「あ、あの壁は50mのはずだぞ‼︎」
壁からこちらを覗き込んでくる巨人、いや、超大型巨人に対して、民衆はただただ恐怖しているだけだった。
超大型巨人は、こちらをじっと見つめて、動く様子が無い。
その間に、きっと逃げる時間はあっただろう。しかし、この場に居る者全てが立ち止まっていた。何かに操られたかの様に
それは、俺も例外では無かった。
逃げたいのだが、頭が恐怖に支配されて、足が一歩も動かない
「動くぞ‼︎」
誰かがそう叫ぶ。
超大型巨人はゆっくりと動き出した。
ドゴォッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎
凄まじい轟音が鳴り響く。
ヒュゥゥ…ドゴォンドゴォンッ‼︎
ヒュゥゥ…ドゴォンドゴォンッ‼︎
岩の様な何かが、まるで隕石の様に飛んでくる。
皆、一目散に逃げる。
「き、巨人が入ってくるぞ‼︎」
ズシンッ…
ズシンッ…
ズシンッ…
「門に急ぐわよ、2人共!」
フローラのお母さんがそう言って、俺とフローラの腕を引っ張る。
走りながら、俺は考えていた。
エレンやミカサ、アルミンは無事だろうか?
しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。今、自分が生き残ることが大切だ。
そう考えて、必死に走った。
道中、壁の破片に潰され犠牲になっている人がいた。その破片は、赤黒く染まり、下には臓物がはみ出している。もうすでに手遅れだと言うのに、1人の男が必死で破片をどかそうとしている。現実を受け入れられないのだろう。
「やめろおおおぉぉ…‼︎」
「嫌だああああぁぁ…‼︎」
「助けてえええぇぇ…‼︎」
そんな声が後ろからこだまする。
(助けられなくて、ごめんなさい…)
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門の前に着くと、人で溢れていた。
「ジェイド⁉︎ジェイド⁉︎」
遠くの方からそう聞こえる。
その声は、自分の耳が聞き慣れている女性の声だった。
「…母さん⁉︎」
急いで駆け寄ると、そこには見慣れた顔があった。
「母さん‼︎」
「…ジェイドかい?
はぁ……無事で良かった」
母さんはその場に座りこむ。よほど心配していたのだろう。
「あっちにフローラ達がいるから、一緒に並んで船に乗ろう。」
俺たち4人は並んだ。
一時間ほど経ってからだろうか。やっと船に乗ることが出来た。その頃には門の前の人だかりは消えていた。おそらく、兵士の人達が誘導したのだろう。
「ほんとに2人共無事で良かったわ。ジェイド、フローラ」
母さんがそう言う。
「えぇ、まったくです。たまたま今日は仕事が休みで。家にいて良かったです。でも…」
フローラの母親はそう言い、小声でこう言う。
「今はこの話はよしましょう」
周りを見ると、子供が1人泣きながらうずくまっていたり、1人のオッサンが誰かの名前を呟きながら遠くを見ていたり、若い女の人が男の名を叫んでいたりなど、大切な人を失くした者が多く、むしろ俺たちみたいに誰も身内に犠牲者がいない者は珍しかった。
そう考えるとフローラのお母さんの判断も正しいだろう。
「…そうですね」
母さんもそう言って、それ以上口を開かなかった。
…内門の前方に奇妙な巨人が現れた。
大きさは他の巨人とさほど変わらないが、その姿はまるで違う。
がっしりとした体格に、岩のようなゴツゴツとした肌。どこか落ち着いた雰囲気さえ感じさせる。先ほどから兵士達が剣で攻撃を仕掛けているが、傷ひとつ付かない。
頑丈な身体を持つその巨人は、急に走る体勢になる。
次の瞬間、大きな地響きが立つ。思わず体が揺られる。その地響きは、目の前にいたあの巨人による物である事に気付く。
その巨人は内門に向かって走りだしていた。
兵士の人達は必死に大砲で対抗しようとしているが、驚いたことに動きを止めない。
よく見ると傷ひとつ付いていない。
そしてその巨人は、いともたやすく壁を破った。改めて巨人の強さを思い知らされる。
そしてこの出来事は、事実上のウォールマリアの陥落、人類の活動領域の後退を意味する出来事だと、後になって知った。
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ウォールローゼ内に着いたのは、すっかり日が暮れてからだった。船から降りてすぐ、エレン、ミカサ、アルミンを捜した。3人固まっていたので、すぐに見つかった。
「良かった、みんな無事で」
「エレーン、ミカサー、アルミーン‼︎」
フローラが元気良くそう呼ぶ。
するとこちらに反応したのか、手を振っている。しかしエレンだけは顔を下げている。
3人に近づく。
「どうしたの?エレン?」
なかなかエレンは顔を上げない。
もしかして…
「エレン?」
「おいバカ!やめろ!」
フローラをとめようとしたが、一歩遅かった。
「母さんを救えなかった…」
顔を上げずにそう答える。
その言葉は、いつものエレンからは想像できないほど弱々しかった。
ここは親友として何か声をかけてあげたかったが、何ひとつ言葉が浮かばない。
急にエレンが立ち上がる。そしてウォールマリアに向かって叫んだ。その言葉は、悲しみに溢れ、とても力強いものだった。
「駆逐してやる‼︎この世から…一匹…残らず‼︎」