アイリスフィール……」

 

 衛宮切嗣とアイリスフィール・フォン・アインツベルン、第四次聖杯戦争を私と共に戦ったマスター。

 二度と会うことはないと思っていた2人と私は再会した。

 

「セイバー?」

 

 アイリスフィールが信じられないという表情で私を見ている。キリツグも同じだ。

 

「あの、アイリス--」

 

 そこで気がついた。

 

 --何故、この2人が私のことを知っている?

 

 この世界にあの火災はなかった。 

 それならば、聖杯戦争はなかったということではないのか?だからこそイリヤスフィールは普通の少女として暮らし、凛もその存在を知らなかったのでは……

 私の中で出していた世界の前提が脆くも崩れていく。

 

「そっか……私の勘の正体はこれだったんだ。久し振りね、セイバー。 貴女は私を覚えてはいないだろうけど」

 

「待ってくれアイリ!もうこの地で聖杯戦争は起こらない。その確認はとれてるはずだ!……それじゃあ何のためにあの時セイバーを犠牲にしたのかわからなくなる!」

 

 キリツグの言葉で確信する。

 私は何もかも間違っていた。この世界に聖杯戦争は存在したのだ。キリツグが私に非難と拒絶の目を向けないところを見るとそこに鍵があるのだろう……これは話を聞かないわけにはいかない。

 

「いいえ、アイリスフィール、キリツグ、私はあなた達のことを知っています。 と言ってもあなた達とはまた別のあなた達のことですが」

 

 

 

 

 

「並行世界の僕とはいえ一体なんてことを……」

 

「仕方ないわよキリツグ。貴方だってもしもどこかで世界に絶望したりしていたら同じことをしていたはず。ほんの少し天秤が違っただけよ」

 

 両手で顔を覆うキリツグをアイリスフィールが慰める。

 テーブルを挟んで向かい合う2人に私の通ってきたエミヤとの関わりを話した。第四次での戦い、その結末、そしてさらにまた10年後シロウの剣となり戦ったこと、そして……今は聖杯戦争こそ起こっていないがシロウに呼び出されてここにいることを

 

 それを聞いている時の2人は思ったよりも動じることはなかった。

 どこかで判断を変えればその道を辿ってた可能性は充分あったのだと--キリツグは少し人としてそのものが私の知っている彼とは違うらしくその結末を嘆いていたが

 そしてボソッと

 

「僕もあの時ナタリアを殺していたらそう言う人間になっていたのかも知れないな」

 

 どこか懐かしむようにそうこぼした

 

「ナタリアとは?」

 

「僕の母親のような存在であり師匠のような存在の人さ。今はどこで何をしているのかもわからないけど時々連絡を寄越すし、いつか君とも会うかもしれないね」

 

「キリツグ!私の前でその人の話をするのは禁止だと言っているでしょう!」

 

 --どうもキリツグが柔らかすぎて調子が狂いますね

 

 アイリスフィールにペシペシ叩かれているキリツグに何だか苦笑に近いものが漏れる。けれどもそれは悪いものではなくむしろ良い意味のものだ。

 

「あの……お取り込み中申し訳無いのですが私のことは以上です。今度はそちらの世界では何があってこうなっているのか聞きたいのですが」

 

「ん……ああ、そうだね。アイリ、そろそろやめてくれ。何の因果がは知らないがこの世界にいる以上彼女には知る権利がある」

 

「それはその通りだけど……キリツグ、後で追及するからね」

 

「了解したよお姫様。それじゃあどこから話そうか……僕はね、聖杯戦争を潰す為にアインツベルンに送り込まれたんだ」

 

 そうしてキリツグは懐かしむように昔のことを語り始めた。

 

「14,5年前かな?僕はナタリアから聖杯戦争のことを聞いた。何でも僕のルーツがある日本に全てを叶える万能の釜が存在するってね。最初はそれは夢のようなものだと思ったし僕自身参戦したいとすら思ったさ。もしも勝利すれば恒久平和という願いが叶うんだからね」

