学園黙示録:Cub of the Wolfpack   作:i-pod男

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最後の更新からもう半年以上・・・・・

ε≡ ヽ__〇ノ… _| ̄|○

ホンッッッッッッット長らく、長らくお待たせいたしました!!!!!

もう、はい、言い訳の言葉も思いつきません。無理くり終わらせるような形になってしまいますが、今後ともまた作品を出す時間があればよろしくお願いいたします。


See you later

セーフハウスから約二十メートルほど離れたところにあるコンビニで三人は止まった。

 

「一旦休憩。丁度食べ物もあるし。」

 

リカと田島は既に滝の様に汗をかいており、息もかなり乱れていた。全速力で走っている竜次を死に物狂いで追いかけてやっとここまで来たのだ。銃弾をかなり節約出来たのはかなりありがたかったが、脹脛の鈍痛で足が思う様に動かせない。

 

「まあ公僕に売り物を勝手に同行しろって勧めるのはあれだけど、あるものはいただいておく事を勧めるよ。そんな汗だくじゃ気持ち悪いだろうし。トイレ行ってくるから見張りよろしくね〜。」

 

先陣を切って群がる感染者達を一匹残らず素手で始末して来たおかげで、竜司はまるでトマトソースとジャム数種類をバケツ一杯に頭からぶちまけられた様に返り血や肉片、内蔵で全身を汚されていた。歩くその都度べちゃべちゃと音がして髪から血が滴り、床も真っ赤な足跡を作っていく。棚からだいたいサイズが合うシャツ、靴下、下着、そして特大サイズのボディーペーパーの袋を取ると、そのままトイレに駆け込んだ。

 

蛇口を捻り、洗面器に頭を突っ込んでガシガシと染み付いた血を洗い落として行く。服とブーツを脱ぎ、備え付けのペーパータオルで服を突き抜けて身体中に纏わり付いた血を拭き取った。

 

おかげで火照った体が殺戮の興奮と共に冷めて行き、壁にかかった鏡に映る自分を見た。鍛え上げられて無駄な脂肪がほぼ皆無の体、ウィルスを体に注入される前にできた数々の古傷、そして刺青。しかしその顔は見慣れた屈託無い、好戦的でエネルギッシュな笑顔は無い。先ほどあの二人と話していた時も、以前の様な覇気は無く、ただ無理やり取り繕った仮面をかぶっていただけだ。普段なら失敗の一つや二つなどそう何時迄も引き摺りはしないのに今回はまるで岩の様に今までの出来事が全て重く心にのしかかっている。

 

冴子に張り飛ばされたり、自分の親同然の女を殺しそうになったり、彼女を自分から()()()子供を年甲斐も無く脅かしたりと、起こってはいけない様な馬鹿らしい問題を起こしている。まるで小学生だ。今まで戦士としての英才教育を受けて来たと言うのに、性根は全くもって変わっていない。

 

今の自分は言うなれば自慢の毒牙を抜かれた、水蛇以下の下等生物だ。なんとも情けない。帰ったら誰にどう怒られるのだろう、どう謝罪すれば良いのだろう、それぐらいの事しか思い浮かばなかった。

 

「おい、こっちはもう出る準備出来てるぞ。」

 

田島がノックしながら告げた。

 

「そっちはどうなってる?」

 

「後二、三分待ってくれると助かる。血糊が意外と落ちにくいの忘れてた。」

 

濡れた体をペーパータオルで拭き、更にボディーペーパーで身体中の脂を拭き取って服を着替えてトイレを出ると、多少なりともサッパリした様子の田島とリカが待っていた。床には食べ漁ったであろう菓子パンや乾き物の空袋が散乱している。

 

「お待たせ。行こうか?」

 

「あんたは?食べなくて良いの?」

 

リカの言葉に竜次は小さく笑った。

 

「お気遣いどうも。でも大丈夫。」

 

冷蔵されているミネラルウォーターのボトルを一本抜き取るとそれを一気に飲み干し、長いげっぷと共に空になったそれを投げ捨てた。元より今何かを食べられる様な精神状態になかった。よしんば食べられたとしても味など分かったものではない。何より食い道楽としてのプライドもある。味も分からずに物を食する事はそれに対する侮辱であり、食事という行為自体の冒涜に他ならない。

 

「俺は帰ったらしっかり食うよ。それまでは我慢する。」

 

身支度を整えて手早く装備を確認すると、ふと頭に疑問が浮かんだ。

 

