時空管理局の中には、でかい技術部があり、そこから専門に別れていくつもの課がある。戦艦メインだったり、個人の武装だったり。元輸送2課も今では技術部傘下となっている。
今日はその中でもデバイスの開発を行っている課にやってきている。ああ、メンテナンスするところとは別の課な。ここで試作機のデバイスが作られ、教導隊がテストをして、ようやく本採用となる仕組みだ。
「それでそれで。次の試作機のコンセプトにぴったりの魔導師はどこかな!?」
「ちゃんと連れてきたから落ち着けオッサン」
「お、オッサン言うな!」
この無精髭生やした猫背のオッサン、これでもこの課の主査だったりする。そして、このオッサンが時期管理局の制式採用目指して作った試作機のコンセプトが「インテリジェントデバイスによる魔導師育成」だったので、ちょうど良い相手を連れてきた訳だ。
インテリジェントデバイスは高級品だ。そして、高級品なので次世代に託される事も多い。なので、せっかくだから「教える人いなくてもインテリジェントデバイスあれば大丈夫」てのを目指したらしい。
どうせ士官学校に行かなくても魔導師として完成するようにって魂胆だろうけど。親が教える手間や士官学校に行く手間を省けるから、インテリジェントデバイスを買えるような人達にはいいのかもね。
「この魔法が当たり前の管理世界で、魔法を使う才能があるのに知識0の人がどれだけ珍しい事か!」
「だからちょうど良い知り合いを管理外世界から連れてきたってばオッサン」
「だからオッサンじゃないと……管理外世界から?」
オッサンは顔を青くして大丈夫かと言い出した。高町さんや八神さんみたいな管理外世界の住人がバリバリ働いてるから大丈夫じゃないかな。
そう伝えるとオッサンは少し悩んだものの、まあいいかと納得した。
「で、その人はどこに?」
「あそこで他の職員に囲まれてる」
「おいコラお前たち散れ! その子達は私の客だ!」
この前海鳴の図書館で月村さんと遭遇し、お金の準備できたからデバイスが欲しいと告げられた。それなら約束通りデバイスを用意しようという流れになったので、ちょうどいいやとここに連れてきた。そしたらやはり美少女。あっという間に職員に気に入られてお菓子貰って囲まれ大人気。それをオッサンが蹴散らして確保に向かった。さすがオッサン、大人げない。
蹴散らされた職員はブーイングしながらも本来の仕事をしにに戻っていった。仕事をしながらもオッサンの悪口をかろうじて聞こえる程度の声で囁くのが質が悪いと思います。
「お前ら、聞こえるかどうかの絶妙な声でオッサン言うなよ!」
「うるさいですよオッサン。気が散ります」
「大人げないオッサンは、そっちで少女と戯れていればいいんですよ」
「その光景は写真に撮って奥さんに送らせてもらいますね、オッサン」
「もうヤダこの部下達」
敢えて言うなら、大人げないオッサンが悪い。
場所を移し、月村さん達にデバイスが渡され説明が行われている。
「バニングスちゃんに渡したのはフレイムアイズ。見ての通り刀剣型のデバイスだよ」
「へえ、なのはのみたいに杖じゃないのね」
「ミッド式でも射撃じゃなく近接型の魔導師が増えてきたからね。守護騎士のデバイスやそこにいるフェイトちゃんのデバイスを参考に作ってみたんだ」
アリサとフレイムアイズの成長次第では、制式採用のコンペに出品されるらしい。
ミッド式で近接型の魔導師のデバイスは各自で調達している事が多い。何故なら制式採用のデバイスはあまり良い物がないからだ、と士官学校の同期が言っていた気がする。少ないもんね、近接型のミッド式魔導師。
少ないから制式のデバイスを作ることに意義を見出していなかったのに、最近のフェイトさんや他の近接型の魔導師の活躍を見て上層部も意識を変えたみたいだ。技術部に制式採用できる近接型のデバイスを作れと命令がきたぐらいだからなあ。
制式採用目指すのにインテリジェントデバイスなのは、これが試作機だからだろう。なんせ近接型を指導できるミッド式の魔導師は貴重で、アリサにつきっきりで指導なんて出来ないからなあ。AIにそれを代用させつつデータを集め、ストレージデバイスとして作る時の参考にするそうだ。
「月村ちゃんにはこっち。グローブ型のデバイスでスノーホワイトって言うんだ」
「ありがとうございます。これも杖ではないんですね」
「杖とは違うけど、これも今後は普及させていきたいデバイスなんだ」
これは俺みたいな補助魔法や召喚魔法をメインに使う魔導師をサポートする為のデバイスらしい。オッサンが言うには、今現在では補助系の魔導師も召喚魔法を使う魔導師もデバイスを使わずに魔法を使う人が多いそうだ。
たしかに、俺みたいにサポートしてくれるデバイスを持っている魔導師は滅多にいない。この前のスクライア一族の少年もそうだったし、同期でもデバイスを使っているやつはいなかった。デバイスがあった方が楽だけど、杖型を持っていても射撃をするわけでもないから要らないんだよね。