 

「そして僕は本格的に調査を開始した。勿論勝つためには敵を知ることが第一だからね。けどそこで違和感を感じたんだ--冬木の御三家。遠坂、間桐、アインツベルンの事を調べ始めた時だったかな」

 

「彼等の妄執の深さに呆れたよ。500年生き長らえる化け物に1000年の悲願のために命を弄ぶ長老、遠坂はかつてゼルレッチと関わったからかまだまともなほうだったけどそれでも常軌を逸していた」

 

「その後歴史を調べてみてさらに驚いたよ。この戦いは秘匿されているが隠しきれるわけじゃない。知ったものを全員消しているんだ。嘗ての文献を見ると明らかに不自然な大量不審死、行方不明が聖杯戦争と同じタイミングで起きていたんだ。三度全てで、ね」

 

「それを見て確信したよ。この聖杯戦争は僕の理想なんかじゃない。 血にまみれた怨念の儀式なんだってね。そこで決めたんだ。次のチャンスは周期からすると後5年、必ずそこでこの3家とそれを駆り立てる聖杯を潰してみせると。そもそも人の作ったもので全てを叶えるなんてそんな都合の良いことが出来るわけがないんだ。聖杯がどれだけの魔力をため込もうとそれでできるのは魔術、魔法に関するものだけだ」

 

「そして僕は戦闘のできる魔術師を探していたアインツベルンに潜入した。内側から崩すのが一番上等な手段だから」

 

「そうして僕はアイリに出会ったんだ。驚いたなんてもんじゃなかった。アインツベルンのホムンクルス技術はもはや神域のものだった。僕には彼女が人間にしか見えなかった」

 

「アインツベルン当主、アハト爺は本物の化け物だったけどね。上手く取り入って聞き出したんだけど人を聖杯の器にするなんて正気じゃない。使い捨ての命なんて、あってはならないんだ」

 

「そして……ついにその時を迎えた」

 

 そこでキリツグは一息つくと私を真っ直ぐに見据えた。

 

「セイバー、これから話すことで君は僕を軽蔑するだろう。どんな理由があったにせよ僕は君の願いを潰したんだ。聞きたくなかったらここでやめて構わない--それでも聞くかい?」

 

 その問いに対する答えは決まっている。

 

「ええ、お願いしますキリツグ。私は全てを知りたいのです」

 

 

 

 

 

-----

 

「もしもし?あんたが携帯買ったなんて信じられなかったけど本当だったみたいね……え? どうせガラケーのくせに何を偉そうにですって?余計なお世話よ!このエセ神父!!とりあえず今日くるのね!?後で迎えいくから!」

 

 室内で電話をするにしては大きすぎる声で凛は携帯--それもガラケーというか電話とメール機能しかない--を鞄の中に投げ捨てた

 

「で、何ですの今のは」

 

 それを見たルヴィアは見るからに高価なソファーに座りなんとも微妙な表情を浮かべている。

 

「んー?助っ人よ助っ人。イリヤはダメだしセイバーもたぶん無理よ。 なら戦力を補充しないと」

 

「トオサカ、相手は英霊ですよ?そんな簡単に--」

 

 もっともな疑問を述べるルヴィアに凛は問題ない、大丈夫と断言した。

 

「言峰綺礼、私の兄弟子で今はトップクラスの代行者よ。性格には難しかないけど実力は間違いないわ」 

 

 




作者、賭けにでる。

もう出したいキャラだします。それでええんや!!

どうもfaker00です。この物語を上手く畳めるのか作者にとっても挑戦笑

というよりもケリィの独白が大丈夫か不安……イメージとしてはナタリア殺しのところで家族を取ったifケリィなのですが……

みなさんよかったら応援お願いします!!

それではまた!
評価、感想、お気に入り登録じゃんじゃんお待ちしております!
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