「そう言えばさ。」

 

「ん?」

 

「静香先生をウチで預かってるって言ったよね?あくまでもしもの話だけど、彼女がそこにいたいって言ったらどうする?」

 

ウルフパックのバーサとクリスティーン、そして竜次自身も一般市民の日常における交流関係にあったがその関係も今や良くも悪くも見る影も無い変異を遂げていた。医術を身につけた人間は今の世界においては貴重だった。ウルフパックの皆は応急処置の方法や人体の急所を知るために解剖学の知識をある程度身に付けてはいる物の、それでもバーサやクリスティーンの多方面に渡る医療の知識には遠く及ばない。その教え子を抱え込んでからと言う物、日常の仕事はかなり捗った。普段こそはぽややんとしているが、二人の恩師のスパルタ教育の賜物なのか、医療の事となると何らかのスイッチが入ってまるで別人の様な熱意で二人の仕事を手伝う所を何度も目にしている。

 

静香を失うのは痛手と言えるほどの事ではないが、あの二人が寂しがる事はまず間違いない。

 

「その時は、そうね・・・・分からないわ。こう見えて高校時代からの付き合いなのよ。目の届く所で守っていたいのは本音だけど、だからと言って私がずっと守り続けるって訳にも行かないし。難しい所ね。彼女の判断に任せるわ、もう大人なんだし。」

 

「あ、そ。じゃあここで待ってて。二人とも。」

 

「はあ?アホ抜かせ。」

 

田島は反抗の声を上げた。

 

「もう半径二十メートル以内には入ってるし、これ以上近づかれたら場所がバレちゃう。本当はもう少し前のコンビニで止まる事も出来たんだけどギリギリまで近づいたんだから感謝してほしいよ。帰りの為の(ハンヴィー)も転がして来るから。ロッカーに入ってた銃と弾とクロスボウも返す。元はと言えばあれは全部そっちの持ち物だし。」

 

「あら、ご丁寧にどうも。意外だったわ。」

 

「何が?」

 

「あんたの事だから近隣の空き家にある物資は全部漁ったと思ってたのよ。それに変な所でガキッぽいからゴネられるんじゃないかって少し心配だったんだけど、悩んで損したわ。」

 

「おいおい、随分と酷い言い草だな、俺を何だと思ってるんだ?」

 

胸に手を当て、極めて心外だという表情をわざとらしく作って見せた。

 

「節約は嫌いじゃないけどそこまでがめつくてケチな人間じゃないっての。ブツはちゃんと返すよ、正常に作動するかどうかを確かめる以外じゃ弄ってないから。」

 

コンビニの自動ドアを開閉するセンサーを殴って壊すと、止まったドアを手でそのまま強引に締め切った。

 

「バリケードは自力更生でよろしく。」

 

そう言い残し、竜次は脇目も振らずにセーフハウスを目指して再び走り出した。やってしまった以上は仕方ない。ベルトウェイやスペクターは笑って許してくれるだろう。だが甥っ子の様に可愛がってくれるバーサや、若干病的と言える程に自分を慕う冴子、そして自他に分け隔て無く厳しいベクターやルポはどうだろう?

 

確実にまた殴られるか泣かれるか、泣きながら殴られる。どちらにせよ、自分に出来るのは戻って全力で謝る事だけだ。門の前に立ち、しばらく待っていると外回りをしているフォーアイズと目が合った。互いに一言も喋らなかったが、フォーアイズは無線に向かってボソボソと話すと、30秒もしないうちに全員がそこに集結した。

 

装備を脱ぎ捨ててその場で両膝をつくと、視線を下に向けた。

 

「ごめんなさい。」

 

手もつかず、重力に従って額を地面に叩きつけて彼らの前にひれ伏した。恐らくその勢いで額は割れただろうが、瞬く間にそれも治るのを感じ、血だけが額を濡らした。長らくその状態を保っていたが、やがて誰かの手に起こされ、あばらが砕けるのではないかと思う程の抱擁を受けた。嗚咽で全身を震わす抱擁に。

 

「許さん。」

 

鼻を啜りながらルポはそう答えた。

 

「ごめんなさい。」

 

肩がじんわりと温かくなるのを感じ、竜次は全身の力を抜いた。ああ、駄目だ。こればかりはどうあがいても到底勝てない。いや、そもそも勝てる様に出来ている代物ですらないかもしれない。母親の涙と言う物は。

 