2人は早速貰ったデバイスと会話を始め、オッサンはそれを微笑ましく眺めている。心配していたデバイスとの相性が悪いという事もなさそうだし、良かった良かった。ところでオッサン、奥さんから通信きていて、後ろに展開されているホロウィンドウから冷めた目線が送られているんだけど無視ですか。あ、いや、冷や汗流れてるから現実逃避かこれ。
アリサ達がデバイスと会話しているのを見ていた高町さんとフェイトさんは何か感じるものがあったのか、自分のデバイスと和気藹々と話し始めた。
そして、八神さんはそれをどこか羨ましそうに見つめている。そんな顔をすると、横にいるヴィータちゃんが心配するぞ、と。
「なあなあ、先輩」
「どうした後輩」
高町さんたちを見つめたまま、八神さんがこちらに呼びかけてきた。まあ、この流れで聞かれる事には検討がつくけれども。
そっちもどうにかしてあげたいけど、さすがに専門分野外だからなあ。
「リインフォースは、いつになったら戻ってこれるんやろか」
「はてさて。なんせ融合騎としての情報が不足してるからなあ。他にも分からないシステムはいっぱいある」
さすがは古代ベルカのデバイス。量産型の航海の書があるのに一筋縄ではいかなかった。航海の書と同じ部分は原型が分かるからバグの修正がすぐに出来るんだけれど、それ以外のところはどうバグっているのかが分からない。航海の書には融合騎としての機能はないし、守護騎士システムも搭載していないからなあ。どんだけ豪勢な仕様なんだあのデバイス。
今作ろうとしたら、戦艦買った方が安く済むんじゃないかな、アレ。それぐらい機能盛りだくさんなデバイスだ、夜天の書というものは。
「おーい、ヴィータちゃん」
「ん、なんだ。というか、私だけちゃんづけかよ」
「だっておもしろいから」
「おい」
や、だってそうやって何言っても反応返してくれるから楽しくて。守護騎士の中では一番尊敬してますよ?
「ぜってー嘘だ」
「嘘じゃないですってば」
この赤毛を二房の三つ編にしている高町さんと同じぐらいの身長の少女は、こんななりでも長生きをしているらしい。人間とは違い、夜天の書の守護騎士というプログラム生命体。人間とは違い、いくら年月が経とうと姿は変わらない。こんなちっこい姿でも歴戦の勇士だ。
しかも使うデバイスがハンマー型。男の子なら憧れるしかないよね。外見は可愛い女の子なのに、守護騎士の中では最も漢らしい人だ。
甘い物と八神さんにはデレデレだけども。
「しばらくこのメンツよろしく」
「それはいいけど、ライムはどこに行くんだよ」
「ちょっと秘密の取引してくる」
「はあ? まあ、いいや」
何も起こらないと思うけどこのメンツはしっかり守ってやるよ、とヴィータちゃんは笑いながら了承してくれた。そういうところがカッコいいんだってば。
「じゃあ、ちょっと席外しますね。オッサン、見てるだけじゃなくてちゃんと説明してあげなよ」
「まずは相棒とのコミュニケーションが必要だろう。どこ行くんだ?」
「ちょっと関わりたくない系の開発課へ」
「あそこはお前みたいな若いのが行くべきじゃないぞ」
なんだったら代わりに行ってくるからお前はここにいろ、とオッサンが言ってくれた。でも、あそこから確実に成果を手に入れるなら直接行ってこないと厳しいし。
課長に行ってもらっても良かったんだけど、いきなり切り札切るのもまずいからなあ。
「とりあえず自分で行ってきますよ。やばくなったらまあ、逃げるぐらいどうとでもなりますし」
「そういえばお前さん、逃げる事に関しては天才だったな。なら大丈夫か」
「あれ、バリオスさんどこかにいくんですか?」
高町さんに声をかけられたので、ちょっと他所に用事あると告げて部屋を退出する。あの輪に早いとこ八神さんが加われるようにするため頑張らないとね。
「という訳で、交渉と行きましょうか」
「な、なにがという訳なのかね!?」
やって来たのは開発部第6課。基本グレーゾーン突っ走るというか、もう完全アウトだよねと言いたくなる物を作っているという特徴がある。
そう言われるだけの物を作っているし、実験してるからなあ、ここ。
「うん、それを説明するのを忘れてました申し訳ない」
「そ、そうそう、いきなり言われても困るからね」
「融合騎を貰いにきました」
驚くかと思ったら吹き出すまでやってくれるとは。いやはやこちらの予想以上に驚いてくれるのこの御仁は。
「ゆ、融合騎なんてここにはないよ? 君は知らないかもしれないけど、あれはかなり貴重なデバイスだし、いたとしても適合者がいないと役に立たないから需要もあまりないんだ」
普通はしらを切るよね。うんうん、分かるよ。だって所持していること公開してないからねえ?でもまあ、それをどうにかして掠め取るのが今回のお仕事だからね。
「ところで、先月依頼を受けて転送した物資ですけど」
「あ、ああ、あれかい。その件では助かったよ。何せすぐに運んで貰わないとダメになる物だったからね」
「そりゃあ、生体パーツですもんね」
「!?」
何で知っているのかと言いたそうな顔だけど、そりゃ転送する物ぐらい確認するから。敢えて仕事だから何も言わないだけで、今まで運ばされた非合法な物に関しては全て把握している。
しかし、驚きすぎじゃないかなこの人。これでも課長のはずだから腹芸できるはずなんだけど?
