今は亡き故郷のため俺は進む………   作:都海 胸広

2 / 6
地獄の幕開け

「あ、あの壁は50mのはずだぞ‼︎」

 

壁からこちらを覗き込んでくる巨人、いや、超大型巨人に対して、民衆はただただ恐怖しているだけだった。

 

超大型巨人は、こちらをじっと見つめて、動く様子が無い。

 

その間に、きっと逃げる時間はあっただろう。しかし、この場に居る者全てが立ち止まっていた。何かに操られたかの様に

 

それは、俺も例外では無かった。

逃げたいのだが、頭が恐怖に支配されて、足が一歩も動かない

 

「動くぞ‼︎」

 

誰かがそう叫ぶ。

超大型巨人はゆっくりと動き出した。

 

ドゴォッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎

 

凄まじい轟音が鳴り響く。

 

ヒュゥゥ…ドゴォンドゴォンッ‼︎

ヒュゥゥ…ドゴォンドゴォンッ‼︎

 

岩の様な何かが、まるで隕石の様に飛んでくる。

 

皆、一目散に逃げる。

 

「き、巨人が入ってくるぞ‼︎」

 

ズシンッ…

ズシンッ…

ズシンッ…

 

 

「門に急ぐわよ、2人共!」

 

フローラのお母さんがそう言って、俺とフローラの腕を引っ張る。

 

走りながら、俺は考えていた。

エレンやミカサ、アルミンは無事だろうか?

しかし、今はそんなことを考えている場合ではない。今、自分が生き残ることが大切だ。

そう考えて、必死に走った。

 

道中、壁の破片に潰され犠牲になっている人がいた。その破片は、赤黒く染まり、下には臓物がはみ出している。もうすでに手遅れだと言うのに、1人の男が必死で破片をどかそうとしている。現実を受け入れられないのだろう。

 

「やめろおおおぉぉ…‼︎」

「嫌だああああぁぁ…‼︎」

「助けてえええぇぇ…‼︎」

そんな声が後ろからこだまする。

(助けられなくて、ごめんなさい…)

__________________

 

門の前に着くと、人で溢れていた。

 

「ジェイド⁉︎ジェイド⁉︎」

 

遠くの方からそう聞こえる。

その声は、自分の耳が聞き慣れている女性の声だった。

 

「…母さん⁉︎」

 

急いで駆け寄ると、そこには見慣れた顔があった。

 

「母さん‼︎」

「…ジェイドかい?

はぁ……無事で良かった」

 

母さんはその場に座りこむ。よほど心配していたのだろう。

 

「あっちにフローラ達がいるから、一緒に並んで船に乗ろう。」

 

俺たち4人は並んだ。

 

一時間ほど経ってからだろうか。やっと船に乗ることが出来た。その頃には門の前の人だかりは消えていた。おそらく、兵士の人達が誘導したのだろう。

 

「ほんとに2人共無事で良かったわ。ジェイド、フローラ」

母さんがそう言う。

「えぇ、まったくです。たまたま今日は仕事が休みで。家にいて良かったです。でも…」

フローラの母親はそう言い、小声でこう言う。

「今はこの話はよしましょう」

周りを見ると、子供が1人泣きながらうずくまっていたり、1人のオッサンが誰かの名前を呟きながら遠くを見ていたり、若い女の人が男の名を叫んでいたりなど、大切な人を失くした者が多く、むしろ俺たちみたいに誰も身内に犠牲者がいない者は珍しかった。

そう考えるとフローラのお母さんの判断も正しいだろう。

「…そうですね」

母さんもそう言って、それ以上口を開かなかった。

 

 

 

 

…内門の前方に奇妙な巨人が現れた。

 

 

大きさは他の巨人とさほど変わらないが、その姿はまるで違う。

がっしりとした体格に、岩のようなゴツゴツとした肌。どこか落ち着いた雰囲気さえ感じさせる。先ほどから兵士達が剣で攻撃を仕掛けているが、傷ひとつ付かない。

頑丈な身体を持つその巨人は、急に走る体勢になる。

 

次の瞬間、大きな地響きが立つ。思わず体が揺られる。その地響きは、目の前にいたあの巨人による物である事に気付く。

 

その巨人は内門に向かって走りだしていた。

 

兵士の人達は必死に大砲で対抗しようとしているが、驚いたことに動きを止めない。

よく見ると傷ひとつ付いていない。

 

そしてその巨人は、いともたやすく壁を破った。改めて巨人の強さを思い知らされる。

 

 

 

そしてこの出来事は、事実上のウォールマリアの陥落、人類の活動領域の後退を意味する出来事だと、後になって知った。

__________________

 

ウォールローゼ内に着いたのは、すっかり日が暮れてからだった。船から降りてすぐ、エレン、ミカサ、アルミンを捜した。3人固まっていたので、すぐに見つかった。

 

「良かった、みんな無事で」

 

「エレーン、ミカサー、アルミーン‼︎」

 

フローラが元気良くそう呼ぶ。

 

するとこちらに反応したのか、手を振っている。しかしエレンだけは顔を下げている。

3人に近づく。

 

「どうしたの?エレン?」

なかなかエレンは顔を上げない。

もしかして…

「エレン?」

「おいバカ!やめろ!」

フローラをとめようとしたが、一歩遅かった。

「母さんを救えなかった…」

顔を上げずにそう答える。

その言葉は、いつものエレンからは想像できないほど弱々しかった。

 

ここは親友として何か声をかけてあげたかったが、何ひとつ言葉が浮かばない。

 

急にエレンが立ち上がる。そしてウォールマリアに向かって叫んだ。その言葉は、悲しみに溢れ、とても力強いものだった。

 

 

「駆逐してやる‼︎この世から…一匹…残らず‼︎」

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。