「許さん。これ以上の家出は。」

 

ああ、駄目だ。自分の涙腺も緩んできた。これは駄目だ。竜次もルポの肩に顔を埋める。こんな情けない顔、誰にも見せられない。

 

「ごめんなさい、母さん。泣かせてごめんなさい。」

 

「ルポ、もうその辺で。」

 

ベクターは彼女の肩に手を置き、三度目でようやく彼女をやんわりと引き剥がす事が出来た。

 

「さて、我々も半日近くセーフハウスを無断で抜け出して独断行動を取ったお前に言いたい事は諸々あるが、今は置いておく。一先ず中に入れ。」

 

外した装備を抱え、再びセーフハウスの中に戻り、竜次を除く全員がソファーや椅子に座った(ありすはルポの膝の上に陣取った)。

 

「まずは無事に戻って来てなにより、と言っておこう。」

 

スペクターが沈黙を破った。

 

「で?どこで何をしていた?何を見聞きした?まずはそれを報告しろ。」

 

「ここから二十メートル離れたコンビニでBSAAのエージェントが二人いる。一人はスペクターの元教え子、南リカだ。」

 

「ほう?あいつが来ているのか?」

 

「リカが来てるの?!ホントに?!本当に本当?!無事なの?!」

 

身を乗り出して静香が床に正座している竜次に詰め寄った。

 

「落ち着いてって、静香先生。大丈夫、二人共生きてるよ。先生を探す為に海自の船を降りて床主にに来たんだよ。どうする?」

 

静香は迷った。リカとの付き合いはそこそこ長く、互いに親友と公言出来る間柄だ。しかし藤美学園から脱出した後にやっとこうしてこのセーフハウスにいる面々との生活に馴染める様になった。必要な知識をスパルタ教育で脳に刷り込み、無事に医大を卒業させてくれた恩師二人とも再会を果たす事が出来た。そしてその二人の研究を手伝う事も出来た。

 

「行きなさい、シズカ。」

 

「先生・・・・」

 

「貴方の事は大好きよ?そこだけは勘違いしないで欲しい。私達がここで今まで培った知識はただ蓄えるだけじゃ意味が無いの。それにどれだけ優れていても私達だけじゃ世界を変えたり、ましてや救う事なんて出来ない。リソースも人員も機材も圧倒的に足りないもの。そもそも私達、『善人』ですらないし。でも貴方が今まで学んだ事の中でBSAAが知らない事があればそれを教えれば良い。それで可能性は少しだけど上がる。」

 

「それに、日本の諺にもこうある。可愛い子には旅をさせろと。」

 

ありすは号泣の一歩手前にまで行ってしまった静香に抱き着いた。

 

「せんせー、行っちゃうの?」

 

いきなり二つの道を突きつけられて答えを出せない静香はどう答えて良いか皆目分からず、アリスの背中に腕を回して抱き返す。

 

「分かんない。先生がいたから医者になるって目標に手が届く距離まで近づけたのに、ここで私が行っちゃったら・・・・」

 

もしかしたら自分が医者になったとしてもその晴れ姿を恩師に見てもらえないかもしれない。その恐怖もまた静香に二の足を踏ませる要因となっていた。

 

次の瞬間、静香は鋭い痛みを立て続けに二度感じた。バーサとフォーアイズの平手が彼女の背中を襲ったのだ。

 

「もう、しっかりしなさいよ!貴方なら大丈夫だから。またどこかで会えるわ。と言うかあんたがこのアウトブレイクをどうにかして会いに来なさい。私達の教え子でしょ?自信なんて後からついて来るおまけよ、おまけ。」

 

「全くだ。お前は私達が唯一つきっきりで指導をした生徒だぞ。根性を見せろ。これは言うなれば選別(トリアージ)だ。それにお前と違って我々は戦う訓練を受けている。お前が思っている程ヤワでは無い。」

 

恩師との共生と世界の救済。再び社会を基盤から作り直すためにはどちらを優先せねばならないか、比べるまでも無い。

 

静香はゆっくりとありすを引き離すと、涙を流しながら二人が覚えている限りで一番の笑顔を見せた。

 

「・・・・準備、して来ます。」

 

「私達も手伝うわ。最後だからこれぐらいは、ね。フォーアイズも早く。」

 

「・・・了解。」

 

しかしようやく決意を固めた所でありすが静香の手を握った。その力は弱いものの、彼女を釘付けにするには十分だった。

 