「な、なんの事やら。たしかに貴重な竜種の鱗を転送してもらったけど、それを生体パーツとは呼ばないよ」
「え、それは4回前の依頼ですよね?」
「あ……」
おい待て、あって何だあって。この人本当に課長か?
うちの課長と違ってどんどんボロが出るんだけど、わざとかなこれ。そういうフリか?
「と、とにかく融合騎はないんだ。本当にここにはない。たしかに昔にはあったという記録は残っているけれど、それも随分昔の事だよ」
「なら、その時の稼働データと、研究データをください」
データさえあれば、夜天の書の融合騎としてのシステムを復元することが出来るはず。だから、ここに本当に融合騎がいるかどうかはどうでもいいんだ。欲しいのは確実なデータだ。
さて、素直に渡してくれるかな?
「く、くださいと言うが君、これがどれだけ貴重なデータか分かっているのかい?」
「分かってますとも。ここが所持していなかったら、残るは無限書庫ぐらいだと思います」
「だ、だったらそう簡単に――」
「要求しているのは融合騎そのものではなくてコピーも可能なデータ。しかも、競争相手となる他の開発課ではなくて、こちらは輸送課ですよ?」
この人、泡を吹きながら「それはダメだ」と頑なに拒否しているけど、別に実物寄越せと言ってないんだから。もっと落ち着いて欲しい。
「こ、これは門外不出とずっと言われ続けていたんだ。ここで私が渡すことはできない!」
「そこまで言うならしょうがないですねえ」
「そ、そうだ。分かってくれたら――」
「査察部に連絡して、ここを差し押さえてもらいましょう」
「お、おいちょっと待ちなさい!」
「待ちません」
そこまで抵抗するなら、もう別の手で回収した方が早いから。この違法行為が絶えず噂されている課の確かな違法行為の証拠をぶら下げたら、査察部も喜んで仕事してくれるだろう。その時に欲しいデータを見せて貰えばいいだけだし。
課長がダメと言うのなら、更に上から圧力掛けるか場外乱闘してもらえばいいだけなんだよね。うちの課はその仕事の性質上、コネと貸しは貯まっていくからこういう時便利だよね。
「あと10秒待ちましょう。10、9、8、7、もうめんどくさい2!」
「な、何で急に減るんだい!? わ、分かった、融合騎のデータは渡すから査察部を呼ぶのは止めてほしい」
「ええ、ええ。データを頂けるなら無用に騒ぐつもりはありませんとも」
課長さんは「ああ、これで私の出世は止まった」と、この世が終わったかのように暗い顔をして呟いている。そこまで悲観的にならなくても。
というか、この人の性格からしてこれ以上の昇進はどっちにしろ難しかったんじゃないかな。顔に出るしボロ出すし。こんな若造相手にこの調子なら無理だって。
「さあ、これがお望みのデータだ。融合騎に関してのデータは全てコピーしてある」
「おや、お優しい事で」
「ああ。だからもうここには来ないで欲しい。割りと切実に」
「また用事があったら来ますね。それでは失礼致しました!」
課長さんが何やら喚いていたけど、気にせず部屋を後にする。これで夜天の書の修復も進むはずだ。八神さん、喜んでくれるといいんだけど。
更新が遅いから完結しないだろうと書かれていたので、もうちょい後で更新する予定を早めてみました。
いや、更新遅いのは否定しないというか出来ないんですけどね?
週一で更新してる人はすごいですよ、ほんと。
だからといって完結しないだろうと言われるのは悲しいなあ、と。
完結しないなら投稿しないし。
年内に完結しないという意味なら……はい、その通りですごめんなさい。
次は5月中にもう一度更新できたらなと思っています。