「行っちゃ、やだ。」

 

「ありすちゃん・・・・」

 

「行っちゃやだ。」

 

「良い子だから、行かせて。」

 

だがありすは目元に涙を溜めながら嫌々と首を振る。

 

「ありすちゃん。また、学校とか行きたい?」

 

「うん。」

 

「また、お友達を沢山作って皆と遊びたい?」

 

「うん。」

 

「なら、行かせて頂戴。先生はね、ありすちゃんがまた一杯笑って怖がらずに過ごせる様に頑張らなきゃいけないの。それが出来たら・・・・そうね、ありすちゃんの学校の保健室で働こうかしら?」

 

「ホントに?!」

 

「うん。小児科で研修もしてたし。」

 

「じゃあ約束!」

 

ありすは小指を差し出した。

 

「じゃあ、駄目押しでこっちもしましょう。」

 

その手に自分の小指を巻きつけると、静香はもう一方の小指を差し出した。すかさずありすもその小指を取る。

 

「ゆーびきーりげんまん、嘘ついたら針千本飲ーます。指切った。」

 

「じゃ、最後に写真でも撮るか。」

 

いつの間にか持って来たのか、ベルトウェイはポラロイドカメラを引っ下げていた。

 

「うん!」

 

ありすは静香をいそいそとソファーに座らせ、自分はその膝に座った。

 

「先生もお願いします。」

 

素顔がBSAAにバレると言う可能性を考慮して遠慮したい所だったが、やはり教え子にはどこか甘いのだろう。バーサに腕を取られてフォーアイズも不承不承静香を挟む形でソファーに座った。

 

「リュウジ、お前もサエコと一緒に入れ。仮にも元生徒だろ?」

 

やってしまった事も考えて逆らう訳にも行かず、竜次は静香の足元に腰を下ろした。冴子もその隣に座り、目が全く笑っていない笑顔を浮かべたまま竜司の手を握り潰さんばかりの握力で握った。

 

「行くぞ。何枚か取るからな。」

 

ポラロイドから吐き出された写真を分けると、荷造りの為に教師二人と教え子は二階に上がって行った。

 

「さっきので時間を取られたけど、報告の続きがある。外にいる間、クリムゾンヘッドとリッカーの存在を確認した。」

 

和んでいた空気が凍りついたかの様に一瞬にして張り詰めた。

 

「間違い無いんだろうな?」

 

「何体かは素手でぶち殺したんだよ?間近で見た。あれは間違い無くクリムゾンヘッドだった。リッカーもいた。遺伝子改造とかその他の調整が必要なタイラントやネメシスはありえないとしても、数が揃えば十分厄介になる。」

 

「確かにな・・・・・」

 

ルポは目頭を揉んだ。

 

「スペクターセーフハウスを中心に周囲をセンサーで固める。ストックに体温を検知出来る物はあったか?」

 

「地下には普通のセンサーしか置いていない。が、普通のセンサーはあるから検知する様にプログラムは出来る。少しばかり時間は必要だが。」

 

「大至急頼む。人間の体温を下回る物があれば即迎撃態勢に入るからそのつもりでいろ。」

「了解。範囲はどれぐらいにする?」

 

「二十メートルかそれ以上で良い。」

 

早速取り掛かる為にスペクターは地下へと向かった。

 

「さてと、お前の処遇がまだだったな。」

 

ルポは床に座ったままの竜次を見下ろした。

 

「何か罰がいる。外出禁止は勿論だが、そうだな・・・・・サエコとありすの教育係を纏めて請け負って貰おうか。基礎トレーニングも含めてな。」

 

「いつまで?」

 

「私が良いと言うまでだ。」

 

彼の頭に手を乗せ、膝立ちなって視線を合わせた。ルポの表情は固いままだったが、目の奥の光は柔らかく、笑っている時の目をしていた。

 

「もうあまり心配をかけさせるな。私の心臓に悪い。」

 

「ごめんなさい。」

 

「謝らなくて良い。ただもう二度とするな。ほら、さっさと初めろ。」

 

「え、今からやんの?」

 

「当たり前だ。教育係をしろと言っただろう?」

 

「何から教えるのさ?」

 

「それを決めるのはお前だ。中途半端は許さんぞ?」

 

「・・・・・了解。」

 

竜次も同じ表情でそれに応えた




更新せずにだらだら設定ばっかが浮かんでしまう自分を思い切りクレイジーダイヤモンドでドラララしたい・・・・
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